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第2部_#17 奇妙で歪な最強チーム

雪のデザインを元に、
設計が始まった。

図面を待つ時間はない。
翌日には、もう解体が始まっていた。

デザイン画が、
図面にならなければ、
墨出しさえもできない。

2ヶ月の約束が守れなくなる。

そんな状況で、雪を支えたのは、

——「おじさん」たちだった。


タイ行きを誘い、
雪を正社員にしてくれた
内装会社の元社長。

デザインを妥協せず、
効率を徹底すること

――それを叩き込んでくれたのが元社長だ。


雪が退職して石垣島にいた頃、
その会社は倒産した。

元社長には、
もう会うことはないと思っていた。

だが偶然、
取引業者の中に元社長はいた。

まさかの再会に、
雪は驚きつつもラッキーだと感じた。

雪が「2ヶ月でできる」
と宣言したことを知った元社長は、
「面白いじゃん」と笑った。


雪がラフデザインを送ると、
元社長はいつも的確かつ冷徹に
スピーディーな返答をくれた。

敬語に変わった。

「ここは素材変えた方がいいですよ」
「それだと間に合わないから、こう変えましょう」
「じゃあ、こう納めましょう」

雪が「譲れません」と言えば、
元社長は「じゃあ、こうはどうですか?」と返す。

「それなら間に合うんですか?」と雪が聞く。

妥協しない雪と元社長は、何度もぶつかった。


――そんなやり取りが繰り返され、
いつの間にか、図面は進んでいった。


後日、茹でタコ課長は、
雪に聞いた。
「間に合わないと思ったことはないの?」

雪は冷めた声で答えた。
「間に合わせるのは課長の仕事でしょ。」

一瞬、止まる課長。
それでも、笑った。
やり切った自信にあふれていた。


その奇妙で歪な最強チームが、
『=SoftBank 表参道店』
という「光の渦」を、
法則無視のスピードで具現化していった。


工事も佳境に入り、
誰もが「間に合わない」と焦る中

事件は現場で起きるのだ。

夕方、雪が現場に行くと、
床に貼るタイルカーペットが
大量に積まれていた。

雪のデザインは、

既製品をカットして、
オリジナルに見えて欲しい、
そんな予定だった。

通常は、
カットすると言っても、
歩留まり(ロス)を
出さないようにするのが「常識」だった

でも、雪はあえて、
「5cmを捨てて、カットする」設計をした。

ロスは出るし、
カット手間も増える。

時間がない中の、
『=SoftBank』にできる苦肉のデザインだった。

5cmを捨てれば、
表参道という聖域に相応しい、
かっこいいデザインになるのだ。


しかし、
積まれた箱を確認すると、

大きさが違う。

カット位置が違ってる。

5cm、太い。


(あー、かっこよくならないじゃん)


雪は職人さんたちの手を止め、
茹でタコ課長に言った。

「これ、違うよ。どうにかして。」

課長が動き、
翌朝には、すべて入れ替わっていた。


事件は現場で起きるのだ。
他にもヒリヒリする事件が続出した。


このチーム、全員おかしい、
誰一人まともじゃなかった。

無茶を通す雪。
止めない元社長。
そして——間に合わせる課長。

その下で、内装業者さんも職人さんたちも、
徹夜で動き続けていた。


そして、

父の葬儀の日から、2ヶ月後。

仮囲いが外された。


現れたのは——

『=SoftBank 表参道店』

ガラスと光。
その奥には——泥臭い商売の渦があった。


そういえば、最初は「原宿店」か「神宮前店」という名前だった。でも途中で「表参道店」に変わった。
原宿よりも、表参道の方が世界的に知られているからだ。

つづく

続いては、いよいよ、いよいよ、

2部_#18 孫正義−君は褒めるよ。最高だ



この物語が、今どこかの暗闇で息を潜めている方たちの、そして自分を失いかけている「誰か」の救いになりますように。

この物語は、雪の視点で綴られたノンフィクションです。
登場する全ての方々が、今、それぞれの場所で自分なりの光を見つけていることを願います。

雪の不器用で必死な歩みに何かを感じていただけたら、「スキ」や「フォロー」、「コメント」で応援していただけると、とても心強いです。


『ソフトバンク黎明期・孫正義を唸らせるまで──35年間の全記録 真鍋 雪』



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