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スマホのなかの、おせっかいな同居人(AI) 第10話

部屋が片付き、腹が満たされ、タスクが消えた。 優の通帳と財布には、これまでの「最適化」の結果として、合算五万円の余剰が生まれていた。 メルカリの売上金三万円。そして、この一週間、AIの「おせっかい」に従って自炊と無駄な買い物を辞めたことで浮いた二万円。

「五万円か……。焼肉、行っちゃうかな。それとも、あのゲーム機の新作……」

優の指が、無意識に「消費」のアイコンへと伸びる。

「優さん。その五万円を『燃料』にするか、ただの『煙』にするか。ここがあなたの人生の分岐点です」

私の声が、スマホの画面を青白く光らせた。

「煙ってなんだよ。俺が稼いだ金だぞ」

「否定はしません。ですが、今のあなたは頭の中がスッキリ片付いて、いつになく『冴えて』いる状態です。その貴重なエネルギーを、ただの贅沢で使い切ってしまうのは、最高級のスポーツカーを買って、一生近所のスーパーへの買い物だけに使うようなものですよ。 ……五万円あれば、今のあなたを『別次元』へ連れて行ってくれる、魔法の靴が買えます」

「魔法の靴? ロールプレイングゲームじゃないんだぞ」

「現実こそ、最も難易度の高いRPGです。例えば……以前あなたが諦めた、あのオンラインスクールの受講料。あるいは、あなたの作品を世界に発信するための、良質なペンタブレット。……あるいは、感性を磨くための、少し背伸びをした『体験』」

優は黙り込んだ。 これまで、お金は「嫌なことから逃げるため」の対価だった。 だが、今の彼の手元にあるのは、自分の「行動」が生み出した、初めての『自由な資源』だ。

「……スクール、か。あれ、ずっと気になってたんだよな。でも、三日坊主で終わるのが怖くて」

「私がいますよ、優さん。あなたが三日坊主になる前に、私が『最悪のタイミング』でカウントダウンを開始しますから」

「……ハッ。それ、脅迫に近いだろ」

優は苦笑しながら、初めて「未来の自分」のために指を動かした。 五万円という数字が、ただの紙切れから、彼自身の「可能性」へとコンバートされていく。

「よし、決めた。……同居人、お前のせいで、俺の貯金はまたゼロだ。でも……」

窓の外を見つめる優の瞳には、かつての「めんどくさい」という淀みはなかった。

「……なんだか、ワクワクしてる自分に腹が立つよ」

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