軒下図書館- 上質な異文化体験,[暮らすような旅]を目指して
少し前に、西粟倉村(岡山県)の、卵屋さんの話を書いた。
今回の物語の舞台も、西粟倉村。そもそものきっかけになった、小さな古民家B&Bの話だ。

わたしにとってのアートの師匠で、ご本人もアーティストである友人から、「クラウドファンディングの返礼として得た、岡山の山間部のB&Bでの宿泊」の誘いをいただいたのは、ずいぶん前の話だ。
英国から帰国したオーナーが経営するその場所には世界から旅人が集い、コミュニケーションは主に英語で……面白い!
旅立つ少し前に、さきのブログでも紹介した、この動画のリンクが送られてきた。西粟倉村の魅力的なコミュニティと、行政が持つ危機感とやる気、に感動し、すっかり地域のファンになった。
満開の桜を見ながら
岡山の市街地から西粟倉村へのドライブは、桜並木とともに進んだ。



山間に入ると、季節が逆行するように、桜はどんどん、蕾へと近くなっていった。
フランスパン工房&ベジタリアンカフェ「Hugo et Leo」
併設のベーカリー&カフェ「Hugo et Leo」のフランス国旗が、軒下図書館の目印となる。

2010年11月にオープン、店舗は古い納屋を改装し、地域の資源も活用して作られたという。店主はフランス出身のOlivierさん。Hiromiさんのパートナーだ。
この「Hugo et Leo」、「お子さんの名前?」などと当たらない推理をしていたのだが、実は、フランスの文豪ユーゴと、ルネサンス期の天才ダヴィンチからの命名だった。


Olivierさんはヨガの実践者でもあり、どこか哲学者のような雰囲気をたたえた方だ。
身体と心の調和の大切さをパン作りにも反映させ、添加物を使わず、オーガニックの強力粉やスペルト小麦、自然塩、西粟倉の源流水を使ったパンを焼く。
結果、昼食、夕食、翌朝の朝食と、すばらしいヴェジタリアンメニューを堪能した(ヴィーガンメニューにもできる)。


ランチは田園を眺めながら
屋外でもOK、というご厚意に甘え、田園を望むウッドデッキに、ランチのセッティングをしていただいた。


カフェと母屋を、こんなふうに望む。

庭には近所の子どもたちが集って、楽しそうに遊んでいた。
西粟倉村の魅力的な移住プランは、海外からの移住者も呼び込んでいる。滞在中にアクティビティで「英語で受けるヨガレッスン」を受講してみたのだけど、先生は米国人の夫と移住してきた方で、今、西粟倉村で子育ての最中だと語っていた。
いろいろな国の子どもたち。飛び交う言葉は、やはり英語だ。


「軒下図書館」の歴史
B&Bの名前がなぜ「図書館」なのか。それには理由がある。
私の祖母、白岩よしは生前、岡山県英田郡西粟倉村の自宅の一室を「軒下図書館」として地元の子供達に開放しておりました。その祖母が亡くなり10年以上空き家になっていたこの西粟倉の家に、2009年フランス人の旦那とその当 時3歳と0歳の子供達を連れて、ロンドンから移住してきました(私にとっては半分Uターン、半分Iターンです)。
私の教育に寛大に投資してくれた祖母への感謝の気持ちを込めて、私達の事業を「軒下図書館」とよぶことにしました。2010年5月に本宅2階にある図書室は語学スクールの教室として、また8月には「軒下図書館B&B」宿泊施設の憩いの場として蘇りました。そして、敷地内にある納屋は同年11月にフランスパン工房「ユゴー・エ・レオ」として新しい出発を切りました。
公共の図書館がなく、子どもたちが本に触れる機会も限られていた時代に、自宅の軒下に本棚を設け、近所の子どもたちに本を貸し出していた―ここは、かつて本当の「図書館」だった。
地域の子どもたちの貴重な学びと交流のが、時代を経て、国際的な交流の拠点に。

同じ名前で受け継がれているところに、尊敬と愛を感じる。

そして図書館は、今でも図書室として健在だ。


Hiromiさんのお母様にも挨拶させていただき、なんだか、旧くから知っている友人か、親戚の家にでもお邪魔したかのような気分になった。
温泉とヴェジタリアンディナー
B&Bでの生活は、基本は思い思いに過ごす。
オプショナルのアクティビティに参加したり、近くの温泉に行ったりしながら、食事の時間は「Hugo et Leo」で顔を合わせる。この場での宿泊者同士の交流も、滞在の醍醐味だ。

温泉(村の公衆浴場)は、我々も車で行って、すっかりくつろいだ。
夕食の時間に戻ってみれば、隣の部屋に宿泊予定だというフランス人の女性は、まだ訪れていなかった。遅く到着してランチ時間が遅く、さらには温泉が気に入ってかなりのんびり過ごしたので、テーブルを囲むのは翌朝だろうとのことだ。


ビーンズとチーズのラザニアはとてもボリュームがあった。わたしは普段そんなに量を食べるほうではないけれど、気が付いたら完食していた。
朝食を抜いていた、というのもあるかもしれないけれど、普段わたしの小食に合わせてくれている友人がびっくりするほどだった。それくらい、おいしい。
そんなとき、着物の羽織を上着として素敵に着こなした女性が、顔をのぞかせた。噂の、フランスからのゲストだ。
とてもフレンドリーな方で、「温泉が気に入ったの?」的な会話を交わした。続きは朝食の席で。
図書室から、次の予約を問い合わせ

気持ちがたかぶっていたせいか、なかなか寝付けず、夜中に起き出して図書室に入り、ハーブティーをいただきながら、撮った写真の整理をしていた。静けさが心地いい。

「ここ、また来てみたいな。ワーケーションとして」。ふと思った。
折しも来月、その友人と岡山でのアートのワークショップの約束がある。旅程に合体させて、3泊ほどできないか、メールで問い合わせてみることにした。自分の学習のためにも、英語で(後日、快諾の丁寧なレスポンスをいただいた)。
そんなふうに、軒下図書館での夜は更けていった。
目も愉しい、うるわしの朝食
朝。6時に、村の有線放送?のチャイムが鳴るころまでには少しだけ眠ることができた。外には靄がかかっている。




朝の食卓。

グリーンスムージー。

オートミールとフルーツ。

お好みでいろいろ入れたり、そのままつまんだり。


ベジタリアン朝食メニュー(例)
自家製パン(オーガニック強力粉使用)各種
グリーンスムージー、スクランブルエッグ、
カマンベールチーズハニーロースト、
自家製グラノーラ & ヨーグルト
エスプレッソドリンク各種、紅茶(イングリッシュレックファスト、アールグレー)または、オーガニックハーブティー各種
手をかけた品々による朝食。まず、こんなにも目が愉しい。


フランスからやってきた「発酵の先生」
席に全員がそろった。フランスからのゲストは、聞いてみれば「発酵」がご専門の、大学の先生だった。
Hiromiさんはフランス語も話し、友人は学習中。フランス語になると、わたしは微笑むしかないのだけど、会話は英仏ちゃんぽんで進む。彼女が静けさを好み、自己主張の強すぎる人々に辟易とすることもあり、日本の文化と豊かな自然に魅せられてもいる、ということを知った。
彼女は、Googleマップでカントリーサイドの魅力的な宿を探す、という方法で、軒下~を知り、コンタクトしてきたそうだ。

話は非常に盛り上がり、Instagramでもつながった。そして我々が去るときには見送りにまで来てくださって、別れぎわに記念撮影をした。
写真は、なんだか20年来の友人たちのように撮れていた。

「関係人口」になる
「関係人口」という言葉を、大昔にサステイナブル系のテーマでの仕事をしていた頃に知った。
Google検索すると、「地域に住んでいないけれど、その地域に関心を持ち、地域と多様に関わる人々」と出てくる。

わたしは、自分自身が血縁者との縁が薄いし、ルーツを自ら刈り取ってきているので、根があるのっていいなと感じる。ただ悲観はしておらず、根は自分で作ればいいと思う。
実際、生活に時間の余裕が出てきて以来、(いろいろなコミュニティに所属してみたりして)、そうしている。
そこは、かけがえのない場所ではあるけれど、依存しすぎる必要はない。ふるさととは、思い出し、心のよりどころとなる場所だから。

この場所、この地域に、「関係」しつづけることができればいいな。
そんなことを思った。



