斜めにするな!円グラフは嘘をつく/科学者は決して使わないその理由
はじめに
パイチャートって知ってる?
円グラフと言った方が馴染みがあるかもしれない。
お空の星は明るいあかり、そらのあかりだよ!
実は、真っ当な科学者ならこのパイチャートは決して使わない。
単なる好き嫌いの問題じゃない。
グラフの機能として、致命的な欠陥があるからなんだ!
イカサマグラフをシリーズ化するとか言っておきながら、
棒グラフだけで止まってたわたしを許して!今日は正式なイカサマグラフシリーズ、その2だよ!
本当に問題なのは棒グラフじゃないんだ。
今日の主役であるパイチャート・・・
そう、円グラフなんだ。
さて、さっそく本題に入ろう。
嘘をつくパイチャート
いきなり1番ひどい例からだそう。これはもう印象操作というか悪意しかない例。でも、ほんっっっっとうによく見かける。みんなも気をつけるんだよ。
以下のA〜D社の商品のシェアを示すパイチャートを見て。

左上はA社が、右上はB社が、左下はC社が、右下はD社がもっとも高いシェアを占めているって、「パッと見て」感じなかった?
みんなならもう気づいたかもしれないけど、この4つのグラフ、全て同じデータを使ってプロットしたもの。
これ、パイチャートを斜めから見た視点に変えて、データの開始角度を変えただけ。全てエクセルに標準的に備えられている機能だ。もう一回いうけど、数値は一切いじっていない。
人間の目は、面積が大きいものを重要視するようにできている。
だから、重要視させたいものを面積が大きく見える手前に置いただけ。
ここで思い出して欲しい。そもそもグラフは何のために存在するのか。
そう、データをパッと見てわかりやすくするために存在している。
それなのに、この斜めからみたパイチャートはデータをパッと見てわかりにくくするために使われているんだよ。
はっきりいうよ。
パイチャートを斜めから見た図は、相手を騙すときに「しか」使われない。データを正しく読めなくする目的は、他にあり得ない。
相手がこんなグラフを見せてきたときは、絶対にこちらを騙そうとしているときなんだ。絶対に・・・だよ!!例外はひとつたりともない。
Microsoftはエクセルにこの機能を何のためにつけているのか。
わたしはずっと廃止するべきだと主張し続けている。
だって、人を騙すためだけの機能だよ?
「嘘をつかないデータ」を扱うソフトに「人を騙す機能」はいらない。
もちろん科学者はデータを見やすくするためにしかグラフをつかわないし、人を騙すようなデータをグラフにのせることもない。だから少なくとも、この斜めからみたパイチャートは決して使わない。
もし使っている(自称)科学者がいたら、絶対に信じちゃだめだよ!!
そして、もう一歩踏み込もう。
ちゃんとした科学者は真上からみたパイチャートも使わない。
それにもまた、明確な理由があるんだ。
真上から見たパイチャートも嘘をつく
次に以下のパイチャートを見てみよう。

これ、どんなデータの図だと思う?一応いっておくけど、一定の確率の現象を観測して、同じ方法で測定した結果だ。
みんな、何でもいいから予想して欲しい(経験者なら色だけでわかるんだけど、多分難しい)。あたらなくても、何を測定したらこうなるかかんがえるだけでも頭の体操になる。
この頭の体操は、以後の人生でみんなが騙されないためには必要な体操なんだ。
正解を見るためにはスクロールしよう。
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正解は、ある一定の実力をもったアーチェリー選手が射抜いた的の色の割合だ。以下にアーチェリーのマトの図を示すね。

アーチェリーは6射1エンドとして、6エンド合計36射の合計点数で競う競技がある。さっきのパイチャートは1エンド6本の矢が刺さった色の割合を6エンド分示したものだ。
もちろんこのアーチャーはプログラミングで作ったので、成績に波はなく、きっちり黄色に50%、赤に30%、青に10%、白と黒には各々5%の確率であたるという実力をもっている。
毎回これだけ異なるパイチャートが得られる最大の原因は・・・もうわかったよね?「不確かさ」だ。
コイン投げだって、表が出る確率と裏が出る確率は50%ずつだけど、表裏表裏・・・とお行儀よく出現するわけじゃなく、表表裏表裏裏裏裏表裏表表・・・のようにランダム性がある。
確率は確かに一定だけど、そのランダム性によって「不確かさ(かつて雑に誤差と呼ばれていたもの)」が現れるわけ。でも1万回くらいコイントスしたら大体5000回ずつに近い値になる。こういう「確率は一定だけど、結果はばらつく」ことを「統計的不確かさ」と呼ぶ。
さっきのアーチェリーの成績を36射全部パイチャートにしるすとこうなる。

だいぶ、本来の実力を表しているようにも見えるが、36射くらいではまだ統計的不確かさの影響で、黄色がきっちり50%にはならないし、赤だって30%にはならないのである。
物理計測でわたしたち科学者が知りたいのは「確率」。だから、この数値はこのままでは意味がない。どれくらいの「不確かさ」があるか検討しないといけないのだが・・・
・・・パイチャートには不確かさを表現する余地がないのである。
例えば棒グラフで不確かさの範囲を示してみよう。示す不確かさはガウス分布を仮定して標準偏差の2倍、いわゆる2σ・・・言い換えればこの範囲内に真の値がある確率が95%となる領域だ。

描ける・・・不確かさを描けるぞ・・・!!
何とわかりやすい図だろうか。
黄色に当たる真の確率は50%・・・つまり36本中18本という値だが、綺麗に不確かさの範囲におさまっている。
赤は30%なので、11本くらい。これは不確かさの範囲には収まっていないが、36本という計測結果で、たったの3回しか観測されなかった事象に対する値である。不確かさも大きく、仕方ない。
他の色はどうか。全て不確かさの範囲に真の値が入っているよね!
そして、95%信頼区間20個に1つのデータは不確かさの範囲から外れるわけなので、赤が不確かさの範囲に入っていないということも当然の結果として科学的に受け入れることができるってわけ。
これだけの情報がこの棒グラフにはあるわけ!測定結果にはあるわけ!
これをパイチャートで表せるだろうか!?もしパイチャートで示したら、これらの意味は全て失われてしまう。
だから、科学者はパイチャートを使わない。不確かさを示すことができないという致命的欠陥があるのだから。
おわりに
今回の記事はみんなパソコンに保存して大事に取っておいて欲しい。
まとめるよ!
斜めから見たパイチャート(円グラフ)は人を騙すために「しか」使われないので、こんなグラフを出してくる人や企業を決して信頼しないこと。
たとえ真上からみたパイチャートでも、不確かさを表現できないという致命的な欠陥があるため、科学者は使わない。
ただし、むちゃくちゃ統計がいい(例えば100万人について調べた結果とか、矢を1万本射った結果だとかの)データなら、100歩譲ってパイチャートを使ってもよい。ただし、キャプションや本文にどれくらい統計が良いデータかを書く必要がある。書かれていないなら、そのグラフは丸めて捨ててしまえ!
いかりのあかりであった。
でも、いかに知識が身を守るか・・・ということがわかったと思う。
それではまた次の記事で会いましょう!
サラダバー!
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