第4回|組織文化・風土研究:空気は“構造化できる無形資産”である~組織の空気100年史(全6回)|あるく戦記
前回までの流れで、組織の成果を左右するのは「心理」であり、 その心理には構造があることを見てきました。
しかし、組織は個人の集合体である以上、 個人の心理だけでは説明できない“もっと大きな力”が働いています。
それが 組織文化(Culture) と 組織風土(Climate) です。
1980年代以降、組織研究はこの「空気そのもの」を扱う段階に入りました。 心理だけではなく、価値観・規範・暗黙の前提といった、 組織全体に広がる“見えない力”が成果を左右することが明確になっていったのです。
■ 組織文化とは何か
組織文化研究を語るうえで欠かせないのが、 エドガー・シャインの「組織文化モデル」です。
シャインは、組織文化を次の3層構造で説明しました。
① 表層:アーティファクト(見えるもの)
行動
会話
ルール
オフィスの雰囲気
目に見える慣習
② 中層:価値観・理念(言語化されるもの)
会社の理念
行動指針
大切にされる価値観
共有される判断基準
③ 深層:暗黙の前提(無意識の思い込み)
失敗は避けるべき
上司の指示が絶対
意見は言わないほうが安全
新しいことは慎重に進めるべき
この「暗黙の前提」が、組織の空気を最も強く規定します。 なぜなら、無意識の思い込みは言語化されず、 日常の行動に静かに影響を与えるからです。
■ 組織風土とは何か
組織文化と似た言葉に「組織風土」があります。 この2つは混同されがちですが、意味が異なります。
● 組織風土(Climate)
今の空気
現場の雰囲気
日々のコミュニケーションの質
心理的安全性の高さ
チームの状態
● 組織文化(Culture)
長い時間で形成される価値観
歴史的に積み上がった規範
暗黙の前提
組織の“根っこ”にあるもの
風土は短期的に変わりますが、 文化は長期的に変わります。
この違いを理解することは、組織改善において非常に重要です。
■ なぜ文化や風土が成果を左右するのか
文化や風土は、次のような行動を静かに規定します。
意見を言うか言わないか
挑戦するかしないか
失敗を共有するか隠すか
協働するか個人で抱えるか
改善を続けるか止めるか
これらはすべて、成果に直結する行動です。
つまり、文化や風土は「行動の源泉」であり、 行動は「成果の源泉」です。
■ 組織文化は“無形資産”である
1980年代以降、組織文化は「無形資産」として扱われるようになりました。 理由はシンプルです。
文化は長期的に成果を左右する
文化は競争優位を生む
文化は模倣されにくい
文化は組織の意思決定を規定する
つまり、文化は「見えないが強力な力」であり、 組織の未来を決める重要な資産なのです。
■ 組織文化はどのように形成されるのか
文化は、次のような要因によって形成されます。
創業者の価値観
過去の成功体験
業界の慣習
組織の歴史
リーダーの行動
日々のコミュニケーション
特に「過去の成功体験」は文化を強く規定します。
例えば、 「慎重に進めた結果、過去に大きな失敗を避けられた」 という経験があると、
慎重さが美徳になる
新しい挑戦が避けられる
意見が出にくくなる
という文化が形成されます。
このように、文化は“過去の物語”によって形づくられます。
■ 組織文化は変えられるのか
文化は長期的に形成されるため、 短期間で変えることはできません。
しかし、文化は「変わらないもの」ではありません。 次のような要因によって変化します。
リーダーの交代
組織の危機
新しい価値観の導入
外部環境の変化
新しい行動の積み重ね
特に「行動の積み重ね」は文化を変える力があります。 文化は行動を生み、行動は文化を形づくるからです。
■ 組織文化研究が示した3つの重要な事実
組織文化研究は、組織の空気を理解するうえで次の3つの事実を示しました。
① 組織の空気は構造化できる
文化は曖昧なものではなく、 価値観・規範・暗黙の前提という構造を持っています。
② 空気は成果を左右する
文化や風土は、行動を規定し、 行動は成果を左右します。
③ 空気は測定できる無形資産である
文化や風土は、観察・分析・対話によって把握できます。 つまり、扱うことができる資産なのです。
■ 次回:プロジェクト・アリストテレス
次回は、Googleが行った大規模研究「プロジェクト・アリストテレス」を扱います。
チームの成果を決める最重要因子は何か
なぜ心理的安全性が成果を左右するのか
組織文化と心理的安全性はどうつながるのか
現代の組織研究が示した“空気の決定的な力”を見ていきます。
管理人あるく
