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倉庫跡地,圧巻のインスタレーション-三島喜美代展@ART FACTORY城南島(大田区城南島)

■都内の「非日常」を求めて


 慣れ親しんだ景色、空気感が一変し、自分が処理できる量を超える情報がわっと流れ込んでくるのが旅の醍醐味だ。そして、それは移動距離に必ずしも比例しないのも面白いところだ。

 大田区城南島のART FACTORY城南島を再訪した。ここには、三島喜美代の巨大なインスタレーションが常設展示されている。

元倉庫の空間を使った、インスタレーション

 東横インが運営しており、事前予約のうえ、無料で鑑賞できる。入場料を取るべきなのでは?と、申し訳なく思えるほど充実した空間だ。

 
ART FACTORY城南島は株式会社東横インが社会貢献活動の一環として提供する芸術・文化振興のための施設です。
大田区城南島の倉庫建物を再利用した館内にはアート作品の鑑賞スペースやアーティストが作品制作を行うスタジオ(アトリエ)があります。
どなたでも入場無料でご見学いただけますので、ぜひ気軽にご来場いただきアートを体感してください。

「ART FACTORY城南島について」
※入館は事前予約が必要
ART FACTORY城南島。入口にも三島作品が展示
付近のコンテナ置き場。都心と場のスケール感が違う

■「割れる印刷物」で不安と危機感を表現

 1932年生まれの三島喜美代は、70年代に絵画から立体作品に移行した。

 わたしにとっては「ゴミ」のアーティストだという認識がある。新聞紙やチラシ、ビールの瓶やコーラの空き缶といったリアルな立体作品が「陶」であると知って驚愕したのが出合いだ。

 「作品リスト/解説」によると、コラージュの材料としていた新聞紙が、アトリエの床に丸まっているのを見たことがきっかけになったという。

読み終えた新聞や雑誌は無用となり「ゴミ」となることに着目し、割れてしまう「陶」に置き換えることで脆さ、不安感、危機感を表し、「割れる印刷物」をつくりました。

作品リスト/解説(現地で配布) より

 展示室は大きく2つに分かれており、まず、小型の立体作品とインスタレーション「wreck of Time 90」、絵画を鑑賞する。

「Box Charcoal-N13」 印刷したセラミックに手採色
曲がり、剥げた段ボールもリアルに再現
「wreck of Time 90」火山灰、FRP、陶、鉄、木、油彩

 ■うずたかく積まれた「古新聞」の迷路

 来訪者は次に、「古新聞の束」(印刷されたポリエステル)がうずたかく積みあがった「迷路」を進む。

「Newspaper08」印刷したポリエステル
インスタレーション自体が巨大な箱になっており、外には本物の新聞紙が貼られている
暗闇を照らす裸電球にも存在感がある

 あまりにも高く積まれていることもあってか、圧迫感はない。そして目に入る圧倒的な量の「新聞紙」と裸電球に照らされた通路は、さまざまな記憶を呼び起こす。

 わたしの場合は、昔は生活の中にたしかにあった「新聞紙」や、定期的な「古紙回収」、そして、駆け出し編集者だった頃に「おつかい」に行った神田神保町の古書店の書棚や、社内で「図書館」と呼ばれていた書庫のことなどが次々と浮かんできた。

■巨大インスタレーション

 迷路を抜けると視界が開け、倉庫跡地の巨大な展示室が目の前に開ける。

設置のらせん階段を昇って全体を見渡す

■ひとり、作品のなかで対話できる贅沢

 平日の昼間を選んだ甲斐あってか、今回は最後まで、ひとりで鑑賞することとなった。

 巨大な作品、それも、静かなメッセージを内包した作品のなかでひとり自由に彷徨う、それは本当に贅沢な時間だ。

豊島のかつての不法投棄問題にインスピレーションを得た「Work14-S」
「Work 14-S」 豊島の廃棄物のスラグ、鉄、木、油彩
日常に溢れる情報は脆い
「Fossilized Information 88」陶、鉄、木、新聞、車輪付き金属棚

■余韻を楽しむなら屋上へ

 建物内にはアーティストたちの制作現場もあり、三島作品以外の若手アーティストの作品鑑賞もできる。エレベーターで屋上への移動も自由だ。時間があれば、屋上で風に吹かれてみるのもいい。

 羽田空港に近く、目の前を飛行機が飛んでいく。

 アクセスは、わたしの場合、まず大森駅まで行き、「森32」のバスに30分ほど揺られて「城南島2丁目」で下車した(バス停からそれほど歩かず着く)。この路線は太田市場の中を通り抜け、市場で働く人々の足にもなっているようだ。広大な敷地をぐんぐん進み、行き・帰りとも、市場内の社会見学ツアーに参加した気分にもなれる。

 ただ、この路線は本数が少ない。施設受付のスタッフのみならず、バスの運転手さんからも「帰りの時間をよく確かめて」と言われたのが印象的だった。この「まず、帰りの交通手段を確保」というのも、なんだか「旅」っぽい。

大森駅のバス停。「森32」に乗車

 物理的には生活エリアと同じ東京23区内にいながら、直島と地中美術館を訪れているときのようなモードに自分が入っている、その感じを愉しんだ。いやいやもともと、その感じを味わいたくて、再訪したのだった。

 猛暑、青空、元倉庫の巨大空間と、マスメディアや環境問題へのメッセージも孕んだ作品たち。夏の日のほんの数時間なのに、なんだかとても遠くに行ってきた気がする。幸せだ。

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