短編小説|二人を繋ぐ夢【後日談】
テレビ画面に映画のエンドロールが流れ始める。
「貴也さん…彼女は作らなかったんですか?」
萌奈から急にそう言われて、貴也は驚いて横を向いた。
すると隣に座る萌奈と目が合う。
こういう時の萌奈はいつもからかうように笑う。
けれど、今の萌奈の表情は真剣そのものだった。
「…うん、そうだよ」
そう答えると萌奈はほっとしたような、けれど少しだけ泣きそうな顔をした。
「そっか…よかった」
その声は小さく、映画のBGMにかき消された。
でも貴也には、唇の動きで何を言ったのか分かった。
貴也は胸の奥がじんわりと熱くなった。
萌奈が自分のことを「好き」と言ってくれているようで、泣きたくなるほど嬉しかった。
思えば自分は萌奈に「好きだ」と告げたことがなかった。
萌奈からも、そう告げられたことはない。
けれども、わざわざ言葉にしなくても、互いに「大切な人」だと分かっていた。
だから敢えて言葉にしなかった。
だが、それは萌奈を不安にさせていたのかもしれない。
「萌奈の方こそ…彼氏は作らなかったの?」
思わず、萌奈と同じ言葉を返していた。
驚いて目を丸くした萌奈が、やがて静かに頷く。
「はい」
その一言を聞いた瞬間、貴也は嬉しいのに、涙が込み上げてきた。
「そうか。……よかった」
貴也の言葉に萌奈は耐えきれず泣き顔になった。
「私も…貴也さんが誰とも付き合わなくて…よかったって思いました」
「……うん。俺も同じ気持ちだった」
貴也は泣きじゃくる萌奈をそっと引き寄せた。
「萌奈、好きだ」
抱きしめたまま、貴也はようやくその言葉を伝える。
「ごめん…なかなか言えなくって」
すると萌奈は首を小さく横に振り、顔を上げて言った。
「私も、貴也さんが好きです」
泣きながらも、萌奈がはにかんだ笑みを見せる。
映画のエンドロールが終わり、部屋の明かりが落ちた。
自然と、二人の唇は重なった。
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