青いかき氷|しらたま編集部
スプーンを口に運ぶたび、舌が青く染まっていく。
夏祭りの屋台で買った青いかき氷。ブルーハワイ味だと店のおじさんは言ったけれど、ハワイがどんな味なのか、私は知らない。
この青い甘さを口にすると、私はあの夏を思い出す。
「青だけは絶対やめた方がいい」
彼はそう言って笑った。
「なんで?」
「舌が真っ青になるから。写真映えしないよ」
でも私は青いかき氷を選んだ。意地を張った。
彼の言う通り、私の舌は真っ青になった。彼は「ほらね」と笑いながら、青い舌を出している私の写真を撮った。
あの頃の私たちは、そんな小さなことで笑い合った。
私たちにとってはちっとも小さなことではなかった。
今年の夏祭り、私は一人で来ている。
去年も一人だった。
あの夏はいつのことだったろう。
青いかき氷は、私に彼を思い出させる。
甘いのに苦さが舌に残る。
だから今まで避けていた。
けれど今日は、無性に青いかき氷が食べたくなった。
屋台の前で「ブルーハワイください」と注文している自分がいた。
そのかき氷が手の中にある。
彼がいない夏祭り。一人で食べる青いかき氷。
冷たさが歯にしみる。頭がきーんと痛くなる。
でも、耐えられないこともない。
いつの間にか青い氷が溶けて、シロップが底に溜まっている。
「青い舌の君は、可愛いって知ってる?」
風に混じって、彼の声が聞こえた。でも振り返っても、誰もいない。
風が運んでくるのは、祭囃子と人々のざわめき。
私にはわかっている。青いかき氷は、誰かのものじゃない。今の私のもの。
あの夏の日は消え去ったわけじゃない。私の中で息づいている。
私は、青く染まった舌で「ありがとう」と呟いた。
夏祭りの灯りが、青いシロップの中で小さく踊っている。
私はそれを一気に飲み干した。
少しだけハワイの味が分かった気がした。
