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揺らがない|風まかせ文芸部

父は揺らがない人だった。

怒鳴らない。泣かない。迷っている顔を見たことがない。仕事も、判断も、いつも静かに決めていた。
そういう人だと思っていた。

母の葬儀の夜、居間で父を見かけた。遺影を前に、黙って座っている背中だけ見えた。

気配を消して通り過ぎようとして、私は足が止まった。

父の肩が、かすかに揺れていた。
私は何も言わずに自分の部屋に戻った。

翌朝、父はいつも通りの父だった。

その父を看とった夜、母の遺影に話しかける私の声はいつもと少しだけ違っていた。

「私、お父さんの娘だからさ」





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お題:揺らぎ

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