「ムーンライトエイリアンズ」第3話
人物表
鷲宮星彦(16)宇宙人
竹中光(16)宇宙人
叶温子(36)トゥウィンクル幼稚園園長
スカイ=テリア(22)宇宙人
本文
○トゥウィンクル幼稚園・園庭
人気のない園庭に私服姿の鷲宮星彦(16)と竹中光(16)がいる。二人
の前には竹製の壊れた帆船がある。
星彦「(M)7月13日、土曜日、天気晴れ。僕は今、幼稚園に来ている」
二人の後ろから叶温子(36)が歩いてくる。温子はサイドを刈り上げ、後
ろで一つに束ねた髪型で、眼鏡をかけている。ピンク色のエプロンをつけた
上に白衣を羽織っている。
温子「おーおー可哀想に。こんなハデに壊されちゃって。痛かっただろうによぉ」
温子は帆船の前に立ってポケットからスマホを取り出す。
星彦「(M)久住に壊された帆船を直すために幼稚園に来ている。……何でも、このチグハグなファッションの変人が、竹中さんが言ってた“当て”らしい」
温子はスマホで帆船の写真を撮る。すると帆船はその場から消える。
温子「うぃ、じゃ下行くぞー」
○同・園庭・倉庫前
林に囲まれたボロボロの倉庫の前に星彦と光と温子の3人が居る。温子は眼
鏡をずらし左目を鍵穴に近づける。両目の下には小さな黒い三角の模様が入
っている。
星彦「(M)月の使徒として最近地球に送り込まれた竹中さんが言う当て、ということは、この女も月の民……」
温子が鍵穴から目を離すと、倉庫からガシャンと大きな音が響く。すると倉庫が一人でに開く。倉庫内は階段になっており、3人は階段を下っていく。その様子を林の陰から何者かがのぞいている。
○倉庫内・ラボラトリー
階段の下は体育館程度の広さの実験室になっている。薄暗い室内をネオンの
電飾が照らしている。蛍光色の液体が入ったビーカーや、色とりどりの果実
がなっている植物、体が金属でできている機械の馬など、雑多に発明品が散乱している。ある一角には、様々なゲームのアーケード筐体が置かれている。
星彦「すっご……」
光は機械の馬に乗ろうとしている。
温子「おうよ、満ち満ちたロマンで窒息死すんじゃねえぞ」
温子はスマホを取り出し、画面を上にスワイプすると、温子の正面に壊れた
帆船が現れる。
星彦「うわ!」
光は馬に乗るのを諦めて帆船に近づく。
光「どう……?」
温子は遠慮なく帆船の上に立ち、観察を始める。
温子「んー……、大体はここで直せないこともないんだけど、ここだけはどうにもならんなぁ」
温子が帆船から薄黄色に光る球体を取り出す。球体は一部が欠けている。
星彦「なんなんですか? それ」
温子「アンチグラビティコア。分かりやすくいえばこの子のエンジンみたいなもん。これが機能してない状態で宇宙空間に行く、ってのはロマンチックなだけの自殺だな」
光「……どうすればいいの?」
温子「うーんとなぁ……」
温子は星彦をチラリと見る。
温子「……腹へったな」
星彦「え?」
温子「少年、チーズバーガーケチャップ抜き、テリヤキバーガー4つとポテト3つを買ってきてくれ。ドリンクはミルクで頼むよ」
星彦「え? 今ですか?」
温子はスマホを操作する。
温子「一万円で足りるだろ」
星彦「あ、はい、多いくらいですけど……」
温子「送っといた。頼んだぞー」
星彦は戸惑った様子でラボラトリーの階段を登っていく。
○トゥウィンクル幼稚園・倉庫前
首を傾げた星彦が倉庫から出てくる。倉庫の前にはスカイ=テリア(22)
が腕を組んで仁王立ちしている。スカイは全身が水色の毛で覆われており、
人間のような顔立ちでありながら、犬のように尖った耳を持っている。
星彦「うーん……」
スカイ「待ってたぜ、地球人」
星彦はハッと顔を上げる。
スカイ「俺様の名前はスカイ=テリア! プロキオン星が誇る天才ハンターだ!」
星彦「……地球に何の用だ」
スカイ「随分肝が座ってんなぁ! 俺の目的はお前じゃなくて、一緒にいた月の民の女だ!」
星彦はゆっくりと周囲を見渡す。
スカイ「端からあの女が出てくりゃ手っ取り早かったんだが、お前を人質にするって手もアリだなぁ!」
スカイは左腕を掲げて手を鳴らす。すると星彦とスカイの周囲に青白い光が
無数に現れる。
スカイ「罠を仕掛けた! なんてったって天才だからなぁ!」
二人の周囲の青白い光の点が線でつながり、犬の形を成した半透明の生命
体が大量に現れる。
星彦「……多いな」
スカイ「殺すなよオメェら! 殺さねぇならなんでもアリだがよ!」
○倉庫内・ラボラトリー
光と温子が向かい合っている。
温子「話したいことは何個かある。まず、この子のことだが……」
温子は壊れた帆船をペチペチと叩く。
温子「直せるのは早くて一年後になるな」
光「……そんなにかかるの?」
温子「地球でコアを直すのは不可能だ。技術面以前に、素材が無い。地球でその素材を手にいれる唯一で最短の機会が来年の7月7日になる」
光「……天之河原祭?」
温子「そ! 地球に星が一斉に集まる日なら、どうにかしてコアの代替品を手に入れられるかもしれない」
光「大変……」
温子「他の星に協力を頼む手もあったんだが、それも出来ないからな」
光「……ゲームやる時間がなくなるから?」
温子「ハッハッ! バカにすんなよ! 光に懸けられた懸賞金だよ!」
光「あっ……忘れてた……」
温子「光に懸けられた懸賞金は、宇宙の情勢を簡単に変えれる程だと聞いている。そんな金が手に入れられたら、銀河を支配できるかもしれない。動かない星のほうがバカだよ」
光「私ってそんなすごいんだ……」
温子「こんな状況になってしまったんだ。月も迂闊には動けない。だから、7月7日を待つしか無いんだ」
光「すごすぎても良くない……」
温子「それから、もう一つ……」
○トゥウィンクル幼稚園・倉庫前
青白い光の犬達が力無く光って倒れている。その中にボロボロになったスカ
イも仰向けに倒れている。
スカイ「……はっ! はぁはぁはぁ……」
倒れているスカイに向かって、汚れが一つもついていない星彦が歩く。星彦
の左目は赤くなっている。
星彦「色々聞きたいことがあるが、まずは……」
星彦はスカイの腹部を踏みつける。
スカイ「うっ……!」
星彦「お前みたいな雑魚を、誰がハンターとして認めてるんだ?」
○倉庫内・ラボラトリー
温子は眼鏡を外して光の目を見ている。
温子「あの地球人を、信用しすぎるなよ」
光「えっ……、どうして……?」
温子「これは私の勘以外の何物でも無いんだがあの地球人は、何か光に隠し事をしている。……気がする」
光「……だからあんな買い物に行かせたの?」
温子「ああ、私はハンバーガー嫌いだからな」
光「私は好き……」
温子「あの地球人にこだわることはないからな。……まぁ、私の勘に過ぎないんだが」
光が少し俯く。
温子「……測らずして時間はできたんだ。よく考えてみてくれ」
○トゥウィンクル幼稚園・正門前(夕)
温子、星彦、光の3人が正門の前で喋っている。温子は右手に紙パックの牛
乳を持っており、星彦は左手にハンバーガーが入ったビニール袋を持ってい
る。
温子「ま、いつでも来てよ。平日は子供達がいるから来ても無視するけどな」
星彦「あの、温子さん……、ホントにこれいいんですか?」
星彦は左手のハンバーガーを掲げる。
温子「おう、私は微塵も要らないからな。いつも頑張っているであろう君へのご褒美だよ」
星彦「は、はぁ……」
温子「光、何かあったらいつでも連絡しろよ。些細なことでもな」
光は頷く。
○住宅街(夕)
星彦と光が隣り合って歩いている。
星彦「……つまり、今は何もできないってこと!?」
光「……温子さんが言うには、そう」
星彦「それは、困るなぁ……」
光「……君は、なんでそんなに手伝ってくれるの……?」
○(回想)倉庫内・ラボラトリー
温子「あの地球人を信用しすぎるなよ」(回想終わり)
○(元の)住宅街(夕)
星彦「何で、かぁ……、船が壊れたのに僕が関わってるからってのもあるけど……」
光は星彦の横顔をじっくりみている。
星彦「今は、竹中さんと居ると楽しいから、かもしれない」
星彦が笑って答える。光はスッと視線をそらす。
光「……一年待たなくてもいい方法、一つだけ思いついてる」
星彦「え! 何?」
○倉庫内・ラボラトリー(夕)
倉庫内で温子が椅子に腰掛け、両膝に肘を置き、手に顎を乗せている。
温子「……さて、まずどこから聞かせてもらおうか。君の好きな食べ物か、君の地元のことか、趣味も気になるな。趣味は人生に色彩をもたらしてくれるからな。……まぁ今はどうでもいいか。聞かせてくれるか?」
温子の前には手足を椅子に括り付けられたスカイがいる。スカイはボロボロ
の格好で、右耳が欠けている。
温子「君をそんなにした相手について、聞かせてくれるかな? 詳しくね」
○住宅街(夕)
星彦が驚いた様子で光を見ている。
星彦「懸賞金を取り下げさせる!?」
光「うん」
星彦「言ってる意味わかってるの!? 竹中さんには宇宙を変えられるほどの懸賞金が懸かってるんでしょ!? それを取り下げさせるなんて……」
光「すごい大変だと思う……」
星彦「それどころじゃないって! 死ぬほど危険なんだよ! 全宇宙が君を狙っているんだ! そんな状況で竹中さんが動くなんて……」
光「大丈夫、君がいる」
星彦の言葉を遮ってを光が遮る。
光「私一人じゃない、君が、鷲宮くんがいる」
星彦は何も言えずに顔を赤くする。
光「だから何をすればいいのか、一緒に考えてほしい……」
星彦は息を漏らしたような、乾き切った笑いが口から出る。
星彦「……とにかく、まずは情報を集めようか」
二人の頭上の夕暮れ空に、明けの明星が瞬いている。
第4話
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