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翼の翼 朝比奈あすか (著)を読んだよ。

こんにちは!aishiです。
今回は翼の翼 朝比奈あすか (著)
以前読んだ「普通の子」が良かったので名前買いで今回はこちらを選んでみました!

自分はそんなに新刊とか本を読み漁るタイプではないので色々疎いんですが
近頃個人的に朝比奈あすか氏や浅井リョウ氏といった人間の解像度が高い方々の作品と出会ってスーッと身体に入ってきていてとても嬉しいです。
話題のタイトルとかあってもタイミングが合わないと中々読む気にならないタイプなのでそういう良いタイミングで人と会うような気持ちよさがあります。

さてここからは本を読んだ感想。
とは言っても相変わらず自分でもあまり整理が出来ていない感想文になりそうです。なので非常に読みにくいと思います。
ただやはりこういった色々考えさせてくれる本は有り難いですね。

今回もあらすじなど知らずに読み始めたので読んでから「中学受験」をテーマにしたお話だと読み始めてわかりました。
「お受験」というテーマは正直僕ら1970年代後半生まれの世代からするとかなり手垢のついたテーマだと思っています。
なので口コミ等で「加熱する受験戦争をテーマにした作品」だとか「煽られる中学受験に警鐘」と言われても今は随分定番と化して落ち着いてる方がと思います。
実際この作品でも塾の描き方もかなりシステム化されて落ち着いた感じに描かれていますね。
この作品は決して「受験戦争への警鐘」なんてチープな事を言ってるんじゃないと個人的には思いますがどうでしょうか?

この作者の上手いなぁと思うところは上手く人の多面性を描いていて読んでいると「ん?」と違和感をキャラクターに感じさせてくれるところ。
人って(特に物語の登場人物を)良い人悪い人みたいに簡単に分けちゃいがちだけど実際はかなりの多面性がありますよね。それこそ動物には優しいけれど見下している人は蹴っちゃうみたいな。これは極端な例だけど人間って本当に本音だけで生きている訳ではないので色々な方便だったり嘘だったりを使いながら生きています。
そういう感じを描くのがとても上手いんですよね。
個人的には思った事をすぐに口に出してしまうのは素直なんかじゃなくて動物的な人だと思うので優しい嘘や方便は上手く使える人こそ良い人間、良い大人だと思ってます。
そしてこの主人公の円佳も沢山の方便を使います。虚栄心も肥大していきます。

「そんなことないわよ」
「ねぇ、つーちゃんていつもどのくらい勉強しているの」貴子から真面目な顔で訊かれると、円佳は、分刻みのスケジュールを組み立てて息子に小学校を休ませてまで勉強をさせたことなどすっかり忘れ、「どうかしら…・・・・、わたし、ちゃんと見てないから、分からないのよ。水泳もあるし、あの子、学校のことも頑張ってるから、そんなに塾の勉強ばかりしているわけじゃないわ」と、たまたま優秀な子を産んでしまったぼんやりとしたお母さんという顔で、そんなふうに言っている。驚くことに、そういうことを告げる時、円佳は半分本気でそう思っているのだ。これに対し、
「やっぱり地頭がいい子は違うのね・・・・・・

翼の翼 (光文社文庫 あ 55-4) 文庫 – 2025/2/13
朝比奈あすか (著) P222


円佳の心の声は読み手に伝わるのでわかりやすいですが、
この方便や嘘を他のキャラクターに感じるようになると違和感と恐怖を覚えます。良い意味で。
円佳の夫真治も最初は子供の中学受験に全く興味の無い感じですがだんだんと豹変していきます。この豹変に行き当りばったり過ぎると感じる人もいるようですが彼の子供の頃の環境を考えると記憶の改変で自分の心のケアをしたり自分の居場所を作る人は多いんですよね。

そして真治のこの感じだと会社では仕事の出来ない同僚や部下に暴言を履いたり上手くやれないタイプだな?ってのがなんとなくわかります。見栄っ張りで虚栄心があってそういうのを上手く隠しながら生きている感じが最初の方から散りばめられているのが上手いなと。
手当が無くなるのはあるけれど支社で監督のような仕事をさせられているという表現が真治が職場でも言うほど上手くやれてないのでは?と感じました。

帰国した真治の給与は大きく下がった。海外勤務手当がなくなった上、本社の元いた部署に空きがないからと、一時的に支社の監督のような仕事をさせられているらしい。一、二年で戻れるということだったが、それまでのあいだは減給される。勤務時間が減って翼の勉強を丹念に見ることができるようになったのは良かったが、それにしても減給のタイミングが六年生の時期だったのは痛い。

翼の翼 (光文社文庫 あ 55-4) 文庫 – 2025/2/13
朝比奈あすか (著) P288

そういう真治のキャラクターがわかっているとだんだんとお受験パパになったのも腑に落ちると思います。
八歳、十歳、十二歳と年齢の間があって章が分かれているのも真治のキャラクターの心境の変化の行間を読ませるって意味合いも強いと思います。
真治の失敗した中学受験の十二歳の息子と自分重ねてみてしまっているところもかなりあると思います。

最終的には落ち着くところに落ち着くのですが、
最終的に崖っぷちで止まったのはやはり円佳と真治の育ちの対比にあると思います。

円佳の母親はそこまで中学受験に乗る気ではなく円佳を育てる時も比較的自由にさせていた事。
逆に真治の家庭は父親が医者で優秀な兄もいる環境。
真治の受験の時はプレッシャーと暴力もあった。
そういう家庭での心の中での反発と良かった思う部分を肥大化させた記憶の改竄。真治は基本心が強くなくでも優しいタイプの人間だったのでしょう。
その二人が本音でぶつかったからこそ最終的に崖っぷちのところで踏みとどまったんだと思います。
これは単純に中学受験をさせるような親や家庭が悪くてのびのび育てる方が正解なんて単純な話では無いんですよね。
勿論自分の虚栄心やプライドから子供をアクセサリーのようにしてしまう親もいます。だからと言ってのびのび育ててるように見えて実は無関心だったり面倒だと内心思う親もいます。
実際地域によっては荒れている小中学校もある訳で子供の教育や人生を考える場合上辺だけ取り繕って荒れている公立学校の問題を正面から話題にすると「差別」だとか安易に考えて向き合う事を躊躇するのも個人的には間違っていると思います。
検討の段階ではあらゆる事を想定しておくのが大事ですね。
真治の親も歪んでいる感じがします。その影響がかなり強くて真治も歪んでしまったのでしょう。しかし真治の親も悪かと言われると今の価値観で全てを断罪してしまうのも違う気もします。それぞれに正義ってありますしね。
なんとなく真治の父親も子育てやコミュニケーションの歪みの後悔が少なからずあるような気もしますがどうでしょうか?

ただやはり真治もそうですがああいう人を追い詰めてしまうようなやり方はやはり良くないですね。居場所が無くなってしまうし他人に対しても歪んだ接し方しか出来なくなりそうなので。負の連鎖になります。
円佳も勿論流されやすく影響を受けやすいタイプです。
でもこの二人が成長できたのもやはり子供の親になったからなのでしょう。
人は子供の親になっても学べない人も多くいます。
それは劣った者(自分から見て劣ったものに見える者)から学ぶ事は無いと思い込んでる人。
自分は子供の頃から早い時点であまり優れたものを持っていない人間だと思ってしまった人間なので優れた側と劣った側を誰かが分けた時必ず劣った側の人間です。
グランドに出て球技をする時に仲間分けで「いるいらん」ジャンケンでいらん方に必ず分けられるタイプ。
学力でもテストや受験の「いるいらん」でいらん方に分けられるタイプ。
なので割と早い時期におかげで足るを知るを知ってしまった部分はあります。

でも早い時期に足るを知って良かった事は、早い時点で人は常に多かれ少なかれ他人を馬鹿にしたり見下しながら生きている。という事も併せて知れたこと。他人の勉強が出来ない、スポーツが出来ない、ゲームが出来ない、アニメに詳しくない等々。。

どちらかというと世の中学歴やお金がある人が学力やお金がない人を見下して醜く描かれている事も多いですが、世の中学歴やお金だけでなく運動や容姿、芸術など色んな才能でもそういう見下しは当然あります。
逆に金持ちを色々理由をつけて馬鹿にする人たちもこの世の中には沢山いるんですよね。貧乏自慢、ドブネズミ自慢。そういうのを見ると立場は違うけど結局醜い人は醜いよなぁと思ったりした訳です。勿論自分の中にもそういう醜さはあるので上手く付き合っていきたいなとも思うのですが。

貧乏人にも金持ちにもそれぞれの悩みがあります。
視野が狭いとどうしても人を見下したり軽んじたりする事が多くなると思います。書かれていない部分も含め円佳と真治と翼がそれぞれ足りない部分を補う形でそれぞれ劣った者(自分に足りないものを持っている者)から学んでパーっと最終的に視野が広がったんだなぁという解釈に自分はなりました。

受験も確かにしっかりと結果が出てしまうけれど、
受験の準備でやった勉強は全く無駄にはならない物です。
受験勉強に限らず特に何かに真剣に打ち込んだ若い時の時間はとても大切な経験だと思います。勿論やらされて惰性で受験勉強をした人もいると思いますがそれだって全部が無駄にはならずにその人の血や肉になっているはずです。

だから希望通りに行かなくても良いじゃないかとやはり受験するお子さんにも親にも思っていて貰いたいですね。
志望校を決めて受験をすると子供が決める事。それに合わせて準備する事。それこそ凄い成長だと思います。惰性で何もやらなかった人と自分で選んで何かを続けてきた人ではやはり内面の成長が違いますね。

あとこれは前の「普通の子」でも書いた私の感想ですが、

虐めやトラブルから「逃げろ」という人が居るけれど個人的にはあまり好きじゃないし言いたくない。
「逃げろ」ってひたすら後ろ向きに聞こえるし、言われた方も負い目を感じる。
環境を変える、進学先を考える、進路を変える、ライフスタイルを変えるは別に逃げる事じゃない。「選択」でありその選択はより良い自分の人生を歩む為のその人の正当な権利である

それと同じような言葉がこの小説にも出てきてちょっと嬉しかったですね。
朝比奈あすか氏の書きたいテーマと自分の考えが少しフィットしてる気がして。だから読みやすく感じるのかもしれません。

言われたの。『お母さん、息子さんは脱落したんじゃなくて、選択したんですよ』って。その時に、中学受験はコンコルド効果との戦いだって聞いたのよ」「コンコルド効果?」
「人間の心理状態のことよ。「ここまで費やしたんだから』っていう思いで引き返せなくなる心理」
「あ、もうそれ、言いたいこと全部分かるわ」
林が苦笑する。
「でしょう。学年が上がるごとにかかる費用も増えてきて、時間も労力もかけて、ますます、離脱できなくなるじゃない。本当は、過去に費やしたものと現在の状況とを切り離して意思決定をするべきなのに、人間なかなかそれができないから、賭け事とか、企業のプロジェクトとか、時には国家の決定も・・・・・泥沼にはまった結果の悪手の例ってたくさんあるのよ。でも、楠田さんはそこにはまらずに意思決定をしたのですから、これは『脱落』
じゃなく立派な「選択』でしたよって大日の先生に言ってもらえて、わたし、初めてわんわん泣いた。泣きながら、あの夏に山から帰ってきた夫が『山登りの鉄則は、危険を感じたら引き返せ、だ」って言っていたのを思い出したの・・・・・・」

翼の翼 (光文社文庫 あ 55-4) 文庫 – 2025/2/13
朝比奈あすか (著) P306

個人的にはやはり世の中を引っ張っていくのはしっかりと学力の高いそして自分で考えて選択できる人達でしょう。
だから中学受験をするような子供達はこれからの世の中を引っ張っていく中心で間違いないと思います。でも中学受験や良い学歴が全てと感じて学歴が全ての価値だと思ってしまう人間は結局どこかで必ず大失敗をします。
人間は神にはなれないですからね。
気づかずに敵を多く作ります。それって実は賢い生き方ではないんですよね。根本的には力が強くて人を傷つけ忌み嫌われる不良と同じ。
強い者、優れた者が全てを支配するという考えはいつか必ず訪れる力の衰えや自信の衰えが来た時に足元から崩れていきます。大きな後悔と共に人によっては命まで。
賢い生き方をしてると思ってる人が実は虚栄心の大き過ぎる馬鹿。
たまにいますが周りから馬鹿にされたり敵意を持たれるタイプ。
人には色々な得て不得手があり学歴やスペック表には現れない才能もありますから。

だからこそ他人や物など色々なものに敬意を持って過ごすべきでしょう。
多少テストの点数や学歴が上でも他者を軽んじる人、他者に敬意を持って過ごせない人の未来は暗いです。
逆に敬意を持って多くの人と接すれば自分が足りない物があっても多くの人が手助けしてくれるでしょう。学びも多いでしょう。
実際にそんなお金持ちで性格も良く他人を気遣える人が居て世の中不公平だなオイっ!!と個人的に思う事もあります(笑)
多かれ少なかれ自分も含めて人間も感情の生き物なので時には雑に色んなものを扱ってしまう事もありますが日々反省しながらたまに立ち止まって丁寧に毎日を過ごしていきたいですね。自分もボロは着てても心は錦!と思って中々そういう人間には慣れてないですが思い続ける事も大事です。

改めてそんな事を考えさせてくれる一冊となりました。
ぼんやりとでもお子さんの中学受験を考えている方にもおすすめですね。
家庭の幸せは人生の基盤になる部分だと思うので目的と手段が逆転してしまわないように上手く受験と付き合っていきましょう!

うむ。。やはり文章が下手なので全く読書感想文の程を成してないですがお許しください。自分が思った事をつらつらと書いた乱文をここまで読んでくださりありがとうございました。

最後にSNSや口コミなどでもマウント取りたい人、そうなってしまう人っていますよね。そういう人が解像度高く書かれてるのも感心したり笑っちゃったり。この本と現実世界がリンクしてる感じが好きです

最近、掲示板にこんな投稿を見た。
<サクラサクヒマデって人、他人を励ますように見せかけて所詮は自慢話ばかりだよね。
四年生の親、決勝大会経験者の親、大規模校エスワン、国語男子、ひとりっ子、ダンナさんが海外赴任中。身バレしそう>
<それ思ってた。高度なマウント取りしてくる人だよね>これを見て一気に怖くなり、以来、掲示板を覗くのをやめたのだったが、発散しどころがなくなったからだろうか、最近、自分がいつも苛々している気がする。次のテストのことを思うと気が気でない。心が落ち着かない。

翼の翼 (光文社文庫 あ 55-4) 文庫 – 2025/2/13
朝比奈あすか (著) P230




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