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【AIに仕事を奪われるコンサルタント】第13章 仕事の定義が変わる

木暮家具の顧問契約が決まった翌日、佐伯亮介は事務所で一人、契約書を見つめていた。

金額だけを見れば、特別に大きな契約ではない。

だが、佐伯にとっては、それ以上の意味があった。

数週間前、同じ木暮家具でこう言われた。

「この提案、AIに聞いた答えとほとんど同じなんです」

「これなら、毎月の顧問料を払う意味って何なんでしょうか?」

その言葉に、佐伯は打ちのめされた。

自分が十年かけて積み上げてきたものが、AIに置き換えられるような気がした。

しかし今、同じ木暮家具から顧問契約の依頼を受けている。

理由は、前とは違う。

一般論を教えるからではない。
きれいな提案書を作るからでもない。
AIより上手にコピーを書くからでもない。

お客様の声を集め、読み解き、木暮家具だけの言葉に変えるためだった。

佐伯は、ノートを開いた。

そこには、これまで書きためた言葉が並んでいた。

一般論では選ばれない。

答えを持って行くのではなく、答えを聞きに行く。

お客様の声は、会社の当たり前を価値に変える。

本当の強みは、社長の言葉ではなく、お客様の言葉で見つかる。

AIは答えを出す。コンサルタントは、答えの材料を集める。

佐伯は、その一つひとつを読み返した。

どれも、数週間前の自分にはなかった言葉だった。

以前の佐伯は、コンサルタントとは「答えを出す人」だと思っていた。

社長の悩みを聞き、課題を整理する。
ターゲットを決める。
強みを言語化する。
チラシやホームページの改善策を出す。
SNSの発信テーマを考える。

それが仕事だと思っていた。

もちろん、それも必要だ。

だが、AI時代には、それだけでは弱い。

なぜなら、答えらしきものは、AIがすぐに出してくれるからだ。

では、人間のコンサルタントの価値はどこにあるのか。

佐伯は、ようやく分かり始めていた。

答えを出す前に、材料を集めること。

しかも、会社側の材料だけではない。

社長の思い。
商品の特徴。
会社の歴史。
競合情報。

それらも大切だ。

しかし、それだけでは一般論に近づく。

本当に必要なのは、実際に買ったお客様の声だった。

買う前に何で悩んでいたのか。
何でその会社を知ったのか。
買う前に何が不安だったのか。
何が決め手になったのか。
実際に利用してどうだったのか。

その声が集まると、広告の入口が見える。
不安を消す言葉が見える。
選ばれている理由が見える。
社長も気づいていなかった本当の強みが見える。

佐伯は、木暮家具のチラシを見た。

ネットで家具を買って、失敗したくない方へ。

このコピーは、佐伯が思いついたものではない。

お客様の声から見つけたものだ。

だから届いた。

だから問い合わせが入った。

だから慎也は、
「前回とは全然違いますね」
と言った。

佐伯は、ふと自分のホームページを開いた。

プロフィールには、こう書いてあった。

中小企業の強みを言語化し、売れる販促物を作る専門家です。

以前なら、自信を持って掲げていた言葉だった。

だが今は、少し違う気がした。

強みを言語化する。

それ自体は間違っていない。

しかし、問題はその強みをどこから見つけるかだった。

社長の話だけで見つけるのか。
コンサルタントの頭の中で考えるのか。
それとも、お客様の声から見つけるのか。

佐伯は、プロフィール文の下に新しい文章を書いてみた。

お客様の声をもとに、会社が本当に選ばれている理由を見つけ、売れる言葉に変える販促コンサルタントです。

画面の文字を見た瞬間、胸の奥が静かに熱くなった。

これだ。

自分がこれから目指すべき姿は、これだ。

AIと競うコンサルタントではない。
AIに負けないように、速く文章を書くコンサルタントでもない。
AIの使い方だけを教えるコンサルタントでもない。

お客様の声を集め、読み解き、AIにも人間にも活かせる本物の材料に変えるコンサルタント。

佐伯は、ホームページの文章をまだ保存しなかった。

すぐに肩書きを変えるのは簡単だ。

だが、本当に変えるべきなのは、言葉ではなく仕事の中身だった。

その日の午後、佐伯は先輩コンサルタントの久野誠一に会いに行った。

小さな喫茶店で、木暮家具の報告をした。

アンケートが集まったこと。
社長の思い込みが変わったこと。
チラシの反応が出たこと。
顧問契約が決まったこと。

久野は、黙って聞いていた。

話し終えると、ゆっくりコーヒーを置いた。

「少し分かってきたみたいだな」

「はい」

佐伯は素直に答えた。

「AIに勝とうとしていたのが間違いでした」

久野は笑った。

「そうだ。AIは敵じゃない。材料が良ければ、いい仕事をする」

「今回、それを実感しました。お客様の声を入れたら、AIの答えも変わりました」

「当たり前だ。材料が変われば、答えも変わる」

佐伯はうなずいた。

「でも、材料を集めるところは、AIにはできません」

久野は、少し目を細めた。

「そこだ」

佐伯は続けた。

「実際にお客様に聞く。書いてもらう。スタッフに協力してもらう。集まった声を読み解く。社長の思い込みと照らし合わせる。広告に使える言葉に変える。そこに、コンサルタントの仕事があるんだと思いました」

久野は、満足そうにうなずいた。

「お前の仕事の定義が変わったな」

佐伯は、静かに笑った。

「はい。以前は、答えを教えることが仕事だと思っていました」

「今は?」

「答えを見つけるための材料を集めること。そして、その材料を売れる言葉に変えることです」

久野は言った。

「それができるコンサルタントは、AI時代でも必要とされる」

佐伯は、しばらく黙っていた。

そして、ずっと気になっていたことを口にした。

「久野さん、この力をもっと体系的に学びたいです」

「A4のことか」

「はい」

佐伯は、少し身を乗り出した。

「本を読んで、実践して、木暮家具で手応えはありました。でも、まだ分からないことが多いです。どうお願いすればアンケートを集めやすいのか。どの声をどう読み解くのか。広告にどう反映するのか。もっと深く学ばないと、他の会社でも再現できるか不安です」

久野は、うなずいた。

「それなら、『A4』1枚アンケートアドバイザーを目指すといい」

その言葉を聞いた瞬間、佐伯は思わず背筋を伸ばした。

「アドバイザー…ですか?」

「ああ。『A4』1枚アンケートの考え方や、お客様の声を売れる広告へ変える方法を体系的に学べる。全国の成功事例も共有されるし、同じ志を持つ仲間とも出会える。お互いに切磋琢磨しながら成長できる環境だ。そして何より、『A4』1枚アンケートを正式に活用できるようになる」

「正式に…というのは、どういうことですか?」

「『A4』1枚アンケートの考え方を、自分の会社やお店で活用するだけなら問題ない。だが、そのノウハウを使ってコンサルティングをしたり、広告制作などの仕事として提供したりするとなると話は別だ」

佐伯の表情が少し引き締まる。

「その活動が認められているのは、正式に使用許諾を受けたアドバイザーだけなんだ。無断で商業利用すれば、モラルの問題だけでは済まない。知的財産権を侵害する行為にもなりかねない」

「そうだったんですね…。まったく知りませんでした」

「もしこれからも『A4』1枚アンケートを仕事として活用していきたいなら、きちんと資格を取得し、正式な許可を受けたほうがいい。それがお客様にも、自分自身にも胸を張れる一番の方法だ。」

佐伯は、黙って考えた。

以前の自分なら、資格や肩書きに対して少し斜に構えていたかもしれない。

しかし今は違う。

AI時代に、自分がもう一度選ばれるためには、感覚だけでは足りない。

お客様の声を扱う力を、もっと確かなものにしたい。

佐伯は、木暮家具でのことを思い出した。

アンケートを取るだけでも、スタッフは不安がった。
先代社長は最初、懐疑的だった。
集まった声をどう整理するかも、簡単ではなかった。

これを他の会社でも再現するには、もっと学ぶ必要がある。

佐伯は、久野に言った。

「目指してみたいです」

久野は笑った。

「いいんじゃないか。AIに怯えているコンサルタントほど、学ぶ価値がある」

「なぜですか?」

「AIに怯える理由は、自分の提案に本物の材料が足りないと、どこかで分かっているからだ」

佐伯は、その言葉に深く納得した。

AIが怖かったのは、AIが何でもできるからではない。

自分の仕事が一般論に寄っていたからだ。
どの会社にも当てはまる提案をしていたからだ。
社長の話を整理するだけで、お客様の本音まで踏み込めていなかったからだ。

そこを変えれば、AIは脅威ではなくなる。

むしろ、お客様の声を活かすための強力な道具になる。

喫茶店を出る頃、佐伯の中では一つの決意が固まり始めていた。

もっと学ぼう。

お客様の声を集める力を。
読み解く力を。
売れる広告に変える力を。

そして、AI時代に不安を抱える自分のようなコンサルタントに、その価値を伝えられるようになろう。

事務所に戻った佐伯は、ノートを開いた。

新しいページに、こう書いた。

これからの仕事

少し考えてから、その下に書いた。

一般論を教えることではない。
お客様の声を聞き、その会社だけの売れる言葉を見つけること。

さらに、その下にもう一行書いた。

「A4」1枚アンケートアドバイザーを目指す。

佐伯は、その文字を見つめた。

数週間前、AIに仕事を奪われると怯えていた。

今も、不安が完全になくなったわけではない。

だが、進む方向は見えた。

答えを急いで出すのではなく、まず聞く。
一般論を語るのではなく、お客様の声を集める。
AIと競うのではなく、AIが知らない材料を持つ。

それが、佐伯が取り戻し始めた「本当の仕事」だった。

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