【短編ホラー集】怪忌20.踏みにじられた絆/E地方・伊吹市で発生した33の怪忌とその結末
E地方・伊吹市で発生した33の怪忌とその結末
20/34
20.踏みにじられた絆
日曜日。朱理や舞たちと町へ遊びに行く約束をした希美は、待ち合わせ場所の駅前広場へ急いでいた。電車で三十分ほど行った郊外に大型ショッピングモールがあり、そこで遊ぶのが目的だ。希美はカバンに取り付けた腕時計で時間を確認する。九時五十分。待ち合わせ時間まであと一〇分だ。駅まではまだ距離があるから、少し急いだ方がいいかもしれない。希美は足を早めた。
待ち合わせ場所である伊吹中央駅は市内で最も大きな駅で、休日も利用客は多い。必然的に駅へ向かう道も人通りが多くなる。希美は通行人にぶつからないように気を付けながら、待ち合わせ場所へ急ぐ。
駅の建物が見えてきたあたりで、前からスーツ姿の男性が歩いて来るのに気付いた。ぶつからないよう希美は右に避けるが、その男も遅れて同じ方向に避けた。その結果。
「──痛っ!」
肩に強い衝撃があり、希美は勢いで尻餅をついて倒れる。その拍子に、肩に提げていたカバンが落ち、中の物が地面に散らばった。
……サイッテー。
心の中で毒づく。人とぶつかって転んで荷物をぶちまけてしまっただけでもサイテーだが、なおサイテーなのが、ぶつかった男性は謝るどころか聞こえよがしに大きな舌打ちをしてそのまま行ってしまったことだ。
しかも、二人がぶつかったのは、希美とあの男がたまたま同じタイミングで同じ方向に避けてしまったからではない。あの男は、明らかに希美が右に避けるのを確認してから同じ方向に避けた。つまり、わざと希美にぶつかって来たのである。
いわゆる『ぶつかりおじさん』というヤツだ。
ぶつかりおじさん──こういった人通りの多い歩道や駅の構内などで、主に自分よりも弱そうな女性をターゲットにして、わざと進路を変えてまで体当たりしてくる人たちである。 その心理は希美にはまったく理解不能だが、ターゲットが怯んだりよろけたりするのを見て、優越感を得たりストレス解消をしている、と言われている
「もう……死ねばいいのに」
ここから先は
¥ 100
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
