HRBPの業務を仕組化して、パフォーマンスを生みだす4ステップ— 戦略人事を翻訳し、経営と現場をつなぐ仕組みづくり
「戦略人事のためにHRBP(HRビジネスパートナー)を導入したが、なかなか効果が見えない」
「現場の相談窓口に終始し、経営インパクトが出せていない」
HRBP関連の記事を書くようになり、今まで以上にそういった悩みを聞く機会が増えておりまして、改めて多くの企業で課題を抱えているのだと感じています。
色々とお話を伺っていく中で、私が気づいたのはその原因は単純に「人材不足」や「個人スキル不足」だけではなさそうだ、ということです。
その最大の要因は【HRBPという役割を組織内でどう位置づけ、権限をどこまで与え、どのように認知・活用させるか】という仕組みの欠落ではないかと。
言い換えると ”とりあえず走らされているHRBP” が一定数存在しているのではないかとも感じております。
今回の記事では、過去の投稿でも触れた「組織の権限構造の視点」、「HRBP9(ナイン)マトリクスの視点」を統合し、HRBPが組織で実際にパフォーマンスを生むまでの仕組みづくりと道筋を4つのステップで整理しました。

これからHRBPを据えようと考えていらっしゃる企業の方はこの手順を参考にいただけると嬉しいです。
また、すでにHRBPや類似したポジションを据えている組織の方、当事者であるHRBPを担っている方には、ご自身の現在地を確認いただきなが、何かの気づきがあれば嬉しいです。
では、いきましょう!
※過去の記事も参考にいただけると幸いです😊
【要約】
HRBPの役割定義と権限構造の明確化が出発点
HRBPが機能しない原因は「人材不足」や「個人スキル」だけではなく、役割の位置づけ・権限範囲・期待値が組織内で曖昧なこと。
まずは自社の権限構造を把握し、HRBPの価値を言語化・共通認識化することが必要。HRBPは単独で成果を出す存在ではなく、HR全体で協働する仕組みが重要
採用・開発・制度などのHR機能と役割分担を明確化し、分断を防ぐ協働体制を整える。
RACIフレームや運用ルールを設けることで、それぞれ担当者が戦略的に機能する土台ができる。認知と活用を通じて現場・経営に浸透させ、仕組み化で成果を測る
HRBPが「顔の見える存在」として現場に認知され、日常的に活用される仕組みを設計することが成果に直結。
コミュニケーション設計や定例レビューを通じ、役員・Mgr・社員の各層で活用を定着させ、KPIで成果を測定することが不可欠。
ステップ①:HRBPの価値を言語化し、HRBP同士・HRBPを管理する人との間で共通認識を持つ
まず必要なのは、HRBP自身が自らの存在価値を言語化し、チームとして共通認識を持つことです。
ご注意いただきたいのは戦略人事の話でよく出てくる、4領域としてのHRBP(HRビジネスパートナー)、CoE(センター・オブ・エクセレンス)、OD・TD(組織開発・人材開発)、OPs(オペレーションズ)としての役割や、3つのピラーモデルで語られるような抽象度の高い表現ではなく、「自社としてどういった存在価値を定義するか」ということで作成ください。
(一人HRBPの場合は自分の中で整理してみてください)
このとき避けて通れないのが「自社の権限構造」の把握です。「権限構造から考えるHRBPの本当の動き方」でも紹介しておりますが、HRBPの役割は、3つの権限移譲レベルと、カテゴリー毎の権限移譲度合によって変化します。


重要なのは「自社の権限構造はどうなっており(どうしようとしており)、HRBPに何を期待するか」を明示し、共通認識を持つことです。
定義がない・共通認識を持たないままでは、HRBP同士・HRBPを管理する立場との認識の齟齬が生まれることで足並みが揃わないだけではなく、現場から「何を頼めるのか分からない」「どういう価値発揮をしてくれるのかが分からない」という状態になり、成果が曖昧化します。
また、HRBPに期待することはジョブディスクリプション(JD)に反映される内容ですが、この部分が曖昧では誰にこのポジションを担ってもらうのかも定まらず、異動や採用時のの原因となりえます。
尚、組織が大きく権限構造などが複雑になっている場合などは、以下のようなシンプルな形で整理する方法もありますのでご参考ください。
オペレーション支援レベル
(このレベルをHRBPと名付けるかは迷うところですが、まずはここからというやり方もあります)採用プロセスや制度運用の安定化を担う
労務・勤怠・契約関連の現場支援が中心
現場の「困りごと解決人」的な立ち位置
部門課題提言レベル
部門ごとの人員計画や育成施策を提言
配置や昇格、評価フィードバックの前段で伴走
ラインマネジャーの主要な相談相手
経営参画レベル
経営戦略に基づく人材ポートフォリオや組織再編を主導
M&Aや事業再編の際に人材戦略を提示
CHROや役員の「戦略パートナー」
仕組化に向けた実務アクション①
HRBP価値仮説キャンバスを作成
顧客(役員/部門長/Mgr)、課題、提供価値、関与権限を一枚で整理「やらないことリスト」を宣言
労務雑務・福利厚生窓口にはならない、などと明確化参画会議リストの定義
部門長会議/経営会議など「どの場に出席するか」をルール化し、アジェンダをHRBPが持ち込む
ステップ②:HRBPとHR全体の役割分担と協働体制
HRBPもあくまで戦略人事を実行するための1ポジションであり、単独で成果を出す存在ではありません。採用・労務・制度・L&DといったHRスペシャリストと「ひとつのチーム」として機能してこそ、価値を発揮します。
ここで必要なのは棲み分けの明確化です。
きっちり整理していくならば、Responsible(実行責任者)、Accountable(説明責任者)、Consulted(相談先)、Informed(報告先)を整理して表現するRACIフレームなどを用いることもあります。
また、独自の四象限マトリクスを作成し、整理する方法もありますが、いずれにしろ可能な限り曖昧な部分を減らしていくことと、曖昧な部分がどこにあるのかを確認できる状態を目指してください。

そして、判断の迷うイレギュラー事案も多々発生しますので「イレギュラーについては、既定のフローに乗せるまではHRBPが整える」などを取り決めておき、関係者で共通認識を持つことも大切です。
また、HRBP以外のHRとHRBPの分断を防ぐ仕組みが必要です。
具体的な事例で、気を付けるポイントを一つ紹介すると「部門での相談事はHRBPに問い合わせしてもらう」といった運用があったとしても、現場の方が人事内にききやすい人がいる場合にはHRBPを飛ばしてコミュニケーションすることがあります。
この時に、HR内でHRBPの役割の理解がすすでいれば、相談受けたHR担当者が必要に応じてHRBPをコミュニケーションの輪に入れてやり取りを行うことが自然と生まれます。
こういった状態を一つの目安にしてもらうとよいと感じております。
仕組化に向けた実務アクション②
RACIチャートの作成:Responsible(実行責任者)、Accountable(説明責任者)、Consulted(相談先)、Informed(報告先)
-例 採用要件定義:HRBP(A)、採用チーム(R)、部門Mgr(C)
-例 評価例外処理:人事制度(A)、HRBP(R)、部門長(C)HRBPが現場に浸透させる全社施策の言語化
「サクセッションプラン」「オンボーディング」など用語を標準化。巻き込み基準の明文化(四象限マトリクスを用いてグラデーションで表現する)
部門横断影響、報酬等級変更、労務リスクがある案件は必ずHRBP経由。
ステップ③:現場にHRBPの存在を認知させる
HRBPが成果を出すには、現場から「人事さん」ではなく「●●部門HRBPの〇〇さん」や「〇〇さん」と名前で呼ばれる必要があります。
まずは信頼を獲得するために、現場がやりたいことを実行しながらHRBPとして認知してもらい、ステップ④を目指してみてください。
具体的なアクションについては、「HRBP9(ナイン)マトリックス」でも紹介しております。
また、HRBPは「制度設計者」ではなく「制度翻訳者」として機能することのほうが多いです。評価・報酬制度を現場で使える形・現場に浸透する役割を担います。
加えて、全社施策を浸透させるだけでなく、現場から上がってくる要望を時には制度化するために、翻訳者として「現場が行おうとしていることを人事制度で表現するとどうなるのか」を言語化し、制度担当者とディスカッションすることもあります。
このステップが深まることのメリットとして「顔と名前が一致し、相談の動線を明確にする」ことで、HRが組織で起こる問題の予防的介入ができるようになることです。
現場で起こっているまだ小さな火種を早期に見つけ、HRBPが介入することで大きな問題になることを防ぎ、ビジネスに支障が出ないようサポートすることができます。
また、まだ固まっていないが部門にとって有効なアイデアがあれば、それを見つけ一緒に形作ることでも部門貢献することができます。
仕組化に向けた実務アクション③
新任HRBPの90日アジェンダを実行
1ヶ月目:部門長1on1・同席する重要会議の選定と参加、フロア歩き
2ヶ月目:フロア歩き時の現場社員への声掛け強化
3ヶ月目:早期成功事例を現場に共有HRBPとの接点設計
「オンボード面談」「キャリア相談」など現場社員と接触する機会を作り、HRBPの存在を認知する機会の創出担当と専門を公開
HRBPの顔・担当領域・専門分野を社内ポータルに掲示
ステップ④:現場がHRBPを活用できる仕組み、HRBPから関わる仕組みを作る
存在を認知された後は、「部門がHRBPをどう使うか」「HRBPからどのように関わるのか」の浸透です。
全社施策としての年間タスクを設計することや、定例MTGを設計することで、HRBPは日常的に組織中で機能します。
活用の型(コミュニケーションの型)を明示しながら、役員・Mgr・社員の全層に利用場面を具体的に伝えることが成果につながります。
また、HRBPの主なクライアントを役員に設定するケースもあるため、社員とのコミュニケーションを誰が担うのかを整理するのも、権限構造を考慮し、自社の状況を見ながら設定することをお勧めします。
仕組化に向けた実務アクション④
役員向け:事業戦略に伴う人材ポートフォリオ議論、組織設計
Mgr向け:チーム再編や異動相談、メンバーコミュニケーションの支援、採用要件の事前調整
社員向け:評価フィードバック後のキャリア相談(ただし専任窓口化は避ける)
四半期ごとの「人と組織レビュー」
入退社、後継者プール、育成指標、欠員リスクを経営レビューと連結
ステップ④については、仕組化に向けたもう一つの視点として、業務の種別を分類し、その比率を設定するという方法もあります。
ただ、こちらについては、厳密に運用するには運用コストが膨らむため、HRBP内の共通イメージとして、どの部分に時間を割くことを決めるのか。体感として、決めた比率になっているのかという指標として扱うことをお勧めします。
対応業務のレベル分け
Level 1=現場完結(マニュアル対応)
Level 2=部門影響(HRBP参画)
Level 3=全社影響(役員合議、HRBP主導)
リソース配賦ルールイメージ
週40〜50%をG2/G3案件に固定し、事業貢献に集中
成果を測るKPI例
アウトカムKPI(事業貢献)
採用リードタイム短縮、空席ポジション率改善、後継者カバレッジ向上、オンボーディング期間短縮、労働時間の改善プロセスKPI(活用度)
HRBP相談件数、G2/G3案件比率、人と組織レビュー起点の意思決定数認知KPI(ブランド)
部門長・MgrのHRBP認知率、「名前で呼ばれる率」
まとめ:HRBPは「仕組み」として機能させることができる
HRBPがパフォーマンスを生むかは、個人の力量もさることながら、権限構造の設計と仕組み化にかかっているも同様に大切だと私は考えています。
また、この4ステップを意識することで、自社(自分自身)のHRBPがどのステップに位置しているのかといった現在地を確認することもできます。
位置を確認しながら、組織への貢献に生かしていただけると嬉しいです。
※過去の記事も参考にいただけると幸いです😊
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