見出し画像

臨床研究ができるようになるまで

大学教員として研究を続けられるようになるまでには、多くの偶然と出会いがありました。
大学院時代から科研費採択までの経緯を振り返ります。


この記事を書いたきっかけ
今日は入学式です。
本学部には、新しく入学してきた学生を数名サポートするチューター制度があり、私にも新入生が配属になります。
この学生とは、しばらくの間、週に1度面談することになります。
これとは別に、研究室としても学生を受け入れることになります。
ただいま、研究室配属のための説明を行っている期間です。
学生が私の部屋を訪ねてくるにあたって、どうして研究がスタートできたかをまとめておきたくなり、この文章を書いています。

研究のスタート
前にも書きましたが、私は大学時代に研究をしていませんでした。
病院に勤務するようになってから糖尿病療養チームに配属され、そこで初めて研究を始めることになります。
このスタートから博士の学位を取るまでの経緯は「私が博士になった理由と方法」に記載しています。
学位を取ってからが大変でした。
研究を継続したいのですが、どうしたらいいかわかりません。
仕事のこともどうしたらいいか、悩んでいました。

大学院での出会い
大学院では、研究室の学生と交流する機会がありました。
当時所属していた研究室では、私のような社会人院生が学生と仲良くなることはあまりなかったようです。
しかし、私はいろいろなことに興味があり、学生に質問しているうちに自然と仲良くなれていったと思っています。
自分が卒業した大学ではなく、自分の実力では入学できないと思っていた大学の大学院に入学できたことが、私には素直に嬉しく感じられました。
そのため、学生にも積極的に話しかけていました。そのせいもあってか、次第に仲良くなった大学院生から「大学教員になったら」と勧められるようになりました。
語弊があるのを承知で言うと、私は入学しやすい大学を卒業していました。
私の卒業した大学から大学教員になる人はほぼいなかったのです。
当初は「それは無理だろう」と思っていましたが、だんだんとその気になっていきました。

研究テーマを探して
学位を取った際の研究の延長はしたくありませんでした。
基礎研究だったからです。
臨床研究をしたかったのですが、アイデアがありませんでした。
その後いろいろありましたが、ある大学の教員に採用されました。
大学教員になると、研究は仕事の一部になります。
何をしようかと考えていたとき、以前ある勉強会で講演した際に受けた質問を思い出しました。
「簡易懸濁法で抗がん薬を投与する際には、どんなことに注意したらいいですか?」
簡易懸濁法とは、錠剤やカプセル剤を粉砕せずに水で崩壊・懸濁させて投与する方法です。
一方、抗がん薬は毒性の強いものが多く、皮膚についたりしないよう注意して扱う必要があります。
これを研究テーマにしようと思いました。
しかし、抗がん薬は高価です。
外部資金がなければ研究はできません。
どうしようか、悩んでいました。

科研費への挑戦
そんな時期に、大学院の同窓会がありました。
私は、自分のその研究室での立ち位置を「親藩とまでは行かないが、譜代くらい」と思っていました。これは、社会人院生として別の場所で研究していたので、仲は良くても少し距離のある関係性というふうに理解していただけたらと思います。
その同窓会では、次の科研費応募のテーマをどうするかという話題で持ちきりでした。
大学教員になったばかりの私には、まだ遠い世界の話だと思っていました。
しかし、家に帰って冷静になると、「権利があるのに最初から放棄することはない」と思うようになりました。
だめで元々の発想です。
それから2週間、プライベートな時間も含めてそれに取り組み、期限内に応募にたどり着きました。
翌年4月1日、私のメールボックスに科研費採択の通知はありませんでした。
やはりだめだったか、そう思いました。
しかし、約1ヶ月後、メールボックスを覗きに行くと、研究支援課の担当事務の方がいます。
何か書類を入れているようで、私を見ると書類を渡しながら言いました。
「先生、書類は2週間以内にお願いしますね。」
何のことだろうと思っていると、科研費に関するものだとわかりました。
「科研費、通ったんですか?」
「そうですよ。」
東日本大震災の影響で、日本中のさまざまな手続きが遅れていたことが原因だったようです。
私は大学に就職して、その翌年度から科研費に採択され、研究ができるようになったのです。

まとめ
・研究者としての道は、最初から明確に見えていたわけではなかった
・大学院での出会いが、その後の進路に大きな影響を与えた
・研究テーマ探しや資金確保には、多くの試行錯誤があった
・だめで元々と思って挑戦した科研費が、研究を続けるきっかけになった
・研究は実力だけでなく、縁と行動力にも支えられていたと感じている


いいなと思ったら応援しよう!