年間150本の地上波テレビ露出をコロナ後も継続している理由―70名のベンチャーが広報PRで市場No.1の地位を築くまで
こんにちは。ビビッドガーデン代表の秋元里奈です。
弊社はユーザー数135万人・生産者数1.1万軒を超える国内No.1の産直通販サイト「食べチョク」をはじめ、一次産業・食業界で様々な事業を展開する会社です。従業員70名ほどのベンチャー企業ですが、年に150本規模で地上波テレビに取り上げていただくなど、広報PRに強みを持っています。
当然ですが、創業した2016年は資金も、知名度も、ブランドも、何ひとつありませんでした。私の実家が農家で、廃業後に荒れ果てた農地を見て「生産者のこだわりが正当に評価される世界をつくる」と決めたものの、その想いを世の中に伝える手段がほとんどなかった。食べチョクを立ち上げた後も、薄利多売の生鮮食品ECでは、莫大な広告費なんてかけられません。
そんな中で、お金をかけずにお客様に知っていただくための一番の武器が「広報PR」でした。正式リリースした2017年8月時点ではまだ社員ゼロだったので、夜、オフィスで一人、見よう見まねでプレスリリースを書いていたのを今でも覚えています(記者さんへのご連絡も当然、自分で。今見返すと直したいところだらけです、笑)。
それから9年間、ずっと広報PRの事業部を管掌し、試行錯誤を重ねながら、いろいろな経験を積んできました。食べチョクのPRについて聞かれる機会も年々増え、この半年ほどは、その戦略をまるごとお話しするセミナーも開いてきました。ありがたいことに評価がとても高く、「もっと体系的に知りたい」「うちのPRも支援してほしい」という声をたくさんいただくようになったので、より多くの方に届くよう、noteでも書いていくことにしました。
(補足)たまにご質問いただくのですが、年間150本の地上波露出のうち、代表である私自身が出ているのは年間でならすと1割以下で、ほとんどはサービスや生産者さんを主役にした露出です。これは意図的な設計で、今はできるだけ経営者の顔ではなく、事業の価値そのものが前に出るような動き方にしています(初期は別戦略でしたが、それはまた別途…!)。私が現場を離れても止まらない循環をつくるべく、日々チームで動いています🔥
広報PRの意義
「広報PRは成果が分かりづらく、リソースを割けない」という声をよくいただきます。実際、広報単体の効果だけをきれいに切り出して証明するのは難しい。それでも、PRがはっきり効いたと言える手応えは、いくつもあります。
分かりやすい一例を挙げると、とあるリンゴ生産者さんを情報番組でご紹介いただいたとき、その商品の注文が通常の20倍に伸びました。コロナ禍の最初の頃、多くのメディアに取材いただいたタイミングでは、3ヶ月で流通量が40倍になり、1ヶ月分の注文が1日で入るようにもなりました。露出の仕方次第では、「認知」だけで終わらず、まっすぐ「売上」に届くことがあります。
また、食べチョクの認知が上がった結果として、認知度・利用率といった主要項目で6年連続No.1(2025年・マイボイスコム調べほか)。利用意向や生産者数まで含めると、合計9つのNo.1を獲得しています。「産直ECといえば食べチョク」という“第一想起”が、数字の面でも確かなものになってきました。もちろん、それを支えるインフラ・サービス・マーケティング の工夫も山ほどありますが、広報PRに軸足を置いた積み重ねが、大きく効いている実感があります。
そして意外に思われるかもしれませんが、PRはtoCだけでなく、toBでも効果を感じています。 ビビッドガーデンは食べチョク以外にも、法人・自治体向けなど複数の事業を展開していますが、その立ち上げで、食べチョクで築いた認知度に何度も助けられました。商談で決裁者にすぐ会える。先方の社内に「あの会社、知ってる」という人が一人いるだけで、話が一気に進む。未上場でこの規模では門前払いされてもおかしくない名だたる大手企業とも、連携させていただいています。
ニュースになるかどうかを最後に決めるのは、商材の華やかさではなく“切り口”です。実際、私たちが今PR支援でご一緒しているBtoB企業さんでも、報道番組での露出を実現できています。一般の方にわかりやすい商材がなくても、切り口は作れる。そこにこそ、PRの本当の技術があると思っています。
採用やインナーブランディングにも効きますし、メリットを挙げればキリがありません。
ただ一方で、デメリットもあります。
ひとつは、意図しない形で切り取られるリスク。編集権はメディア側にあるので、こちらの意図とは違う文脈で一部だけ使われることもあります。
もうひとつは、認知が上がること自体のコスト。知られれば知られるほど、見られ方への責任が増し、セキュリティやガバナンス、情報管理を、会社の規模に対して早いタイミングから求められるようになります。“攻め”の広報が効くほど、“守り”の整備が追いかけてくる、という感覚です。
このリスクコントロールや“守りの広報”は、それだけで一本書けるテーマなので、どこかで改めてまとめたいと思います。

経営陣こそ広報PRに関心を持つべき理由
ここまでで「広報PRは大事そうだ」と思っていただけたら、次にお伝えしたいのは、それを経営陣の誰が見るか、です。
創業初期の会社ほど、広報PRにリソースを割けません。外部に丸ごと外注していたり、そもそも全く手をつけていなかったり。その気持ちは、とてもよく分かります。
ただ私の実感では、広報PRは「余裕ができたらやる広告の一種」ではなく、経営戦略そのものです。会社が何者で、なぜ社会に必要なのかを定義し、社会との関係を設計する営みだからです。だからこそ、たとえ実務を外注するとしても、経営陣自身が最低限の広報PRリテラシーを持ち、戦略を自分の言葉で議論できる状態が理想だと思っています。
私は創業以来、広報PRチームを一貫して代表直下に置き、私自身が統括してきました。戦略を描き、年間の発信テーマとKPIを決め、今もリリースの内容と目標数値は、私が見ています。 広報を経営者の隣から一度も手放さなかったのは、これが「伝え方」という経営そのものだと考えているからです。
誤解されたくないので補足すると、“代表直下”といっても、私が一日中広報関連業務をしているわけではありません。経営者は、戦略を描き、何を伝えるかを決め、何をKPIに置くのかを、現場のチームと握ります。だからこれは「社長に時間が余っている特殊な会社だからできる」話ではなく、最初の設計さえ握れば、現場のチームが回り始めた後はむしろ手を離せます。
私たち自身、限られたノウハウの中で試行錯誤し、ずいぶん遠回りもしました。その反省も含めてnoteで発信していけたらと思っています。起業初期でも、最初に全体像のイメージがついているだけで、だいぶショートカットできるはずなので。
ビビッドガーデン(食べチョク)のPR戦歴
今でこそ年150本ですが、最初からうまくいっていたわけでは、まったくありません。正直に言うと、創業からの約3年間(2016〜2018年)、地上波テレビの露出はゼロでした。WebメディアやIT系の媒体に少しずつ載せていただきながら、ひたすら手探りが続いた時期です。
最初の転機は2019年。情報番組『セブンルール』で、初めてサービスが地上波テレビで紹介されました。「テレビに出る」という感覚を、ここで初めてつかみました。
そして大きな転機が、2020年のコロナです。この時期、食べチョクの露出は一気に伸びました。でも当時を冷静に振り返ると、それは私たちが特別優れていたからというより、「巣ごもり需要で産直が伸びている」という時流と、「生産者と消費者を直接つなぐ」という新規性に、メディアの関心が乗ってくれていたからでした。
問題は、時流も新規性も、必ず枯れるということです。コロナは終わる。新規性は「もう知ってる」に変わる。実際、特需で一瞬メディアに出た会社が、一過性で終わってしまう例は珍しくありません。短期で取れた成果は、土台がなければ2年も持ちません。
そのため、2022-2023年ごろからはネタの幅を広げることに切り替えました。たとえば、SDGsの文脈に絡めた訴求、再現性のあるテーマでのリアルイベント、メディアさんとの共同企画など、継続的にニュースを生み出せる“切り口”を、何通りも開発してきました。それぞれの作り方は、別noteで少しずつまとめていきます。
また、広報PRチームを正式に組成し、個人技から組織へと移行。その結果、コロナから5年経ったタイミングでも年150回地上波テレビでご紹介をいただき、業界や事業に関心を持ち続けていただいています。

コロナを発端に始まった事業や会社の新規性露出は2年で消えました。しかしその後にもなお露出が続いているという事実こそが、これがまぐれでも時流でもなく“設計”だったことの、何よりの証拠だと思っています。
では、その「設計」とは具体的に何かを次にまとめていきます。
フェーズでやるべきことは変わる
農業の会社らしく、私たちは広報も「育てるもの」として捉えています。土を作らずに種は蒔けないし、まだ芽も出ていないのにテレビを狙っても載らない。逆に、実りの時期に種まきと同じことをしていても、もう伸びません。
私たちが社内で使っている5つの段階を共有します。読みながら、自社が今どこにいるかを思い浮かべてみてください。大事なのは順番と、各段階で一番つまずきやすいポイントです。
① 土づくり期(戦略策定)
💡問い「なぜ“今”、なぜ“私たち”なのかを一言で言えるか」
事業を整理し、年間の発信テーマとKPIを決める時期。
ありがちな失敗:ここを飛ばして発信を始め、半年後に「結局何を伝えたい会社なのか」がブレて、全部やり直しになる。
② 種まき期(初期発信)
💡問い「取材される“前提”が整っているか」
まだ自分から取りにいかない。発信チャネルや公開情報を整え、小さくプレスリリースを出して事例を積み、記者がいつ見ても「ちゃんとした会社だ」と分かる状態を作る。
ありがちな失敗:土台がないまま大手にいきなり売り込み、相手にされず心が折れる。
③ 発芽期(露出拡大)
💡問い「自分から“取りにいけて”いるか」。ここで初めて能動的に動く。記者や媒体に個別アプローチし、取材対応の体制を整え、データやアンケートで自前のニュースを作り、業界紙・専門誌・Web大手で露出を取る。
ありがちな失敗:1本載って満足し、次の球を用意していないので、露出が単発で終わる。
④ 開花期(マス露出)
💡問い「時流が来なくても、ニュースを“作れる”か」
新聞・テレビなどマスへ。時事や社会文脈にストーリーを絡め、記者発表会や現場取材を設計する。同時に、増える取材を捌ける“瞬間最大風速”の体制が要る。
ありがちな失敗:一度のバズを実力と勘違いし、波が引いた瞬間に何も残らない。これが、まさに冒頭で書いた「コロナの罠」です。
⑤ 熟成・循環期(継続・型化/組織化)
💡問い「私がいなくても、回るか」
露出を周年・季節・統計でテンプレ化し、ネタ創出を定例化し、社内のPR体制を育て、ブランドをデータベースとして資産化する。属人技を、誰がやっても回る仕組みに変える段階。

なお⑤は終点ではなく循環です。⑤で作った型と仕組みが、次の発芽(③)を自動で生み出す。この輪が回り始めると、時流が去ろうと、現場のメンバーが代わろうと、ニュースが自前で湧き続けます。「コロナという大きな露出から5年経っても150本の露出継続」は、この循環が回っている状態のことです。
見るべきKPIも各フェーズで変わります(件数を一律で追うのが一番危ない)。ここは長くなるので、また別で。
チームとAIで「個人技」を「仕組み」に
「属人化から抜け出す」と、言うのは簡単ですが、実際には相当の設計が要ります。
今の食べチョクの広報は、私が一人で書いていた創業期とも、まだ少人数で回していた頃とも違います。チームを組成し、そこにAIを組み込んで運用しています。過去のリリースやメディアの反応、ネタの引き出しを仕組みとして蓄積し、AIが下書きや切り口の候補出しを担い、人は判断と関係構築に集中する。これによって、特定の誰かの記憶や勘に頼らずに、質を保ったまま量を回せるようになりました。具体的には、
プレスリリース素案作成にかかる時間:2時間/本 → 15〜30分/本
2026年2月〜5月初旬の 3ヶ月強で約26本 を継続配信
取材・登壇対応のリードタイム:30分 → 5分
依頼受領からSlack共有・判断まで自動化
アプローチメール作成:30分 → 5分
ネタ収集:週5-10ネタ → 週70ネタ以上(自動)
その結果、広報の人的リソースを半分に圧縮しています。※2025年10月時点 3人月 → 2026年4月時点 1.5人月(50%減)
その結果捻出できた時間は、別のPJT企画リソースに振り向けることができています。
AI活用についても、順次まとめていきたいなと思っています✍️
食べチョク式PR・5つの幹
私たちのPRの考え方を5つの幹に整理します。
幹1:広報を「経営機能」に置く
広報は「会社と社会の接続点」です。その接続点でいちばん解像度が高いのは、意思決定者である経営者自身。だから私たちは広報を代表直下に置き、経営者と広報が二人三脚で動いてきました。「これは世に出すべきだ」と決めたら翌日にはリリースを打てる。この意思決定の速さが、小さな会社の武器になります。
幹2:KPIは「短期件数」で追わない
「今月の露出は何件?」
この問いが、実は広報を壊します。件数を短期で追うほど、長期では何も積み上がらない。私たちは露出を“ポイント”で評価し、半期に1〜2回の大きな「波」を作りながら、日々は小さな「種まき」を続けてきました。
幹3:未経験・少人数でできる型を作る
広報は専門家がいないと始められない、と思われがちですが、そんなことはありません。立ち上げ期に大切なのは、いきなり完璧な戦略を作ろうとせず、「行動→学習→戦略」の順番を守ること。まず動いて、記者やメディアの反応から学び、後から戦略を固める。未経験から始めても、型さえあれば走り出せます。
幹4:売り込まず「見つけてもらう」
「出すネタがない」「打っても載らない」。その正体は、ネタを“既にあるもの”から探していることにあります。強い広報はネタを自ら作り、売り込むのではなく、記者に「見つけてもらう」動線を設計します。
幹5:「ひとり広報」を「全員広報」に変える
広報の成果に上限を作るのは“人数”ではなく“仕組み”です。私たちの強みは、広報部だけでなく、社員一人ひとり、ときに生産者さんまでもが発信に関わる「全員広報」にありました。
Vivid Studioについて
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
冒頭にも書いた通り、食べチョクのPRについて聞かれる機会が年々増え、この半年ほどでセミナーを重ねてきました。その評価の高さと、「うちのPRも手伝ってほしい」という声の多さに背中を押され、PR支援そのものを一つの事業として正式に立ち上げました。それが Vivid Studio です。
Vivid Studioは社名であるビビッドガーデンにちなみ、“色鮮やかな想いを届けたい”という思いをこめて命名しました。自治体様や生産者さんはもちろん、その他周辺領域の企業さんなどもサポートさせていただいています。
私たちが食べチョクの外の方々のPRを支援することは、まわりまわって生産者さんの売上や、日本の一次産業への貢献につながると本気で信じています。発信は手段であって、目的ではない。目的は、頑張る人のこだわりが、正しく社会に伝わることです。
私たちはPR専業会社ではないですが、事業会社の“中の人”として実務を続けてきた立場として補える視点があるのかなと思っています。すでにご協力いただいている広報のプロの皆様をはじめ、これからもどんどん情報交換していけたら嬉しいです!
【無料】PRコミュニティのご案内
先月から、無料で参加できるPRコミュニティ「Vivid Studio PR経営ラボ」をスタートしています。
スタートアップ・中堅ベンチャーの経営者や広報の方が、悩みを持ち寄って学び合える場で、私たち自身も、ここで得た問いを次の発信に活かしていきたいと思っています。
参加は無料で、広報に関心をお持ちの方がお申し込みいただけます。*審査あり

7月のセミナーのご案内
「広報なんて、うちには専任の担当者もいない」「やった方がいいのは分かるけど、何から手をつければいいの?」
という声をいただいたので、7月は"広報ゼロ"からのPRをテーマにした特別セミナーを実施します。
食べチョクも最初は広報担当者ゼロからのスタートでしたが、今ではAIを活用し少人数のチームで年間150件以上の地上波テレビ露出をするまでに。
「人もお金も時間もない」を言い訳にせず、PRの"最初の一歩"の踏み出し方から、広報をひとりでも続けられる仕組みのつくり方まで、実践者の立場で具体的にお話しします。お申し込みは以下のURLから
もっと深く知りたい方へ
実際に自社で動かすための実践的なTipsや事例、たとえば「テレビに出たのに、なぜか競合サイトに注文が流れてしまった」という失敗談、思わず取材したくなる切り口の作り方、ネタが尽きない年間カレンダーの組み方、フェーズごとのKPI設計などは、Vivid Studioの公式noteから順次公開していきます。リクエストがあれば、ぜひお気軽に。
まとめ
最後に。私たちが9年間ずっと大切にしてきたのは、「発信は手段であって、目的ではない」ということです。
広報PRは、目立つためのものでも、社長を有名にするためのものでもありません。会社が信じている価値を、必要としている人に、正しく届けるための技術です。食べチョクのビジョンである「生産者のこだわりが正当に評価される世界」に向けた一つの手段です。
ゼロから事業を立ち上げ、未経験の広報PR領域で奮闘してきた9年間の経験が、新しく事業を始める方や同じような悩みを抱えている方々の何かしらの気づきに繋がれば嬉しいです!
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