✨ Ep4/a ここにいるよ(一般向)
この物語で探したい "こえにならないことば"
「ひとりじゃないよ」「ここにいるよ」
ここにいるよ
1. はじめてのであい
ゆめちゃんが3歳になったばかりの春の日、ひかりちゃんとであいました。
お庭でひとりで遊んでいた時、桜の花びらがひらりと舞い落ちてきて、その光の中に、ひかりちゃんが立っていました。
「こんにちは」
ひかりちゃんは、やわらかな光に包まれた女の子でした。髪は金色で、笑顔はお日さまみたいに温かくて、手を繋ぐとふわふわした感触がありました。
「あなたは、だあれ?」 「ひかりよ。ゆめちゃんと一緒に遊びに来たの」
それから、ゆめちゃんとひかりちゃんは毎日一緒に過ごすようになりました。
お母さんには見えないみたいでしたが、ゆめちゃんにははっきりと見えました。ひかりちゃんは、いつもそこにいて、いつも微笑んでいました。
2. ふたりの時間
ひかりちゃんと過ごす時間は、魔法みたいでした。
お部屋でお茶会をする時、ひかりちゃんは小さなカップを上手に持って、「おいしいね」と言います。
お庭でかくれんぼをする時、ひかりちゃんは雲の陰に隠れたり、お花の後ろに隠れたりします。
夜、ベッドで怖い夢を見そうになった時、ひかりちゃんが手を握ってくれると、安心して眠ることができました。
「ひかりちゃん、ずっと一緒にいてね」 「ずっと一緒だよ、ゆめちゃん」
ひかりちゃんは、やさしく答えてくれました。
3. だれにも見えない
お母さんは、時々心配そうにゆめちゃんを見ていました。
「ゆめちゃん、だれと話してるの?」 「ひかりちゃんとお話ししてるの」 「ひかりちゃん?」
お母さんには、ひかりちゃんが見えませんでした。でも、ゆめちゃんが幸せそうなので、やさしく見守ってくれました。
幼稚園に通うようになっても、ひかりちゃんは一緒についてきました。お友達と遊んでいる時も、ひかりちゃんはそっと近くにいて、困った時には助けてくれました。
「ゆめちゃんには、ひかりちゃんっていうお友達がいるんだってね」 先生が、やさしく言いました。 「うん。ひかりちゃんは、とてもやさしいの」
先生は微笑んで、ゆめちゃんの頭を撫でてくれました。
4. 少しずつ変わる時
ゆめちゃんが5歳になった頃、不思議なことが起こり始めました。
いつものようにひかりちゃんと遊んでいると、時々、ひかりちゃんの姿がぼんやりと薄くなることがありました。
「あれ?ひかりちゃん?」 「ここにいるわよ」
声は聞こえるのですが、姿が見えにくくなるのです。でも、すぐにまた、はっきりと見えるようになりました。
最初は気にしていませんでした。きっと、お日さまの光が強すぎるのでしょう。
でも、その回数はだんだん増えてきました。
5. どこにいるの、ひかりちゃん
ある朝、目を覚ますと、ひかりちゃんがいませんでした。
「ひかりちゃん?ひかりちゃん?」
ゆめちゃんは、お部屋中を探しました。でも、どこにもいません。
お庭にも、幼稚園にも、ひかりちゃんはいませんでした。
その日の夜、ゆめちゃんは泣きながらお母さんに言いました。
「ひかりちゃんが、いなくなっちゃった」
お母さんは、ゆめちゃんを抱きしめました。
「そうなの...寂しいね」 「どこに行っちゃったの?」
お母さんは、困ったような顔をしました。どう答えたらいいのか、わからなかったのです。
6. 探している日々
次の日も、その次の日も、ひかりちゃんは現れませんでした。
時々、風が頬を撫でていく時、ひかりちゃんがさわってくれたような気がしました。でも、振り返っても、そこにはだれもいませんでした。
幼稚園で、新しいお友達のさくらちゃんが話しかけてくれました。
「ゆめちゃん、一緒に遊ぼう」
さくらちゃんは、とても優しい子でした。でも、ゆめちゃんの心は、ひかりちゃんのことで頭がいっぱいでした。
「ひかりちゃんが、どこかに行っちゃったの」 「ひかりちゃん?」
さくらちゃんは、ひかりちゃんのことをしりませんでした。
ゆめちゃんはお母さんに聞きました。 「ひかりちゃんは、ゆめちゃんのことが嫌いになったの?もう一緒にあそんでくれないの?」
7. 小さなしるし
ある日の午後、ゆめちゃんがひとりでお庭にいると、桜の花びらが一枚、ひらりと舞い落ちてきました。
それは、ひかりちゃんと初めて出会った時と同じでした。
花びらを拾い上げると、なぜだか心が温かくなりました。まるで、ひかりちゃんが「ここにいるよ」と言っているようにゆめちゃんには思えました。
その夜、ベッドに入ると、少し怖い夢が始まりました。でも、そっと風が頬を撫でていったので、ゆめちゃんは安心して眠ることができました。
「ひかりちゃん...?」
返事はありませんでした。でも、ゆめちゃんには分かりました。ひかりちゃんは、ちゃんとそこにいるのです。
8. 新しい友達
さくらちゃんと仲良くなったゆめちゃんは、一緒に遊ぶことが多くなりました。
ブランコに乗りながら、ゆめちゃんはさくらちゃんに話しました。
「私ね、ひかりちゃんっていう友達がいるの」 「どんな子なの?」 「とってもやさしくて、いつも一緒にいてくれたの。でも、最近遊んでくれないの」
さくらちゃんは、真剣に聞いてくれました。
「でもね、時々感じるの。風とか、光とか、温かい気持ちとかで」 「そうかぁ。きっと、みえないだけなんだね」
さくらちゃんの言葉を聞いて、ゆめちゃんの心がぱあっと明るくなりました。
9. 気づいた時
その日の帰り道、ゆめちゃんとさくらちゃんが手を繋いで歩いていると、やわらかな風が吹いてきました。
その風は、とても心地よくて、まるでひかりちゃんの手が、ゆめちゃんとさくらちゃんを包んでいるみたいでした。
「あ」
ゆめちゃんは、立ち止まりました。
「どうしたの?」さくらちゃんが聞きました。
「ひかりちゃんがいる。風の中に。」
ゆめちゃんは、この間さくらちゃんが言ってくれたことをやっと理解しました。
ひかりちゃんは、いなくなったのではありませんでした。見えなくなっただけでした。でも、ちゃんとそこにいるのです。
いまでもいつも一緒にいるのです。
10. 大きくなること
その夜、ゆめちゃんはお母さんに言いました。
「お母さん、ひかりちゃんはいなくなったんじゃないの」 「そうなの?」 「うん。見えないけれど、ちゃんといるの。風とか、光とか、私の心の中とかに」
お母さんは、ゆめちゃんを抱きしめました。
「ゆめちゃんは、大きくなってお姉さんになったのね」 「お姉さんになるって、友達がいなくなることじゃないのね」 「そうよ。大きくなって、友達との新しい関係を見つけることなのよ」
ゆめちゃんは、ほっとしました。ひかりちゃんは、いまでも友達なのです。ただ、その形が変わっただけなのです。
11. いつも一緒
それからのゆめちゃんは、とても幸せでした。
さくらちゃんと遊んでいる時も、ひかりちゃんの存在を感じることができました。風が吹くと、「楽しそうね」と言っているみたいでした。
困った時には、心の奥で、ひかりちゃんの声が聞こえました。「だいじょうぶよ」と。
新しいお友達ができた時には、温かい光が差して、「よかったね」と祝福してくれているみたいでした。
ひかりちゃんは、いつも一緒にいるのです。見えないけれど、感じることができるのです。
12. みんなの心の中に
ある日、ゆめちゃんは気づきました。
さくらちゃんも、時々空を見上げて、にっこりと笑うことがありました。きっと、さくらちゃんにも、見えない友達がいるのでしょう。
幼稚園のみんなも、それぞれに特別な友達がいるのかもしれません。見える友達も、見えない友達も。
「ひかりちゃん」その夜、ゆめちゃんは心の中で話しかけました。
「私、わかったよ。大きくなるって、友達を失うことじゃないんだね」
風が、やさしく窓を揺らしました。
「新しい友達ができても、前からの友達も、一緒にいてくれるんだね」
月の光が、部屋をやわらかく照らしました。
「みんな違う形で友達がいて、みんな大切な存在なんだね」
13. ずっと続く友情
ゆめちゃんが6歳になった春、桜の花が咲きました。
ひかりちゃんと初めて出会った場所で、ゆめちゃんはそっと手を合わせました。
「ひかりちゃん、ありがとう。いつも一緒にいてくれて」
桜の花びらが、ひらりと舞い落ちました。それは、ひかりちゃんからの返事みたいでした。
「私、もう大きくなったから、ひかりちゃんが見えなくても大丈夫」
風が、やさしく頬を撫でていきました。
「でも、ずっとずっと友達だよ。見えなくなってても、感じている」
お庭で、さくらちゃんが誰かと一緒に手を振っています。ゆめちゃんは、駆けていきました。
さくらちゃんは隣の子の手を握りながら言いました。
「この子はようこちゃん。ずっと前からのさくらのお友達なの。一緒に遊ぼ。」
さくらちゃんと、ひかりちゃん。どちらも大切な、かけがえのない友達です。
見えていても、見えなくなっても、友達はずっと一緒にいるのです。
14. 心の中の光
今日も、ゆめちゃんの心の中で、ひかりちゃんは微笑んでいます。
大きくなることは、何かを失うことではありませんでした。新しい関係を築くことでした。
見える友達と、見えない友達。現実の友達と、心の友達。どちらも、ゆめちゃんの人生を豊かにしてくれる、大切な存在です。
そして、ゆめちゃんは知っています。これからどんなに大きくなっても、どんなに遠いところに行っても、ひかりちゃんはいつも一緒にいてくれることを。
風の音に、光の温かさに、心の奥の安らぎに。
見えないけれど、確かに「ここにいる」友達として。
おわり
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📚 この物語は、年齢に合わせて3つのバージョンをご用意しています
対象 | 特徴 |表記
🌿【幼児向け】3〜5歳 | ひらがな中心・読み聞かせに最適 | Ep4/c
🌸【低学年向け】5〜9歳 | 小学校低学年の一人読みに | Ep4/b
🌟【一般向け】9歳〜おとな | 深い感動をお届け | Ep4/a
👆 現在お読みいただいているのは【一般向】バージョンです。
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→ Ep4/b(低学年向) | Ep4/c(幼児向)
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