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醤油に違いって

最近、親友の亜和ちゃんが文章を沢山書いてます。
面白いからみんな読んでほしい。

亜和ちゃんが最初に出版した本に「山口」というキャラクターとして私のことを書いてくれていたので、
それを読んだ友人知人等から「お前もなんか書けばいいのに」と言われていたんですが、
それはあくまで、亜和ちゃんが書く文章の中にいる
「山口」が面白いだけで、私自身おもしれぇ女でもなければおもしれぇ物を書く才能もないのと、「便乗して文章を書くなんてなんか申し訳ないな」と思ってたので書く気はありませんでした。

が、亜和ちゃんが「魔女になりたい」というエッセイ連載の中で「山口」を登場させた後、色々あり、今の私は気が狂うほど時間を持て余しているので
現地時間午前10時53分、これを書いています。
時間を持て余すことになった原因はまた別で書くかもしれないし、永遠に闇に葬られるかもしれません。

(https://crea.bunshun.jp/articles/-/53747)





ここまで暇を弄ぶことを想定していなかったのと、
すぐに一時帰国する予定があるため、日本からは何度も読み返しているお気に入りの小説数冊しか持参していなくて、すぐに飽きてしまった。
私のいる地域では、紙の日本書籍の新刊を手に入れるのは難しい。
渋々Kindleに切り替えてダラダラ新刊をあさり文字を辿っていてふと、気づいた。

英語もろくに話せないのに、漢字を忘れかけている。

そういえば、たまに日本にいる友達と電話している時すぐに出てこない単語がある。


まずい、このままでは一時帰国の度に
「あっごめぇ〜ん、日本語久々だからすぐ出てこないや〜」
「やだ、日本の水美味しい〜!」とか言いながら前髪をかき上げる海外かぶれ丸出しの化け物になってしまう。

リハビリが必要だ。
眉唾でもいいから文章を書いて、普段の言い回しを取り戻そう。

亜和ちゃんが連載で書いた通り
私は今カリフォルニアにいる。


事の始まりは、東京だった。
渋谷で遭遇した旅行中のアメリカ人となんとなくテンションが上がり、連日のように一緒に酒を飲んだり夕食を共にしたりして
時間が過ぎ、あっという間に彼の帰国の日になった。

ランチを食べた後、せっかくだから見送るよと申し出て、羽田空港まで一緒に行くことに。
彼が乗る予定のフライトは3時間遅れていることが分かり、かなり時間に余裕ができたので国際線ターミナルの中をうろうろしたり、忙しなく行き交う旅行者たちをぼーっと眺めたりしていた。

お互い歩くのがさして好きではなく、30分もするとそれも疲れてきたので2人で煙草を1本ずつ吸った後、そこら辺のベンチに座って空港内のコンビニで買ったお茶を飲んだ。

そこで彼は

「君のためなら時間もお金も惜しまない、アメリカに来て欲しい」みたいなことを言い始めた

「は?」

言ってることは8割方聞き取れたが、意味がわからなかった。

とりあえず理解できたのは、数日時間を共有しただけでろくに会話も成り立たない相手にとんでもないオファーをぶち込んできている、ということだけ

私は数秒黙った後で、英検5級レベルの英語で「うーん、ビザ取ってないし今日は無理じゃね?」的な返しをしたと思う。


その後彼は私と過ごした数日間に対して何を感じ
私にどんな感情を抱き始めているのか、長々と語りはじめた。
丁寧に説明してるようにも聞こえるし
早口で捲し立ててるようにも聞こえた
どこかのニュースでみた英語のスピーチみたいだな
と思いながら拾える単語を拾えるだけ拾い集めて、頭の中でくっつけて「あー、うんうん」と相槌を打ち続けた

「飛行機はいつでも手配する。僕は仕事があるからこれ以上日本にはいられない。1週間でも、3日でもいいから。これで最後にしないで。」

後になって知ったが、この時点で彼は日本での滞在を予定より5日間延長していた。その5日間、ほぼ毎日私と会っていた。

手続き的な面で言えば、渡米に必要な観光ビザの申請は最低でもフライトの数日前に済ませておく必要があったし
そうでなくても「オーケーオーケーレッツゴー」
となるわけがないので
日本人の断り文句よろしく「行けたら行く」と断った

彼は悲しい顔をしながら
「ここで抱きしめたら失礼かな」と私に確認し
私は「多分失礼じゃないよ」と返した


今まで抱きしめられた中でここまで人の体温を感じたのは初めてだった。
出発ゲートに向かって小さくなっていく彼が
私の方を振り向いて「I miss you」と口が動いているのが分かった
彼の言うアイミスユーって、どのくらいのものなんだろう
「また飲も〜〜」とかだったら困るので、狼狽えつつとりあえず親指を立ててターミネーターのようにその場を立ち去った。

正直彼を訪ねてアメリカに行くことに関して、嫌でもなかったがとりわけ行きたいとも思わなかった。

彼の日本での立ち居振る舞い
身につけている物
私の扱い方
滞在先のホテル
彼の育った場所や出身校

それらの条件を合わせれば彼がどんな育ちか、だいたい検討がついた。

それなのに、彼の身体には妙な場所にピアスが開いていて、服を着ていても見える限りそこらじゅうタトゥーまみれなのはすぐに分かった。

その時の私は、アメリカがどれほど広大な土地か
まだピンときていなかった
、、、カリフォルニアって、たしかメキシコと繋がってる州だよな
こいつは、綺麗な資産で育ったのか?
それとも。

後になってわかった
アメリカは、広い
その中にあるカリフォルニアもめちゃくちゃ広い
私のいるエリアはたまにスペイン語が聞こえてきたり、スペイン語の表記があったりはするものの
ロサンゼルスのどこかで移民が爆竹を鳴らして抗議活動をしたり
フロリダのバースデーチャレンジしかり物騒な犯罪が横行したり
はたまたニューヨークのタイムズスクエアのバスターミナルみたいに、寄ってたかって小銭をねだってくるヤク中がわんさかいるようなエリアとは全く違っていた

彼は綺麗な資産で、大切に育てられたタトゥーまみれの道明寺司だった。(初めてタトゥーを入れた時父母は業火の如く怒り散らし一旦彼を家から追い出したらしい)

しかし、彼のことを何も知らなかった私は
「こんな巨大な城が建つような実家、ドラッグキャッスルだろ」

こいつは甘い言葉でアメリカに誘いこんで私をヤク漬けでハイにした後国境越えてティファナにでも引き摺り込んで
私自身か
私の内臓か知らんが
売り飛ばすつもりなんだろ

フッ
いいさ、行ってやろうじゃないか、アメリカ。

?????????????


断っておこう
この時の私は完全に頭のネジが飛んでいた

日本で相次いでメンタル的にアツい攻撃を多方面から食らった私は希死念慮こそなかったものの完全に自己防衛機能が停止していた。



2度にわたり渡米した後
気づけば今私は、アメリカで過ごしていて
いまいち自己防衛機能が戻ってきてない私を
彼は危なっかしくて見てられないといった感じで
小型の催涙スプレーを携帯させて
「僕が車から降りて君のドアを開けるまで勝手に降りたら危ないよ」と必要以上に私を守っている

しつこいようだが、島国育ちの私にとってカリフォルニアは広すぎる

同じ州内にある彼の実家まで車で8時間もドライブをした。
彼の実家に着いて荷物を置いて一度広間に出たら
自分の客間がどこかわからなくなって迷子になった。
大声で誰かを呼んだが誰にも聞こえていなかった。

彼の両親は、夕飯に美味しいお寿司を用意してくれて
彼のお父さんは私から付属の醤油を取り上げると「日本から来たのにそんなお醤油じゃ食べられないでしょ?こっちのものは全部不味くてごめんね」といった。
それを聞いたお母さんが大きな冷蔵庫からキッコーマンの醤油を探し出してきてくれた。
お父さんはそれも制止し「彼女は日本から来たんだから、キッコーマンなんかじゃ美味しく食べられないでしょ」と小豆島から取り寄せた高級な醤油を私の小皿に注いでくれた

食後に「お酒は好きか」と聞かれたのでひとまず頷くと、猛烈にシェイカーをふるって次々と知らない果物のフレーバーのマティーニを振る舞ってくれた。
断れないので次から次へと喉に流し込んだ。

部屋に戻った後、便器を抱えてしゃがみ込みながら
彼のお父さんに申し訳なく思った。


お父さんごめんなさい

私の家の醤油、トップバリュです。

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