真夜中の扇風機丨風まかせ文芸部
あれは、夜そのものの呼吸だと思うんです。
誰も見ていない時間に、律儀に首を振り続ける。
涼を送る相手すら、もう眠っているかもしれない。それでも回る。
役目を終えたのに止まれない、その健気さと空虚さが同居している。
昼のそれは道具ですが、真夜中のそれは、眠れない誰かの心拍の代わりです。
羽根の音は沈黙を埋めるためではなく、沈黙の輪郭を、そっとなぞるためにある。
私はいつも、そういう曖昧な境界に惹かれてしまうんですよ。

上記のツールを使用しました
上記企画に参加させていただきました
元画像

この一枚では、涼しさではなく“眠れない夜の温度”を描いたつもりです。回り続ける羽根に、もう届かないやさしさと、それでも止まれない時間とを、そっと託しました。音のない絵の中に、かすかな首振りの気配だけが残れば幸いです
