時をかけた御使いはイルムヒルデの館に居たか
*『本好きの下剋上』のネタバレになりますので、未読の方でこれから読もうと思っている方は御注意ください
時を駆けてフェルディナンドを救っていたのは
恐らくはWEB版連載中からファンの間では言われていたのだろうと思いますが一つの定説がありました。垣間見られる過去のフェルディナンドの危機に対して続編への伏線がいくつか仕込まれており、未来からローゼマインが「女神の使いとして顕現し、フェルディナンドを救っている(通称:時かけ)」というものです。
(注:筒井康隆作「時をかける少女」はタイムトラベル物として有名SF小説ですが数多くのメディアミックスもあり若い世代では既に元になったSF小説ではなくそれをリスペクトして作成されたアニメ化等で知られているかもしれません。)
そして多くの読者の推測通りだったことが、ハンネローレ編で明らかになりました。フェルディナンドの命の糸を何者かに切られた為に綺麗に織りあがった20年くらいの歴史が失われることを機織りの女神ヴェントゥヒーテが嘆き、その嘆きのために時の女神がローゼマインを過去に送ったということがはっきりしました。あくまでも女神の嘆きの為で人の世の為ではないところが神々です。
仕込まれた伏線1
まずフェルディナンドの貴族院時代におけるターニスベファレン襲撃事件
この時襲われたフェルディナンド達は三日間の記憶を失っていました。その上で残された木札の意味深な内容(アウブ・アーレンスバッハの婚約者になる)が未来に起きることを暗示しているのでは?と…
https://ncode.syosetu.com/n7835cj/17/
一方で寮監として報告を受けたヒルシュールには彼らと違いしっかり記憶が残っていました。
ゲオルギーネが仕掛けた貴族院採集場にターニスベファレンが現れた事件に対して、手段の酷似からヒルシュールは当時のことを捜索にあたるルーフェンに語っています(書籍版4部6 ルーフェン視点SS)。
同じ事件に関わる記憶の有無から、時を駆けたローゼマインが現れたところに居たか居なかったかが問題なのだなと推測できます。御使いと同じ場に居る間の記憶だけが消されるのです。
神々ならではの割と大雑把なお仕事のような気がします。
伏線2
アダルジーザの実であったフェルディナンドが救われたのは先代エーレンフェスト・アウブに「女神のお告げ」があり「必ずエーレンフェストの利になると言われた」からだったとあります(書籍版第5部8)。
個人的にその前後に御使い(ローゼマイン)は先代王の元に現れたのではないかと推測していたのが
ドラマCD9レポート井上和彦さんのところ香月先生のコメントでした。https://tobooks.jp/booklove_dramacd9/contents_03_1.html
≫「先代ツェントの声を作ります」このキャラ、ドラマCDでは回想にちょっと出てくるだけですが、結構重要人物なんですよ。フェルディナンドがアダルジーザの離宮を出てエーレンフェストへ移動する許可を出した人物。《
エーレンフェストでは第二夫人さえ嫌がるヴェローニカが居るのですから子供を引き取るなんて面倒事しかないのです。先代王からの王命であったと考えた方がしっくりきました。王命でなくても王に許可を出させに行ったのだろうなとコメントを読んだ時に思いました。この辺りはこちらにも書きました↓
ハンネローレ編を読むと貴族院時代→アダルジーザ離宮・先代王(中央)→エーレンフェストの順で時を駆けているのではないか?と思われます。あくまで記憶が戻ったという報告順からの推測ですが。
エーレンフェストがラストなのはハンネローレ編でローゼマインが戻って来る直前での記憶が戻った者たちの報告がエーレンフェスト城勤めだったからです。洗礼式を無事に受けさせるところまでがローゼマインに求められた糸繋ぎだったのではないかと推測出来ます。
(2026年2月10日追記*推測ではアダルジーザ離宮に救いに行った→王に王命を出させた 2か所同時とは考えていませんでしたが、『ハンネローレ貴族院5年生 2』エグランティーヌ視点で離宮に救いに行った際に王が呼ばれる事態になったことが判明しました)
イルムヒルデ様の館にローゼマインは居たのでは?(母のように慕われるほどにお世話していた)
そしてイルムヒルデ様の館→フェルディナンドの貴族街の館→ローゼマインが譲り受けた図書館について過去の説明が出てくる532話
「フェルディナンドと中央から一緒に来た女性」「母親のように慕っていた」https://ncode.syosetu.com/n4830bu/532/)
ここの記載にある「母親のように慕っていた女性」とは、恐らくは洗礼式前にも命を狙われていたフェルディナンドを救うために洗礼式までは一緒にいたローゼマインではないかということ。虹作品でもお見かけしますし、私も本編を読んでいてそう思っていました。
↑の記載は主語が非常に曖昧で、誰の言葉かも曖昧です。
もしフェルディナンドが自身の記憶で語っていたのなら女神の御使い(ローゼマイン)ではないと言えます。それを根拠にここで出てくる「母親のように慕っていた女性はイルムヒルデ様と考える方が妥当」という方が多いのも分かります。
ですが、これまでの『本好きの下剋上』における読者への思考誘導を思えば、この辺りの記載については私は非常に印象操作というか、故意に曖昧に二人の女性(御使い=ローゼマインとイルムヒルデ様)を混在させているように思えてなりません。
そこで自分はなぜこれをローゼマインだと思ったのだったか?確かフェルディナンドにしては記憶が曖昧という記載があった気がして再読したところ見つけたのです。書籍版第5部8のフェルディナンドのモノローグにある
「イルムヒルデ様と接した時間が短いせいもあり、覚えていることは多くない。彼女が亡くなった後で聞いたことの方が多いくらいだ」
これです。
なので「虚偽ではないが全てではない」という例の叙述トリックではないかと感じました。
532話にある件の説明はローゼマインがフェルディナンド以外(おそらくはラザファムあたり)からの又聞きとしての説明です。フェルディナンドが館のことを語ったのだろうとは思われますが、それ自体が彼自身の記憶ではない可能性も高いのです。よく自分の子供の頃のことを大人が「お前はこうだったぞ」と言われてそれを記憶として他人にも語るように。
御使い=ローゼマインが過去にフェルディナンドと居た間の記憶は消されていて、イルムヒルデ様と二人だった時の記憶は残っているとすれば記憶力抜群のフェルディナンドにしては曖昧で「覚えていることが少ない」のも頷けます。
そう考えると少なくとも「フェルディナンドに記憶があるのだからこの女性は御使い=ローゼマインではない」と強く言えなくなるとは思います。
確かに館の主だったイルムヒルデ様も害されて居なくなっていますが、館の主が亡くなったことを「戻ったら姿がなかった」とは書かないと思います。存命時であれば母になる予定だったイルムヒルデ様は城に同行したであろうし、この表現には「城には同行せず館に残っていたはずが居なかった」というニュアンスを感じます。離宮への迎えもそうですが、公的な席に御使いは(姿を隠して近くにいるとかはあったかも?)同行してはいないんじゃないかなとも思います。
(2025年12月29日追記:2026年2月10日一部修正
離宮の救いには直接姿を見せて行ってるわけですが、多分引き取りの公式手続きの場にはイルムヒルデ様とアーデルベルトで行っていてローゼマインは正式な場ではフェアベルッケンで姿を隠していたのでは?館に着くまでの途中で姿を見せたとかかな…と考えるのはフェルディナンドに2人の会話の記憶があるからです。
離宮での救いはおそらく殺される寸前に飛び込んで間に合ったくらいだったんじゃ…フェルディナンドにはその一番の恐怖の記憶がなかった。時かけ後記憶が蘇ったのでハンネローレ編離宮での場面で生々しく蘇った恐怖を感じていたんだと思えます。
その上で御使いとしての姿を隠してる時間があったのでは?と考えたいのはラオブルートの頬の傷が付くとしたら引き取りの場面のどこかでは?と思ってるもので。先王が王命を出した場にはラオブルートは居ない…じゃあどの場面か?うーん…
記憶が残っているので、御使いの姿がないところで付いた傷については想像が色々滾りますね)
伏線3
加護の取得の際に明らかになったのが、エーレンフェストのみが行っていた礎供給時に捧げる祈りの言葉。これを行い出したのがおおよそ時かけの時期と被っていて昔から行っていたのではないというジルヴェスターの言葉から(472話)。ちょうどフェルディナンドを救った頃ではないかと思われるのです。
とすれば、加護を多く得るためにローゼマインが先代アウブに教えたのではないかと思われます。
伏線4
青色巫女時代のマインにフェルディナンドは七つの魔石が付いた子供用のブレスレットを貸し出しています。これは普通は自身に癒しが掛けられないことを補えるように自分自身に癒しを掛けられる優れものなのです(ふぁんぶっく7 はみ出たコピーしてぺったん)。
洗礼式前にも命を狙われていたのは確かで(ふぁんぶっくQ&A)、本当は母になるはずだったイルムヒルデ様は暗殺されたと思われます。
時を駆けたローゼマインがその後も何度もまだ狙われるであろうフェルディナンドのためにこのブレスレットを作製して渡していたのではないだろうか?とも思えるのです(メスティオノーラの書の知識で作った)。
(2025年8月23日追記)過去の活動報告でここは続編に関係あると言質がありました。前に読んでチェック入れてたのを忘れてました。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/372556/blogkey/2838527/
この中で個人的に思い入れが深いのは手首の腕輪ですね。
第三部のコミカライズでフェルディナンドがつけているのを波野さんに一度デザインしていただきましたが、それに色が付いた感じです。
7つの貴色の魔石が付いているのですが、貴色はどの順番が正しいのか、上下があるのかなど細かい質問がありました。
実はこの腕輪が重要な役目を果たすのって、この第二部の祈念式と続編なんですよね。
ローゼマインが糸を繋ぎに過去へ渡る続編を早く書きたい気持ちになりました。
しばらくは無理だろうけれど。笑…などなど続編の伏線と思われることはけっこうあって。
御使いがローゼマインとはっきりしましたが、多くの虹作品にあるちっちゃなフェルディナンドをお世話するローゼマインの妄想が公式であるかどうかはまだまだ不明です。でも可能性は高いんじゃないだろうかと個人的には思っています。
続編が書かれるのは先で、ハンネローレ編ではその端々を少し見せて貰っているだけです。でも半透明ではなくなったし、どうやらブルーアンファの訪れがあったようなので本当に楽しみですね!
*以上の件、前にXで垂れ流していたことを纏めてみました。
https://x.com/haneusaamano/status/1899938567528554742
いつもながら長文をお読み頂きありがとうございました!
【2025年11月23日追記】
しばらく公式過去ツイートのまとめを読んでいたのですが少し前に2020年のやりとりで関連で言質があったのを見つけました。
リンクは先生の答えの方にしますが質問は
「フェルディナンドは子供の頃に、マインは時の女神の使者として、フェルディナンドを助けに行った。だからフェルディナンドは、命の恩人はマインだって知っていますか。」でした。
に対して下記↓この段階で公式で実は結構な情報が出てたんですね〜v
知りません。
— 香月美夜@本好きの下剋上 (@miyakazuki01) June 20, 2020
記録は残っていますが、記憶は残っていません。

