見出し画像

ダイナミックEQとは?スタティックEQの違いと活用例


ダイナミックEQは、「イコライザー(EQ)と「マルチバンドコンプレッサー」を融合させたツールです。

マルチバンドコンプレッサーが比較的「広い」周波数帯域をまとめて処理することが多いのに対し、ダイナミックEQは特定の周波数帯域に正確に焦点を当てて入力信号のレベルに応じて動的に処理を行うことができます。



ダイナミックEQとスタティックEQの違い


ダイナミックEQの登場により、従来の常に一定量のブースト・カットを行うEQは「スタティックEQ(静的EQ)」と呼ばれるようになりました。


スタティックEQ(静的EQ)
曲全体を通して一定量のブースト・カット
例えば、1kHzを-3dBカットした場合、音量に関わらず常に-3dBカットされます。

ダイナミックEQ
音量が大きい部分だけを動的にブースト・カット
例えば、1kHzを-3dBカットした場合でも、音量が大きい場合だけカットし、音量が小さい場合にはカットしない、という挙動になります。

ダイナミックEQの活用例をいくつか挙げておきます。

1. ボーカルのダイナミクス調整

例:サビなどで声量が大きくなるケース

  • ボーカルの声がAメロ・Bメロは小さめで、サビだけ大きくなるという場合、ダイナミックEQを使用すると便利です。

  • 例えば、声の通りに関わる2kHz〜3kHzの帯域に対し、音量が大きくなった場合にのみ自動でゲインを抑えるように設定します。

  • これにより、全体のボリューム(フェーダー)にオートメーションを入れるだけでなく、歌全体を通して周波数的なダイナミクスを保つことができます。

例:声が細く感じる場合の補強

  • ボーカルの声が「細く」感じられる場合、150Hz~250Hz周辺を持ち上げると声が太くなることがあります。

  • しかし、スタティックEQで持ち上げると、中低域が「こもっているように感じる時」が混ざってしまうことがあります。

  • ダイナミックEQでこの帯域をブースト(持ち上げ)しつつ、中低域の音量が大きい時だけ自動でゲインを押さえる(コンプレッションをかける)ように設定することで、周波数特性の一貫性を保ちつつ、ボーカルに厚みを加えられます。


2. ディエッサーとしての活用

歯擦音(シビランス)を処理するディエッサーの代わりにダイナミックEQを使うことも可能です。

  • 一般的なディエッサーは同時に処理できる帯域が限られていますが、ダイナミックEQは複数の帯域に歯擦音が発生している場合でも、それぞれの帯域にダイナミックなカットを設定することでマルチバンドのディエッサーとして活用できます。

  • また、ダイナミックEQに搭載されているアナライザーで歯擦音のエネルギーが瞬間的に大きくなる部分を視覚的に確認しながら処理できるため、問題となる帯域を把握しやすい点もメリットです。


3. シンバルなどの高域成分の緩和

  • シンバルなどの高域成分が耳に痛く感じられる場合、5kHz~10kHzの帯域をダイナミックEQで少し抑える設定が有効です。

  • Q値を10以上に狭く設定し、耳に痛く感じるピンポイントの周波数に絞って、その音が鳴った瞬間だけカットします。

  • これにより、シンバルの存在感を維持しながら、耳障りな成分だけを効果的に軽減できます。耳に痛い箇所が多すぎる場合は高域全体をスタティックEQで抑える必要がある場合も考えらます。


4. ベースとキックの分離(サイドチェイン活用)

ダイナミックEQはサイドチェイン機能と組み合わせることで、キックとベースの帯域のぶつかり合いを解決するのに非常に有効です。

  • 一般的なコンプレッサーでサイドチェインを行うと、キックが鳴った瞬間にベース全体の音量が下がってしまいます。

  • ダイナミックEQでサイドチェイン処理を行うと、キックが鳴っている瞬間に、ベースの80Hz~100Hzといったキックと重なる帯域の音量だけが下がるように設定できます。

  • これにより、ベースの美味しい帯域(中域など)の存在感を維持しながら、両者の低域での衝突だけを軽減できます。


5. ミックスバスでの「空気感(Air)」と「痛さ」の調整

  • 楽曲に空気感(Air)を出すために、ミックスバスで10kHz以上の帯域をスタティックEQでブースト(持ち上げ)することがあります。

  • しかし、この処理をするとシンバルなどが鳴った瞬間に耳に刺さるような不快感(シビランスなど)を感じる原因になることがあります。

  • そこで、スタティックEQで10kHzの帯域を持ち上げつつ、ダイナミックEQでシンバルが鳴った瞬間だけ同帯域を抑えるように処理することで、「痛くないサウンド」と「空気感」を効果的に両立させることが可能です。


6.タムに使う

ダイナミックEQを使ってタムの300Hz〜400Hzの少し抑えた上で、5kHz周辺をブーストすることでタムのサウンドが改善することがあります。


いいなと思ったら応援しよう!