トラネキサム酸入りのクリームについて考えてみた
最近、トラネキサム酸配合のスキンケア製品をよく見かけます。
私もフェイスケアを始めてから気になるようになりました。
ただ、薬剤師としては「本当に皮膚を通るのだろうか」という疑問がありました。
そこで、皮膚のバリア機能とトラネキサム酸の性質から整理してみました。
フェイスケアを始めた理由
数年前まで、私はフェイスケアとは無縁の生活を送っていました。
しかし、ここ数年で男性向けのフェイスケア商品の広告を目にする機会が増えました。
その頃は、「今さら始めても遅いだろう」と思っていました。
しかし、「これ以上放っておくと、外見の老け込みが加速するかもしれない」と考え、フェイスケアを始めることにしました。
とはいえ、根がめんどくさがりなのは変わりません。
できるだけ手間をかけず、効率よく続けたいというのが本音です。
始めた当初は、「何か塗って保湿しておけばいい」程度の認識でした。
普通の保湿クリームとオールインワンクリームの違いも、最近になってようやく理解したくらいの初心者です。
トラネキサム酸が気になった
最近は、UVカット機能付きのオールインワンクリームも使うようになりました。
朝はUVカット機能付き、夜はUVカット機能なしという具合に使い分けています。
朝の忙しい時間にひと手間省けるので、私には合っていると思います。
ドラッグストアやインターネットで商品を見ていると、「トラネキサム酸配合」という表示を目にすることが増えました。
私が薬学部を卒業したのは約40年前です。
当時、トラネキサム酸といえば「止血作用を持つ薬」という印象でした。
それが後年、「シミに有効な成分」として使われるようになったと知ったときは、驚きました。
そして最近、フェイスケア製品でこの成分を見かけるようになり、「本当に皮膚を通るのだろうか」という疑問が浮かびました。
皮膚という鉄壁のバリア
薬剤師として見ると、皮膚は想像以上に頑丈な組織です。
広告では、「浸透する」「届く」「染み込む」といった表現をよく見かけます。私たちは、塗ったものはそのまま中へ入っていくようなイメージを持ちがちです。
しかし、皮膚の本来の役割は、外から異物が侵入するのを防ぐことにあります。
もし皮膚が簡単に物質を通してしまう構造なら、私たちは洗剤や細菌、さまざまな化学物質によって日常的に健康被害を受けてしまうでしょう。
皮膚の最も外側にある角質層は、「レンガとセメント」に例えられます。
角質細胞がレンガ、その隙間を埋める細胞間脂質がセメントです。
そして、このセメントは脂質でできています。
つまり、水になじみやすい物質ほど、必ずしも通りやすいわけではありません。
トラネキサム酸は皮膚を通過するのか
ここで、トラネキサム酸の性質を考えてみます。
トラネキサム酸は水にはよく溶けますが、脂にはなじみにくい物質です。
さらに、皮膚表面は弱酸性なので、トラネキサム酸は電荷を帯びた状態になりやすくなります。
こうした性質を考えると、脂質でできた角質層を通過するという点では、決して有利とはいえません。
もちろん、「だから効かない」と言いたいわけではありません。
現在ではDDS(ドラッグデリバリーシステム)など製剤技術も進歩していますし、ごく浅い部分への作用だけでも肌の状態が改善する可能性はあります。
ただ、「塗ればそのまま基底層まで届く」というイメージについては、薬剤学の立場からは少し慎重に考えています。
「浸透」という言葉
美容製品では、「浸透」という言葉が頻繁に使われます。
しかし、この言葉は少し注意が必要です。
化粧品でいう「浸透」は、多くの場合、「角質層まで」を意味しています。
一方で、多くの人は、もっと深い場所まで成分が届いている様子を想像しているのではないでしょうか。
私は、この「言葉から受けるイメージ」と「実際の薬剤学」との間にあるギャップが、以前から気になっています。
最近は、トラネキサム酸入りのクリームを見るたびに、「さて、この成分は一体どこまでたどり着けるのだろうか」と考えてしまいます。
もちろん、成分が角質層にとどまること自体が悪いわけではありません。
表面の状態を整え、皮膚のバリア機能を保つことにも十分な意味があります。
薬剤師としては経皮吸収が気になります。
それでも、実際に使ってみてどう感じるかも大切だと思っています。
あれこれ考えながらも、次に買うオールインワンクリームは、結局トラネキサム酸入りを選んでしまいそうです。
まとめ
・トラネキサム酸入りのスキンケア製品を見て、薬剤師として経皮吸収が気になった
・皮膚は本来、異物の侵入を防ぐ強力なバリアとして働いている
・トラネキサム酸の性質を考えると、経皮吸収には不利な面がある
・化粧品の「浸透」は、多くの場合「角質層まで」を意味する
・広告のイメージだけでなく、成分の性質から考えてみることも大切である
