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#創作大賞、読むぞ 宣言② 『母の家出とガールフレンドの憂鬱』青空ちくわさん

毎週レビューを書きます、と宣言しました。ただし長編は第一話だけで冒頭の感想を書こう、と決めていたのですが……
全25話、一気に読んでしまいました。
もうそのことが最高のレビューなのでは、と思います。

母の家出とガールフレンドの憂鬱 青空ちくわさん
青空さんは、マイナビ×note「 #想像していなかった未来」グランプリ受賞などで認められている実力派です。

「いらっしゃい。この小説、面白いですよ」

そう言われたようなプロローグです。

突然の母の家出。それだけならよくありますが、まったく慌てない父。なぜでしょう? その理由が語られる内に、少々複雑な家庭の事情と親子の関係性が自然に説明され、主人公を含めた紹介が済んでいるのです。

小説(ストーリー)を書き慣れている人の筆致です。あるいは頭の中で物語を組み立てる作業を繰り返していないと、こうはいきません。

主人公と取り巻く人々との瑞々しい交流

最初は、新しい父親との微妙な距離感、踏み込めないが認めている、その関係性が良いなあと思いました。この後、どんな展開になっていくのだろう。興味を持たせるには十分な導入でした。

しかしそれは父親だけではなく、恋人やクラスメートとの関係にも表れていて、一人一人の登場人物を大切にしていることがわかります。それぞれに屈託を抱えていそうな人物設定が先を読ませます。

ラストまでしっかり働いている「小さな謎」

「タルミア」という母親のメモに残された言葉も、なんのことだろうと気になります。少々自由すぎる印象の母親の、主人公への気持ちがじわりと伝わってくる最後のエピソードに繋がるようになっています。

安定した文章力と巧みな描写

出足から、とてもスムーズに小説の世界に入り込めたのは、母の家出という事件性と、それを受け止める夫の変わったキャラクターへの興味のせいだけではなく、青空さんの手慣れた書きっぷりによるものだと思います。

母さんのいないリビングに、カレー特有のスパイシーな香りが、存在を際立たせている。今日のメニューがカレーで良かったと、僕は静かに感じていた。

なんでカレーで良かったのかは書いてありません。でも読者にはスパイシーなカレーの香りと一緒に、そのリビングの情景がありありと浮かんでくる。「僕」の気持ちにも自然に寄り添えます。上手いなあと思いました。

副交感神経を優位にしてくれる小説

本当は何か大きな事件・事故が起きるのではと想像をしていたのです。主人公を奈落に突き落としたり、ひどい挫折だったり、運命を否応なく変えるような。
でもこの小説の目的やテーマは違いましたね。「母の家出とガールフレンドの憂鬱は、日常の起伏を丁寧に綴った小説でした。それが気持ちを温かく、軽くしてくれました。

ささくれた神経を休めてくれる、ハーブティーを飲んでいるような読み味。
そう、副交感神経を優位にしてくれる小説だなあと思いました。

作者を助けてくれるキャラクターたち

そしてこの物語が、ひとつの壮大なプロローグなのではないかとも感じます。登場人物一人ひとりがこれからの人生をどう生きていくのか。様々な節目や事件に遭遇して、戸惑い、喜び、成長していく様が見てみたいと思いました。

青空さんが創ったキャラクターは、書き終えた後でも、青空さんの中で息づいている
勝手な想像ですが、そうではありませんか?
同じタイトル、同じ名前ではなくても、彼ら、彼女たちを次の作品に投入すれば、ストーリーの深いところまで作者を連れて行ってくれる。そして小説の完成度を高める手助けをしてくれるのではないでしょうか。

※『仕上がっていく夫と試される妻』

青空さんは、たくさんの作品を、note創作大賞にエントリーしていて、こちらもエッセイ部門の応募作です。私は青空さんのエッセイが以前から好きで、タイトルに惹かれて読んだら、やはり面白くて。
迷ったのですが、先に読んだ長編をレビューさせていただきました。

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