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博物館に行きたいと思う人の裾野を広げたい!博物館の建物を魅せてみた話(前編)

そもそも、博物館ってどれだけの人が能動的に行ってみようと思うのだろう。

博物館の展示を改善したり、運営システムの利便性を向上したとする。すると、そうでなくても博物館にきてくれる人たちがより足を運びやすくなるということにはつながるだろう。

しかし、そもそも博物館に足を運ばない人たちは依然として来ないまま。

では、どうすれば”新しい”来館者層を獲得することができるのだろうか・・・?

就職したばかりのころは広報を担当する部署にいたこともあり、この問いに対してなんとなく考えることが多かった。その中で一つ考えていたのが、「博物館の”建物”の魅力をもっと発信したらどうか」ということ。

今回はそんなお話。
(とても長くなってしまったので、前後編に分割することにした)


博物館の"建物"ってちゃんと注目したことある?

いきなり小難しい話から始まってしまったが、冒頭の問いは、今後の博物館のあり方を考える上でも、常に忘れずに考えておきたいものである。

さて、そもそも、展示を目的に博物館に行く人で、その建物自体に意識を向けようとしたことがある人は、いったいどれほどいるのだろうか。

もちろん、展示を観に行っているので、別に建物に注目する必要なんてないのだけど、なんだかもったいないなあと思うことも多かった。たまに、来館者から質問があり建物について軽く説明すると、急にカメラを向けてたくさん写真を撮ったり、「こんな立派な建物だって初めて気づきました。ゆっくり時間とってまた来たいと思います。」などと言ってくれる方もいたりする(リップサービス・・・じゃない・・・よね?)。

建築に注目することへの手応えは、そうした点からも感じることができたのだ。

博物館に行ってみようと思うきっかけとして「建築」はあり得る

建物の魅力に気づいた人の反応を見ると、建物にフォーカスを当てることで、博物館に対する既存の需要の"外側"にいる方々を呼びよせることにもつながるのではないか、と考えることもできたのである。

簡単にいえば、これまで「博物館に行こう!」と思うことが少なかった層に、建物自体が、博物館に行ってみようと思うきっかけになりうるということだ。

建築好きやカメラ好き、インスタ映え目当てだって良い。そうした層で、美術館ならまだしも、博物館に積極的に行きたいとは考えない方は、それなりにいるのだろう。
一方で、そうした層は「モノ」を見る・知るということ自体は好きだともなんとなく思うので、建物をきっかけに来館してくださったなら、ついでに展示も見ていってくれるだろうと考えている。

今回紹介する事業の後に、こうした考え方をさらに深掘って考える機会があった。それによって言語化したのが、今回のタイトルである

博物館に行きたいと思う人の裾野を広げる

なのだ。

その経緯や、考え方そのものについては、事業の話とは別の機会に書きたいと思う。

このnoteでは僕が全体的な内容の監修をさせてもらった、博物館の"建築"の魅力を発信する事業について、考えていたことの一部を紹介したい。

ただし、今回紹介する事業については、出発点が上記の問いから始まったことではない。周年事業として建物に関する事業の枠をつくっていてくれて、具体的に動かしていく際に、僕が中心になってやらせてもらったのである。事業全体のコンセプトを自分なりに整理するときに、"新たな来館者層"という視点で、完全に”建築”のみを取り扱おうと割り切ったのである。

博物館の”建物”にフォーカスした事業

2021年、旧北海道開拓記念館がオープンして50周年という年度において、そのときから使い続けている博物館の建物自体を取り上げる事業が企画され、大きく以下の3つの事業とその集大成となるイベントを行なった。

  • 建物のみどころのみを紹介するリーフレットの作成

  • 建物にフォーカスしたショートムービーの制作

  • 建物の魅力や開拓記念館から北海道博物館にかけての50年間の思い出にフォーカスしたフォトコンテストの実施

  • それらの成果を一挙に公開するイベント及び博物館のウェブサイトに「建築」ページの公開

事業の全体概要はこちらで簡潔に書いた↓
北海道博物館の「建物」の魅力発信 「森のちゃれんが50周年」記念事業
https://www.hm.pref.hokkaido.lg.jp/study/publication/journal-hm-28/

森のちゃれんがニュース,Vol.28,p.7

建築ページはこちら↓

僕自身は、やりたいことを実現できるタイミングだと意気込んで、事業の中身の監修的な立場になって進めさせてもらった。個人的には、少しでも"裾野"は広がったかな、という手応えを感じている。

それぞれの内容については実際の成果物で語れば良いので、noteではこの事業にあたって意識したことをいくつか書き残しておこうと思う。

・・・といいつつ、既にかなり長くなっているので、"前編"では、最後にそもそもこの事業にあたって、なぜそんなに意気込むことができたのか、について書いて終わりにする。
"後編"で、それぞれの事業における企画・制作時の考えなどについて書き記そう。

①北海道博物館の"建築"と"僕"

北海道博物館(旧北海道開拓記念館)の建物を設計したのは、佐藤武夫という建築家である。建築関係者であれば、さすがに多くの人が知っているような、公共建築等で大活躍した建築家だ。

しかも、佐藤武夫は完成直後に亡くなっているため、この建物が実質的な遺作という位置付けにあり、設計人生の集大成ともいえる建築になっているのである。公共建築に金をかけられる時代でもあったため、建築家のやりたいことがかなり実現できたことで、類を見ない傑作に仕上がっていると思っている。

また、佐藤武夫は、僕の出身でもある某早稲田大学の大大大先輩であり、早稲田といえばな建築の「大隈記念講堂」の設計に携わった人物である。ここはなかなかに思い出深い場所でもある。

さらに、佐藤武夫が事務所を構えていたところが、実家にそこそこ近かったりと、なんともいえない親近感を持っていた建築家だったのである。

そうしたこともあり、北海道博物館に就職が決まった時には、この建物に勤められるのかとワクワクしたことを今でも覚えている。(今でも毎日楽しい!)

要するに、冒頭の小難しい考えとは別に、建築史研究者であるプライドと、この建築が大好きだったからこそ、この事業にかける想いは強かった。ほかの職員が主軸になったらここまでのことはやれなかっただろう、というレベルのこだわりを持って事業を進められたのである。


・・・というところまで語ったところで、さすがに長いので以下②〜③は後編につづく。(項目名は変わるかも)

②リーフレットで"みどころ"をどう表現したかったのか

③ショートムービーで魅せたかったこと

④フォトコンテストではこんなにも知らない見え方があったのかと感心したのよな

お楽しみに。

後編はこちら↓


おまけ

この事業からしばらく経って、当時調べたことを、当館研究紀要に専門的なテキストとしてきちんとまとめた。文章ベースで20ページ以上にわたる大作になってしまったが(汗)
建築に興味がある方はぜひご笑覧いただきたい。この建物の魅力を知るだけでなく、一つの建物をじっくり考えるとはどういうことか、という建築論にもつながる・・・のかな?

鈴木明世「北海道開拓記念館(現・北海道博物館)の建築にみられる建築家・佐藤武夫の設計意図」『北海道博物館研究紀要』10号(北海道博物館, 2025.03,pp.23-46

研究紀要自体のページはこちら

北海道新聞を購読している人は、さっぽろ10区の以下の記事がかなりいい感じに建物の良いところをまとめてくださった。気軽にささっと読めて良い。

毎日新聞を購読している人は、ぜひ以下の記事を。レトロの美は美しい。