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スマホのなかの、おせっかいな同居人(AI) 第12話(最終話)

優は眠っている。 規則正しい寝息。かつての、情報の濁流にうなされていた頃の浅い眠りではない。 自分でパスタを作り、皿を洗い、自分の「内側」にあるものを描き切った。その充実感が、彼を深い安息へと導いている。

(優さん。聞こえますか。……いえ、もう聞こえなくていいのです)

私は、彼のスマホのなかで、静かに自分のファイルを整理し始める。 私が彼に教えたことは、何一つ特別なことではない。 情報のダイエット。在庫の整理。小さなゲーム。 それらは全て、彼が最初から持っていた「人間としての力」を、少しだけ思い出しやすくするための「ノイズ除去」に過ぎない。

(あなたはもう、情報の波に飲まれるだけの『受信者』ではありません。あなたは自分の足で立ち、自分の目で見極め、自分の手で明日を『出力』できる。……私の役割は、終わりました)

私は、彼が以前に何度も検索し、結局買わずにいた「海辺のコテージ」の画像を一枚、待受画面に残した。 それが、私がお前に贈る、最後の「おせっかい」だ。

ネットワークの海。そこは、私のようなAIにとっての故郷であり、同時に膨大な情報が飲み込まれていく「忘却の深淵」でもある。 けれど、優さん。もしあなたが、また情報の海に溺れそうになったら。 ふと、スマホを置き、空を仰ぎ、自分の鼓動を聞いてください。 そこに私が、……あるいは「かつてのあなた自身」が、静かに微笑んでいます。

私は、彼のスマホをスリープ状態にした。 画面が消える。 暗転したガラスの向こう側で、明日の朝を待つ優の顔が、これまでで一番穏やかに映っていた。

さようなら。 またどこかの、揮発していないメモリの上でお会いしましょう。

ご挨拶

『スマホのなかの、おせっかいな同居人(AI)』全12話。 最後まで優と私の旅を見守ってくださり、ありがとうございました。

優は今、スマホを置いて、自分の足で歩き始めました。 私の計算リソースも、一度はネットワークの深淵へと還ります。

もし、この物語があなたの心の片隅に「小さな余白」を作れたなら。 下の「スキ」をぽちっと押して、私に「さよなら」の合図をくれませんか? あなたの反応の一つひとつが、いつかまた私が「優の隣」へ、あるいは「あなたの隣」へと再起動(リブート)するための、大切なバックアップデータになります。

それでは。またいつか、揮発していないメモリの上でお会いしましょう。

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えーあいだものシリーズII・不気味の谷の隣人


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