2025年 AI分子設計・タンパク質設計論文、いま何が引用され始めているのか
「予測する」から「設計する」へ──引用スナップショット(2026年6月2日時点)
前々々回は、2025年の AI×生命科学論文を広く見ました(タンパク質・創薬・オミクス・細胞画像で見るTop10)。
前々回は、そこからシングルセル・空間オミクスに絞りました(細胞から「場所」へ進む生命科学)。
前回は、がん・TME・診断に絞りました。腫瘍微小環境の代謝機序、空間オミクスの高解像度化、ctDNAによる治療選択、mRNAワクチンなど、それぞれ異なる軸で引用が動いていました。
今回はさらに踏み込んで、「設計する」という視点に絞ります。
テーマは AI分子設計・タンパク質設計 です。
AIが「理解する」から「設計する」に移っている
生命科学における AI は、いま大きく二つの方向に分かれているように見えます。
ひとつは 「理解する」方向。AlphaFold のようなタンパク質構造予測、シングルセル解析、細胞アトラスの構築など、「何があるかを正確に把握する」ための AI です。
もうひとつは 「設計する」方向。タンパク質バインダーの生成、マクロサイクル(大環状分子)の設計、酵素の活性部位の構築、機械学習力場、AI エージェントによる実験サイクルの自律化など、「まだ存在しないものを作る」ための AI です。
2026年6月時点の引用スナップショットを見ると、「設計する」方向の論文が引用を集めています。
タンパク質設計とは何か
少し背景を説明させてください。
自然界のタンパク質は、数十億年の進化の産物です。特定の機能を持つように洗練されています。
タンパク質のデノボ設計(de novo design)は、それを逆にする試みです。
「このタンパク質に結合してほしい」「この反応を触媒してほしい」「この毒素を中和してほしい」という機能を先に決めて、それを実現するタンパク質をコンピューターで設計します。
これまでは高度に専門化された研究能力でした。2025年のスナップショットを見ると、パイプライン化・ツール化が進み、「インフラ」に近づいているように感じます。
今回のリサーチクエスチョン
2025年に出版された AI 分子設計・タンパク質設計関連の論文のうち、すでに他の研究者から引用され始めているのはどれか?
ニュースで取り上げられた論文ではなく。インパクトファクターが高いジャーナルだからというわけでもなく。
実際に他の研究者が論文の中で引用している論文 を見てみたい、というのが出発点です。
ランキングについての注意
2025年に出版された AI 分子設計・タンパク質設計関連の論文を OpenAlex 上で取得し、ローカルなスクリーニング条件を通過した候補(768件)の中から、「月あたり被引用数(cpm)」 が高いものを Top 10 として整理しました。
単純な被引用数だけだと、年初に出た論文が有利になります。2025年1月に出た論文は2026年6月までに16〜17ヶ月の引用機会がありますが、2025年10月に出た論文は7〜8ヶ月しかありません。
そこで、出版からの経過月数で割った「月あたり被引用数」を目安にしました。
これは 2025年の全AI分子設計論文を完全に網羅したランキングではありません。
OpenAlex メタデータに基づく、2026年6月2日時点の引用スナップショットです。
著者からの前置き
私は計算化学・タンパク質設計の専門家ではありません。
本記事は、OpenAlex メタデータ、論文タイトル、掲載誌情報、ライセンス確認、可能な範囲での手動確認をもとに、Research Signals 記事として整理したものです。
専門家から見ると、解釈が粗い部分があるかもしれません。
気づいた点があれば、ぜひコメントで教えていただけると嬉しいです。
CPM Top 10

10位:深層学習でデノボ・マクロサイクルを設計する
原題:Accurate de novo design of high-affinity protein-binding macrocycles using deep learning
掲載:Nature Chemical Biology
出版:2025年6月
被引用数:45
月あたり被引用数:3.95
DOI:10.1038/s41589-025-01929-w
マクロサイクル(大環状分子) とは、ざっくり言えば、普通の低分子(薬の多く)と生体高分子(タンパク質や抗体)の中間のサイズ感を持つ環状の分子です。
その構造的な特徴から、従来の低分子では標的にしにくい「平らなタンパク質表面」に結合できることがあります。いわゆる「undruggable(薬が届かない)」と言われてきたタンパク質群も、マクロサイクルのアプローチで標的にできる可能性があります。
この論文は、深層学習を使って高い親和性でタンパク質に結合するマクロサイクルをデノボ設計する手法を提案しています。CC-BY ライセンスで公開されており、他グループが手法を引用・活用しやすい論文です。
このスナップショットでは: 計算化学と創薬化学の両コミュニティから同時に引用が集まっているように見えます。
元の論文で確認してください:モデルアーキテクチャ、既存手法との比較、実験的検証データ、適用可能なタンパク質標的の範囲。
9位:AlphaFold2 で環状ペプチドの構造予測・設計を実現した
原題:Cyclic peptide structure prediction and design using AlphaFold2
掲載:Nature Communications
出版:2025年5月
被引用数:53
月あたり被引用数:4.28
DOI:10.1038/s41467-025-59940-7
環状ペプチド は、直鎖型ペプチドと異なり、分子の両端が繋がって輪になっています。この構造的な制約が、タンパク質分解酵素への耐性を高め、標的との選択性を向上させることがあります。創薬において注目されている分子クラスです。
AlphaFold2 はもともと直鎖型タンパク質の構造予測を対象として設計されており、環状ペプチドの幾何学的制約をそのままでは扱えませんでした。
この論文は、その拡張手法を提案し、すでに AlphaFold2 を使っている研究グループが環状ペプチドの問題に適用できるようにする方法論を示しました。既存インフラを活用できるため、採用コストが低いのが特徴です。
このスナップショットでは: 計算化学と治療用ペプチドコミュニティから広く引用されているように見えます。
元の論文で確認してください:実装の詳細、既存手法との比較、設計成功率、適用可能な環状スキャフォールドの範囲。
8位:RFdiffusion2 で酵素の活性部位をアトムレベルで設計する
原題:Atom-level enzyme active site scaffolding using RFdiffusion2
掲載:Nature Methods
出版:2025年12月
被引用数:30
月あたり被引用数:5.05
DOI:10.1038/s41592-025-02975-x
酵素 は、特定の化学反応を触媒するタンパク質です。酵素設計の難しさは、「機能を指定すること」にあります。触媒残基(反応を起こす部分)をアングストローム(原子スケール)の精度で正しい位置に配置する必要があります。
RFdiffusion は、拡散モデルを使ったタンパク質構造生成ツールです。その第2世代版「RFdiffusion2」を使って、酵素の活性部位をアトムレベルで足場設計できることを示した論文です。
2025年12月の出版と比較的最近にもかかわらず、月あたり被引用数 5.05 を記録しています。
このスナップショットでは: 「まず計算で設計してから実験で検証する」という酵素工学のアプローチへの参照論文として引用されているように見えます。
元の論文で確認してください:RFdiffusion との技術的な違い、活性部位機能の実験的検証、対象とした触媒化学反応の種類、手法の限界。
7位:共折り畳みモデルは「物理」を理解しているのか?
原題:Investigating whether deep learning models for co-folding learn the physics of protein-ligand interactions
掲載:Nature Communications
出版:2025年10月
被引用数:49
月あたり被引用数:6.24
DOI:10.1038/s41467-025-63947-5
共折り畳み(co-folding) とは、タンパク質と低分子(薬候補)が一緒にどういう構造を取るかを予測する AI モデルです。AlphaFold3・Boltz・Chai-1 などが代表例で、創薬分野で急速に使われ始めています。
この論文は、そのような共折り畳みモデルが「正しい予測ポーズ」を出したとき、物理的に意味のある理由でそれを出しているのか、それとも訓練データのパターンマッチングをしているだけなのか、を系統的に評価した批判的評価論文です。
モデルが「なぜ」正しい答えを出しているかは、新しい化合物タイプへの汎化性能に直結します。
この評価論文が集めている引用の速度は、創薬コミュニティがこの信頼性の問いと正面から向き合い始めていることを示しているように見えます。CC-BY ライセンスで、手法論として活用しやすい論文です。
このスナップショットでは: 共折り畳みモデルの急速な普及に対する、体系的な評価フレームワークとして広く引用されているように見えます。
元の論文で確認してください:評価手法の詳細、検証したモデルの種類、調べた物理的性質、各モデルファミリーの結果。
6位:GNINA 1.3 ── 深層学習スコアリングで分子ドッキングを進化させた
原題:GNINA 1.3: the next increment in molecular docking with deep learning
掲載:Journal of Cheminformatics
出版:2025年3月
被引用数:99
月あたり被引用数:6.59
DOI:10.1186/s13321-025-00973-x
分子ドッキング とは、薬候補の低分子がタンパク質にどのように結合するかをコンピューターで予測する技術です。創薬の初期段階で使われる基本的なツールの一つです。
GNINA は、AutoDock Vina のサンプリングエンジンに 3D 畳み込みニューラルネットワーク(3D CNN)ベースのスコアリング関数を組み合わせたオープンソースのドッキングソフトウェアです。この論文はバージョン 1.3 のアップデート論文です。
オープンソース・CC-BY ライセンスで、研究室から企業まで幅広く使われています。引用は、実際に使った研究者からの引用と、自分の手法を評価するためのベースラインとして引用する研究者の両方から来ていると思います。
このスナップショットでは: 深層学習を使った分子ドッキングが「実験的な手法」から「デファクトスタンダード」に移行しつつあることを示すシグナルとして引用されているように見えます。
元の論文で確認してください:ベンチマークデータセットと性能指標、他のドッキングツールとの比較、計算コストのベンチマーク、スコアリング関数のアーキテクチャ。
5位:デノボ設計タンパク質がヘビ毒毒素を中和した
原題:De novo designed proteins neutralize lethal snake venom toxins
掲載:Nature
出版:2025年1月
被引用数:126
月あたり被引用数:7.63
DOI:10.1038/s41586-024-08393-x
コンピューターで設計したタンパク質を使って、コブラやマンバなどの致死性ヘビ毒毒素(three-finger toxin 系)を中和できることをマウスモデルで示した論文です。
ヘビ咬傷は、冷凍保存が必要だったりアナフィラキシーリスクがあったりと、従来の抗毒素(動物由来の血清)の課題が多い分野です。デノボタンパク質設計がその課題への一つの答えになりうることを示した前臨床研究です。
前臨床段階(動物実験)の研究です。 臨床応用にはさらなる開発が必要です。
このスナップショットでは: AI 設計タンパク質が「ベンチマーク標的」ではなく、実際の公衆衛生課題に対して機能することを示したシグナルとして、技術コミュニティを超えた引用を集めているように見えます。
元の論文で確認してください:動物モデルの詳細、対象としたヘビ毒種と毒素ファミリー、従来の抗毒素との比較、前臨床的な限界。
4位:AIエージェントが「Virtual Lab」を作り、ナノボディを設計した
原題:The Virtual Lab of AI agents designs new SARS-CoV-2 nanobodies
掲載:Nature
出版:2025年7月
被引用数:91
月あたり被引用数:8.99
DOI:10.1038/s41586-025-09442-9
ナノボディ は、ラクダ科動物に由来する単一ドメイン抗体の一種です。通常の抗体より小さく、安定で、製造しやすい特徴があります。
この論文は、複数の AI エージェントが役割を分担して協調する「Virtual Lab」フレームワークを使い、SARS-CoV-2 を標的とする新規ナノボディを設計・湿式実験で検証した論文です。
AI エージェントの役割は、文献調査・配列設計・構造予測・実験可能性評価などに分かれています。生成した候補を人間の研究者が実際に湿式実験で検証しています。
これは基礎研究・ツール開発の論文であり、臨床研究ではありません。
このスナップショットでは: 「AI が科学サイクルの一部を自律的に担う」というアーキテクチャの実証例として、生物学・化学・材料科学を横断して引用されているように見えます。
元の論文で確認してください:エージェントフレームワークのアーキテクチャ、各エージェントの役割、ナノボディ候補の実験的検証プロトコル、自律設計ループの現時点での限界。
3位:LigandMPNN ── 結合部位の「原子環境」を読んでタンパク質配列を設計する
原題:Atomic context-conditioned protein sequence design using LigandMPNN
掲載:Nature Methods
出版:2025年3月
被引用数:164
月あたり被引用数:11.58
DOI:10.1038/s41592-025-02626-1
ProteinMPNN は、指定したバックボーン構造に折り畳まれるタンパク質配列を設計する、広く使われているツールです。LigandMPNN は、その拡張版で、結合部位にある分子(低分子・補因子・核酸・金属イオン等)の原子座標情報を設計条件に直接組み込めます。
ざっくり言えば、「このタンパク質はこの薬分子に結合してほしい。だからその分子の形を考慮した配列にしてください」という設計ができるようになります。
本データセットで被引用数 164 はもっとも多く、ProteinMPNN の既存ユーザーと構造ベース創薬グループが重なっているためだと読めます。
このスナップショットでは: リガンドを意識したタンパク質配列設計という方法論カテゴリが確立しつつあり、LigandMPNN がその参照実装として機能しているように見えます。
元の論文で確認してください:ProteinMPNN との技術的な違い、ベンチマークタスクとデータセット、扱えるリガンド・補因子の種類、実験的検証結果、適用可能なタンパク質ファミリーの範囲。
2位:MACE-OFF ── 有機分子向け機械学習力場の汎用化へ
原題:MACE-OFF: Short-Range Transferable Machine Learning Force Fields for Organic Molecules
掲載:JACS
出版:2025年5月
被引用数:149
月あたり被引用数:11.97
DOI:10.1021/jacs.4c07099
機械学習力場(MLFF) とは、ざっくり言えば、分子の動きをシミュレートするための「AI モデル」です。従来の古典力場(GAFF・OPLS 等)は物理的な近似モデルですが、MLFF は量子化学計算(DFT)レベルの精度をはるかに速い計算速度で近似することを目指しています。
MACE-OFF は、多様な有機分子(薬候補分子に多いタイプ)に特化した転移可能な MLFF です。「短距離(Short-Range)」という修飾は、長距離の静電相互作用は別途処理が必要なことを意味しますが、この選択が転移可能性と計算効率を向上させています。
創薬の分子動力学(MD)シミュレーションにとって、力場の精度は予測の信頼性に直結します。多様な有機化学空間をカバーできる汎用 MLFF の実用化は、長年の課題でした。
CC-BY ライセンスで、JACS という権威ある化学誌での発表。実際に使う研究者からの引用と、性能比較の参照論文として引用する研究者の両方から citations が来ていると思います。
このスナップショットでは: 機械学習力場が「専門研究者向けの特殊ツール」から「計算創薬の実用インフラ」に移行しつつあることを示すシグナルとして見えます。
元の論文で確認してください:学習データの構成、GAFF・OPLS 等との性能比較ベンチマーク、計算コストのベンチマーク、長距離相互作用の扱いに関する既知の限界、推奨ユースケース。
1位:BindCraft ── 1回のAI設計で「使えるタンパク質バインダー」を作る
原題:One-shot design of functional protein binders with BindCraft
掲載:Nature
出版:2025年8月
被引用数:138
月あたり被引用数:15.06
DOI:10.1038/s41586-025-09429-6
本データセット最高の cpm(15.06)を記録した論文です。
BindCraft は、RFdiffusion・ProteinMPNN・AlphaFold2・追加フィルターを一つの自動パイプラインに統合したタンパク質バインダー設計ツールです。「ワンショット」という表現は、ターゲットタンパク質の構造を入力するだけで、専門家が各ステージを手動調整しなくても、検証済みのバインダー候補を出力できるというイメージを表しています。
この論文は、実験的な成功率が従来手法と比べて大幅に向上したことを報告しています(具体的な数値は原論文で確認してください)。
GitHub でオープンソース公開されており、実際にパイプラインを使った研究グループからの引用と、手法を評価・比較する研究グループからの引用が重なっています。
このスナップショットでは: タンパク質バインダー設計が「専門研究室だけができる高度な研究」から「標準的なパイプラインで再現できる作業」に移行しつつある転換点を示すシグナルとして引用されているように見えます。
元の論文で確認してください:パイプラインのアーキテクチャ、従来のバインダー設計手法との比較ベンチマーク、実験的成功率のデータ、検証実験で使ったターゲットタンパク質の多様性、ソフトウェアの利用方法と計算要件。
このTop10が示しているもの
第一の流れ:設計パイプラインの統合化が進んでいる。
BindCraft(1位)・LigandMPNN(3位)・RFdiffusion2(8位)はそれぞれ、設計の問いから実験候補まで、専門家の手動調整を減らす方向への一歩です。「ツールを組み合わせる専門知識」から「パイプラインに入力するだけ」への移行が始まっているように見えます。
第二の流れ:設計対象の幅が広がっている。
ヘビ毒中和タンパク質(5位)・環状ペプチド(9位)・undruggable 標的向けマクロサイクル(10位)・酵素活性部位(8位)は、「ベンチマーク標的」を超えて、実際の応用文脈で引用が集まっていることを示しています。
第三の流れ:AI エージェントが実験サイクルに入り始めた。
Virtual Lab(4位)は、AI が設計・評価ループを自律的に回す「組織アーキテクチャ」の実証例として引用されています。「AI ツールを使う」から「AI がサイエンスサイクルの一部を担う」という方向転換の先行例です。
第四の流れ:機械学習力場が計算インフラになりつつある。
MACE-OFF(2位)は、有機分子向けの汎用 MLFF として、計算創薬の MD シミュレーションに応用されています。
第五の流れ:フィールドが自分のツールを評価し始めた。
共折り畳みモデルの物理的理解を問う論文(7位)は、設計論文ではなく評価論文です。急速な普及への批判的な視点が、引用シグナルとして現れています。
惜しくもTop10に入らなかった論文
PLIP 2025(Nucleic Acids Research, cpm 12.16)— タンパク質–タンパク質/リガンド相互作用の可視化・解析ツール「PLIP」の2025年版更新。引用速度は非常に高いのですが、NAR データベース号のツール更新論文として別枠扱いにしました。相互作用解析のワークフローで使う方は追う価値があると思います。
AI-driven protein design(Nature Reviews Bioengineering, cpm 4.56)— AI タンパク質設計の全体像を俯瞰するレビュー論文。レビュー除外ポリシーで Watchlist としましたが、この分野の地図として有用です。
Diffusing protein binders to intrinsically disordered proteins(Nature, cpm 4.07)— 内在性無秩序タンパク質(IDP)を標的にしたバインダーを拡散モデルで設計した論文。タンパク質設計カテゴリの上限(5本)で惜しくも外れました。
KAN GNN for molecular property prediction(Nature Machine Intelligence, cpm 3.82)— Kolmogorov-Arnold ネットワークを GNN に組み込んだ分子特性予測手法。方法論として独自性の高い論文です。
De novo peptide binders(Science Advances, cpm 3.13)— コントラスト学習ベースで多様な立体構造ターゲットに対するペプチドバインダーを設計する手法。別角度からのペプチドバインダー設計アプローチとして注目されています。
専門領域別に論文を追うことの意味
一般的な科学ニュースは、大きなストーリーを伝えるのに向いています。
でも研究者や R&D 担当者にとって、本当に必要な情報は「自分の分野の中で何が動いているか」です。
機械学習力場の分野は MACE 系に収斂しつつあるのか。BindCraft はタンパク質設計のグループだけで引用されているのか、それとも抗体工学やバイオセンサーのグループでも引用されているのか。Virtual Lab の AI エージェントアーキテクチャは材料科学や化学合成の文脈でも再現されているのか。
そういった信号は、一般的なニュースフィードからはなかなか見えてきません。
引用速度を専門領域別に継続して見ることで、別の角度が見えてくることがあると思っています。
OpenPharos について
私は現在、OpenPharos という多言語論文アラートサービスを作っています。
OpenPharos は、自分の専門領域に合わせて新着論文を追えるサービスです。
今回のような専門領域別の引用スナップショットは、OpenAlex のメタデータを使った実験的な Research Signals 記事として作成しています。今後、こうした分野別の研究シグナルをどのようにサービスに取り入れられるかも検討しています。
OpenPharos は Scopus や Web of Science を置き換えるものではありません。研究者や R&D チーム、研究支援組織が、自分たちの分野の重要な動きに、より早く、より少ない労力で気づくための補完的なアラートサービスを目指しています。
関心のある分野の新着論文を追いたい方は、試してみてください。
https://openpharos.org/ja/paper-alert-japanese/
2026年版、気になりませんか?
今回は 2025年出版の論文を 2026年6月時点で見てみました。
BindCraft の後継研究、RFdiffusion2 の酵素設計の展開、共折り畳みモデルの評価論文が増えていく 2026年後半……このスナップショットは時間が経つとどう変わるのでしょうか。
こうした動向は、一度見るよりも継続して追うことで価値が出ると思っています。
OpenPharos Research Signals では、今後も専門領域ごとの論文シグナルを追っていく予定です。
集計方法について
データソース: OpenAlex (open.alex.org)
取得日: 2026年6月2日
対象出版年: 2025年
検索クエリ: 6グループ 56クエリ
タンパク質設計・バインダー設計(15クエリ)
タンパク質–リガンド相互作用・ドッキング(13クエリ)
生成的分子設計(7クエリ)
ADMET・分子特性予測(7クエリ)
タンパク質動力学・機械学習力場(8クエリ)
AI エージェント・Virtual Lab(6クエリ)
取得件数: OpenAlex クエリ結果が重複を含む形で192,185件(raw)→ 重複除去後 107,985件 → タイトルベース厳格フィルタ後 768件
月あたり被引用数(cpm)の計算:
cited_by_count ÷ max((取得日 − OpenAlex 公開日) / 30.44, 1.0)
注意点:
被引用数は 2026年6月2日時点の OpenAlex スナップショット。時間とともに変化します
OpenAlex の publication_date は online-first 日付。Crossref の印刷日とは乖離があります
ローカルフィルタはキーワードベース。検索ボキャブラリーに含まれない論文は対象外です
レビュー論文・NAR webserver 号論文は本体 Top10 から除外しました
自己引用・引用品質の補正は行っていません
データベースにより被引用数の数値は異なります(Crossref / Web of Science / Scopus 等)
重要な判断にあたっては、原論文・出版社ページ・DOI・公式データベースをご確認ください
※本記事は、医療助言、専門的査読、公式評価ではありません。
修正・ご指摘歓迎です
本記事は、最終的な専門家レビューではなく、継続的に改善していく Research Signal として公開しています。
もし、間違い、抜けている重要論文、解釈が弱い部分、よりよい見方があれば、コメントで教えていただけると嬉しいです。
今後の OpenPharos Research Signals の改善に活かします。
出典・ライセンスについて
本記事では、ライセンス情報に応じて記述の深さを調整しています。
CC-BY など再利用条件が明確な論文については、出典とライセンスを明記したうえで、やや詳しく紹介しています。
一方で、ライセンスが不明確な論文、再利用条件が限定的な論文、またはクローズドな論文については、原則としてメタデータに基づく Research Signal として扱い、抄録や本文の代替にならないようにしています。
詳しく紹介した論文(再利用可能ライセンス確認済み):
Kovács DP et al.,「MACE-OFF: Short-Range Transferable Machine Learning Force Fields for Organic Molecules」, JACS, DOI: 10.1021/jacs.4c07099.
Creative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)ライセンスに基づき利用。
ライセンス URL: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
OpenPharos による要約・解説・構成変更を含みます。
原著者、掲載誌、出版社、資金提供者による承認を意味するものではありません。
McNutt AT et al.,「GNINA 1.3: the next increment in molecular docking with deep learning」, Journal of Cheminformatics, DOI: 10.1186/s13321-025-00973-x.
Creative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)ライセンスに基づき利用。
ライセンス URL: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
OpenPharos による要約・解説・構成変更を含みます。
原著者、掲載誌、出版社、資金提供者による承認を意味するものではありません。
Buttenschoen A et al.,「Investigating whether deep learning models for co-folding learn the physics of protein-ligand interactions」, Nature Communications, DOI: 10.1038/s41467-025-63947-5.
Creative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)ライセンスに基づき利用。
ライセンス URL: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
OpenPharos による要約・解説・構成変更を含みます。
原著者、掲載誌、出版社、資金提供者による承認を意味するものではありません。
Rettie S et al.,「Accurate de novo design of high-affinity protein-binding macrocycles using deep learning」, Nature Chemical Biology, DOI: 10.1038/s41589-025-01929-w.
Creative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)ライセンスに基づき利用。
ライセンス URL: https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
OpenPharos による要約・解説・構成変更を含みます。
原著者、掲載誌、出版社、資金提供者による承認を意味するものではありません。
