組織はなぜ複雑なのか~複雑系として組織を見るという視点|プロジェクトMPB第2章~#10|あるく戦記
前回の記事(#9)では、「診断して終わり」では組織は変わらない理由についてお話ししました。
診断は組織の「症状」を可視化することはできます。しかし、本当に改善すべきなのは、その症状を生み出している「構造」です。
では、なぜその構造を見つけることは難しいのでしょうか。
その理由は、組織そのものが「複雑系」と呼ばれる性質を持っているからです。
🌀 組織は「複雑系」である
私たちは、物事を「原因があって結果が生まれる」というシンプルな構造で考えがちです。
しかし、組織はそう単純ではありません。
組織には、人だけでなく、制度、文化、人間関係、業務プロセス、評価制度、歴史、価値観など、さまざまな要素が存在しています。そして、それらがお互いに影響し合いながら、日々変化し続けています。
このように、多くの要素が複雑に絡み合い、一つひとつの影響が連鎖して全体に広がっていく仕組みを「複雑系」と呼びます。
複雑系の最大の特徴は、「原因と結果が一対一で結びつかない」ことです。
例えば、
心理的安全性が低い
モラールが低下している
離職者が増えている
こうした症状が見られたとしても、その背景には単一の原因があるとは限りません。
評価制度への不満、業務負荷の偏り、管理職との関係性、部署間の連携不足、企業文化など、複数の要因が重なり合い、結果として一つの症状が表面化していることがほとんどです。
だからこそ、目に見える症状だけを見ても、本質的な問題にはたどり着けないのです。
🔄 部分最適では、組織全体は変わらない
複雑系には、もう一つ大きな特徴があります。
それは、「一部分だけを改善しても、全体が良くなるとは限らない」ということです。
例えば、
コミュニケーション研修を実施した結果、一時的に職場の雰囲気が改善したとします。
しかし、評価制度への不公平感が残ったままであれば、不満は再び積み重なり、やがて以前と同じ状態に戻ってしまうかもしれません。
また、面談の回数を増やしたことで離職率が一時的に改善したとしても、慢性的な長時間労働や人員不足が解消されなければ、時間の経過とともに同じ問題が繰り返されます。
つまり、症状だけに反応した対策は、その場しのぎにはなっても、根本的な改善にはつながりません。
これが前回の記事でお伝えした「再発構造」の正体です。
🧱 複雑系の本質は「構造」にあります
複雑な組織を改善するために必要なのは、症状ではなく、その背後にある構造を見ることです。
制度
組織文化
人間関係
業務プロセス
評価制度
価値観
役割期待
暗黙のルール
こうした要素がどのように影響し合い、どこにボトルネックが生まれているのか。
その構造を読み解くことが、本当の組織改善につながります。
複雑系では、構造の歪みが症状を生み出し、その症状がさらに構造を歪めるという循環が起こります。
この悪循環を断ち切るためには、目に見える現象ではなく、目に見えない構造そのものを理解する必要があるのです。
🔍 しかし、構造は目に見えません
ここが、組織改善の最も難しいところです。
構造は、症状のように目に見える形では現れません。
アンケート結果だけでは分かりません。
数値だけを見ても見えてきません。
構造とは、人と人との関係性や組織文化、制度同士の影響などが織りなす「組織の内部環境」そのものだからです。
そのため、診断だけで組織を変えることはできません。
診断は症状を示すことはできますが、その背後にある構造までは教えてくれないからです。
だからこそ、診断結果を読み解き、「何が本当の問題なのか」という問いを立てる専門家の存在が重要になります。
🧭 複雑系を扱うには「観測」という視点が必要
複雑系の組織を理解するためには、症状を一つひとつの「点」として見るのではなく、それらのつながりを「面」として捉えることが重要です。
そのためには、組織を多面的に観測するための「観測装置」や「観測フレーム」が必要になります。
MPBは、単に症状を並べるための診断ツールではありません。
複雑系としての組織を多面的に観測し、その背後にある構造を読み解くための土台となることを目指しています。
症状を観測し、構造を考え、本質的なイシューへとたどり着く。
その一連の思考を支える「観測装置」として、MPBを設計しています。
次回は、このような複雑な組織に向き合う専門家には、どのような価値が求められるのかについて考えていきます。
管理人あるく
