1996 / DESTINY 4
あの夜の乾杯が、胸のどこかでまだ音を立てていた。
忘れたわけじゃない。ただ、置きっぱなしにしていた気持ちが
気づけば僕を動かしていた。
1996 / DESTINY 4
何もかもが中途半端な感情のまま、
数日が過ぎていった。
週末には相変わらず奈緒子は僕の部屋に泊まりに来ていた、
そして彼女はうちの両親とも笑顔で話しをしたりしていた。
いつものように変わらない平凡な日々
ある日、僕は思い立って深雪さんの働く
ショッピングセンターに行ってみようと思った。
それはあの飲み会を企画した阿久津君の働く場所でもある、
きっとグルリと中を回れば深雪さんはいるに違いない。
あの夜に彼女と交わした
<要員的乾杯>
が鮮明に脳裏に残っている。
彼女とはもう一度会わなければいけないと思った。
その理由が何かはわからない、あの時は時間にしてみれば、
3時間くらいのものだ。
でも何かが違う、
自分自身の居場所のような気がしたんだ。
僕はGジャンを羽織り、
スズキのジムニーを走らせて彼女の働くショッピングセンターに向かった。
ジムニーは乾いた音を上げて軽快に走り出した。
ショッピングセンターには40分程で到着し、
その駐車場に車を止めて僕は深呼吸をした 。
何と言って顔を出そうか。。
考えていてもしょうがない、
とりあえず車を降りて丁度近くにあった
マクドナルドでチーズバーガーを食べてコーヒーを飲んだ。
夕飯にはまだ早い時間だった 、
学校帰りの高校生達も
けっこうなグループでコミュニティを形成し、
狭い店内の中で各々が喋っている。
ショッピングセンターに入り僕は適当にブラブラと歩いた、
中ではもう既に春物の処分のセールが始まっていた。
深雪さんは1階の化粧品のコーナーに販売員として働いていた、
よく見るとあの時飲んだ時の他の女の子の顔もチラホラと見える。
彼女はすぐに僕の存在に気が付いた、
そして軽く会釈をした。
他の子は僕には気づかないようだった。
「久しぶり!ここでやってたんだね」
と僕は言った、
緊張で少し声がうわずっていたかもしれない。
彼女はあの時と同じように肩をすくめて言った
「そうなの、忙しくて大変」
と顔をしかめた。
彼女の顔をしかめるしぐさが僕は、
かわいいと思った。
「今日はどうしたの?」
と彼女は言った
「いや、今日は休みで暇だったからさ、なんとなく来たんだ」
と僕は答えた。
「そう、暇なんだ。。夜は?」
「夜も暇だよ」と僕は答えた。
「あと1時間ちょっとで終わるから、待っててくれる?」
と彼女は言った
「うん、平気なの?」
「今日も旦那いないの、、」
とまた顔をしかめて言った。
「じゃあ、適当に店の中を回って駐車場にいるよ」
と僕は言った。
僕はその後、店の中をブラブラとしながら、
本屋で適当に本を何冊か買ったりした。
そろそろいい時間だ
車に戻り深雪さんが来るのを待った。
数分後、
彼女が早足で来るのが見えた
僕はジムニーのクラクションを小さく
「ププッ!」と
鳴らした
彼女はすぐに気が付いてくれたようだった。
深雪さんはドアを開け、
車に乗ってきた、
車への乗り方がソフィスティケートな感じがした。
「お待たせ!、缶コーヒー買って来たんだ、飲んで!」
と彼女は笑いながら言った。

僕をまた走らせた。
「ありがとう」と言って僕は缶コーヒーを飲んだ
こうして人数要員的な二人は再会を果たしたのだった。
つづく
置きっぱなしにしていた気持ちは、
忘れたわけじゃなかった。
ただ、
動かさないようにしていただけだった。
そしてその夜、
僕はもう一度ハンドルを握った。
1996 / DESTINY 4
