【Coherent(COHR)Q4 FY2026】AI光通信は巨大化する。その利益はCoherentに残るのか
Coherent(COHR)のQ4 FY2026決算を、初めて本格的にアウトプットする。
Coherent等のレイヤーについては、これまで私自身何度も深く勉強してきたつもりだが、簡単ではないし、今でも理解できていないことが多い。
この記事はバリュエーションや投資判断の考えも含めて中級者以上向けである。もし初心者ならば、足らない内容を調べながら、決算プレゼンテーションや決算コールを横に開き、本アウトプットを繰り返し読むことをおすすめする。
もっとも誰かに読んでもらいたくて書いたのではない。そして、この記事に価値があるかどうかも、たいして意味はない。無料でそっと置いている。
AI等への投資と向き合うために、自分と深く対話した時間だけに価値がある。
Coherentは、AIファクトリーの構造を理解しようとすれば、避けて通れない企業である。
AIデータセンター向け光トランシーバ、EML、CWレーザー、VCSEL、Silicon Photonics、光回路スイッチ、そしてCPO。
それでも私は、独自企業ランキングである2026年下半期版のFuture 40でCoherentを除外した。
AI光通信に成長がないと思ったからではない。
むしろ逆である。
AIデータセンターが巨大化するほど、GPUとGPU、ラックとラック、データセンターとデータセンターをつなぐ光通信の重要性は上がる。
しかし、巨大化する市場を通過することと、その利益プールを長期的に捕捉することは違う。
光トランシーバやレーザーの需要が増えても、供給能力が増え、価格競争が起き、顧客が複数調達を続けるなら、その利益はCoherentを細く通過するだけかもしれない。
私は、Coherentが5年後の利益プールを十分な割合で捕捉し、それを不可逆的に防衛できるとは判断しなかった。
ただし、長期コア投資だけが投資ではない。
供給不足、能力増強、製品世代交代、粗利率改善、EPS加速が複数四半期にわたって続くなら、時限的な決算モメンタム投資として成立する可能性はある。
また、CPOやNPOによる光電融合、銅から光への移行、OCSによるGPU利用率向上を見るうえでも、CoherentはAIファクトリーの現在地を映す重要な観測地点である。
今回確認したいことは明確である。
Coherentは、AI光通信を通過させる部品メーカーなのか。
それとも、6インチInPと統合光学によって、AIデータセンターのボトルネックを握る企業へ変わり始めたのか。
そして、仮にボトルネックを握ったとして、その利益は本当にCoherentの株主へ残るのか。
この二段階で決算にメスを入れる。
■ 4四半期の決算数字
Q1 FY2026 → Q2 FY2026 → Q3 FY2026 → Q4 FY2026
※CoherentはFY2026中にAerospace & Defense事業とMunichの製品部門を売却した。会社が示すpro forma成長率は、比較期間からこれらの売上を除外している。
・売上高:$1.581B → $1.686B → $1.806B → $2.046B
YoY:+17.3% → +17.5% → +20.5% → +33.7%
QoQ:+3.4% → +6.6% → +7.1% → +13.3%
売上成長率は四半期ごとに加速し、Q4に初めて$2Bを超えた。
事業売却影響を除くQ4 pro forma成長率はQoQ +14%、YoY +42%。市場予想約$1.98Bも上回った。
・Datacenter & Communications売上:$1.090B → $1.208B → $1.362B → $1.615B
売上構成比:68.9% → 71.6% → 75.4% → 78.9%
YoY:+26.2% → +33.5% → +40.6% → +58.6%
QoQ:+7.1% → +10.8% → +12.7% → +18.6%
成長のほぼすべてをDatacenter & Communicationsが担っている。
全社売上の約79%まで上昇し、Coherentは急速にAI光通信企業へ変わっている。
・Industrial売上:$491M → $478M → $444M → $431M
売上構成比:31.1% → 28.4% → 24.6% → 21.1%
報告ベースYoY:+1.4% → -9.8% → -16.1% → -15.7%
QoQ:-3.9% → -2.6% → -7.1% → -2.9%
Q4 pro forma YoY:約+1%
報告ベースの減収には、Aerospace & Defense事業とMunich製品部門の売却が含まれる。売却影響を除いたQ4売上は前年同期比でほぼ横ばいだったが、広範な産業需要はなお弱い。
※Coherentは、Datacenter & Communications全体の売上高は開示しているが、その内訳であるData Center事業とCommunications事業の四半期売上高および売上構成比は開示していない。以下は決算資料・決算コールで会社が開示した成長率であり、金額は推測で補わない。
・Data Center事業
四半期売上高:未開示
売上構成比:未開示
YoY:+23% → +36% → +37% → +66%
QoQ:+4% → +14% → +13% → +24%
Q1はInPレーザー不足によりQoQ +4%へ制約されたが、供給改善とともに成長率が加速した。
Q4は800G、1.6Tトランシーバ、6インチInPの増産、OCSなどが成長を支えた。
・Communications事業
四半期売上高:未開示
売上構成比:未開示
YoY:+55% → +44% → +60% → +56%
QoQ:+11% → +9% → +16% → +11%
ZR/ZR+トランシーバ、ポンプレーザー、光増幅器、DCI、データセンター間接続向け製品が成長している。
AIワークロードが複数のデータセンターへ広がるほど、データセンター同士をつなぐscale-across需要が増える。
・GAAP粗利率:36.6% → 37.0% → 37.7% → 38.5%
・non-GAAP粗利率:38.7% → 39.0% → 39.6% → 40.2%
non-GAAP YoY改善幅:+200bp → +77bp → +105bp → +215bp
粗利率は四半期ごとに改善した。
製品投入コストの低下、歩留まり、価格最適化、6インチInP、1.6Tなどの製品ミックスが寄与したが、長期目標42%超には未到達である。
・GAAP営業利益率:16.4% → 10.9% → 11.1% → 12.4%
・non-GAAP営業利益率:19.5% → 19.9% → 20.3% → 21.8%
Q1のGAAP営業利益には事業売却益$115Mが含まれるため、単純比較できない。
non-GAAPでは、売上成長、粗利率改善、SG&A比率低下によって営業レバレッジが継続している。
・GAAP希薄化後EPS:$1.19 → $0.76 → $0.97 → $1.19
・non-GAAP EPS:$1.16 → $1.29 → $1.41 → $1.74
non-GAAP YoY:+73% → +36% → +55% → +74%
QoQ:+16% → +11% → +9% → +23%
Q4 non-GAAP EPSは市場予想約$1.62、会社ガイダンス上限$1.72を上回った。
売上よりEPSが速く伸びており、利益率改善は一株利益へ接続している。
・営業CF:$46M → $58M → -$94M → $69M
営業CFマージン:2.9% → 3.4% → -5.2% → 3.4%
GAAP利益とnon-GAAP EPSは拡大したが、営業CFは低い。
FY2026通期の営業CFは$80Mにとどまり、在庫増加約$1.18Bが最大の押し下げ要因となった。
・設備投資:$104M → $154M → $290M → $556M
売上高比率:6.6% → 9.1% → 16.0% → 27.2%
6インチInP、光トランシーバ、OCS、CPOなどの能力増強により、設備投資は急増した。
会社はData Center向け投資について、約18か月の回収期間を見込んでいる。
・FCF:-$58M → -$96M → -$383M → -$486M
FCFマージン:-3.7% → -5.7% → -21.2% → -23.8%
FY2026通期のFCFは約-$1.02B。
成長投資として説明できる段階ではあるが、投資回収はまだキャッシュとして確認できていない。
・SBC:$44M → $43M → $49M → $50M
YoY:+26.2% → +5.0% → +20.0% → +15.7%
QoQ:+1.2% → -3.1% → +14.9% → +2.6%
売上高比率:2.8% → 2.5% → 2.7% → 2.5%
SBC、株式報酬は金額ベースでは増加したが、売上高比率は2%台半ばで安定している。
ただし、FY2026の株式数増加はSBCよりも、Series B優先株の普通株転換とNVIDIAへの新株発行の影響が大きい。
・non-GAAP希薄化後加重平均株式数:190.7M株 → 192.8M株 → 196.4M株 → 202.2M株
YoY:+20.2% → +20.5% → +23.4% → +27.0%
QoQ:+19.8% → +1.1% → +1.9% → +3.0%
Q1の希薄化後株式数には、Series B優先株が普通株へ転換されたと仮定する29.9M株が含まれる。
したがってQ1のQoQ +19.8%は計算上正しいが、Q1だけで約20%の普通株が新規発行されたことを意味しない。
・基本加重平均株式数:156.2M株 → 167.5M株 → 190.2M株 → 195.7M株
YoY:+1.7% → +8.2% → +22.6% → +25.9%
QoQ:+0.5% → +7.2% → +13.6% → +2.9%
Series B優先株30.1M株はQ2に普通株へ転換され、Q3にはNVIDIAへ7.788M株が発行された。
Q4の基本加重平均株式数は前年同期比25.9%増えており、利益成長を一株当たり価値へ転換できるかは重要な確認点となる。
・現金+短期投資:$853M → $864M → $2.418B → $1.987B
YoY:-16.4% → -5.9% → +171.6% → +118.5%
QoQ:-6.2% → +1.3% → +179.9% → -17.8%
Q3にNVIDIAから$2Bを調達したことで、現金と短期投資は大幅に増加した。
Q4は設備投資と運転資本へ資金を投入したためQoQで減少したが、前年同期の2倍を超える水準にある。
会社がQ4コールで説明したcash balance $2.59Bには、上記の現金・短期投資$1.987Bに加えて、約$606Mの制限付現金が含まれる。制限付現金の大部分はSilicon Carbide子会社での使用に限定されており、全社で自由に使える資金とは分けて見る必要がある。
・総有利子負債:約$3.308B → 約$3.352B → 約$3.194B → 約$3.222B
YoY:-17.1% → -13.2% → -14.4% → -12.6%
QoQ:-10.3% → +1.3% → -4.7% → +0.9%
FY2026を通じて、総有利子負債は前年同期を下回った。
Q3には$162Mを返済した一方、Q4末の負債はQoQでわずかに増加している。
・会社定義ネットレバレッジ:1.7倍 → 1.7倍 → 0.5倍 → 0.7倍
前年同期:2.4倍 → 2.3倍 → 2.1倍 → 2.0倍
前年差:-0.7倍 → -0.6倍 → -1.6倍 → -1.3倍
前四半期差:-0.3倍 → ±0.0倍 → -1.2倍 → +0.2倍
NVIDIAの出資、事業売却、負債返済、利益改善によって、レバレッジは前年同期から大幅に低下した。
ただし、制限付現金を除くと、自由に使える流動性と有利子負債の差は会社が示すcash balanceを使った印象より大きい。
・在庫:$1.633B → $1.848B → $2.127B → $2.581B
YoY:+17.8% → +37.4% → +52.8% → +79.5%
QoQ:+13.6% → +13.2% → +15.1% → +21.4%
在庫の増加率は四半期ごとに加速し、Q4には売上高YoY +33.7%に対して在庫が+79.5%まで増加した。
受注と能力増強に対応した先行生産ではあるが、製品別、顧客別、原材料・仕掛品・完成品別の増加要因は十分に開示されていない。
(数字だけ見た結論)
売上成長率、粗利率、営業利益率、EPSは同時に改善している。
一方、営業CF、FCF、在庫、設備投資を見ると、利益がまだキャッシュとして残る段階にはない。
今回の数字は「AI光通信需要が強い」ことを証明したが、「その利益が株主へ残る」ことまでは証明していない。
■ Q1 FY2027ガイダンスは、さらに成長が加速することを示した
会社はQ1 FY2027について、次のガイダンスを示した。
・売上高:$2.2B~$2.4B
中央値:$2.30B
QoQ:+12.4%
YoY:+45.4%
・non-GAAP粗利率:39.5%~41.5%
中央値:40.5%
QoQ:+30bp
YoY:+180bp
・non-GAAP OpEx:$400M~$420M
中央値:$410M
・中央値から計算したnon-GAAP営業利益率:約22.7%
・non-GAAP EPS:$1.85~$2.05
中央値:$1.95
QoQ:+12.1%
YoY:+68.1%
市場予想は売上約$2.14B、EPS約$1.77だった。
したがって、ガイダンス中央値は売上で約7.5%、EPSで約10%市場予想を上回る。
なお、これは同じ四半期ガイダンスの上方修正ではなく、新規ガイダンスである。
Coherentは正式なFY2027通期レンジを示していないが、FY2027の成長率はFY2026を上回り、年度末までに四半期売上$3B超へ到達すると説明した。
Q4 FY2026の売上$2.05Bから、1年以内に$3B超へ進む。
これが実現すれば、Q4 FY2027のYoY成長率は少なくとも約47%となる。
■ 先に結論
今回の決算で、AI光通信需要の強さを改めて議論する必要はない。
売上、受注、能力増強、ガイダンスのすべてが、需要の加速を示している。
新たに確認できたのは、6インチInP、光信号を生み出すレーザーなどを大量生産するための大型半導体ウエハーが、研究開発上の構想ではなく、実際の生産能力、トランシーバ出荷、売上成長、粗利率改善へ接続し始めたことである。
一方、FY2026のFCFは約-$1.02B、在庫はYoY +79.5%、仕入先への購入コミットメントは$11.8Bまで膨らんだ。
技術ボトルネックを握る実証は進んだ。
しかし、利益プールを一株当たりFCFとして株主へ残す実証は、まだ進んでいない。
■ Coherentは、AIデータセンターの「光の通り道」を作る会社
Coherentは、AI半導体を設計する会社でも、データセンターを運営する会社でもない。
NVIDIAのGPUや各社のAIアクセラレータが高速にデータをやり取りするための、光通信部品、モジュール、装置を作る会社である。
AIモデルの学習や推論では、膨大な数のGPUやXPU、GPU以外を含む演算処理装置を接続し、一つの巨大な計算機として動かす必要がある。
しかし、演算能力が増えるほど、半導体同士、サーバー同士、ラック同士、データセンター同士で移動するデータ量も増える。
電気信号を銅線で送る方法は、距離と通信速度が上がるほど、消費電力、発熱、信号劣化が大きくなる。
そこで、電気信号を光へ変換し、光ファイバーを通じて高速かつ省電力で送る必要がある。
Coherentが担っているのは、この「電気を光へ変え、送り、受け取り、再び電気へ戻す」部分である。
■ 単一の部品メーカーではない
現在のCoherentは、2022年に化合物半導体や光通信部品を展開していたII-VIが、産業用レーザー大手の旧Coherentを買収し、社名をCoherent Corp.へ変更して生まれた企業である。
そのため、事業領域は光トランシーバだけではない。
光通信の上流にある材料から、半導体部品、光学部品、完成モジュール、一部のシステムまでを幅広く持っている。
具体的には、InPやGaAs、ガリウムヒ素などの化合物半導体技術を基盤として、光を生み出すレーザー、光を受け取るフォトダイオード、光を制御するシリコンフォトニクス、光ファイバー、アイソレーター、光コネクターなどを製造する。
さらに、これらを組み合わせて800G、1.6Tなどの光トランシーバ、データセンター間通信用のZR/ZR+トランシーバ、外部レーザーモジュールを作る。
その上には、光の接続経路を切り替えるOCS、光回路スイッチや、複数の光回線を高密度に増幅するMulti-Railなどのシステム製品もある。
つまりCoherentは、光通信の一つの部品だけを販売する会社ではない。
材料からレーザー、受光部品、光学部品、モジュール、一部のシステムまでを社内でつなぐ、垂直統合型のフォトニクス企業である。
■ AI光通信のどこで稼いでいるのか
Coherentの事業は、大きく二つに分かれる。
一つ目は、Datacenter & Communicationsである。
AIデータセンター向け光トランシーバ、データセンター間通信、通信事業者向け光部品、OCSなどが含まれる。Q4 FY2026には全社売上の約79%まで拡大し、現在の成長のほぼすべてを担っている。
二つ目はIndustrialである。
半導体製造装置、ディスプレイ製造装置、材料加工、医療、計測などに使われる産業用レーザーや特殊材料が含まれる。Q4の売上構成比は約21%で、現在の成長率は低いが、Thermaditeなどの材料技術をAIデータセンターの冷却へ転用する可能性がある。
AIデータセンターとの関係だけを簡単に整理すると、現在の収益中心は800G、1.6Tトランシーバとデータセンター間通信である。
今後の新しい収益候補が、OCS、CPO/NPO、Multi-Rail、熱管理材料である。
■ Coherentは業界のどの位置にいるのか
Coherentは、AI計算そのものを支配するNVIDIAのような企業ではない。
データセンター全体のネットワークを設計・運用するハイパースケーラーでもない。
Broadcomなどが提供するDSP、デジタル信号処理半導体など、すべての電子部品を内製しているわけでもない。
Coherentが強みを持つのは、光を発生させ、制御し、伝送し、受信するフォトニクスの領域である。
特に、レーザーなどの重要部品を自社で製造し、それを自社のトランシーバや光学モジュールへ組み込める点が特徴となる。
顧客から見れば、レーザー、光ファイバー、光学部品、外部レーザーモジュールを別々の会社から調達するのではなく、Coherentからまとめて調達できる。
この広い製品群と製造規模が、NVIDIAを含む大口顧客との長期契約や共同開発につながっている、というのが経営陣の主張である。
ただし、CoherentがAI光通信市場を独占しているわけではない。
光トランシーバ、レーザー、シリコンフォトニクス、OCSの各市場には、それぞれ競合企業が存在する。顧客側も複数調達を基本としており、NVIDIAとの契約も排他的なものではない。
したがって、AI光通信市場が拡大することと、その利益がCoherentへ残ることは同じではない。
Coherentを分析する上での本当の論点は、幅広い製品を持っていることではなく、その中に他社が代替しにくい技術と製造能力があるかどうかである。
その答えに最も近いのが、現在Coherentが急速に増強している6インチInPである。
■ 6インチInPは、光通信の新規格ではなく「光を作る工場」の大型化
ここで、今回の決算を理解する上で最も重要な6インチInPについて整理しておきたい。
InPとは、Indium Phosphide、日本語ではリン化インジウムと呼ばれる化合物半導体である。
一般的なシリコンは計算処理に適しているが、光を直接生み出すことは得意ではない。InPは高速な光信号の生成、変調、受信に適しているため、AIデータセンターの光トランシーバに使われるレーザーや受光部品の重要材料となる。
CoherentはInPウエハー上に、主として三つの部品を製造している。
一つ目はEML、レーザーと光変調器を一体化し、電気信号を高速な光信号へ変換する部品。
二つ目はCWレーザー、連続的に光を発生させ、シリコンフォトニクスやCPOへ光源を供給する部品。
三つ目はフォトダイオード、届いた光信号を受け取る部品である。
これらは800G、1.6Tトランシーバだけでなく、今後立ち上がるCPO、光学部品をスイッチや演算チップの近くへ統合する技術にも必要になる。
重要なのは、「6インチ」が通信速度を意味しているわけではないことだ。
6インチとはウエハーの直径である。
従来の3インチウエハーから6インチへ大型化すると、直径は2倍、面積は約4倍になる。Coherentによれば、1枚のウエハーから取り出せる半導体チップは4倍超となり、コストは3インチの半分以下になる。
さらに、TexasとSwedenで稼働している6インチラインでは、EML、CWレーザー、フォトダイオードのすべてで、成熟した3インチラインを上回る歩留まりを実現しているという。
歩留まりとは、製造した半導体のうち正常に使える製品の割合である。
つまり6インチ化は、単に大きなウエハーを使うだけではない。
1回の製造工程から取り出せるチップ数が増え、正常品の割合も高まり、高度な製造装置と自動化を使えるため、1個当たりの製造コストを下げられる。
これが、売上と粗利率の両方に効く理由である。
■ なぜ6インチInPの増産が売上成長につながるのか
Coherentのトランシーバ需要は強かったが、これまで需要のすべてに応えられていたわけではない。
Q1 FY2026のData Center売上はQoQ +4%にとどまった。経営陣は、その主な制約がトランシーバの組立・検査能力ではなく、InPレーザーの供給不足だったと説明している。
つまり、完成品を組み立てる工場は空いていても、その中に入れるレーザーが足りなかった。
6インチInPの増産によってレーザー供給が増えれば、Coherentはそのレーザーを自社の800G、1.6Tトランシーバへ組み込み、完成品として顧客へ出荷できる。
その結果、Data Center売上はQ1のQoQ +4%から、Q2 +14%、Q3 +13%、Q4 +24%へ加速した。
Q4には、6インチInPの生産拡大がData Center売上の成長へ有意に寄与したことを、経営陣も明確に認めている。
さらに、Q4に生産したInPレーザーの数量は前年同期比約80%増加した。
ただし、この約80%増加したレーザーの多くはQ1 FY2027のトランシーバ出荷に使われる。したがって、その効果のすべてがQ4売上に反映されたわけではない。
経営陣は、増加したレーザー供給を根拠として、Q1 FY2027のData Center売上がYoY 80%を超えて成長すると見込んでいる。
■ なぜ6インチInPの増産が粗利率改善につながるのか
6インチ化による利益効果は、売上数量の増加だけではない。
Coherentが外部からレーザーを購入する場合、外部メーカーの利益や供給制約を含んだ価格を支払う必要がある。
一方、レーザーを自社の6インチラインで大量生産できれば、外部調達への依存を下げながら、1個当たりの製造コストも引き下げられる。
さらに、そのレーザーを単体で外販するのではなく、自社のトランシーバ、外部レーザーモジュール、CPO関連製品へ組み込めば、部品から完成品までの付加価値をCoherent内部へ残しやすくなる。
Q4のnon-GAAP粗利率は40.2%となり、前年同期から215bp改善した。
ただし、この改善をすべて6インチInPの効果とみなすことはできない。
会社は、製品投入コストの低下、製造歩留まり、価格最適化、製品ミックス、固定費吸収なども粗利率改善要因として挙げており、6インチInP単独の利益寄与額は開示していない。
現時点で確認できたのは、6インチInPが生産段階へ移行し、レーザー生産量、トランシーバ出荷能力、売上高、粗利率のすべてが同じ方向へ動き始めたことまでである。
未確認なのは、その製造優位が競合に対してどれだけ長く維持され、最終的にどれだけのFCFと一株当たり価値として残るかである。
■ 経営陣は、四半期ごとに同じ話をしてきた
Coherentの経営陣は、Q4に突然強気になったわけではない。
Q1から継続して、ほぼ同じ構造を説明してきた。
需要が強い。
しかしInPレーザーが足りない。
だから6インチInPを増やす。
能力増加が数か月遅れてトランシーバ出荷へつながる。
売上が増え、粗利率が上がる。
その上にOCS、CPO、NPO、Multi-Railを重ねる。
Q1 FY2026では、Data Center売上がInPレーザー不足によってQoQ +4%へ制約された。
Q2にはData Centerのbook-to-billが4倍を超え、2026年分の受注がほぼ埋まり、2027年の注文が急速に積み上がった。
Q3には6インチInPで生産した部品を搭載するトランシーバを初めて出荷し、能力増強が売上と粗利率へ接続し始めた。
Q4にはInPレーザー生産数がYoY +80%まで増え、会社はQ1 FY2027のData Center売上がYoY +80%を超える可能性を示した。
需要の主張は、受注へ変わった。
受注は、設備投資へ変わった。
設備投資は、生産量へ変わった。
そして生産量は、売上と粗利率へ変わり始めた。
ここまでは、経営陣が継続的に説明してきた構造と実績が一致している。
■ AIは計算するだけでは拡張できない
Coherentは、AIデータセンターを三つの接続領域に分けている。
scale-upは、同じラックまたは近接ラック内のGPUやXPUをつなぎ、一つの巨大な計算ノードとして動かす接続である。
scale-outは、複数の計算ノードをつなぎ、AIデータセンター全体を構成する接続である。
scale-acrossは、電力や土地の制約によって分散した複数のデータセンターをつなぐ接続である。
scale-outとscale-acrossは、既にほぼ光通信へ移行している。
一方、短距離のscale-upは現在も銅接続が中心である。
しかし、データ速度、帯域密度、消費電力が上がり続ければ、短い距離でも銅では信号を効率的に送れなくなる。
距離が3メートルでも3キロメートルでも、データ速度と総帯域を上げ続ければ、どこかで光の方が電力効率と性能で有利になる。
GPUを増やすだけではAIファクトリーは拡張できない。
GPU間の通信が遅ければ、高価なGPUがデータを待つ。
利用率が下がれば、同じ設備投資から生成できるトークン数も減る。
だから経営陣は、「AI runs on compute, but it scales on optical connectivity」と主張する。
AIは計算能力によって動く。
しかし、その計算能力を巨大な一つのシステムとして拡張するのは光接続である。
■ 6インチInPは、供給不足を製造モートへ変えられるか
InP、インジウムリンは、高速光通信に必要なレーザー、変調器、光検出器を作る化合物半導体である。
Coherentは、InPを使って主に次の製品を生産する。
EMLは、レーザーと高速変調器を一体化した光源。
CWレーザーは、Silicon Photonicsへ連続した光を供給する光源。
フォトダイオードは、送られてきた光信号を受信する。
PICは、複数の光機能を一つのチップへ統合する。
現在、AI光通信業界ではInPレーザーの生産能力が不足している。
Coherentはこれに対し、従来の3インチウェハーから6インチウェハーへ移行している。
会社によれば、6インチは3インチに対して、1枚から取れるデバイス数が4倍超、デバイス当たりコストは半分未満となる。
さらに、EML、CWレーザー、フォトダイオードのすべてで、6インチの歩留まりは成熟した3インチラインを上回っている。
Coherentは現在、四つのInP拠点を持つ。
Fremontは3インチ。
Sherman、Texasは世界初の6インチInP量産拠点。
Järfälla、Swedenも6インチを量産している。
Zurich、Switzerlandでは、2027年前半から新たに6インチ生産を始める。
2026年末までにInP能力を2倍へ引き上げ、その増加分のほぼすべてを6インチで作る。
その時点で3インチと6インチの能力は、おおむね半分ずつになる。
2027年末までには能力をさらに2倍超へ増やし、6インチが内部生産の中心となる。
単に工場を増やすだけではない。
大型ウェハーへ移ることで、より高度な半導体製造装置を使い、処理能力、労務費、歩留まり、単位コストを同時に改善できる。
製造レシピ、材料成長、歩留まり、量産、顧客認証を積み上げる必要があるため、競合が設備を購入するだけで直ちに再現できるものでもない。
今回、CoherentがAI光通信のボトルネックを握り始めたと評価できる最大の根拠は、この6インチInPである。
■ しかしCoherentは、レーザーだけを売ろうとしていない
Coherentの強みは、どの光源方式が勝つかを一つに決める必要がないことにある。
EMLは長距離、高性能接続に強い。
CWレーザーとSilicon Photonicsの組み合わせは、高速化と集積化に向く。
VCSELは短距離で消費電力とコストを抑えやすい。
Coherentは三つすべてを持つ。
1.6Tでも、EML型、Silicon Photonics型、VCSEL型を開発している。
3.2T以降に向けては、1レーン当たり400GのDifferential EMLとSilicon Photonicsを実証した。
顧客がCPO、NPO、Silicon Photonics、InP、VCSELのどれを選んでも、Coherentは複数の方式へ供給できる。
さらに提供できるのは光源だけではない。
Silicon Photonics PIC。
CPO/NPOモジュール。
External Laser Source。
InP CWレーザー。
アイソレーター。
熱電冷却器。
偏波保持ファイバー。
マイクロレンズ。
Fiber Attach Unit。
検出器。
電気信号への変換部品。
Coherentが狙っているのは、光トランシーバの単品シェアではない。
光を発生させ、整形し、伝送し、受信し、再び電気信号へ変換するまでの光路全体である。
■ CPOは、既存トランシーバをすぐに破壊するものではない
CPO、Co-Packaged Opticsは、光学部品をスイッチ半導体やXPUのすぐ近くへ配置する方式である。
電気信号を装置前面まで長く引き回す必要がなくなり、消費電力と信号損失を抑えられる。
一方、故障時に前面から交換できるプラガブル型トランシーバより、修理性と設計自由度は下がる。
そのため、Coherentは少なくとも2030年頃まで、scale-outとscale-acrossではプラガブル型が主流を維持すると見ている。
CPOはまずscale-outの一部で使われる。
本当の追加市場は、現在ほぼ100%銅接続であるscale-upである。
会社はscale-out向けCPO売上を2026年12月四半期から開始し、scale-up向けを2027年後半から立ち上げる計画である。
したがって当面は、CPOが既存トランシーバを置き換えるのではない。
800Gと1.6Tのプラガブル型が成長する上に、これまで銅だったscale-upへ新たな光学需要が加わる。
会社はCPO/NPOの2030年SAMを$15B超と試算している。
ただし、これはCoherentの売上予想ではない。
市場規模が大きくても、どの部品を、どの価格で、どの粗利率で供給できるかが利益プールを決める。
■ PhotonLinkは部品会社から上がるための試み
Coherentは2026年9月に、統合光学プラットフォームPhotonLinkを発表する予定である。
顧客はこれまで、レーザー、アイソレーター、ファイバー、レンズ、冷却部品、PICなどを複数企業から調達し、自ら統合する必要があった。
PhotonLinkは、その光信号経路をCoherentがまとめて提供する構想である。
これが実現すれば、Coherentは部品供給者から顧客アーキテクチャの共同設計者へ上がる。
顧客がCoherentの光源、ファイバー、受動部品、モジュール、組立工程をまとめて設計へ組み込めば、再設計と再認証の負担が増え、スイッチングコストも上がる。
ただし、PhotonLink名義の売上、採用顧客、システム当たりコンテンツ、粗利率はまだ確認できない。
PhotonLinkは、現時点ではモートではない。
モートへ進む可能性を持つ製品戦略である。
■ OCSは物語から初期実証へ進んだ
OCS、Optical Circuit Switchは、光信号を電気信号へ変換せず、光のまま経路を切り替える装置である。
顧客はソフトウェア命令によって、GPUやラックの接続構成を変更できる。
大規模な学習モデルを動かすときはGPUを一つの構成へ集約し、複数の小さなモデルを動かすときは別の構成へ組み替える。
障害が発生したラックを切り離し、予備ラックへ切り替えることもできる。
高価なGPUを待機させず、利用率と稼働率を上げるための装置である。
Coherentは現在、
・10社超との顧客エンゲージメント
・複数顧客の本番環境への出荷
・64×64と320×320の量産
・512×512の開発
・制御ソフトウェアの自社開発
まで進んでいる。
会社はOCSの2030年SAMを従来の$2Bから$4B超へ引き上げた。
CoherentのOCSは、機械式ミラーを動かすMEMSではなく、液晶分子の向きを変えて光路を切り替える。
可動部がなく、必要電圧も低いため、会社は信頼性と電力効率で優位があると主張する。
ただし、MEMS式との故障率、保守費用、稼働時間の比較データは未開示である。
ここで面白い構造がある。
OCSを光路へ追加すると、一定の光損失が発生する。
その損失を補うため、より高いリンクマージンを持つDifferential EMLや高性能トランシーバが必要になる。
CoherentはOCSだけでなく、そのOCS環境に適したレーザー、受信器、トランシーバも供給できる。
OCSの普及が自社の別製品需要を増やすなら、製品同士が相互に成長を強化する。
これは、単品部品メーカーから平台企業へ上がる可能性を示す初期実証である。
■ Multi-RailとThermaditeは、まだ未来の物語である
Multi-Railは、データセンター間の光伝送容量を、既存設備とほぼ同じ空間で約4倍へ増やすシステムである。
複数の光増幅器、ポンプレーザー、利得調整、光監視、ファイバー診断を高密度で統合する。
Coherentは2027年前半から売上を開始し、2030年のSAMを$2B超と見込んでいる。
Thermaditeは、シリコン、SiC、ダイヤモンドを組み合わせたCoherent独自の熱管理材料である。
会社資料では銅の2~5倍の熱伝導性能を持ち、800W GPUの接合部温度を銅比で約8.4℃下げられるとしている。
温度を下げることでXPUを高いクロック速度で動かし、同じ設備から生成できるトークン数を増やせる可能性がある。
さらにCoherentは、データセンターの廃熱を電力へ戻す熱電発電も開発している。
しかし、Multi-RailもThermaditeも本格的な売上はまだ始まっていない。
Future 40の原則上、未来の物語を現在のモートとして扱うことはしていない。
これらは成長余地ではある。
■ 最大の矛盾は、EPSが増えてもFCFが残っていないこと
今回の決算で最も注意すべきなのは、利益とキャッシュの乖離である。
FY2026の売上は$7.12B。
non-GAAP EPSは$5.61、YoY +59%。
non-GAAP営業利益率は20.5%まで改善した。
一方、営業CFは$80M、設備投資は$1.10B、FCFは約-$1.02Bである。
在庫は1年間で約$1.14B増えた。
会社は、FY2027の受注がほぼ埋まり、注文は2028年、LTAは2030年頃まで延びていると説明する。
LTAには、Coherentの供給義務だけでなく、顧客側の最低購入保証、価格条件、設備投資支援が含まれるという。
NVIDIAとの非独占契約にも、複数製品について数十億ドル規模の購入コミットメントがある。
したがって、現在の在庫と設備投資を、需要の裏付けがない投機的投資と断定することはできない。
しかし、FY2026末の仕入先への購入コミットメントは$11.8Bに達している。
FY2027分が$3.4B、それ以降が$8.4B。
FY2026売上$7.12Bを上回る規模である。
顧客需要が続けば、供給確保は武器になる。
需要が崩れれば、在庫、購入義務、固定費、設備過剰が同時に損失へ変わる。
Coherentのモメンタム投資で最も警戒すべきなのは、需要の減速そのものではない。
需要減速が確認された時点で、既にどれだけキャッシュを設備と在庫へ変えてしまっているかである。
■ 顧客との深い関係は、モートと依存の両方になる
FY2026は、最大顧客が全社売上の20%、第2顧客が12%を占めた。
顧客名は10-Kで開示されていない。
NVIDIAは20年以上の顧客であり、今回$2BをCoherentへ出資した。
共同開発、設備投資、長期供給契約、顧客認証が深まれば、Coherentを他社へ置き換える負担は大きくなる。
これはスイッチングコストになる。
一方、ハイパースケーラーやネットワーク企業は巨大な購買力を持つ。
価格、保証、供給能力、複数調達について、Coherentより強い交渉力を持つ可能性がある。
長期契約があるから利益を防衛できるとは限らない。
長期にわたって大量に供給しても、価格条件が顧客側に有利なら、利益プールは顧客へ移る。
Coherentが光通信のボトルネックを握れるかと、そのボトルネックから高い利益率を得られるかは、別の問いである。
■ Future 40の四つの問いにかける
第一問:5年後に価値創造のボトルネックを握るか。
暫定評価は「可能性あり」である。
AIファクトリーのボトルネックは、GPUだけではない。
InPレーザー、光接続、帯域密度、電力効率、GPU利用率もボトルネックになる。
Coherentは6インチInPを既に量産し、Q4のレーザー生産数をYoY +80%まで増やした。
EML、CWレーザー、VCSEL、Silicon Photonics、検出器、ファイバー、OCSを横断して提供できる企業も多くない。
ただし、InPも光トランシーバも独占していない。
第一問は完全通過ではないが、以前より明確に点灯した。
第二問:未来の利益プールを十分な割合で捕捉できるか。
現時点では通過できない。
売上とEPSは急成長している。
しかし、FY2026のFCFは約-$1.02B。
Q4 non-GAAP粗利率は40.2%で、Lumentumの50.4%を大きく下回る。
事業構成が異なるため単純比較はできないが、Coherentの広い技術ポートフォリオが、まだ圧倒的な利益率として表れていないことは事実である。
光通信に巨大な利益プールが生まれる可能性は高い。
その利益がCoherentを通過するだけなのか、株主に残るのかは未確認である。
第三問:その利益を他者へ漏らさず維持できるか。
暫定評価は「部分的」である。
6インチInPの製造ノウハウ、垂直統合、複数の光源方式、OCS、制御ソフトウェア、PhotonLink、材料技術には防衛構造がある。
一方、顧客集中、価格交渉力、競合の能力増強、複数調達、外部DSPへの依存が残る。
NVIDIAとの契約も非独占である。
技術の広さは確認できた。
利益が漏れない構造までは確認できていない。
第四問:その防衛構造は5年間さらに拡大するか。
方向は拡大である。
6インチInP能力は2026年に2倍、2027年にさらに2倍超へ増える。
OCSは本番導入へ進み、CPO、NPO、PhotonLink、Multi-Rail、Thermaditeが順番に立ち上がる。
ただし、売上前の製品を現在の実証として扱うことはできない。
現在確認できるモート候補は6インチInPとOCS。
CPO以降は、まだ答え合わせを待つ。
■ 不可逆モートは認めない。しかし、以前より重要な企業になった
四つの問いを通過させることはできない。
Coherentを長期コア候補へ引き上げるには、技術の広さではなく、利益プール捕捉の証拠が足りない。
したがって、現時点でもFuture 40へ入れる判断にはならない。
ただし、単純な除外企業として見なくてよい状態には近づいた。
6インチInPの量産は始まった。
能力増強は生産数へ変わった。
生産数は売上と粗利率へ変わり始めた。
OCSも研究段階ではなく、本番導入へ進んでいる。
第一問と第四問には明確な変化がある。
第二問と第三問を通過できるかを監査する価値が出てきた。
■ 市場は、強い決算より粗利率を見た
Q4売上$2.05B、non-GAAP EPS $1.74は市場予想を上回った。
Q1ガイダンスも、売上、EPSともに市場予想を大きく上回った。
それでも株価は決算後に下落した。
決算当日の通常取引では、Lumentumの強い決算を受け、COHRも約8%上昇していた。
しかしCoherentの決算発表後は時間外で下落し、8月14日終値は$325.83となった。
市場が嫌気したのは、売上や需要ではない。
粗利率である。
LumentumのQ4 non-GAAP粗利率は50.4%、営業利益率は36.6%。
Coherentは40.2%、21.8%。
CoherentはIndustrialを含み、事業構成も異なるため直接比較はできない。
それでも、光通信の供給不足、6インチInP、価格最適化、1.6Tの立ち上がりを考えれば、市場はより速い粗利率改善を期待していた。
Q1粗利率ガイダンス中央値は40.5%。
Q4からの改善は30bpにとどまる。
市場は「需要が強いか」ではなく、「その需要からどこまで利益を取れるか」を見始めている。
■ NTMで、現在価格が何を織り込んでいるか
Seeking Alphaでは、8月14日終値$325.83に対して、
・non-GAAP P/E TTM:58.43倍
・non-GAAP P/E Forward:35.36倍
・EV/Sales Forward:6.21倍
・EV/EBITDA Forward:23.41倍
・EV/EBIT Forward:25.63倍
となっている。
Forward P/E 35.36倍から逆算される予想EPSは、
$325.83 ÷ 35.36=約$9.21
である。
FY2026 non-GAAP EPS $5.61から約64%増を織り込んでいる。
Q1 FY2027ガイダンス中央値$1.95、YoY +68%を考えれば、非現実的な分母ではない。
ただし、かなり強い実行を前提としている。
■ 独自NTMバリュエーション
NTMは、今後12か月を意味する。
Q1 FY2027は会社ガイダンス中央値$2.30Bを使用する。
Q4 FY2027は会社が示した「$3B超」を基準に$3.05Bと置く。
Q2、Q3は、6インチInP、1.6T、OCS、CPOの段階的な立ち上がりを考慮し、それぞれ$2.50B、$2.75Bと仮定する。
・Q1 FY2027売上:$2.30B
・Q2 FY2027売上:$2.50B
・Q3 FY2027売上:$2.75B
・Q4 FY2027売上:$3.05B
基準ケースのNTM売上は$10.60Bとなる。
non-GAAP営業利益率は、
・Q1:22.7%
・Q2:23.0%
・Q3:23.5%
・Q4:24.0%
と置く。
NTM non-GAAP営業利益は約$2.48B。
純金利・その他費用を約$140M、税率19%、希薄化後株式数204M株と置くと、NTM EPSは約$9.27となる。
株価$325.83に対するNTM P/Eは、
$325.83 ÷ $9.27=約35.1倍
となる。
Seeking AlphaのForward P/E 35.36倍と近い。
つまり、市場はおおむね、
・NTM売上$10B台半ば
・営業利益率23%台
・EPS約$9.2
を織り込んでいると考えられる。
■ 弱気・基準・強気で見る
弱気ケースは、NTM売上$9.9B、non-GAAP営業利益率22.5%、EPS約$8.3と置く。
NTM P/Eは約39倍。
基準ケースは、NTM売上$10.6B、営業利益率約23.4%、EPS約$9.3。
NTM P/Eは約35倍。
強気ケースは、NTM売上$11.0B、営業利益率24.5%、EPS約$10.1。
NTM P/Eは約32倍となる。
現在価格は、弱気ケースなら明確に高い。
会社がガイダンスと能力増強を順調に実行しても約35倍。
営業利益率24%超まで進んでも約32倍である。
安くはない。
一方、利益成長が極めて速いため、完全に説明不可能な価格でもない。
現在の株価は、6インチInP、1.6T、OCS、CPOによるFY2027の利益加速を相当程度織り込んでいる。
したがって、ここからの株価上昇には、売上だけではなく、粗利率、営業利益率、EPSが現在の強気予想をさらに上回る必要がある。
■ ポートフォリオへどう接続するか
Future 40の四つの問いにかけると、現時点のCoherentを長期コア銘柄には置けない。
AI光通信市場は拡大する。
しかしCoherentがその利益プールを長期間防衛し、一株当たりFCFとして株主へ残せる構造は、まだ実証されていない。
一方、長期コア投資だけがすべてではない。
需要、供給能力、売上、利益率、市場予想が同じ方向へ動く局面では、不可逆モートが完成していなくても、時限的な決算モメンタム投資は成立する。
Coherentについて確認すべきなのは、「素晴らしい企業だから5年間保有するか」ではない。
「FY2027にかけて業績予想の上方修正が続き、現在の株価をさらに押し上げるだけの変化が残っているか」である。
■ NTM PER約35倍は、成長率を考えれば異常ではない。しかし安くもない
バリュエーションを算出したのだから、投資に接続できるのかもう一度考えたい。
35倍という数字だけを見て、単純に割高と切り捨てることはできない。
EPSが60%を超えて成長するなら、35倍は成長率との比較では説明可能である。
問題は、Coherentがソフトウェア企業のように軽い資本で成長しているわけではないことだ。
FY2026のFCFは約-$1.02B。
設備投資はQ4だけで$556M。
在庫はYoY +79.5%。
さらに、仕入先への購入コミットメントは$11.8Bまで増えている。
つまり現在の35倍は、急成長だけでなく、設備投資と在庫が将来の売上へ転換され、粗利率が改善し、最終的にキャッシュが回収されることまで先回りしている。
ベアケースのNTM EPS約$8.3なら、現在株価のPERは約39倍。
ベースケースの約$9.3なら約35倍。
強気ケースの約$10.1まで伸びても約32倍である。
さらに、12か月後に市場がCoherentを30倍で評価すると仮定すると、ベースケースEPS$9.3では株価約$279、強気ケースEPS$10.1でも約$303となる。
いずれも現在株価$325.83を下回る。
現在株価から十分な上昇余地を作るには、EPSが強気ケースを超えて上方修正されるか、少なくとも35倍前後の高い評価が維持される必要がある。
したがって、現在の35倍は「成長を考えれば正当化可能」ではあるが、「業績が計画どおりなら十分に上がる価格」ではない。
市場予想を上回り続けることが前提となった価格である。
■ 光電融合は、AIブームの第二弾になり得る
それでもCoherentを監視する理由はある。
現在のAI投資の第一弾は、GPU、HBM、AIサーバー、電力、冷却、scale-outネットワークの増設だった。
次に問題になるのが、GPUやXPU同士をどのように高速かつ低消費電力で接続するかである。
現在、scale-up、複数のGPUやXPUを一つの巨大な演算装置として動かす接続領域は、主として銅配線で構成されている。
しかし、演算能力、帯域、ラック密度が上がるほど、銅配線は通信距離、消費電力、発熱、信号品質の限界へ近づく。
そこで、電気信号と光信号を演算チップやスイッチの近くで融合するCPO、Co-Packaged OpticsやNPOが必要になる。
これは単なる800Gから1.6Tへの速度更新ではない。
これまで銅が担っていた接続領域そのものが光へ置き換わるため、光通信業界にとって新しい利益プールが生まれる可能性がある。
Coherentは、高出力CWレーザー、外部レーザーモジュール、シリコンフォトニクス、アイソレーター、偏波保持ファイバー、光学接続部品、受光部品を一体で供給できる。
したがって、CPOが本格化すれば、単一部品ではなく、光信号経路全体から売上を獲得できる可能性がある。
この意味で、光電融合はAIファクトリー投資の第二弾になり得る。
■ MRVLより安い。しかし、同じ利益を買っているわけではない
最も整理が必要なのは、私が保有するMarvell Technology(MRVL)との関係である。
両社はともにAIデータセンターの接続市場へ投資しているが、握っているレイヤーは同じではない。
MRVLは、光通信DSP、SerDes、ドライバー、TIA、Ethernet/scale-upスイッチ、カスタムXPU、シリコンフォトニクス、CPO、ZR/ZR+モジュールを持つ。
一方、Coherentは、InPレーザー、フォトダイオード、光ファイバー、アイソレーター、外部レーザーモジュール、トランシーバ、OCSを持つ。
MRVLが強いのは、電気信号を処理する半導体と、光通信を演算・スイッチ側へ統合する設計である。
Coherentが強いのは、実際に光を発生させるInPレーザー、光を伝える部品、光学組立、それを量産する製造能力である。
そのため、両社は完全な代替関係ではない。
MRVLのDSP、TIA、ドライバーと、Coherentのレーザーや光学部品が、同じトランシーバやCPOシステム内で使われる可能性もある。MRVL自身も、レーザーについては垂直統合せず、シリコンへ集中する方針を説明している。
一方、ZR/ZR+モジュール、DCI、シリコンフォトニクス光エンジン、CPO/NPOでは、両社の競争領域が広がる。
同じ接続市場の利益プールを、MRVLは半導体・設計側から、Coherentは光源・部品・製造側から取りにいく関係である。
そして、現時点では市場がMRVLの利益構造をはるかに高く評価している。
2026年8月14日時点の株価は、
・COHR:$325.83
・MRVL:$222.02
Seeking AlphaのForward non-GAAP PERは、
・COHR:35.36倍
・MRVL:54.81倍
となっている。
ただし、この数字をそのまま比較することはできない。
株価から逆算すると、COHRのForward PERはEPS約$9.21を分母としている。これは私が独自に計算したNTM EPS約$9.27とほぼ一致する。
一方、MRVLのForward PERはEPS約$4.05を分母としている。これは今後12カ月というより、Q1実績を含むFY2027通期EPSに近い。
MRVLは1月決算、Coherentは6月決算であるため、Forward PERが実質的に見ている期間にはずれがある。
そこでMRVLも、今後12カ月に揃えて計算し直す。
MRVLはQ2 FY2027について、売上高$2.7B、non-GAAP EPS $0.88~$0.98を見込んでいる。さらに、Q3とQ4も少なくとも前四半期比10%の売上成長を見込み、FY2028売上高を$16.5Bとしている。
これらを基に、Q2 FY2027からQ1 FY2028までのNTMを置くと、
・NTM売上高:約$12.75B
・NTM non-GAAP EPS:約$4.53
・NTM PER:約49倍
となる。
弱気から強気までのレンジは、おおむね46~51倍である。
同じNTMへ揃えると、
COHR:約35倍
MRVL:約49倍
となり、MRVLには約40%のPERプレミアムが付いている。
売上倍率では、さらに差が大きい。
希薄化後株式数とネットデットを反映した概算NTM EV/Salesは、
・COHR:約6.3倍
・MRVL:約16.0倍
となる。
したがって、今後12カ月の売上・EPS成長に対するバリュエーションだけを見れば、COHRの方が明確に低い。
ただし、両社は同じ質の利益を生み出しているわけではない。
直近のnon-GAAP粗利率は、
・COHR:40.2%
・MRVL:58.9%
non-GAAP営業利益率は、
・COHR:21.8%
・MRVL:約35%
である。
さらに、MRVLのFY2026 FCFは約$1.40B、直近12カ月では概算約$1.67Bの黒字である。一方、COHRのFY2026 FCFは約-$1.02Bだった。
MRVLはDSP、SerDes、スイッチ、カスタムシリコンなど、資本効率と利益率の高いIPを握っている。
COHRは6インチInP、トランシーバ、OCSなどの物理的な供給制約を握り始めているが、そのために在庫と設備投資を先行させなければならない。
MRVLの高い倍率には、利益率、FCF、顧客アーキテクチャへの深い組み込みという根拠がある。
一方、MRVLの現在株価がCPOだけで正当化されているわけでもない。
MRVLがFY2028に見込むscale-up optics売上は約$300Mであり、FY2028売上高見通し$16.5Bの約1.8%にすぎない。
現在のMRVLを支えているのは、CPOではなく、既存のPAM DSP、TIA、ドライバー、800G/1.6T、custom XPU、XPU attach、Ethernet switching、DCIである。
CPOは、そこへ追加される将来オプションである。
この比較から得られる結論は明確である。
企業の質、利益防衛力、長期的な利益プールではMRVLが上にある。
今後12カ月の成長率に対する倍率ではCOHRの方が低い。
したがって、私の中でMRVLは長期コア候補として検証を続ける企業であり、COHRは能力増強、業績予想の上方修正、光電融合の立ち上がりを取りにいく時限的サテライト候補となる。
COHRを買うためにMRVLを入れ替える判断にはならない。
また、両社を保有しても完全な重複にはならないが、ポートフォリオ上の分散効果は限定的である。
NVDA、MRVL、DELLを保有する現在のAIファクトリー枠にCOHRを加えることは、分散というより、AI設備投資と光通信サイクルへの感応度をさらに高める判断になる。
COHRを追加するなら、MRVLの代替ではなく、投資期間と出口条件を定めた小さなサテライトとして扱うのが適切だと考えている。
現時点の暫定判断は「条件付きの時限的サテライト候補」であり、新規に追いかけて買う価格ではない。
■ 暫定的なポートフォリオ判断
COHRは、現時点では長期コア銘柄ではない。
光電融合がAI投資の第二弾になる可能性は高まっているが、その利益を最も多く、長期間取る企業がCOHRだとはまだ確認できない。
一方、今後12か月は、6インチInP、1.6T、OCS、CPO、Multi-Railが順番に売上へ接続する重要な期間となる。
したがって、企業としては監視優先度を引き上げる。
投資対象としては、条件付きの時限的サテライト候補とする。
ただし、現在のNTM PER約35倍では新規購入を急がない。
Q1 FY2027の売上高、粗利率、在庫、営業CFを確認するか、株価下落または業績予想の上方修正によってPERが30倍前後まで低下した時点で、改めて組み入れを判断する。
AIファクトリー50%という現在のポートフォリオ構成を考えると、COHRを持っていないことは、光通信の未来を逃していることを意味しない。
NVDAとMRVLを通じて、CPOと接続レイヤーへの exposure、投資機会はすでに持っている。
COHRを追加する理由は、AI光通信へ参加するためではない。
6インチInPという供給制約の解消と、複数の新製品立ち上げによる業績予想の上方修正を、12か月限定で取りにいく場合に限られる。
■ 次回チェックポイント
・Q1 FY2027売上$2.2B~$2.4Bの達成
・Data Center売上YoY +80%超
・non-GAAP粗利率40.5%前後への改善
・non-GAAP営業利益率約22.7%への到達
・6インチInP能力2倍の完了
・1.6Tの顧客拡大と売上寄与
・12月四半期のCPO売上開始
・PhotonLinkの採用顧客と具体的コンテンツ
・OCS売上、出荷台数、顧客数の定量開示
・在庫増加率が売上成長率を下回るか
・営業CFとFCFの反転
・設備投資の18か月回収をCFで確認できるか
・LTAの前受金、最低購入保証、価格条件
・希薄化後株式数と一株当たりFCF
・FY2027末の四半期売上$3B超への進捗
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© 2026 American Okami
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