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エックハルト~幸福の在り処~

*『本好きの下剋上』のネタバレを含みますので未読の方はご注意ください
エックハルト視点SSは下記です(参照アットウィキ)
朗読イベント2024 パンフレット 書き下ろしSS エックハルト視点 失敗の反省と対策
書籍版第三部Ⅲ エピローグ
SS第38話 エックハルト視点 ユストクスへの土産話(書籍版短編集Ⅰにも同題で収録)書籍版第四部Ⅷ 
書き下ろしSS 十年間の変化
SS第34話 エックハルト視点 ローゼマインが不在の冬 前編
SS第35話 エックハルト視点 ローゼマインが不在の冬 後編
書籍版短編集Ⅲ エックハルト視点 ローゼマインが不在の冬(SS第34話〜第35話の再構成)

罵詈雑言の百貨店、エックハルト!

ボニファティウスの孫で強さを第一とするエックハルトはディッターで敵を翻弄する優秀なフェルディナンドに惚れ込んで名を捧げてまで側近になりました(『ふぁんぶっく10Q&A』)
とはいえ、フェルディナンドに付いていく為に座学もかなり努力していたろうし知略にも長けていて頭の回転もかなり速いです。
アーレンスバッハ行きが決まり主の元に残ると決めたアンゲリカの意志を尊重した時、婚約者にされたくないコルネリウスの思惑をさっと見抜いてアドバイスし黙らせた時(書籍版第四部Ⅷ SS 『十年間の変化』)などさすが!と思いました。
語彙も豊富で特に罵詈雑言を並べたら右に出る者はいません。
そしてそのスキルもヴェローニカが育てたものだったらしいのが切ないです。
(公式ツイート2024年2月4日引用↓)

ローゼマインのモノローグにもあるけれど、現代社会に生きる私には命を捧げても誰かに仕えるという感覚は分かりません。ユルゲンシュミットでも派閥の関係で仕方なく選ぶ者も多そうですが、エックハルトやユストクスはフェルディナンド様至上主義で、彼を守るためなら闇を呑む仕事も厭わず、思考はきわめて苛烈、領主であるジルヴェスターに跪いて感謝した(書籍版五部8プロローグ)のも彼がフェルディナンドを救うと決めて動いたからでしたし、ローゼマインを褒めるのもフェルディナンドの役に立っている時というぶれのなさ。
ハッセの民がフェルディナンドに逆らったと聞けばスチャッと「すぐに討伐を!」と動きだしそうなほどで平民の命などなんとも思っていませんが、ローゼマインの出自を平民だと知っているのに主が決めたからとまったく抵抗もなく実妹として扱う。
一方で名捧げもなくフェルディナンドの信用を勝ち取ったローゼマインに妬ましさすら覚えていたのが、その優秀さに結局は妹バカになっていくのも可愛いところ(「ローゼマインが不在の冬」)

エックハルトのフェルディナンドへの信奉にはヴェローニカに迫害される対象であった自分の母親であるエルヴィーラが、同じように害されているフェルディナンドの優秀さを認め彼を支える力になろうとしていたというのも無関係ではないとも思います。ですが、自身が認めるに足る実力者でなければ恐らくそこまでにはならなかった。あくまでもフェルディナンド自身の能力が彼の気持ちを惹きつけているというのがいかにも騎士っぽいです。
貴族院時代は側近として身近にいることで得たフェルディナンド情報を実母の耳に入れることで小遣い稼ぎをしていたという話もあるので案外ちゃっかりもしています。

そして自分の命より大切な主

先代アウブである実父アーデルベルトの死後フェルディナンドはヴェローニカからさらに命の危機に晒されたため神殿入りしました。
エックハルトは側近を外され、妻ハイデマリーとお腹の子供を暗殺されます(本人も毒で倒れたが体力があって命は取り留めた)。そして後を追うこともヴェローニカを暗殺し返すことも許さなかったフェルディナンドへの忠誠心だけが彼の生きる支えでした。
「ローゼマインが不在の冬」を読んでも常にフェルディナンドの気持ちを推し量っているエックハルトの思考は凄いです。
アーレンスバッハの供給の間でフェルディナンドが害され、彼の事前の命令通りエーレンフェストに向かいつつも復讐を果たして自死する気持ち満々でした。(2017年4月9日公式ツイート引用↓)

そんな彼にとって、ローゼマインがアレキサンドリアのアウブとなりその配偶者として主が幸福を手にしたと思えるのはどれだけの幸福かと思います。
騎士団長を望まれながらもあくまでもフェルディナンドの護衛騎士の座に留まるという彼には相変わらずぶれがありません。

アンゲリカは背中を預けられる良いバディ

(2023年1月9日 公式ツイート↓引用)

アンゲリカとの最初の婚約はお互いに懸想のけの字もない、ちょうど良い相手だからというだけでした。ローゼマインの護衛騎士を辞める気がない、できるだけ長く仕えたいアンゲリカと、喪ったハイデマリーを想い続ける自分に結婚を急がせない相手としてアンゲリカはエックハルトにとっても利の多い婚約者でした。
アーレンスバッハ行きが決まり婚約解消について話をした時、「ローゼマイン様から離れてどのように生きていけば良いのかわからないので、わたくしは一緒に行けません」とアンゲリカに言われエックハルトはその思いに相当なシンパシーを感じたと思います。
主の元を離れては生きていけない、そのくらいの強さは彼自身の想いでもあり…そのシンパシーこそが二人の強い結びつきのように思えます。
再びアレキサンドリアで婚約話が持ち上がった際に二人があっさり承諾したのも当然だと考えました。
甘やかさはないけれど、アーレンスバッハに連れていく気もあったことからも、さらには中央戦偵察の際にアンゲリカにもとフェルディナンドに言うあたり(書籍五部10「ツェントの責任」)、闘いにおいて自身の背中を預けるに足るバディとして認めている様子が描かれていました。強さを至上とするエックハルトがこれだけ認めているのは凄いことです。
そしてお互いの主が婚約した後二人が結婚することには利しかないです。
主の幸福を間近で見守りつつ、自らも信頼に値するアンゲリカとともに生きる。
ヴェローニカによって絶望の沼で何年も死人のように生きていたエックハルトの幸福がそこにあります。

*いつものようにTwitter(現X)に時々垂れ流していたエックハルトについての感想を纏めてみました。長い文章をお読みいただきありがとうございます。