見出し画像

「EQで音が不自然になる……」を解決する「分散イコライジング」


ミックスの中で特定の楽器を際立たせたいとき、ついつい一つの周波数ポイントを大きくブーストしてしまいがちです。
しかし、一つの帯域を大胆に操作するよりも、複数の周波数に分けて少しずつ調整を加えるほうが、結果としてナチュラルで心地よいサウンドに仕上がることがあります。

正式な音楽用語ではありませんが、今回はこのアプローチを便宜的に「分散イコライジング」と呼ぶことにします。

分散イコライジングのメリットは以下のような点にあります。

特定の帯域だけが浮いてしまうのを防ぐ

EQの幅(Q幅)を狭く設定した状態で特定の周波数を大きく持ち上げると、その部分だけが極端に強調され、耳に刺さるような不自然な音(ピーキーな音)になってしまうリスクがあります。

特にボーカルやスネアドラムが担当する中高域は、人間の耳が非常に敏感に反応するエリアです。
ここで無理なブーストを行うと、特定の音域だけが急に浮き上がって聞こえ、ミックス全体の調和を乱してしまいます。
分散イコライジングを取り入れて負荷を分散させることで、こうした「いかにも加工しました」という違和感を抑え、スムーズに音を馴染ませることができることがあります。


倍音が過度に強調されるのを防ぐ

私たちが耳にする楽器の音の多くは「基音」だけでなく、その数倍の周波数を持つ「倍音」がいくつも重なり合って構成されています。
この倍音のバランスは楽器らしい音色を決める重要な要素です。

しかし、例えば、ギターに「煌びやかさ」や「空気感」を加えたいという場合に、10kHz付近を一箇所だけ強くブーストすると、演奏時のピッキングノイズや弦の擦れる音、あるいは「サー」というヒスノイズまで強調されすぎてしまい、結果として耳が痛い音になってしまうことがあります。

そこで、例えば8kHzと12kHzといった複数の帯域を少しずつ持ち上げることで、特定のノイズ成分だけを過度に強調することなく、音色全体に自然な明瞭さと開放感を得ることができるケースがあります。


分散イコライジングの注意点

ただし、ただ闇雲にイコライジングのポイントを分ければ良いというわけではありません。
分散イコライジングを行う上で意識したいのは、それぞれのポイントで「Q幅(帯域の広さ)」や「フィルターの形状」に変化をつけることです。

もし同じようなEQカーブを描く設定で2箇所をブーストしたとしても、最終的な波形が1箇所で大きくブーストしたときと同じ形になってしまえば、得られる効果に大きな差は生まれません。
2つのポイントが重なり合うことで生まれる緩やかなカーブや、鋭いブーストと広いブーストの組み合わせなど、音の変化を丁寧に聴き分けながら調整することが重要です。




いいなと思ったら応援しよう!