2部_#18 孫正義−君は褒めるよ。最高だよ。
2007年2月10日。
オープニングセレモニー当日。
表参道の坂道は、
人で埋め尽くされていた。
店のファサードに並んだ
いくつものサインが、
圧倒的な光を放っている。
新しい『=Soft Bank』の姿。
おしゃれで、かっこよくて、キラキラしてる。
大勢の報道陣がつめかける中、午前11時30分から行われたオープニングセレモニーは代表執行役社長 兼 CEOの孫の挨拶からスタートしました。
「ファッションの発信地である原宿に、日本最大級の旗艦店をオープンすることができました。日本初の24時間営業で、ユーザーの皆様に『困った時はここに来ればいい』という安心感をお届けしたいと思います。」と語りました。
女優・モデルの山田優さんが登場し、「すごく広くて真っ白で、清潔感いっぱいのお店ですね」とコメント。
大手広告代理店が仕切る
華やかなオープニングセレモニー。
雪は、
正面から目を合わせられなかった。
流行りのファッションに身を包み、
ピカピカのDr. Martensを履いている大御所たち。
その足元は、
雪を場違いだと嘲笑っているようだった。
皆がスーツで着飾る中、
雪は、一張羅の革ジャンを着ていた。
この日のために選んだものだった。
周囲には、笑顔が溢れている。
そのときだった。
背後から声がした。
「君だってね?」
振り返ると、
そこに立っていたのは、
孫正義氏だった。
本当に嬉しそうに笑っていた。
その後ろには、
奇襲を仕掛けた
取締役の姿もあった。
孫さんに言ってくれたのかな、
どこまでもカッコいい取締役だ。
「君がデザインしたんだってね」
柔らかな、
でも確信に満ちた目で私を見ていた。
「はいっ!」
思わず背筋が伸びた。
孫さんは続けて、
「僕はね、滅多に人を褒めないんだよ。」
「本当だからね。」
「でもね、君は褒めるよ。」
「最高だよ」
念を押すように、
ゆっくりと言った。
(ええええー 泣いちゃう)
「あ、ありがとうございます!!」
雪は、満面の笑みで応じた。
孫さんは大きくうなずいて、
雪の手をガッチリと強く握った。
気がつくと、
店内にいた人たち、
ほぼ全員の視線が集まっていた。
大手広告代理店も。
あのトイレのタイルの営業課長が、
にやりと笑いながら雪の肩を叩いた。
「これで、出世だね」
いやっ、、、、そうじゃない。
雪は苦笑いするしかなかった。
この時、
雪は、あの美しすぎる、
石垣島の青い海を思い出していた。
6年前のあの孤独な暗闇が、
今、狂おしいほどに美しい光となって、雪を包んでいる。
ライは元気に小学校に通っている。
雪は、ほんの少し空を見上げた。
(パパ、見えてる? ありがとう。)
つづく。
明日は——ここに至るまでの雪の記録です。
▷ 第2部_#19 100円のシャーペンから、孫正義の『最高』まで。——雪の記録
この物語が、今どこかの暗闇で息を潜めている方たちの、そして自分を失いかけている「誰か」の救いになりますように。
この物語は、雪の記憶と視点に基づいており、
登場する組織や人物の描写は、その時の受け止め方によるものです。
雪の不器用で必死な歩みに何かを感じていただけたら、「スキ」や「フォロー」、「コメント」で応援していただけると、とても心強いです。
『ソフトバンク黎明期・孫正義を唸らせるまで──35年間の全記録 真鍋 雪』
