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【短編ホラー集】怪忌14.廃墟遊園・再訪/E地方・伊吹市で発生した33の怪忌とその結末

E地方・伊吹市で発生した33の怪忌とその結末


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14.廃墟遊園・再訪

「──ねぇ、ホントに入るの? やっぱやめようよ」

 希美は怖気づいてそう言ったが、楓は、「なに言ってるの。せっかくここまで来たのに、何もせず帰るわけないでしょ」と、当然のような顔で答えた。裕太も、「そうそう」と同意して頷く。確かに、ここに来るまでに自転車で一時間以上、それも、大半がかなりキツイ上り坂だったので、何もせず帰ったのでは全てムダな苦労になってしまう。

「……ていうか、お前ら、三年前・・・も同じ会話してたよな?」

 呆れ声でそう言ったのは歩希だ。そう言われると、確かにそんな気もする。

「三年前っていうか、こういう心霊スポットに来たときは、大体いつも同じ会話してるよ」と、裕太が補足する。

「そうそう」と、楓も頷いた。「そんで、なんだかんだ言いつつも、結局希美は一緒に来るんだよね」

 むう、と唇を尖らせる希美。確かに、楓が心霊スポットに行こうと言い出し、裕太がその話に乗って、二人だけで行かせるのは不安だからと歩希も付き合い、仕方なく希美もついていく、というのは、小学校低学年の頃からのお決まりだった。

 希美たちは、市の北西部の山頂付近にある遊園地跡に来ていた。小六の春に訪れて以来の二度目の訪問である。あの時は、楓がどこからともなく仕入れてきた七不思議をひとつひとつ検証すべく、メリーゴーランドやジェットコースターなどを順番に調べていったが、どれも怪現象などではなくちゃんと説明のつく現象だった。だが、最後に山頂付近にある観覧車を調べ、結局何も起こらずそのまま帰ろうとしたとき、不意に耳元でささやかれた。

 ──観覧車に乗らないの?

 驚いて振り返ると、観覧車の入口付近に希美と同い年くらいの少女の赤い影が手招きしていた。さらには、観覧車のゴンドラをはじめ、遊園地の敷地内に煙のようなもやもやとした黒い影が無数に蠢いていたのだ。驚いた希美たちは慌てて逃げ帰った。あれが何だったのかは、今でも判らない。

 それから三年の時が経ち、希美たちは中学三年生になった。高校受験を控え、進学して別の高校に通うようになったら、今みたいに気軽に会えなくなるかもしれない。その前にあの日の真相を確かめよう、という話になったのである。言いだしっぺはもちろん楓だ。中三になってもあの頃と何も変わっていない楓に希美は呆れるが、それに付き合う自分も自分なので、あまり人のことは言えない。

「でも、またあの黒い影みたいなのが出たら、どうするの?」

 希美がまた不安げに言うと、楓は「ふっふっふ」と不敵に笑った。

「大丈夫。今日は、最強の武器を持ってきたから」

 そう言って楓がポケットから取り出したのは懐中電灯だった。

「懐中電灯なら、前も持って来てたじゃん」

「ふふん。あの時の一〇〇円ショップで買った安物と一緒にしないで。これは、うちの防災グッズの中から拝借してきた物で、そこらの懐中電灯とはワケが違う。最大輝度は約一三〇〇〇ルーメン、最大照射距離は三〇〇メートル以上。車のヘッドライトの約七倍の明るさを誇る、超高性能フラッシュライトよ!」

「要はお高いライトってことね。でも、ライトなんかであの影に勝てるの?」

「さあ?」

「さあ? って」

「わかんないけど、ああいう黒いもやもやしたやつの弱点が光っていうのは、お約束じゃない?」

 自信満々の表情だが、楓のことだから恐らく映画やゲームとかの影響だろう。何とも頼りない話ではあるが、止めたところで無駄なのは判っている。

「じゃ、いってみよー」

 楓は三年前と同じくお気楽な口調でそう言った。

『伊吹遊園地』と書かれた入口のゲートは以前来たときより錆びており、三年分さらに朽ちてボロボロになっていた。あの日と同じく周囲にひと気は全くない。そう言えば、あの日は謎に園内から風船が浮かび上がったが、今日はそういうことはなかった。

 入口のゲートに設置された回転バーを、まず楓と裕太が越える。その後歩希も越えて、希美の方を振り返った。

 希美はバーの前に立つと。

「──ん」

 歩希の方に手を差し出した。

「……なんだよ」

 歩希は冷ややかな目を返した。

「なにって、あの時は、手繋いで支えてくれたじゃん。だから、ほら」

 希美はさらに手を差し出したが、歩希は、「子どもの頃の話だろ、バカバカしい」、と呆れたような恥ずかしがるような顔で言う。

「もう手繋いでくれないんだ。あーあ。昔の歩希は、もっと優しかったのに」

「いや、あの時はお前が怖がってたから」

「今だって怖いもん。ほら、早く」

 希美は手を差し出すが、歩希は恥ずかしがって握ってくれない。しばらくそんなやりとりを繰り返していたら。

「おいそこ、いちゃいちゃすんな。早くしろ」

 楓に怖い声で言われた。その隣で、裕太はくすくすと笑っている。

 希美は「べ……別に、いちゃいちゃなんかしてないよ」と言い、仕方なく一人でバーを越えた。三年前と比べて身長はそれなりに伸びたので、一人でも問題なく越えることができた。希美は歩希に睨みつけるような視線を送ったが、歩希は気付かないフリをして楓たちのところへ向かった。

 子どもの頃はすぐに手を繋いでくれたり、時にはくっついたりしていた歩希も、中学になったころからそういうことを恥ずかしがるようになった。年齢的にそういうものなのかもしれないが、希美は常々それが不満であった。

 ゲートをくぐった先の広場には、メリーゴーランドとイブッキーくん、そして、急流下りがある。どれも、ゲートと同じく三年分さらに朽ちているようだ。

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