岡田斗司夫の『ヒャッハー否定論』は机上の空論!暴徒化するアメリカの現実とのギャップ
皆さまは、日本のオタク文化を語る上で非常に重要な人物の一人であり、オタク界隈では『オタクキング』の敬称で知られている岡田斗司夫氏をご存じでしょうか? 日本の漫画・アニメ業界においては、GAINAX(ガイナックス)の創設者としても有名です。しかし、アニメに興味のない方に『GAINAX』と言っても、その知名度は限られています。そこで『エヴァンゲリオンを制作したスタジオ』と説明すれば、一気に知名度が上がるものの、それでも『エヴァンゲリオンって何なの?』という反応になることも少なくありません。
GAINAXの代表的な作品には、
・『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987年)
・『ふしぎの海のナディア』(1990年)
・『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)
などがあります。
特にアニメ業界においては、『GAINAXの岡田斗司夫、武田康廣、山賀博之』の名前は、合気道で言えば武田惣角、植芝盛平、塩田剛三に匹敵する伝説的な存在といえるでしょう。
しかし、一方で合気道に興味のない人にとっては、『武田惣角(そうかく)』と書かれても、『葱角(ネギカド)?』となってしまうほどマイナーな話なのです。
GAINAXの破産と『蒼きウル』の未完
GAINAXの内情については、おおかみ のみねさんも詳しいかも知れません。以下の指摘は多分当たっています。
・観客にアニメ制作サイドの人!?
私が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を観に行った時も気がついたんだけど、映画またはアニメ関係者らしき人々?
が観客の中に複数人いる。
後ろ姿でも、雰囲気から、なんとなく分かる。
GAINAXは山賀博之氏が『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の続編である『蒼きウル』の制作に拘り過ぎたので、最終的には17億円の負債を抱えて破産してしまいました。
本来『蒼きウル』はテレビ版『ドラえもん』レベルの制作スケールであれば数千万円、劇場版としても2億円程度で制作可能な作品でした。しかし、ディテールにこだわりすぎた結果、予算が膨れ上がり、当初の2億円が20億円、30億円と跳ね上がり、ついには制作自体が頓挫してしまいました。
このように、GAINAXの失敗は『クオリティへのこだわりが裏目に出た典型例』とも言えます。この他にも経営上の問題も多数ありますが、『蒼きウル』は何十年経っても完成することなく、未完成のまま終わってしまったのです。
GAINAX創設者の岡田斗司夫氏は、クオリティの高いアニメの企画・制作に携わり、アニメ業界に大きな影響を与えました。また、評論家・作家としてオタク文化を広めてきた功績も高く評価されています。現在はYouTuberとして活躍し、独自の視点でアニメや映画を分析するスタイルが人気を集めています。
彼は過去に大学の非常勤講師や客員教授を務めた経歴もあり、独自の社会分析や未来予測に関しては、社会学者や経済学者よりも鋭い側面を持つことがあります。彼の卓越した未来予測能力は、生来のクリエイティブな資質に加え、関連分野の国内外の名著を読み漁り、それらのエッセンスに独自の解釈を加えて引用するスタイルに起因しているといえます。
しかし、岡田斗司夫氏が提唱している『北斗の拳・マッドマックス問題』や『絶対暴力の時代が来ます信仰』に関する主張には根本的な誤りがあり、この誤りに基づく予測の大半が間違っていることを意味しています。そのため、このテーマについて先日の記事で取り上げました。
岡田斗司夫氏の『北斗の拳・マッドマックス問題』とは?
岡田斗司夫氏が提唱する『北斗の拳・マッドマックス問題』とは、『人間社会が崩壊しても、北斗の拳やマッドマックスのようなヒャッハーな世界にはならない』という彼の持論を指します。
つまり、警察や法律が機能しなくなったとしても、暴力が支配する無法地帯にはならず、人々は協力して秩序を維持するという考え方です。これは、『社会的動物としての人間の本質』を重視した視点に基づいています。
『北斗の拳・マッドマックス問題』の概要
岡田氏は、『北斗の拳』や『マッドマックス』のような、文明が崩壊した後に暴力が支配する無法地帯が生まれるというフィクションの世界観に対し、『現実世界ではそのような社会崩壊は起こりにくい』と主張しています。
彼は『北斗の拳・マッドマックス問題』を基に様々な予測をしていますが、彼がアメリカについて言及する際には、実際の状況と大きく異なる点が見受けられます。彼はCNNで報道されていたノースリッジ地震(1994年)の際に、ロサンゼルスの人々が暴徒化せずに助け合っていたシーンが放映されていたことを、この問題の前提条件が正しい根拠に挙げています。
しかし、この地震の2年前の1992年にはロサンゼルス暴動が発生しており、都市の治安が不安定だったことを考慮する必要があります。私はノースリッジ地震当時、ロサンゼルスでも被害の大きかった地域に住んでおり、近所の高速道路も倒壊していました。そのため、CNNでは報道されていなかったとしても、ハリウッド周辺から、1992年の暴動が発生したコリアンタウンやメキシカンタウン周辺にかけては、実際にはヒャッハーな状態になっていたのを目撃しているのです。
この時代には災害などがなくても『ヒャッハー』な状態が日常的だった地域としてSouth Centralが挙げられます。しかし、この地域はあまりにも悪名が高かったため、現在では『サウス・ロサンゼルス』と名称が変更されています。近年は治安が改善されつつありますが、Watts(ワッツ)、Inglewood(イングルウッド)、Compton(コンプトン)のような地域では、当時、市の財政が破綻していたためか、清掃局が機能しておらず、道路がゴミで埋め尽くされている状態でした。
また、警察官の人員確保にも財政が回らなかったのか、これらの地域ではパトカーが信号を無視して逃げる光景が日常的に見られました。パトカーや一般の車が信号待ちをしていると、地元のギャングが周囲を取り囲み、車両の持ち主が身ぐるみを剥がされるような状況になることもありました。
イメージし易い例を挙げるなら、旧『ロボコップ』に登場するデトロイトのような世界観です。映画の中でギャングたちが突然ロボコップを襲撃してくるようなシーンがありましたが、当時のロサンゼルスの一部地域は、まさにそれと同じような治安だったのです。
この誤解の何が問題なのか?
岡田斗司夫氏は、堀江貴文(ホリエモン)の師匠的な人物とされています。しかし、彼らは米国の制度や文化、本質を深く理解せずに、以下のようなアメリカに関する解説を発信しています。
もし、これが人気お笑い芸人のようなYouTuberからの情報であれば、単なる笑い話として受け流され、真に受ける人は少ないでしょう。しかし、岡田斗司夫氏のように、アメリカ以外の専門分野においては的確な未来予測を行う人物が、間違った情報を発信すると、次のような危険な連鎖反応が生じます。
1.『岡田斗司夫の漫画やアニメに関する解説は正しい。ゆえに、アメリカに関する解説も正しい』という誤った認識が生まれる。… にわかには信じがたい話ですが、これこそが情報弱者が情報弱者たる所以です。
私の会社にも、あまりにも間違ったことを自信満々に力説する人がいたため、『どうして仕事中に、そのような非論理的で明らかに間違っていることを長時間力説するのですか?』と質問してみました。すると、彼の唯一の情報源および根拠は、『だってTwitterに書いてあるからです』というものでした。
このような人物は意外と多く、私はこの現象を『Twitter脳症』と名付けました。しかし、Twitterは社名が変更されたため、現在では『X脳症』や『YouTube脳炎』といった別の名称を再考する必要があるかも知れません。
こうした現象は最近始まったものではなく、私がこれらの現象を発見する以前から、『だって新聞に書いてあったから』や『だってテレビでやっていたから』と主張する人々は、昭和時代から実在していました。
ちなみに、1973年の豊川信用金庫事件は、その典型例と言えます。この事件では、『豊川信用金庫が倒産する』というデマが流れたことにより取り付け騒ぎが発生し、約14億円もの預貯金が引き出される事態になりました。
警察が信用毀損業務妨害の疑いで捜査を行った結果、この噂は女子高生3人の雑談をきっかけに自然発生的に広まった流言だったことが判明しました。
2.YouTube以外に情報源を持たない情報弱者が、その情報を信じ込む。
3.誤った情報が連鎖的に拡散され、正しい情報がかき消されてしまう。
このように、岡田斗司夫氏の専門外の分野で、まことしやかに発信された誤情報が、信頼性のあるものとして広まってしまうことが大きな問題なのです。
現在、アメリカでは政府閉鎖の可能性が懸念されています。仮に警察や州軍、陸軍、海軍、空軍、海兵隊などの給与が支払われず、治安維持機能が停止すれば、瞬く間に『ヒャッハーな世界』になる可能性が高いでしょう。
上のヤシロさんの記事を補足説明すると、2025年3月17日にミネソタ州の共和党上院議員5人が、『トランプ錯乱症候群(Trump Derangement Syndrome:TDS)』を精神疾患として定義する法案を提出しました。 この法案では、TDSを『ドナルド・トランプ大統領の政策や在任期間に対する被害妄想の急性発症』と定義しています。
この現実を理解し、適切に予測して対策を講じられるかどうかは、一般の日本人の生活にも大きな影響を及ぼします。
そのため、岡田斗司夫氏や堀江貴文(ホリエモン)が理解できていない基礎知識や、彼らの認識とは大きく異なる現実について解説したのが、以下にリンクしてある、前回の記事なのです。
武智倫太郎
