トルコ国籍の男が女性に性的暴行を加えた。だが、検察は不起訴にした。
何が起きたか
2025年1月。埼玉県川口市。
夜道を歩いていた40代の女性に、見知らぬ男が声をかけた。約70メートル、つきまとった。腕をつかみ、公園に連れ込んだ。性的暴行を加えた。
男はトルコ国籍の37歳、無職。不同意性交等の疑いで逮捕された。
ここまでは、法が機能したように見える。
不起訴
だが、さいたま地検はこの男を不起訴にした。2025年3月11日付。
理由は非公開。「明らかにしない」とだけ言った。
逮捕され、送検され、検察が判断を下した。その結果が「不起訴」だった。なぜ不起訴なのか。被害者にも、近隣住民にも、知らされていない。
不起訴の壁
日本の検察は、不起訴の理由を公開する義務がない。
制度上、告訴した被害者は検察に不起訴理由の通知を求めることができる。だが、通知される内容は「嫌疑不十分」「起訴猶予」といった定型文だ。なぜ証拠が不十分と判断されたのか、何が足りなかったのか、具体的な説明はされない。
被害者からすれば、ブラックボックスの中で自分の事件が処理され、結論だけが降ってくる。
数字が示していること
2024年の統計で、不同意性交等罪の起訴率は約35%だ。
逆に言えば、約65%が不起訴になっている。
不起訴の内訳は、嫌疑不十分が1,289人、起訴猶予が800人。性犯罪は密室で起きることが多く、物的証拠が残りにくい。被害者の証言と加害者の否認が対立した場合、「立証が困難」として不起訴になるケースが多い。
つまり、「やっていない」から不起訴になるのではない。「やったことを証明しきれない」から不起訴になる。被害者にとっては、この違いは何の慰めにもならない。
国会で追及された
この事件は国会でも取り上げられた。衆議院法務委員会で、議員が不起訴理由の開示を求めた。
法務省の刑事局長は「性犯罪という性質上、詳細な情報開示は難しい」と答えた。
法務大臣は「強い危機感を共有している」と述べた上で、出入国管理を通じた厳格な対応に言及した。
だが、この事件の不起訴理由は、結局明かされなかった。国会で問われても、答えなかった。
同じ地域に住んでいる
男は釈放された。
そして、同じ地域に住んでいる。
被害女性も、同じ地域に住んでいる。
夜道で暴行された女性と、暴行した男が、同じ街で暮らしている。被害者は、加害者とすれ違う可能性のある場所で、毎日を過ごしている。
不起訴という判断は、加害者を「無罪」にしたわけではない。だが、加害者を「自由」にした。被害者には何の保護も、何の説明もないまま。
誰が守られているのか
この事件で守られたものは何か。
検察の判断の秘密性は守られた。加害者の自由は守られた。
被害者の安全は守られたか。被害者の知る権利は守られたか。被害者が夜道を歩く権利は守られたか。
性犯罪の不起訴率が65%という数字は、「証拠が足りない事件が多い」という事実を示している。だが同時に、「被害を受けても、加害者が裁かれない確率の方が高い」という現実を被害者に突きつけている。
なぜ、暴行した側が自由で、された側が怯えて暮らしているのか。
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