AIエージェントに授業用スライドは作れるか?-小学校社会科6年生- Genspark,Manus,Skyworkを徹底比較
第1章:AIは教師の仕事を減らすのか?奪うのか?
「AIが先生の仕事を奪う」
そんなセンセーショナルな見出しを、最近よく目にしませんか?
特に、日々の授業準備に追われる先生方にとって、AIの進化は期待と同時に、漠然とした不安を抱かせるものかもしれません。もしAIが、教材研究から板書計画、そして授業用スライドの作成までこなせるようになったら、私たちの働き方はどう変わるのでしょうか?
今回、私が注目したのは、特定のAIエージェント、具体的にはGenspark、Manus、そしてSkyworkという3つのツールです。
はたして、これらのAIエージェントは、小学校6年生の社会科の授業で使えるスライドを、本当に作成できるのでしょうか?
社会科は、歴史、地理、公民と多岐にわたる分野を扱い、子どもたちの思考力や判断力を育む上で非常に重要な教科です。しかし、その分、先生方にとっては準備に時間と労力がかかる教科でもあります。
もしAIが、この社会科の授業スライド作成をサポートしてくれるとしたら、それは教育現場に革命をもたらすかもしれません。
次の章では、実際にGenspark、Manus、Skyworkの3つのAIエージェントに、小学校6年生の社会科の授業スライド作成を依頼した結果を、具体的な事例を交えながらご紹介していきます。
AIが作成したスライドは、果たして授業で使えるレベルなのか?
そして、そこから見えてくるAI活用の可能性と課題とは?
ぜひ、読み進めて、その答えを一緒に見つけていきましょう。
第2章:AIエージェントとは何か?
「AIエージェント」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? SF映画に出てくるような、まるで人間のように思考し、行動するロボットでしょうか? それとも、SiriやAlexaのような音声アシスタントでしょうか?
AIエージェントという言葉は、まだ耳慣れない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実は私たちの身の回りでも、AIエージェントの技術はすでに様々な形で活用され始めています。
では、具体的にAIエージェントとは何なのでしょうか?
AIエージェントとは、簡単に言えば、「特定の目的を達成するために、自律的に判断し、行動するAIプログラム」のことです。
もう少し詳しく見ていきましょう。AIエージェントには、いくつかの重要な特徴があります。
環境を認識する能力(Perception): AIエージェントは、センサーやデータを通して、現在の状況や情報を認識することができます。例えば、天気予報AIエージェントであれば、気温、湿度、気圧などの気象データを認識します。
思考・推論する能力(Reasoning): 認識した情報に基づいて、AIエージェントは論理的に思考し、次に取るべき行動を推論します。例えば、オンラインショッピングのAIエージェントであれば、ユーザーの過去の購入履歴や閲覧履歴から、次に興味を持ちそうな商品を推論します。
行動する能力(Action): 推論した結果に基づいて、AIエージェントは具体的な行動を実行します。これは、データの出力、ロボットの動作、システムの制御など、多岐にわたります。
目標指向性(Goal-oriented): AIエージェントは、あらかじめ設定された目標を達成するために設計されています。その目標を効率的かつ効果的に達成するために、一連の行動を選択します。
今回注目するAIエージェント
今回の記事で扱うGenspark、Manus、Skyworkは、まさにこのAIエージェントの概念に基づいています。これらのAIは、単に質問に答えるだけでなく、与えられた指示(「小学校6年生の社会科の授業スライドを作成せよ」)を理解し、その目標を達成するために必要な情報収集、内容の構成、視覚的な表現などを自律的に行おうとします。
従来のAIが、与えられたタスクを一つずつこなす「道具」だとすれば、AIエージェントは、より複雑な問題に対し、自ら考えて「解決策を実行するパートナー」に近い存在と言えるかもしれません。
Genspark(ジェンスパーク)
Gensparkは、複数のAIエージェントが連携して動作する点が最大の特徴です。これにより、単一のAIでは困難な複雑な調査タスクに対応し、多角的な視点から情報を収集、比較検討して、より包括的な理解を深めることを得意としています。特に「AIスライド」機能は、YouTube動画の要約からスライド作成までこなすなど、情報整理と視覚化に強みを持つとされています。
Manus(マヌス)
Manusは、中国発の自律型AIエージェントとして注目されています。最初のユーザープロンプトを与えるだけで、複雑なタスクを最初から最後まで自律的に完遂できることを謳っています。
Skywork(スカイワーク)
Skyworkは、文書、スライド、表、音声、Webといった複数の形式のコンテンツを一括で自動生成できるAIエージェントです。特に「出典付き」で信頼性の高いコンテンツを生成できる点を強みとしています。
次の章では、実際にこれらのAIエージェントが、小学校の授業スライド作成という具体的なタスクにおいて、どのような能力を発揮するのかを見ていきます。果たして、彼らは私たちの期待に応えてくれるのでしょうか?
第3章:AIエージェントへの指示と期待
さて、いよいよ本題です。Genspark、Manus、SkyworkといったAIエージェントたちが、実際に小学校6年生の社会科の授業スライドを作成できるのかを検証します。
今回、AIエージェントに与えた指示は、極めて具体的かつ実践的なものです。

まず、教育出版の小学校6年生の社会科教科書、「P.100とP.101」の画像をAIエージェントにアップロードしました。この2ページには、東大寺の大仏建立に関する詳細が記されています。
大仏建立の目的と経緯: 聖武天皇が疫病や飢饉、反乱が広がる中で、仏教の力で人々の不安を鎮め、国を守ろうと考えたこと、そのために全国に国分寺を建て、都に東大寺を建立し大仏をつくることを決めた経緯が説明されています。
大仏の規模と材料: 大仏の高さや耳、手のひらの大きさといった規模、そして大仏の材料(銅、錫、水銀、金など)の産出地が図で示されています。
大仏建立に関わった人々:
・聖武天皇の命令: 743年に出された命令文が引用され、大仏建立への決意と、一般の人々にも協力を呼びかける姿勢が示されています。
・行基: 渡来人の子孫である行基が人々に仏教を広め、土木工事を行って人々から慕われていたこと、そして聖武天皇が彼を大仏づくりに協力させたことが書かれています。行基の協力が、人々の力を集める上で大きな力となったと説明されています。
・工事の責任者: 優れた技術を持つ朝鮮からの渡来人の子孫が工事の責任者に任命されたことが述べられています。
当時の社会状況: 平城京の賑わいの一方で、農民が税や遠隔地での労働の負担に耐えかねて農地を捨てる状況や、伝染病、飢饉、貴族の反乱によって世の中が混乱していたことが触れられています。
開眼供養: 752年に行われた東大寺大仏の開眼式について、1万人を超える人々が参加し、インドの僧も招かれた盛大な式典であったことが記されています。
これらの情報が詰まった教科書の画像をアップロードした上で、以下の指示を与えました。
「添付ファイルは小学校6年生の社会科の教科書です。
教科書の記述や写真、挿絵などを分析し、授業で使うためのスライドを作ってください。
その際、小学校6年生が見やすいように文字や図表を大きめにします。
スライドの余白は少なめにします。」この指示には、単に教科書の内容をまとめるだけでなく、小学校6年生という対象年齢に合わせた「見やすさ」と「分かりやすさ」を追求する意図が込められています。
具体的には、「文字や図表を大きめに」「スライドの余白は少なめに」といった、実践的なデザインに関する要望も盛り込みました。
果たして、これらのAIエージェントは、この複雑な指示をどこまで理解し、私たちの期待に応えるスライドを作成してくれるのでしょうか。
単に情報を羅列するだけでなく、子どもたちの興味を引きつけ、学習効果を高めるような工夫がなされているのか。
次の章では、それぞれのAIエージェントが生成したスライドを具体的に見ていきながら、その実力を検証していきます。
なお、どのAIエージェントもスライドの作成には「クレジット」を消費します。今回は、すべて無料版で行いました。無料版でも、それぞれのAIエージェントは、毎日クレジットを配付してくれます。
Genspark:1日200クレジット
Manus:1日300クレジット
Skywork:登録初月は毎日500、登録2か月目からは毎週500クレジット
クレジットの消費量も比較してみましょう。
第4章:出力の実際
Genspark(出力4枚)




・教科書の内容をかなり省力している。
・画像は出力されない。
・学習用の問いはない。
・全体的にあっさりしている。
・使用クレジット:109クレジット/200(日)
Manus(出力8枚)








・教科書の画像を使っている場所があるのはよいが、切り取り位置がおかしい。(教科書画像は授業で使う場合問題ない。)
・画像はネットで検索し、必要なものを挿入している。
・学習用の問いはない。
・レイアウトが見やすく、うまくまとまっている。
・使用クレジット:204クレジット/300(日)
Skywork(出力8枚)








・教科書の内容だけではなく、ネットの情報も挿入して分かりやすく組み立てている。小学生向けに親切に説明している。
・画像はネットで検索し、必要なものを挿入している。
・「考えてみよう」といった学習用の問いがある。
・まとめのページが分かりやすい。
・レイアウトはシンプルだが、必要な情報がうまくまとまっている。
・使用クレジット:218クレジット/500(日)
第5章:使いたくなるものはありましたか?
入力から出力まで掛かった時間は、どのAIエージェントも約15分です。
それで、この出来映え。
人間では、とても無理です。私は、大変素晴らしいと思いました。
ただ、このまま授業で使えるかというと……?
説明だけの授業だとするとOKでしょうか。その点で言うと、Skyworkのスライドは良くできています。
(実は、教科書にある「万葉集の話」は、すべてのスライドで無視されています。教科書に載っている資料は、すべて触れてほしいものです。)
手直しはできるのか?
どのスライドもパワーポイント形式でダウンロードできるので、手直しは簡単です。
教科書の写真や図などを使いながら再編集したり、NHKの「歴史にドキリ」のリンクなども貼り付けたりすれば、短時間でよいスライドができるはずです。
私は、社会科授業のスライドづくりはプロです。それでも、1時間分のスライドを作るのに教材研究を含め3~4時間は掛かります。
しかし、このようなAIエージェントを使うことで、社会科に詳しくなくてもそれなりのスライドを短時間で作ることが可能になります。
すごい時代になったものです。
第6章:進化し続けるAIエージェント
AI技術の進化は、私たちの想像をはるかに超えるスピードで進んでいます。特に、AIエージェントの分野においては、半年前には考えられなかったような機能や性能が次々と実装され、その能力は日々向上しています。
この進化は、本稿のテーマである「AIによる授業用スライド作成」においても顕著に現れています。
たった半年前を振り返ってみると、AIが生成するスライドは、正直なところ「使えるレベル」とは言い難いものがほとんどでした。
半年前のAIスライド作成
約半年前、私がAIにスライド作成を試みた際、以下のような課題に直面することが多々ありました。
情報整理の甘さ: 教科書や資料を読み込ませても、その内容を適切に要約し、スライドごとに論理的に配置することが苦手でした。キーワードの羅列に終始したり、脈絡のない情報が混在したりすることも珍しくありませんでした。
デザインの単調さ: テンプレート通りの単調なデザインが多く、視覚的な魅力に欠けていました。文字の大きさやフォント、色の使い方も画一的で、小学校低学年向けの教材としては特に、子どもたちの注意を引くには不十分でした。
図表や画像の活用不足: テキスト中心のスライドが多く、教科書に載っている図や写真、挿絵などを効果的に活用する能力が未熟でした。特に、グラフや概念図などを自動生成し、内容に合わせて最適化することはほとんどできませんでした。
指示の理解不足: 「〇年生が見やすいように」「余白を少なく」といった、より具体的なデザインや教育的な配慮に関する指示を十分に理解し、反映させることが困難でした。結果として、修正に多くの手間がかかり、結局自分で作った方が早いという結論に至ることも少なくありませんでした。
3か月前の記事の下書きから
実は、このテーマで原稿を書こうとしていたのは3か月前です。
国産のAIエージェント「Felo」のスライド作成機能が使えるレベルになったので記事にしようと思っていました。
Geminiで指導案とスライドプランを作成し「Felo」でスライドを作るという記事でした。3か月前は、その手順が必要でした。
記事を書いている最中、Gensparkが大幅アップデートし、教科書のスクショを渡すだけで、見事なスライドを作るようになりました。
Gensparkで実験を重ねているうちに、Manus、Skyworkが次々と登場しました。
現在のAIスライド作成の進化
現在のGenspark、Manus、SkyworkといったAIエージェントたちは、これらの課題を大きく克服しつつあります。特に顕著な進化は以下の点に挙げられます。
高度な内容理解と要約能力: 教科書のような複雑な文章構造を持つ資料でも、その要点を正確に把握し、スライドごとに適切な粒度で情報を整理できるようになりました。単なるキーワード抽出に留まらず、文脈を理解した上での要約や、重要なポイントの強調も可能です。
デザインの柔軟性と最適化: 対象年齢や目的に合わせて、文字の大きさ、フォント、配色、レイアウトなどを自動的に調整する能力が向上しました。余白の調整や、アイコン、イラストの適切な配置など、視覚的な魅力を高める工夫も随所に見られるようになりました。
マルチモーダルな情報活用: テキストだけでなく、画像、図表、動画といった様々な形式の情報を解析し、スライド内に効果的に組み込む能力が格段に向上しました。特に、教科書内の写真や挿絵を認識し、スライドの適切な位置に配置したり、それらに基づく簡単な図表を生成したりする機能は目覚ましい進化です。
教育的配慮への対応: 「〇年生が見やすいように」といった教育的な指示や、学習効果を高めるための工夫(例:問いかけの挿入、重要語句の強調)を、より高い精度で理解し、スライドに反映させることが可能になっています。
出典の明示と信頼性: 特にSkyworkのように、生成された情報に出典URLを付与する機能を持つAIエージェントも登場し、情報の信頼性を高める努力がなされています。これは、教育現場でAIを活用する上で非常に重要な進化です。
もちろん、まだ完璧ではありません。しかし、この半年の進化は、AIが単なるツールを超え、私たちの「共同作業者」として、より高度な知的生産活動をサポートできる可能性を示唆しています。
第7章:おわりに-授業で使えるような出力にするために
最後に、手直しも最小限で済むような出力方法を考えてみましょう。
簡単です。
授業の指導案を作ってからスライドを作らせればよいのです。
最初の指示文を少しだけ変更します。
添付ファイルは小学校6年生の社会科の教科書です。
教科書の記述や写真、挿絵などを分析し、この授業の指導案を作ります。
その指導案に沿って、授業で使うためのスライドを作ってください。
その際、小学校6年生が見やすいように文字や図表を大きめにします。
スライドの余白は少なめにします。出力結果を以下に示します。
使用クレジットは、438。先ほどの2倍です。生成時間は20分程度です。












授業用らしくなりましたね。
「授業のねらい」を入れて、「○○に焦点を当てて」などと指示すれば、また違ったスライドになるかもしれません。
そこは、先生方の工夫次第です。
いろいろやってみてください。今のところ、無料でここまでできますので。
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