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金融鎖国:日本の金融機関が失った国際競争力(1)

~海外送金の迷宮:ボルカー委員会からデジタル革命まで~

はじめに
 私はアフリカ諸国など新興国で多国籍事業を展開しています。これらの国々では、取引開始から1年後に銀行が消滅してしまうことも珍しくありません。そのため、日本で仕事をしている方々から『そんな銀行が消えるような国でよく仕事ができますね!?』と驚かれることがあります。その際、私が尋ねるのは『太陽神戸、三和、東海、富士、第一勧業、三井、三菱、住友銀行などが消滅したことをご存じですか?』という質問です。

 日本国内でも銀行の消滅や合併・吸収、再編は繰り返されてきた歴史があり、私は日本の銀行を一切信用していません。ちなみに、私が取引銀行に求める最低条件は『第一次世界大戦(1914~1918年)と世界恐慌(1929年)を乗り越え、現在も国際的に活動していること』です。残念ながら、この条件を満たす日本の銀行は一行もありません。日本は1945年に第二次世界大戦で敗北しており、日本円の歴史でさえ100年以上連続しているとは言い難いのです。

 戦後だけでも、1992年の不動産バブル崩壊や2008年のリーマン・ショックで破綻した銀行は数多くあります。世界を見渡してみても、100年以上の歴史を持つ銀行がさほど多くないことは、皆さまにも容易に想像できるでしょう。

外資系銀行の撤退
 かつては、日本にもシティバンクやゴールドマン・サックス・グループなどが進出していましたが、度重なる行政指導を受けて撤退しています。

 HSBC(香港上海銀行)も、日本での事業の収益性の低さや海外戦略の見直しにより撤退しました。また、クレディ・スイスは2023年にUBSに吸収合併された影響で、グローバル規模での事業再編が行われ、日本市場からも撤退しました。この合併は、クレディ・スイスが直面していた財務問題に対する対応策として進められたものです。

 これら外資系銀行の撤退は、日本市場が彼らにとって魅力的な投資先ではなくなったことを物語っています。規制の厳しさ、低金利環境、そして日本独特のビジネス慣習は、国際的な銀行にとって明らかな参入障壁となっています。

 このような状況を踏まえると、日本国内の銀行業務に依存し続けることには大きなリスクが伴うと言わざるを得ません。資産運用や資産保全を真剣に考えるのであれば、国内の銀行だけでなく、海外の銀行や多国籍金融機関との取引も検討すべきでしょう。特に、私が重要視する『100年以上の連続した歴史を持ち、国際的に活動している銀行』という条件を満たす金融機関にはいくつかの選択肢があります。

 しかし、以下のような国際的銀行の再編劇を見ていると、『本当に銀行は必要なのか?』という疑問を抱かざるを得ません。特に、金融のデジタル化が進み、ブロックチェーンやデジタル通貨の普及によって、銀行を介さずに資金移動を行う選択肢がますます現実味を帯びています。従来の銀行が果たしてきた役割は、一部の分野において急速に不要となりつつあるのです。

 例えば、バークレイズ銀行のように長い歴史を持つ金融機関であっても、事業の方向性を見直し、地域市場からの撤退や他機関との統合を繰り返しています。銀行の再編劇を見るたびに、『銀行』という存在そのものが時代遅れになっていないか、改めて問い直す必要があります。

 21世紀における金融の役割は、デジタル技術の飛躍的進化によって急激に変化しています。個人間送金(P2P)や分散型金融(DeFi)など、銀行の介在を不要とする仕組みが拡大している今、中央集権的な銀行が今後もその存在意義を保てるかは疑問が残るところです。実際、国際的な送金や資産運用の場面で、銀行を介さない手段は低コストかつ迅速な方法として注目を集めています。

 こうした変化は、銀行が単なる資金の保管場所や送金の中継点以上の役割を担わない限り、その存在意義が薄れ続けることを示唆しています。『銀行がなくなる未来』は、テクノロジーの進展が加速するなかで、決して夢物語とは言えません。

バークレイズ銀行
 私が取引している銀行の一つに、1690年創業のイギリス系バークレイズ銀行(Barclays Bank)があります。同銀行は2005年、南アフリカ最大のリテール銀行であるアブサ・グループ(Absa Group Limited)の過半数株式を取得し、アフリカ市場でのプレゼンスを拡大しました。これにより、モザンビークをはじめとする複数のアフリカ諸国で事業拡大を図ったのです。

 ところが2016年、バークレイズはアフリカ事業の見直しを発表し、アブサ・グループ株を段階的に売却すると打ち出しました。その結果、モザンビークにおけるバークレイズの直接的な事業展開は縮小し、2020年以降はアブサ・グループを通じた銀行業務が主体となっています。

HSBCのブルネイ撤退
 1865年創業のイギリス系銀行HSBC(香港上海銀行)は、東南アジアにおける事業再編の一環として、ブルネイから撤退しました。同国での事業は1994年に開始され、主に富裕層向けのプライベートバンキングや法人向け金融サービスを提供していました。しかし、2017年にブルネイの経済規模や収益性の限界を理由に現地業務を停止しました。この撤退により、ブルネイ市場における外資系銀行の影響力は著しく低下し、現地銀行の重要性がさらに高まりました。

 現在、ブルネイに残る国際的な銀行は、スタンダードチャータード銀行(SCB: Standard Chartered Bank)のみとなっています。一部の業務は、中国銀行(BOC: Bank of China)が補完しています。興味深い点として、『私がビジネスをしている全ての国に支店を持つのは中国銀行だけ』という事実があります。

 中国銀行(BOC)は、世界25か国にわたって約550の事務所を展開しています。さらに、同銀行は100年以上の歴史を誇り、その国際的なネットワークと安定性は、他の銀行との差別化要因となっています。

その他の取引先銀行
 オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)も、戦争や恐慌を乗り越えつつアジア太平洋地域で活発に活動する国際的銀行の一つです。また、フランス系のソシエテ・ジェネラル銀行(SGB)も私が取引する銀行の一つですが、日本のメガバンクは海外ではほとんど使い道がないのが現実といえます。

日本の銀行業務の限界
 勿論、日本の本社企業が日本の銀行から融資を受け、その資金を海外子会社に増資や貸し付けすることは可能です。しかし、それはあくまで国内業務の延長に過ぎません。日本のメガバンクがシンジケートローンを通じて海外へ大口融資を行う場合も、実際にはJBIC(日本政策金融公庫)の貸付保証やNEXI(日本貿易保険)の保証がなければ成立しないケースが大半です。すなわち、メガバンク自身は貸付リスクをほとんど負わず、海外のプロジェクトやビジネスの実態を十分に把握しているとは言い難いのです。

日本の国際銀行業務の機能不全
 日本のメガバンクは国際業務の利便性を著しく欠き、それが日本の産業競争力の低下を招いています。海外市場で競争力を高めるには、以下の点が不可欠です。

グローバル戦略の再構築
・海外拠点の強化や現地ネットワークの充実など、現地に根差した戦略が求められます。

デジタル化の推進
・ブロックチェーンやAIを活用し、効率的な国際送金・融資サービスを提供することが必要です。

リスク管理能力の強化
・保守的な姿勢から脱却し、新興国市場でも適切にリスクを取りながらビジネスを展開できる体制づくりが重要です。

 これらの課題に対応しない限り、日本の銀行の国際業務は機能不全の状態から抜け出せず、日本企業の海外展開の足かせとなり続けるでしょう。

つづく…

1.日本の海外送金手続きが煩雑になった歴史的経緯
2.海外送金の黎明期:紙の手形と為替レートの固定
3.戦間期から戦後復興:世界大戦と規制強化
4.1970年代以降:金融自由化と新たなリスク管理
5.9.11 同時多発テロ以降:マネーロンダリング対策とテロ資金供与防止
6.21世紀の金融危機とデジタル化の進展
7.アメリカによる他国金融機関への強硬措置
8.対抗する世界各国:アメリカ人や米企業の締め出し
9.『アメリカ離れ』が進む国際金融の実態
10.世界中に支店を持つ歴史的な銀行
11. 日本の銀行の国際展開と現状の課題
12. 機能不全が加速する日本の国際銀行業務
13. 結論:再び国際舞台で存在感を取り戻すために

武智倫太郎

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