「ムーンライトエイリアンズ」第2話
人物表
鷲宮星彦(16)高校生
竹中光(16)宇宙人
久住公晴・インディゴ(17)
徳永雅(16)光の友人
新川椿(16)光の友人
鈴谷茉子(16)光の友人
ダダルダ(50)アルタイル星人
安達晃一(36)星彦の担任教師
少年(5)
本文
○星琴高校・教室(朝)
教室内では生徒達が各々自由に過ごしている。教室の後ろの席に竹中光(1
6)が座っており、その周囲に徳永雅(16)と新川椿(16)と鈴谷茉子
(16)が集まっている。その近くの席に鷲宮星彦(16)が座っている。
雅「ホントなんだって! 光ってるウサギがいたからついて行ったら、化学室にウサギの親分がいて、親分とお話聞いてたら寝ちゃってて、気づいたら家にいたの!」
椿と茉子が困った顔をしている。
茉子「……それで、帰るのが遅れたって?」
雅「そうなの! お姉ちゃんとご飯食べにいく約束だったのに行けなかった!」
茉子「ふーん……」
雅「信じてないでしょ!」
椿「ア、ハハ……、私も茉子も、ミヤの不思議な話はいつも夢の話だと思って聞いてるから……」
雅「え! 何それ! ショック!」
茉子「竹中さん、どう思うよ。こんな子」
光はゆっくりと顔を上げて雅を見る。
光「……全然聞いてなかった」
茉子と椿は呆気にとられたように光を見る。教室後方の扉が開くと、頭に包
帯を巻いた久住公晴(17)が入ってくる。公晴は気まずそうに星彦を見て
いる。
公晴「……鷲宮、おはよ……」
星彦「おう、おはよう」
星彦は明るい調子で挨拶を返すが表情は固く、冷たい眼差しで公晴を見る。
○(回想)とある星(夜)
辺り一体には倒壊したマンションや、炎を上げる車、抉れた地面など、荒廃
した景色が広がっている。その中でボロボロの黒いローブを着た少年(5)
がトボトボと力無く歩いている。少年はフードを深くかぶっており顔が見え
ない。少年の周りには、既に死体となった者や、泣き叫ぶ子供など、凄惨な
景色が広がっている。少年は、足元に転がっていた死体で躓いて地面に倒れ
込む。少年はゆっくりと立ち上がる。膝は血で滲んでいる。立ち上がった少
年は頭上を見上げる。
少年「(M)この日、僕が住むこの星から笑顔が消えた」
少年の視線の先には綺麗な満月がある。(回想終わり)
○星琴高校・教室
教室では生徒たちが机に向かって静かに小テストを解いている。黒板の前に
は安達晃一(36)が立っている。
安達「結果次第でテスト範囲教えてやるからなー。ほどほどに頑張れよー」
星彦は小テストを解き終え、机にペンを置く。
光「(M)放課後船のとこに来て……」
星彦「えっ!?」
星彦が大きな声で驚くと、生徒たちが一斉に星彦の方を見る。
安達「なんだぁ鷲宮、だいぶタイムラグがあってのリアクションじゃねぇの。知ってるか? テスト中は静かにするもんだ」
星彦「あぁ……はい……」
星彦はゆっくりと光の方を見る。光は机に突っ伏している。
○同・校舎裏(夕)
人気のない校舎裏には壊された竹製の帆船が置いてある。帆船に向かって、
肩にバッグをかけた星彦と光が歩いている。
星彦「急に僕だけに話しかけるのやめてよ竹中さん! 怒られたじゃん」
光「あんな驚くと思わなかった……」
星彦「テレパシーずるいよ。僕からは竹中さんに送れないんだし」
光「かわいそう……」
壊れた帆船の前まで来ると二人は、その場にしゃがみ込む。
星彦「……そういえば、竹中さん、昨日の徳永さんの記憶めちゃくちゃにしたでしょ」
光「何で知ってるの……?」
星彦「席近いからね。聞こえてたよ。あれどうやったの?」
光はバッグからズーンを取り出す。
光「……これ、月にいた時、作ってもらったの。……好きに録音して聞かせると、その通りの記憶を植え込める、って言ってた。地球人はまだ、私とか、魚星人みたいなのがいるの知らないみたいだから……」
星彦「だからってあんなめちゃくちゃな記憶じゃなくても……」
光「……でもみんな気にしてなかった」
星彦「……まぁ徳永さんだったからね」
光はズーンを星彦に渡そうとする。
星彦「……ん?」
光「……あげる。私が使うと面白すぎちゃうから……」
星彦「あぁ……まぁ今後あんなことがないのがベストなんだけど」
星彦は光からズーンを受け取り、自分のバッグに入れる。
星彦「……しかし、これどうやって直そうか」
星彦は帆船の方を見る。
光「考えてくれてたんだ……」
星彦「まぁ、昨日あんなこと言ったし」
星彦は帆船のかけらを触る。
星彦「でも、そもそもこの素材がなんなのか……」
光「……それは、当てがあるから大丈夫」
星彦「え? アテ?」
星彦は光の方を見る。その時光のバッグがモゾモゾと動いており、星彦はそ
れを不思議そうに見る。
星彦「……え、何これ」
星彦は光のバッグに触れようとすると、中から勢いよく兎が出てくる。
星彦「うわっ!」
星彦は驚いて尻餅をつく。
星彦「はっ! コユウザをバッグの中に入れてるの!? 何で!?」
光はそんな星彦を見る。
光「フッ、フフフッ、アハハッ!」
光は星彦を見て満面の笑みで笑う。星彦は顔を真っ赤にして、照れたように
笑う。
○鷲宮家・前(夕)
住宅街の中、星彦は肩を落として歩いている。家の前に着くと、玄関の鍵を
あけ、家に入っていく。
○同・リビング(夕)
生活感のない殺風景な部屋の中で、星彦はジャケットを脱いでベッドの前に
移動する。ネクタイを外すと、星彦はベッドに仰向けに倒れ込む。深くため
息を吐くと、目元を右腕で隠す。
○(回想)AMA・教室(夜)
T―アルタイル星
ボロボロの教室の中、宇宙人のダダルダ(50)がホワイトボードの前に立
っている。ダダルダの体は全身黄色で、左目に眼帯をつけている。身長は
2mほどで、右腕は金属製の義手になっている。教室内の電気は消え掛かっ
ており、窓ガラスも割れている。ホワイトボードの上には
“Altair Military Academy”と書かれている。
ダダルダ「かぐやを殺せ。月を堕とすんだ」
ダダルダはホワイトボードの前をゆっくりと歩く。
ダダルダ「……月の民はじきに、地球人の生贄を求めて地球に降り立つ。奴らは意味も考えず伝統を重んじる馬鹿共だから、地球には次期かぐや姫候補の娘を送り込むはずだ」
ダダルダは義手の指先から煙草を取り出し、火をつける。
ダダルダ「つまり、お前は地球人として娘に近づき、生贄として月に潜入するんだ。……わかってるな?」
ダダルダは煙草を吸って、煙を吐く。煙の流れる先には、背筋をぴっちりと
伸ばし、険しい表情をした星彦が立っている。
ダダルダ「かぐやと、次期かぐやを殺せ。そうすれば、月は堕とせる」
星彦「はい」
ダダルダ「お前の地球でのコードネームは、『鷲宮星彦』になる。身に慣らしておけよ」
星彦「……はい」
ダダルダ「……どうした。不安か?」
星彦「……少し」
ダダルダ「……忘れた訳じゃないだろうな。月の民が、我々に何をしたのか。何をされたのか。お前とも、あろう者が」
×××
荒廃した星で、ボロボロのローブを着た少年が月を見上げている。風が吹
き、フードが取れる。幼少期の星彦の顔が顕になる。
×××
星彦「……いえ、忘れるはずがありません」
ダダルダ「言うまでも無いことだが、情なんて物を芽生えさせるなよ。我々の復讐には己の怒り以外は不要な感情だ」
星彦「はい」
○星琴高校・校舎裏(夜)
壊れた帆船の前で弱って倒れているインディゴ(17)を星彦が縄で縛って
いる。
インディゴ「……鷲宮、お前は知らねえんだ。そこにいるお姫様は怪物だ。お前は、この宇宙のことを……」
星彦「……黙ってろ」
インディゴ「お前みたいなただの地球人が片足突っ込んで平気でいられるような話じゃねえんだぞ……」
星彦「黙れ」
星彦は冷たい表情でインディゴを見る。星彦の左目は赤色に変色してお
り、髪の毛がウネウネと動いている。
インディゴ「お前……! ラクタッ……!」
星彦がインディゴの首を思い切り掴み、インディゴを黙らせる。
星彦「余計なことを言うな。余計な真似もするな。……お前は明日からもこれまで通り地球人として過ごせ。お前は僕の監視下にある。お前の生き死には僕が握ってる」
星彦はインディゴの首から手を離す。
インディゴ「……っはぁ、はぁ。……まさか“笑わない星”の使徒までいたなんてな。ロクな学校じゃねぇな……」
星彦「……わかってるとは思うけど、奴に手を出すなよ。竹中光は、僕のターゲットだ」
インディゴは唾を飲み込む。星彦の目と髪の毛は元に戻る。
星彦「頼んだからね? 久住」
×××
壊れた帆船の前に、兎を抱えた光が立っている。その一歩後ろに星彦が立っ
ている。
光「直せるかな……」
星彦「……僕も、手伝うよ」
光「……えっ」
光が星彦の方を見る。
星彦「いやっ、全然、そんなことできるかわからないけど、僕も、関わってるわけだし……」
光「いいのっ!?」
光は驚いたような笑顔で星彦を見ている。星彦の耳が赤くなっていく。
星彦「(M)あの日、月の民が襲撃してきた日、僕がいたアルタイル星から、笑顔が消えた」
(回想終わり)
○(元の)鷲宮家・リビング(夕)
星彦がベッドの上で仰向けで寝ている。目元を右腕で隠し、顔を赤くして
いる。
星彦「(M)どうすればいいんだ……! 僕はアイツを、竹中さんをどうしたいんだ……!」
第3話
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