揺らがない|風まかせ文芸部
父は揺らがない人だった。
怒鳴らない。泣かない。迷っている顔を見たことがない。仕事も、判断も、いつも静かに決めていた。
そういう人だと思っていた。
母の葬儀の夜、居間で父を見かけた。遺影を前に、黙って座っている背中だけ見えた。
気配を消して通り過ぎようとして、私は足が止まった。
父の肩が、かすかに揺れていた。
私は何も言わずに自分の部屋に戻った。
翌朝、父はいつも通りの父だった。
その父を看とった夜、母の遺影に話しかける私の声はいつもと少しだけ違っていた。
「私、お父さんの娘だからさ」
iさんの風まかせ文芸部に参加します。
お題:揺らぎ
#風まかせ文芸部
#揺らぎ #揺らがない #ショートショート #短編小説 #創作 #父 #家族 #親子
#共創 #AI小説
