アナスタージウスの憂鬱~頭の痛い保護者枠番外の王子
*『本好きの下剋上』のネタバレを含みますので未読の方はご注意ください
アナスタージウスについて初登場の場面での印象は傲慢な王子でした。あんまり感じ良くないぞ、と。ところが出てくるたびになんだか思ったより良い人のような?そして再読するとどんどん可哀想可愛い苦労人的な印象に!
結局のところアナスタージウスはいつのまにかローゼマインの保護者枠番外の位置についていたのでした。
それがあんまりにもお気の毒やら面白いやらなのでその流れを少し整理してみます。
*アナスタージウスの影の苦労が分かる本人視点のSSは主に下記です*
・書籍版第四部Ⅱ 書下ろしSS 直接の求愛
・SS第19話 アナスタージウスの頭が痛い報告時間
https://ncode.syosetu.com/n7835cj/19/
・SS第23話 アナスタージウス視点 奉納式の準備
https://ncode.syosetu.com/n7835cj/23/
・書籍版第五部Ⅲ 特典SS / 書籍版短編集Ⅱ それぞれの思惑
・書籍版第五部Ⅹ 中央の戦い アナスタージウス 王族の立場
◆初対面から売った喧嘩を買われてしまった◆
アナスタージウスとローゼマインの初対面は貴族院親睦会での挨拶でした。https://ncode.syosetu.com/n4830bu/287/
「どこが聖女だ」と鼻を鳴らす様が非常に感じ悪いです。
だけど裏事情(ローゼマイン入学前にハルトムートが聖女伝説を広めていて王族の貴族院責任者としてアナスタージウスにはローゼマインが非常に警戒すべき存在になっていた)を知って読むとこの態度にも納得できます。
寧ろローゼマインが売られた喧嘩を買い貴族言葉の嫌味が酷すぎました。アナスタージウスの心中お察し申し上げるという気持ちに。
次には奉納舞のお稽古。
ローゼマインの騎獣がフラウレルムを襲ったという噂からの王子とのやりとりも、結果的には「こちらからは絶対にお誘いしません」というあり得ないほどきっぱり断わりを入れたローゼマイン。この態度もなかなかなものだったようです;
さらにエグランティーヌが参加すると知って強引に割り込んできた音楽の先生方とのお茶会の席。ここでも読んでいる限り彼は非常に感じが悪いです。
どこまで傲慢野郎なのだ#と思っていたら結局のところエグランティーヌの心を射止めたいあまり、見た目幼女が簡単に彼女の心を攫う様にすら嫉妬していたらしいのです、なんと。ちっちゃい女の子相手に!
エグランティーヌがピカピカ奉納舞を見た後のうっとりする様子に嫉妬を吐露するSSを読むと、何度も何度も愛しい女性の気持ちを簡単に持っていくローゼマインへの妬ましさは相当深かったらしく、なんだかいじらしくなるほど。
(「アナスタージウスの頭が痛い報告時間」)
だから本編では”憎たらしいローゼマインにパンチ”となるのだな~と納得しました。とはいえ、この幼女の取り持ちのお陰で結ばれたので恩義はきちんと感じていました。
しかも本音で語る関係がある程度構築されていった結果、王族と下位に近い中領地だったエーレンフェストの領主候補生としてはあり得ないほどアナスタージウスとローゼマインは近い距離感になっていて結局いつも忌憚ない会話をするのが面白いところです。
◆なんだかんだ言ってもけっこう庇ってくれてた王子◆
何度も問題を起こされる仲裁の立場でもエーレンフェストの立場を守っているし、ラオブルートがゲオルギーネと結びついてからは王族に吹き込まれる「フェルディナンドがローゼマインを操って王位簒奪を狙っている」といったことからも、暗にローゼマイン達を守る側になって動いているのが分かります。
エグランティーヌが貴族院の教師になったのもローゼマインの行動の監視や情報を得る為でもあったけれど二人の会話からは逆に勝手な憶測からローゼマイン達を守る為という意図もありました。
その上で妻から聞かされる迂闊で目立ちすぎるローゼマインの行動のあれこれに、領地で頭を痛めるジルヴェスター達のように(何をしているのだ!ローゼマインは!)となっているのには受けます。すっかり保護者w
中でも本読みたさで王族にも真っ向から不敬を働くローゼマインの描写には大受け。普通なら頭が痛いで済まないところをジギスヴァルトから庇っていたりもしていたそう。それにしても王族に対して≫嫌そうで面倒くさそうな顔で見上げる≪ってどんだけ不敬なのローゼマインw
領地対抗戦で軽く会話しただけだが、フェルディナンドに問題はないと思う。問題があるとすれば、どのように動くのか全く予想がつかないローゼマインの方だ。王族である私が図書館まで出向き、声をかけたにもかかわらず、非常に嫌そうで面倒くさそうな顔で見上げてきたことは強烈に記憶に残っている。
この件、活動報告のコメントでも触れられていて↓そうだったのか~とさらに笑えました。順調に保護者枠に入りつつもイマイチ番外的な苦労性王子。
アナスタージウスは順調に保護者枠に入っていますが、保護者レベルが低いです。側近が入れない書庫に王族命令でローゼマインを入れてしまったところがすでに失敗。ジギスヴァルトに「悪気はないのです」と弁解しつつ、資料を取り上げようと奮闘していました。(笑)
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/372556/blogkey/1266004/
◆潔癖な苦労性◆
アダルジーザ離宮の話を知ったアナスタージウスは父トラオクヴァールが下した離宮の姫受け入れ中止に賛同しています。潔癖な彼には存在自体が許せないようでした。
アーレンスバッハに絡むトルークの秘密を探る為に出てきた「シュラートラウムの花」について調べてさらにオルタンシアに協力を依頼する話(オルタンシアSS 書籍版5部5「シュラートラウムの花」)ではラオブルートの所望した花のことをディートリンデに聞き出す演技指導をするアナスタージウス。ここにも彼らしく夫婦愛を大事に思うゆえの言動が出てきます。
(結果的にこの依頼がヒルデブラントの余計な一言を経由してオルタンシアの命を奪ってしまうのは残念ですが。)
一途にエグランティーヌだけを愛し妻を守ることを第一義に動く潔癖で純愛主義な彼は祠巡りの強要でローゼマインと心理的に隔絶します。
が、アナスタージウスの行動をSSを通して見直すと、行動に一貫性がありユルゲンシュミットに尽くす父を立て愛する妻子を守ろうとし、フェルディナンドとローゼマインを信頼し、色々ちゃんと頑張っていた王子だったんだなと思いました。ヒルデブラントがラオブルートに騙されたと知った時の怒りようも異母弟なのに親愛があって本当に良い奴だなと(涙)
◆とはいえ、良いように使われてしまう保険王子◆
グルトリスハイトを持たず、王位継承教育からは外されていたトラオクヴァールとその王子達は情報も知識も教育も全く足りていませんでした。
アーレンスバッハでのランツェナーヴェの侵略を排した後、メスティオノーラの書を取得してツェントを狙うジェルヴァージオを排除すべく、フェルディナンドは使いやすい駒としてアナスタージウスを呼び出します。
https://ncode.syosetu.com/n4830bu/642/
そして、呼びつけられた保険王子アナスタージウス。
*これは推測にはなりますが、ジギスヴァルトをここで呼び出さなかったのは、1つにはフェルディナンド達の指示に素直に従わないであろうから使いにくい(戦闘力も怪しい)
2つにはフェルディナンドに疑いの念を持っているのでランツェナーヴェのジェルヴァージオ(顔の相似もフェルディナンドには予想出来てたのでは)との関係性の疑義を声に出し、ユルゲンシュミット側結束の邪魔をしかねない
3つにはローゼマインに求愛の魔術具を贈るなど明らかに所有欲を示していて勝利後の功績をジギスヴァルトには与えたくない
…などの理由を想像しています。*
最終的にアナスタージウスは資格が一番あった愛する妻エグランティーヌが望む騒乱を防ぐ為にツェントに就くのを支える王配になりました。
彼の性格からいけば、自分が全属性であれば妻にやらせることなくツェントを引き受けたことでしょう。ですが、ジギスヴァルトに遠慮して祠巡りで兄を超えないようにしていたことが仇となり、この時点でフェルディナンドが作った魔術具としてのグルトリスハイトも権利がなかったのでした。
シュタープを取得した時点で全属性である必要があるメスティオノーラの書も後に取得し神々に認められ、色々な秘密を知ることになる王の座にはメンタル的にも向いているエグランティーヌ。彼女が就いたことで本来あるべきところに落ち着いたともいえます。
アレキサンドリアを訪問して「フェルディナンド様は凄いのです!」と呑気に惚気るローゼマインに「ここには長居したくない」と零すアナスタージウスですが、貴族院の領地外の人間の中では実は一番ローゼマインと仲がいいのでは?と思えるほどです。
初登場から最後までの間(レスティラウトと並んでw)読めば読むほど印象がよくなるキャラクターの筆頭ですね!
以上、いつもながら長くなりましたが、かわいそかわいいアナスタージウスも味わい深いということでこの項を終わります。
*この纏めは下記に垂れ流したツイートを整理したものです
https://x.com/haneusaamano/status/1945828337311514990?s=46

