VOL.9《null²する音楽会》8/21@サントリーホール
2025年8月21日、サントリーホール。

演出・監修:落合陽一
指揮:広上淳一[フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)]
「映像の奏者」:WOW
能楽シテ方:馬野正基、狂言方:野村万蔵 野村万之丞 野村拳之介 野村眞之介
囃子方:笛/杉信太朗 小鼓/清水和音 大鼓/大倉慶乃助 太鼓/澤田晃良(東京公演)
地謡:浅見慈一 北浪貴裕 長山桂三 小早川康充(東京公演)
進行アシスタント:江原陽子

null2する音楽会。期せずしてなぜか、とてもいい席がとれた。
落合陽一氏の作品は、なるべく足を運ぶようにしている……のだけれど、写真を撮ったまま、ブログにできずに終わることが多い。
今回はそもそも会場にカメラを持って行かず、スマホでようすを押さえただけなのだけど、せめて記録には残すべく、簡単にまとめておこうと思う。

null2。
その世界観は、万博のnull2パビリオンから、もちろんつながっている。


「ヌル=無」
■ VOL.9《null²する音楽会》の特徴
●万博へ、そして万博から
2018年より続く落合陽一×日本フィルプロジェクト。これまでの取組の成果は落合陽一パビリオン「null²」の世界観に繋がっています。そしてVOL.9公演は、落合陽一テーマ事業プロデューサーによる「シグネチャーパビリオン」《null²》をテーマとした音楽会となりました。
●テクノロジーで新たな「生音楽の喜び」
「テクノロジーとは、私たちが失いかけた自然との関係を再び結び直し、再統合を図るための媒体に他ならない」。(落合陽一ステートメントより)
この音楽会では、オーケストラならではの生の音楽の「喜び」に、生成AIを用いた演出で、音楽の楽しみ方に新たな光をあてていきます。今年は、映像や風景の描写を意識した名作を選曲。自然と計算機、人間と生成AI、聴覚と視覚の隔たりと融合を描きだします。
●日本探訪企画「承前啓後継往開来」、第3弾は「能楽」がテーマ
藤倉大への新作委嘱第3弾では、能楽シテ方と狂言方、囃子方、地謡を迎え、古典作品2作品を再解釈します。水をテーマとした「田植」(狂言)、鏡をテーマとした「野守」(能)の抜粋に、オーケストラのサウンドと映像が寄り添う新作を初演します。
●あらゆる人々へ、地域へ、世代へ、世界へーオーケストラの可能性を追求
東京公演では今年も、聴覚障害のある方への振動を用いたデバイス席、子供料金やダイバーシティ割(障害者手帳保持者割引)、託児サービスなどを用意します。
null=何もない、という意のコンピューター用語。
そこから転じて、落合氏は、カタカナ半角の「ヌル」=無、を充てた。
コンサートホール隣の部屋には、こんなインスタレーション。

超高速で点滅する、般若心経。

よーく見ると、

「無」の文字が「ヌル(半角)」に置き換えられている。
ヌルはさらに転じて、「ぬるぬる」となる。

この文字の感じが、null2の二乗の部分を表現しているふうだ。おそらく、すごく時間をかけてデザインされたのだろう。
null2=空白であり、新しい価値が生まれる可能性の場。
音楽を全身で体感する
さきの説明にもあったが、本公演は、聴覚障碍者の方々が、全身で音楽を体感できる取り組みとともに、毎年開催されている。
そのデバイスを体験できるコーナーもあった。
こんなふうに、抱えて持つ。

かなりの間並び、やっと順番が巡ってきた。
これは、自分で持ったところ(↓)。音が振動となってデバイスに伝わってきて、その高低によって色が変わる。


デバイスの質感もよく、軽い。安心しながら音の世界に身をゆだねることができそうだ。
こんな、衣類タイプもあった。



演目
舞台は、こんな感じ。
中央の画面には、会場の情報を絵に生成するAIが、ひたすらふしぎな映像を発信しつづける。いかにも生成AIの画像、というものも時折出てきて、なんだか可笑しかった。これも、すごいことだ。
その両隣には、向かって右に生きた松、左に枯らした松が対称となっている。

演目は以下で、観客はクラシックと能の世界を行き来する。節目節目で、落合氏自身が登場して語りを入れる。
團伊玖磨:祝典行進曲
武満徹:訓練と休息の音楽 −『ホゼー・トレス』より−
林光:国盗り物語
菅野祐悟:軍師官兵衛
久石譲:天空の城ラピュタ
坂本龍一:THE LAST EMPEROR
藤倉大:「Water Mirror」 [承前啓後継往開来シリーズIII、委嘱世界初演]
レスピーギ:ローマの松
※映像演出付
能の演目のなかで、「ぬるぬる」という言葉をアドリブで入れる、が落合氏からのオファーだったそうで、その場面では笑いと拍手が起きた。
落合ワールド
鑑賞を終え……大昔にオンラインサロンに入っていたことがあり、そのときの懐かしい感じを覚えた。本当はそこから、きちんと言語化してアウトプットしなければならないのだけど。

生成AIの驀進で、物質と情報、リアルとバーチャルの境界は、ますます溶けてなくなっている今日このごろ。
それが、ますます速まってほしいと願いつつ。
