#創作大賞2026読むぞ宣言⑧ 千鳥居(せんとりい)のもとで
彼の名前は、玖夜(クヤ)という
これは第一話のサブタイトルです。目がとまりました。きりりと屹立して謎めいた文章です。玖夜(クヤ)という名前も神秘的で、何かが始まりそうな予感がします。
千鳥居(せんとりい)のもとで 桜木愛子さん
『玄夜には会うな』 祖母の日記の最後の頁に、震える指で血で綴られた一行。
母娘三代の祈りと、千年越しの恋──和風ロマンタジー、開幕。
この文章はあらすじから、作者が太字にした始めと終わりの文章だけを引用しました。作者が強調した狙い通り、この二つの文章で本文を読もうと決めました。とても惹かれます。
本文が丁寧で無理がなく、描写が自然です。文章を書くことを仕事にしていた人ではないでしょうか。
会話の楽しさが先へ先へと読ませます。
「明日、京都で会えない? 取材の最終日なんだ。いいお店教えてもらった」
「ごめん、明後日校了」
「校了って、毎回そんなに偉いの?」
「偉いよ。編集部では神様に近い」
「じゃあ神様、抹茶だけでも」
「神様、今かなり荒れてる」
主人公に『どうでもいい会話』と言わせていますが、軽妙なやり取りが読み物として楽しく、恋人との関係性を際立たせています。

途中に挿入される数枚のイラストも雰囲気があります(AIでしょうか)。文章にプラスしてイメージが喚起されます。こういうことが自由にできるのもnoteの良いところですね。
一話を読んだ読者は、二話に必ず連れて行く
そして第一話の最後のシーンが、見事にサブタイトル『彼の名前は、玖夜(クヤ)という』と繋がります。小説はシーンや節、章の終わりに次に繋がる文章を用意することが大事だと思っています。
この作品は見事ですね。次のシーンに牽引する力を備えています。
私も二話まで一気に読んで(読まされて)、このレビューを書いています。
リアルとファンタジーに架ける橋
私も一度だけファンタジーを書いたことがあります。そのときにリアルな現実世界と異世界との関係性や接点を描くことがとても難しかったことを覚えています。小説の中でのリアルとファンタジーの配分や順番もです。
プロットをしっかり作らないと破綻すると思いました。
この作品はリアルとファンタジーに架ける橋がうまく渡されていて、読者が自然に行き来ができるようになっていると感じました。
コメントのやり取りをさせていただいたのですが、この第一話を「五回、書き直した」そうです。確かにそれだけの仕上がりになっています。
これからの展開が楽しみな作品の冒頭を読んだ感想でした。
先の展開に大いに期待します。
