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苫前町三角点スキー場:3連休の静寂を独占する、100mの「純ロープ」巡礼記

ゲレンデには純ロープ1本のみで滑走距離は極めて短く、移動には腕力が必要。しかし灯台の裏に隠された日本海の絶景を見つけられれば、巡礼満足度は跳ね上がるロコスキー場です。そんなこのスキー場の魅力を、一人のスノーボーダーとして、そしてスキー場メグラーとしての視点から語ってみたいと思います。


~至高の非効率と、灯台の向こうに隠された景色~

■はじめに

今回ご紹介するのは、北海道・道北の日本海側に位置する「苫前町(とままえちょう)三角点スキー場」です。
苫前町は、オロロンラインを走れば無数の巨大な風車が出迎えてくれる風の町。甘エビやホタテの香りに包まれるこの港町に、測量界の聖地とも言える名を冠したスキー場が存在します。

山頂に国土地理院の一等三角点が設置されていることから、地元で「三角点山」と呼ばれ親しまれてきたこの小さな山。実は数年前、一度この地を訪れたことがありましたが、その時は人影もなく、ロープトゥが止まっており、ただ雪山をハイクアップして帰っただけという残念な巡礼に終わっていました。
記録上は「巡礼済み」であっても、実質は「未踏」。ずっと再巡礼を狙っていたスキー場でした。

そして本日はハイシーズンの3連休。一般的にスキー場が最も賑わうタイミングを狙い、さらに役場への営業確認という石橋まで叩いて、私は再びこの100mの坂を目指したのです。

■オリジナルコースマップ

苫前町三角点スキー場コースマップv25-26

構成は、これ以上ないほどに潔い。
約100mの手持ち式「Ⓐ純ロープ(ロープトゥ)」が1本。そこから滑り降りるラインが1本。それだけです。

■ゲレンデ

現地に到着して目に入ったのは、見事なまでの静寂でした。

連休中も無人のゲレンデ

1本だけのロープトゥも動いておらず。

手持ち式の純ロープ(約100m)

動いていないロープトゥと、人っ子一人いないゲレンデ。
「営業確認までしたのに、またしても空振りか……?」という絶望と、「いっそのこと空振りの方がネタとして面白いかも」といった様々な感情が脳裏をよぎりましたが、真新しくなったロッジの奥にスタッフの姿を発見。声をかけると、たった一人の巡礼者のために、眠っていたロープトゥをわざわざ動かしてくれたのでした。

唯一の滑走エリアを便宜上、「初級者コース」と呼ぶことにします。
規模としては「少し立派なソリ遊び場」をイメージしていただければ間違いありません。

リフトを降りると滑走方向に見えるのは、苫前の小さな町並み

滑走距離はわずか100m。ボーダーであれば、ラインを刻む間もなく滑り終わるほどの刹那の体験です。コースの明確な境界線は曖昧ですが、スノーモービルの後ろにトンボを付けて整地されたその圧雪の跡だけが、ここが正真正銘のスキー場であることを無言で語っています。

■眺望

しかし滑走中の景色に過度な期待は禁物です。正面に見えるのは苫前の静かな町並みのみ。
「せっかくの港町なんだから、海が見えたら最高なんですけどね」
そんな私の何気ない一言を聞いたスタッフが、ここで極めて重要なアドバイスをくれました。
「ロープを降りたらあと10mだけ、あそこの灯台まで登ってみて」と。

確かにロープトゥを下りて上を見上げると「Ⓒ苫前埼灯台」があり、私はその言葉を信じてボードを抱え、ハイクアップを敢行しました。

ゲレンデの少し上にある「Ⓒ苫前埼灯台」。近づくことは禁止されてない。

すると、灯台の裏側には――。

圧倒的スケールの日本海

目の前を埋め尽くすような、圧倒的なスケールの日本海が広がっていました!
これこそが、私が見たかった景色。
このスキー場に来て、最後のこの「10mのハイク」を惜しむことは、この場所の魂を見逃すことに等しい。メグラー諸氏には、ぜひボードを抱えて灯台の先まで歩を進めてほしいと思います。

■施設、その他

かつての老朽化した姿とは一変し、

建て替え前の旧ロッジ

21-22シーズンに建て替えられたばかりの「Ⓑ管理棟(ロッジ)」は、驚くほど清潔でモダンです。

21-22シーズンに建て替えられたばかりの「Ⓑ管理棟(ロッジ)」

トイレ、券売所、そして4人が座れば満席になる小さなテーブル。

非常にコンパクトな休憩所

「いくらなんでも小さすぎではないか?」という最初の懸念は、ハイシーズンの3連休にもかかわらず、自分以外の客が一人も現れなかったという衝撃の事実によって、見事に杞憂に終わりました。いや、むしろこの利用状況を鑑みると、過剰投資かもしれませんね(笑)
しかし、この完全なる「独占感」こそが、このスキー場の最大の贅沢なのだと気づきました。

利用料はなんと1日券で320円。

共通1日券で320円

さらに驚くべきは、この券が町内にある「古丹別緑が丘スキー場」と共通であること。恐ろしいほどのコストパフォーマンス、あるいは「町内ハシゴ」を暗に推奨するかのようなメグラーへの見事な動線誘導。これは利用しない手はないでしょう。

また、スタッフから聞いた純ロープの講義も興味深いものでした。
自分の腕力だけで体を引っ張り上げる、過酷なこの装置。スタッフ曰く、
「複数人でロープを持てば、劇的に軽くなるんだよ」とのこと。
一瞬、難しいことを言っているのかと思いましたが、要するに人が増えると重力分散でロープのたわみが抑制され、一人当たりの引っ張る負担が軽減されるという物理学のようです。
……残念ながら、その理論を証明するための「二人目の客」が現れることは、最後までありませんでした(笑)。

■まとめと近隣エリア情報

この道北の沿岸エリアには、ロコスキー場が数多く点在しています。スキー場巡りをするならベースキャンプを羽幌町に置くと、宿泊や食事、温泉、買い物に困ることはないでしょう。特に羽幌は甘エビの漁獲量日本一であり、アフタースキーの海鮮は必食と言えます。

周辺には、Tバーを備えた「古丹別」や、チェアリフトもある「羽幌町民」が控えています。
・羽幌町民スキー場びゅー: チェアリフトと圧雪機を備えたスキー場。ローカルスキー場ながらパークも設置されており、1日2回の整地サービスで快適に滑走可能。
・苫前町古丹別緑が丘スキー場: ロープトゥ2本の零細スキー場。三角点スキー場と共通リフト券で滑走可能で超格安。
・苫前町三角点スキー場: 滑走距離は極めて短く、移動には腕力が必要。しかし、灯台の裏に隠された日本海の絶景を見つけられれば、巡礼満足度は跳ね上がる。

傍から見れば、有名で快適な当たりスキー場をスルーして、たった100mの坂を滑るために道北まで車を走らせるなど、「非効率の極み」であり、一般的には有り得ない選択肢でしょう。
しかし、その「馬鹿馬鹿しさや非効率すらも全力で楽しむ」ことこそが、スキー場巡りの醍醐味。入念な営業確認をし、ようやく出会えたスタッフと語らい、前回見落とした圧倒的スケールの日本海を確認した。その非効率さの極みこそが至高のロマンであり、我々メグラーの誇りとなり、生涯忘れられない記憶となるのです。
【巡礼日:2026年2月21日、2019年12月28日】

あなたもスキー場巡り、しませんか?

- Review by AllskiresortsJp -


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