HRBP9 マトリクス3段目:To-Beのディスカッションを行い目指す姿を一緒に考え実行する
HRBP9マトリクスの3段目では、どのようなアクションを取るべきか?
HRBP9マトリクスの最上段である3段目の各ポジションごとの具体的なアクションや注意点を整理しました。ご自身の立場や周囲の状況を思い浮かべながら、読み進めてみてください。
なお、HRBP9マトリクスの基本概念について理解を深めたい方は、以下の記事をご参照ください。
では、いきましょう!
3段目⇒対応するエリアLv.3 ~To-Beのディスカッションを行い目指す姿を一緒に考え実行する~とは
3段目については、To-Be(未来)に向けたコミュニケーションをクライアントと進めているフェーズです。
1段目、2段目と同様に組織文化に沿いながらアプローチを変えていくことを整理いただければと考えておりますが、3段目のアプローチについては、全社の動きとして実行されるタレントマネジメントやサクセッションプランの作成サポートや、会社主導の異動、特定年齢による対応などの予期できるイベントのサポートも含まれます。
そして、To-Be(未来)に向けたコミュニケーションを高度なレベルで実行し、ビジネスに貢献できるのかが組織文化のレベルの理解よって変わるという点をイメージしながら読み進めていただけると嬉しいです。
※組織文化(横軸)の整理
Lv.1: “Artifact” 見える化されたモノ
「目に見える組織構造とプロセス」
Lv.2: “Espoused Beliefs and Values” 標榜される信条と価値観
「戦略、目標、哲学」
Lv.3: “Underlying Assumptions” 背後に潜む基本的仮定
「無意識のうちに当たり前となっている信念、認識、思考、感情など」

3段目で意識する”一緒に考え実行する”ということ
個人的には、HRBP(ヒューマン・リソース・ビジネス・パートナー)のことをご存知の方にとっては3段目がHRBPのイメージされる仕事なのかと感じています。
ただし、1段目と2段目があるように3段目だけではHRBPとしての役割は果たせず、3段目を確実に実行するためには日々の積み重ねによる信頼の獲得が不可欠であることを忘れないでください。
私が考える”一緒に考え実行する”という状態になるためには一番大切なことは明文化されたドラフトを提供することだと考えています。
これは、様々なクライアント(主に責任者)の方とのコミュニケーションの中で私が失敗を繰り返して学んだことですが、責任者の方とはある程度抽象度の高いコミュニケーションで議論が進むことが多く総論を合意して進めるものの、具体的な事案が出てきた際に各論では反対となる事象が発生し、そこで時間がかかるということです。(いわゆる”総論OK、各論NG”と言われる状態)
この状態ではビジネス活動が停滞し、HRBPとして組織に貢献するどころか邪魔をしていることになります。そして、この状態が続くと「HRがいつもビジネスの邪魔をしてくる」と言われる原因に繋がりかねません。
これらを解消するためにもHRBPとして、会社で進める人事戦略をクライアントに合わせて明文化したうえでコミュニケーションすることや、個別事情(組織文化など)を理解し明文化された提案をすることで、議論の土台を整えHRBPがファシリテーターを担いながら、実行プランを作成し、対応していくのが3段目の動きだと考えています。
そして、明文化されたドラフトを提供しながらTo-Beの話をしていくわけですが、組織文化のレベルに合わせて対応するイメージも図1として記載しました。
未来の話をする際は議論が膨らみやすいので、以下のようなイメージを持ちながらクライアントとコミュニケーションすることで「今ここの話をしている」という羅針盤になるのではないかと考えています。

”対応するエリアLv.3”×”組織文化の理解Lv.1”
ここからは、具体的にそれぞれのポジションにおけるアクションのポイントと注意点をご説明します。
Lv.3:「To-Beのディスカッションを行い目指す姿を一緒に考え実行する」
Lv.1: “Artifact” 見える化されたモノ
「目に見える組織構造とプロセス」
このポジションでは組織文化の理解が深まっていない中で未来の話をすることは可能なのか?と途方に暮れてしまうかもしれません。
そのため、図1に示したようにポイントとしては、客観的にみても高い確率で訪れる個人にフォーカスした人事イベントや、会社全体が様々な人事戦略の一環として、タレントマネジメントやサクセッションプランなどのテンプレートを利用している場合は、その流れにうまく乗って実行できるとスムーズにクライアントとコミュニケーションが図れるはずです。
~アクションのポイント
まず、組織文化の理解が浅い状態でも実行できるアクションとして、”対応するエリアLv.2”×”組織文化の理解Lv.1”(参照リンク)で作成した人事データを活用することをお勧めします。
例えば、特定の年齢や在籍年数で管理職を離れる必要があるような制度(役職定年など)がある企業の場合は、管理職の方の年齢、もしくは在籍年数と離任時期を列挙したエクセルシートなどをクライアントに共有する。
他にも、定期的な異動を実行しているのであれば、組織内の人材の定期異動時期を列挙したリストを用意してコミュニケーションをとることができます。
また、これらの予定されたイベントを有していない企業においても、在籍年数が整理されたリストを用意することで、従業員の能力開発などを考えるきっかけを提示することができます。
特に、役職定年や定期異動のような制度は昨今のジョブ型の議論がある中では減少傾向にありますし、私自身も個社の事情に合わせて人事制度を整えながら本人の能力とは別で発生するようなイベントは廃止、改変していくべきだと感じています。
そして、タレントマネジメントやサクセッションプランなどのテンプレートを運用している企業であれば、これらをうまく活用していくことが近道です。すでに何年か運用している場合は、クライアントも流れを理解しておりますので、運用に沿いながらTo-Beのディスカッションを積極的に実行していきましょう。
最後に、テンプレートを有していないのであれば、今後のHRBPのみならずHR全体の組織貢献を高めるためにもこれらのテンプレートを作成し、運用していくことをお勧めします。特にこれらのテンプレートがあることで、新たにHRBPに着任した方はTo-Beのコミュニケーションが実行しやすくなり、立ち上がりは確実に早くなります。
~注意点
やはり一番のポイントは、To-Beの議論の場では”自分の意見を入れたくなる”という衝動ともいえる想いをどこまでコントロールできるかに尽きると感じています。
組織に貢献したいという想いがあるからこそ、”自分の意見を伝えたい”という気持ちは決して間違っていません。しかし、それがクライアントの求めていることかどうかは別問題です。
組織文化の理解が浅く、信頼関係が未成熟な状態だからこそ、自分の意見を積極的に伝えるのではなく、クライアントが考えていること、求めていることを探るためにも、To-Beのディスカッションができる情報を提供し、様子を見ることにまずは徹してみてください。
その中で、意見を求められるのであれば伝えるチャンスですし、的外れであれば、クライアントがどう考えているかをしっかりと踏み込んで質問していくことが重要なポイントになります。
”対応するエリアLv.3”×”組織文化の理解Lv.2”
Lv.3:「To-Beのディスカッションを行い目指す姿を一緒に考え実行する」
Lv.2: “Espoused Beliefs and Values” 標榜される信条と価値観
「戦略、目標、哲学」
このポジションでは、組織文化の理解も進んでいることで、Lv.1から発展し個人の能力開発や異動のみならず組織論などの広がった議論が展開される状態です。
また、図1にあるように、社内の事象としてアプローチはしますが、会社の方針のみならず、会社方針を実行するためにも外部環境の情報も提供しながら新たな視点での提案を実行するフェーズとも言えます。
~アクションのポイント
組織の話をするとはいえ、ベースとなるのは「クライアントがどういったことを実行していきたいのか」という軸は変わりません。部門戦略としてどういったことを考えているのかをヒアリングし、それらを実行するためにどういった打ち手があるのか、社内のルールに沿った実行プランはどうなるのかなどをディスカッションすることになります。
議題のイメージとしては、組織変更や配置・育成プラン(研修提案など)や組織開発などです。
これらの議題において、打ち手を検討する際に外部企業や人事論などの情報を提供することで深いディスカッションが実行され、部門の方々だけでは到達できなかった水準に到達するサポートが求められます。
上記の内容から想像いただける通り、このタイミングでは部門からの信頼関係も醸成されているため、HRBPとしての意見や視点を求められるタイミングも増えてきております。
そして、これらの打ち手を繰り返すことでHRBPとしてもノウハウを蓄積し、HRBP組織しても成熟させていくことを意識することで、より高度な価値貢献が発揮できます。
~注意点
部門戦略を実行するために法律や社内ルールに沿って動いていくのですが、リスクの観点や社内ルールでは実行が難しいことも発生します。HRBPとしてはHRの立場として、リスクを正しく伝えて意思決定をサポートすることが求められ、社内ルールとして難しいものは止めるというアクションが求められます。他のポジションでも記載しましたが、組織文化の理解が進み事情が分かってしまうからこそ、判断が揺らいでしまう可能性がありますので、毅然な態度でクライアントと対峙することは忘れないようにご注意下さい。
とはいえ、時には社内ルールをニーズに合わせて変更することや、状況を飲み込んだうえでイレギュラーな対応を実行することも大切な場合があるため、柔軟な対応を求められるのも事実です。言うは易く行うは難しですが、倫理観を養い、深めながら対峙していきたいと私も日々感じております。
”対応するエリアLv.3”×”組織文化の理解Lv.3”
Lv.3:「To-Beのディスカッションを行い目指す姿を一緒に考え実行する」
Lv.3: “Underlying Assumptions” 背後に潜む基本的仮定
「無意識のうちに当たり前となっている信念、認識、思考、感情など」
いよいよ、あるべきHRBPとしてのポジションについてです。
このポジションでは、クライアントの組織も深まっており、信頼関係も構築いる状態だからこそ、HRBPとして求められる「情報伝達するだけの仲介人ではなく、人事と現場の間をつなぐエージェント」としての立場でパフォーマンスを発揮することが求められると考えています。
~アクションのポイント
クライアントから期待は図1にあるように、影響範囲も広がり、複雑性も増しています。そのため、部門が部門戦略や人事戦略を作成する段階から一緒に議論することが求められ、社内外の広範囲の情報提供が求められます。
そして、戦略実行の一員としても組み込まれていきますので、部門責任者の考えを代弁して現場に伝えるためのサポートを実行することや、責任者に適切な現場の声を届けながらそれらに対応した組織開発につなげていきます。
そして、HRBPだけでは多岐にわたるアクションの実行には限界があるため、リーダーシップを持って、クライアントやHR組織を巻き込み、戦略人事を実行していきます。
そのため、HRBPは個々に発生するアクションをプロジェクトのように管理し、プロジェクトマネジメントの要領でステークホルダーと関わり合いながら、クライアントと共にあるべき組織を構築していくというダイナミックな動きが必要です。
~注意点
上記に記載したとおり、クライアントから様々な相談を受けながら対応する日々を過ごします。その期待に応えるためには、現状に満足せず常日頃からHRプロフェッショナルとしての知識を獲得し、日々変化しているクライアントの状態をアップデートすることも怠らないようにしましょう。
そして、人事や部門から信頼を得てステークホルダーと議論する立場にもなっているからこそ、謙虚さを忘れずに、倫理観を養い、深めながらリーダーシップを発揮することが重要です。
また、一度このポジションに到達したからと言っても責任者の交代、経営戦略の大きな変更、外部環境の変化によってはHRBP9マトリクス内の他のポジションに移り変わることがあるため、感度を高くして自分が今のどの位置にいるのかを見定めることを忘れないようにしましょう。
3段目についてはHRBPの価値発揮の最終段階としてまとめさせていただきましたが、「To-Beのディスカッションを行い目指す姿を一緒に考え実行する」を軸として顧客とのディスカッションのイメージが膨らんでいると幸いです。
HRBPとして、To-Be(未来)の議論は一度話して終わりではなく、定期的にディスカッションを続けることで、クライアントの理解がより深まっていき、パートナーとして適切な情報が提供できるようになると感じています。
最後に、この記事全体のまとめです。
■HRBP9マトリクスの3段目で重要なこと
・クライアントとTo-Be(未来像)を共に考え、具体的なドラフトを示しながら議論の土台をつくる
・HRBPとして知識・感度を高めつつ、謙虚さを忘れず、柔軟かつ毅然と行動する
・倫理観を養い、深めながらリーダーシップを発揮する
1段目、2段目については以下の記事でまとめておりますので、参考にいただければ幸いです。
■HRBP9 マトリクス1段目:部門が考えるActionを支援する
■HRBP9 マトリクス2段目:As-Isのディスカッションを行い新たなGAPを解決する
そして、情報交換や意見交換をしていただける方は、ご連絡いただけると嬉しいです!
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