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【ASML(ASML)Q2 FY2026】2030年の未来を4年前倒し。EUV独占は「第二の料金所」へ進化する!

私は、今大変な状態にある。

プライベートがかなり重たくなり、私は自らのスケジュールを容易にコントロールできない。その問題は精神的にもかなり重く、来年にかけて続いていく見込みとなった。

そのような状況下で、決算やその構造分析は、ある程度の時間と精神的余裕がないと取り組めないことを痛感した。

今まで自分の時間の中で最優先してきたポートフォリオに対して向き合うこと、すなわち決算分析等を、今シーズンはどのようにして乗り越えていくのか考えている。

多分、前四半期の数ほど銘柄は見れない。
取捨選択が必要となる。

それで構わない。
私にできることを、ここに途切らせず残していく。

前置きが長くなってしまった。

今シーズン一発目の分析は、少し時間が経過したものの、ASML(ASML)のQ2 2026決算について、今回初めて本格的にアウトプットすることにする。

ASMLは、私が作成し先日公開したばかりの、「アメリカンオオカミ Future 40」で第2位に置いている企業だ。

だからこそ、しっかりとここにアウトプットを残しておきたいと考えていた。

ランキングの第1位はNVIDIA、第2位がASML。

この順位は現在の売上高や株価上昇率ではなく、2031年に向けて、

* 何が産業のボトルネックになるのか
* そのボトルネックから生まれる利益を誰が捕捉するのか
* 競争や供給増加によって利益が外へ漏れないか
* その防衛構造が今後5年間でさらに深まるか


という視点で見たランキングである。

ASMLが世界で唯一、最先端半導体の量産に必要なEUV露光装置を供給していることは、すでに広く知られている。

だから、今回確認したかったのは、「ASMLにモートがあるか」ではない。

今回見るべきなのは、EUV独占の先に、どのような新しい「利益プール」が形成されているのか。

そして、その不可逆的なモートに対して、現在の株価から投資する価値が残っているのか、という点だと思う。


結論から言えば、今回の決算でASMLのモートはさらに深まった。

ただし、その理由はHigh-NA EUVの売上が立ち上がったからではない。

2026年の利益成長を作っているのは、

* Low-NA EUV
* DUV immersion
* Installed Base Management
* 既存装置の生産性アップグレード
* 製品ミックス改善
* 価格決定力
* 増産による固定費吸収

である。

ASMLは、EUV装置を一度販売して終わる会社ではなくなっている。

装置を販売した後も、その装置が生み出す生産能力に対して、サービス、部品、ソフトウェア、アップグレードという形でもう一度利益を取る。

EUV独占から生まれたInstalled Baseが、ASMLにとって「第二の料金所」へ進化している。

さらに今回、ASMLが2024年のInvestor Dayで示していた2030年売上レンジ€44B~€60Bの下限へ、2026年時点ですでに到達しようとしている。

今回の決算は単なる上方修正ではない。

ASMLの長期利益モデルそのものを、再定義しなければならなくなった決算だった。

■ 4四半期の決算数字


Q3 2025 → Q4 2025 → Q1 2026 → Q2 2026

※Q3 2025のIBM売上は、総売上高からNet system salesを差し引いて算出。装置別概算売上は、Net system salesに開示された構成比を乗じて算出しているため、丸め処理による若干の差が生じる。

・売上高:€7.516B → €9.718B → €8.767B → €9.326B
YoY:約+0.7% → +4.9% → +13.2% → +21.2%
QoQ:-2.3% → +29.3% → -9.8% → +6.4%

Q3 2025を底に、YoY成長率は明確に加速している。
Q2の売上高は会社ガイダンス上限€9.0Bを上回った。ただし今回の本質はQ2実績ではなく、2026年下期にさらに大きな売上認識を予定していることにある。

・Net system sales:€5.554B → €7.584B → €6.279B → €6.564B
売上構成比:73.9% → 78.0% → 71.6% → 70.4%
QoQ:+36.5% → -17.2% → +4.5%

装置売上はQ4 2025に大きく増加した後、Q1、Q2は€6B台で推移した。
Q2の全社売上上振れを主導したのは、装置本体よりもInstalled Base Managementだった。

・Installed Base Management売上:€1.962B → €2.134B → €2.488B → €2.762B
売上構成比:26.1% → 22.0% → 28.4% → 29.6%
QoQ:+8.8% → +16.6% → +11.0%

Q2は会社想定約€2.5Bを上回り、全社売上の約30%まで拡大した。今回の売上高と粗利率の上振れを主導した事業であり、後段で構造を詳しく見る。

・EUV売上構成比:38% → 48% → 66% → 57%
概算売上:€2.11B → €3.64B → €4.14B → €3.74B

Q1、Q2ともにEUV販売台数は16台だった。
2026年通年ではLow-NA EUV約65台、EUVシステム売上45%超成長を見込む。2027年には生産能力を約30%引き上げ、約85台へ増やす計画である。

・ArFi売上構成比:52% → 40% → 23% → 29%
概算売上:€2.89B → €3.03B → €1.44B → €1.90B
販売台数:38台 → 37台 → 17台 → 23台

Q1に落ち込んだimmersion出荷は、Q2に回復した。
2026年後半はさらに出荷が増え、通年約130台を見込む。EUVだけでなくimmersionも、下期の売上高と粗利率を支える重要な要素になる。

・ArF dry売上構成比:2% → 2% → 2% → 4%
概算売上:€111M → €152M → €126M → €263M
販売台数:4台 → 5台 → 5台 → 8台
・I-line売上構成比:1% → 1% → 1% → 1%
概算売上:€56M → €76M → €63M → €66M
販売台数:10台 → 17台 → 11台 → 9台

いずれも全社売上への影響は限定的であり、今回の投資判断の中心ではない。定点観測として数字のみ残す。

・KrF売上構成比:3% → 5% → 6% → 6%
概算売上:€167M → €379M → €377M → €394M
販売台数:11台 → 29台 → 30台 → 35台

成熟ノード向け装置だが、販売台数は増えている。
中国向け需要だけでなく、先端半導体の周辺回路に必要な成熟プロセスも支えている。

・Metrology & Inspection売上構成比:4% → 4% → 2% → 3%
概算売上:€222M → €303M → €126M → €197M

規模はまだ小さい。売上規模ではなく、露光、計測、検査、ソフトウェアを一体化し、顧客工程への支配範囲を広げる事業として見る。

・Logic構成比:65% → 70% → 49% → 51%
・Memory構成比:35% → 30% → 51% → 49%

2025年後半はLogic中心だったが、2026年に入りMemoryがほぼ半分を占めるまで拡大した。
2026年の会社見通しは、先端Logic/Foundry関連売上25%超成長、Memory関連売上75%超成長。今回の成長加速は、TSMCなど先端ファウンドリーだけでなく、DRAM投資が加わったことで生まれている。

・GAAP粗利率:51.6% → 52.2% → 53.0% → 54.0%

粗利率は4四半期連続で改善した。
Q2は会社ガイダンス上限を2ポイント上回った。高粗利のIBMアップグレードが主因だが、会社は下期にさらに約56%の粗利率を見込んでいる。

・GAAP営業利益率:32.8% → 35.3% → 36.0% → 37.1%

売上成長に対して、R&DとSG&Aの増加は抑えられ、営業レバレッジが出ている。
Q2にはTechnology and IT transformation関連費用も含まれており、その状態でも営業利益率は37.1%まで上昇した。

・基本EPS:€5.49 → €7.35 → €7.15 → €7.59
QoQ:+33.9% → -2.7% → +6.2%
Q2 YoY:+28.6%

ASMLは会社定義のnon-GAAP EPSを開示していないため、GAAP EPSで見る。
売上高YoY+21.2%に対してEPSは+28.6%。利益率改善と自社株買いが、1株利益の成長につながっている。

・営業CF:€559M → €11.410B → -€2.186B → €1.703B
営業CFマージン:7.4% → 117.4% → -24.9% → 18.3%

・FCF:€244M → €10.940B → -€2.608B → €1.317B
FCFマージン:3.2% → 112.6% → -29.7% → 14.1%

前受金、出荷、顧客受入れ、請求、入金のタイミングにより、四半期CFは大きく変動する。
単四半期FCFを平準化した利益指標として使うのは難しい。今後は年間CFと、売掛金、在庫、顧客前受金をセットで見る必要がある。

・設備・無形資産投資:€315M → €470M → €422M → €386M
売上高比率:4.2% → 4.8% → 4.8% → 4.1%

売上高に対する投資比率は4~5%程度で推移している。
2027年、2028年の能力増強を、主として既存フットプリントの最適化で進めるため、大規模な売上増加に対して投下資本が比較的軽い構造になっている。

・現金+短期投資:€5.128B → €13.322B → €8.376B → €7.582B

Q4に顧客入金が集中した後、配当、自社株買い、運転資本の影響で減少した。
財務上の問題は見られず、成長投資と株主還元を同時に進めている。


(数字だけ見た結論)

ASMLはQ3 2025を底に、売上成長率、粗利率、営業利益率、EPSが同時に改善している。

ただし、今回の数字で最も重要なのはQ2の上振れではない。

通期ガイダンスは、2026年下期に過去とは異なる売上・利益規模へ移行することを示している。

そして、その成長はEUV販売台数だけではなく、immersion、IBM、製品ミックス、ASP、固定費吸収の複合構造によって作られている。


■ Q4売上€14.4Bが意味するもの


今回の決算で最も重要な数字は、Q2売上€9.326Bではない。

通期ガイダンスから逆算されるQ4売上高である。

2026年上期売上高は、

€8.767B+€9.326B=€18.093B。

通期売上高ガイダンス中央値は€44.0B。

したがって、下期に必要な売上高は€25.907Bとなる。

Q3売上高ガイダンス中央値€11.5Bを使うと、Q4に必要な売上高は約€14.407Bになる。

Q4 2025の売上高は€9.718Bだった。

Q4 2026の暗示値は、

* YoY約+48%
* Q3ガイダンス中央値比でQoQ約+25%
* 過去最高売上を大幅に更新


する規模になる。

ASMLは2026年後半に、これまでとは異なる生産・売上認識規模へ移ろうとしている。

Q3決算で重要なのは、Q3が€11B~€12Bに到達したかだけではない。

Q4に€14B前後を認識できるだけの製造、出荷、設置、顧客受入れが進んでいるか。

ここが最大の確認点になる。


■ 下期粗利率56%は何によって作られるのか


通期ガイダンス中央値の売上高€44B、粗利率55%を達成するには、下期全体で約56%の粗利率が必要になる。

つまり会社は、Q2の54%を一時的なピークとは見ていない。

下期に、

1. EUV製品ミックスの改善
2. immersion出荷の増加
3. IBMの強さ
4. 高い生産量による固定費吸収
5. ASP改善

が同時に進むと想定している。

ここで見るべきなのは、Q2の高粗利アップグレードが一時的だったかどうかだけではない。

IBMのアップグレード特需が正常化した後も、E/F製品ミックス、価格決定力、固定費吸収によって56%前後の粗利率を維持できるのか。

これが2027年の利益構造を考える中心論点になる。


■ 2030年の未来を4年前倒しした


ASMLは2024年のInvestor Dayで、2030年の売上高を€44B~€60B、粗利率を56~60%と想定していた。

しかし、2026年売上高ガイダンス中央値はすでに€44B。

2030年レンジの下限へ4年前倒しで到達する。

これは目標達成の前倒しではなく、旧長期モデルが現実に追いつかれ始めたということだ。

ASMLは2027年6月のCapital Markets Dayで、長期見通しを更新する。

そこで問われるのは、2030年売上レンジの上限だけではない。

* Low-NA EUVの供給能力
* High-NAの量産台数
* Installed Baseの拡大
* 価格決定力の利益率への反映
* Metrology & Inspection
* 3D integration
* 粗利率56~60%の更新余地

を含む、未来の利益プール全体の再定義になる。


■ EUV独占の先に何があるのか


ASMLのモートを、「EUVを作れる唯一の会社」だけで説明するのは、すでに不十分だと思う。

ASMLは顧客の半導体生産能力を増やす複数の手段を持っている。

* 新しいLow-NA EUVを販売する
* より高速なEUVへ移行させる
* 既存EUVをアップグレードする
* DUV immersionを追加する
* 計測・検査装置を販売する
* ソフトウェアでプロセスを最適化する
* 将来はHigh-NAへ移行させる

顧客から見れば、どの方法で能力を増やしてもASMLに支払うことになる。

ASMLは特定の製品を独占しているだけではない。

最先端半導体の生産能力を増やす方法そのものを、複数のレイヤーで押さえ始めている。


■ 装置を売った後に、もう一度利益を取る


IBMを「第二の料金所」と考える理由は、継続売上だからだけではない。

顧客の能力不足に対して、ASMLは新規装置を待たず、既存装置のソフトウェアや部品を更新することで即時に処理能力を増やせる。

顧客にとっては、最も早く生産能力を増やす方法。

ASMLにとっては、高粗利の追加売上になる。


新規EUVを一台販売すれば、その後に、

* 保守
* 部品
* ソフトウェア
* 生産性アップグレード
* 次世代機への移行

が続く。

装置の販売が将来のIBM売上を生み、Installed Baseが増えるほど、第二の料金所も大きくなる。

ただし、Q2のIBM上振れが、

* 設置台数増加に伴う構造的なサービス成長
* 現在のクリーンルーム不足によるアップグレード特需

のどちらにどの程度依存しているかは未開示である。

IBMが第二のモートであることは確認できる。

一方で、現在の成長率がそのまま続くかは、別に検証する必要がある。


■ 独占企業は、どこまで値上げできるのか


ASMLの価格設定は、単純な原価積み上げではない。

value-based pricing、顧客へ提供する経済価値に基づく価格設定である。

ASMLが顧客へ提供する価値は、

* 一時間当たりのウェハー処理量
* 工程数の削減
* 歩留まり改善
* overlay精度
* imaging性能
* クリーンルーム面積の節約
* 新製品の市場投入速度

である。

CFOは、現在の環境ではASML製品が顧客へ提供する価値が従来より大きく、過去より価格設定の柔軟性が高いと説明した。

ただし、これは顧客の供給不足につけ込んで単純に値上げする話ではない。

顧客が得る経済価値を増やし、その増加分の一部をASPとして捕捉する。

これがASMLの価格決定力である。

受注リードタイムが長いため、価格効果が数字へ表れるのは2027年以降になる可能性が高い。

次回以降は、E/FモデルのASPと粗利率に価格決定力が実際に反映されているかを確認したい。


■ 台数+30%ではなく、顧客能力+45%


ASMLは2027年のLow-NA EUV生産能力を、2026年比で約30%増やす。

しかしCFOは、装置台数だけを見るべきではないと説明した。

2027年は旧型Dモデルがほぼなくなり、主にEモデルと一部Fモデルになる。

新型機のウェハー処理能力が高いため、装置台数は約30%増でも、顧客へ提供する実質的な処理能力は約45%増える。

これはASMLの売上高が45%増えるという意味ではない。

同じ一台から生まれる顧客価値が高くなるという意味である。

その価値向上は、

* ASP上昇
* 粗利率改善
* 顧客の投資効率向上
* 既存装置アップグレード需要

へつながる。

ASMLの成長は、単純な装置台数だけではなく、

装置台数×製品ミックス×処理能力×ASP+Installed Base売上

で見る必要がある。


■ High-NAは次の10年の独占更新


Intel Foundryは、Intel 18Aプロセスを使用するCore Ultra Series 3の一部製品レイヤーで、ASMLのHigh-NA EUVを使用した。

High-NAが研究用ウェハーだけでなく、実際の製品へ使用された重要な実証である。

ただし、Intel 18Aの主要レイヤー全体にHigh-NAが採用されたわけではない。

全面的な量産採用と表現するのは早い。

2026年のHigh-NA売上認識予定は4~5台にすぎず、今期利益の主役ではない。

現在のP/Lを作っているのは、Low-NA、immersion、IBMである。

High-NAの意味は、Low-NA EUVの独占が次の微細化世代で終わらず、2030年代にもASMLがボトルネックであり続ける可能性を示したこと、にある。

High-NAは今期利益の材料ではなく、ASMLの独占を次の10年へ更新するための技術実証として見るべきだと思う。


■ ASMLは未来の利益プールをどこまで支配するのか


アメリカンオオカミ Future 40で重視しているのは、技術力そのものではない。

技術から生まれる未来の利益を、その会社がどれだけ捕捉できるかである。

ASMLの利益プールは、次の方向へ広がっている。

微細化

より先端の半導体を作るほど、EUVの重要性が上がる。

Lithography intensity

一枚のウェハーを製造するために必要な重要露光レイヤーが増える。

製造能力

AI需要に対応するため、顧客は装置台数を増やす。

生産性

新型機とアップグレードにより、一台当たりの処理能力を上げる。

Installed Base

設置装置数が増えるほど、サービスとアップグレード売上が積み上がる。

計測・検査

微細化が進むほど、露光後の測定と補正が重要になる。

High-NA

Low-NAのmulti-patterningを一回の露光へ置き換え、工程数とコストを削減する。

3D integration

微細化だけでなく、チップを垂直に積層する製造工程へ領域を広げる。

ASMLは、一つの巨大装置を販売する企業から、半導体製造工程の複数箇所へ料金所を設置する企業へ変わっている。

EUVだけでも極めて深いモートを持つ。

そこへInstalled Base、計測・検査、ソフトウェア、High-NA、3D integrationが重なっている。

モートは横ばいではない。

不可逆的に拡大していると判断する。


■ Memory+75%の中に、循環と不可逆性が混在する


2026年のMemory関連Net system salesは、前年比75%超成長する見通しである。

背景には、

* HBM需要
* DDR需給逼迫
* DRAM価格上昇
* 1b・1cノードへの移行
* EUVレイヤー数の増加
* immersion使用量の増加
* メガファブ建設

がある。

ただし、これらはすべて同じ性質ではない。

DRAM価格上昇や設備投資拡大は循環的であり、将来反転する。

一方で、先端DRAMのEUVレイヤー増加や、multi-patterningからsingle-exposure EUVへの移行は、一度採用されると元へ戻りにくい。

Memory+75%のすべてが不可逆的な成長ではない。

しかし、その中に不可逆的なリソグラフィ強度の上昇が埋め込まれている。

この二つを分けて見る必要がある。


■ モートは不可逆、業績は循環的


ASMLのモートが深いことと、売上高が毎年直線的に増えることは別である。

顧客である半導体メーカーの設備投資は、

* 半導体価格
* 稼働率
* 在庫
* 最終需要
* 資本コスト
* 地政学
* 補助金

によって変動する。

ASMLに代替企業が存在しなくても、顧客が装置を買わない年はある。

Memory投資が将来ピークアウトすれば、ASMLの売上成長率も落ちる。

その時、モートが傷つかなくても、利益成長率低下によってPERは縮小する可能性がある。

したがってASMLでは、モートの不可逆性と、業績の循環性を分けて考える必要がある。

これはASMLを買わない理由ではない。

買う価格を慎重に考える理由である。



■ ASML最大の外部リスクは、中国と輸出規制


ASMLの2026年売上に占める中国比率は、会社想定で約20%となる。

Q2のNet system salesに占める中国比率は14%まで低下しており、2025年後半の高い中国依存から、韓国・台湾を中心とした先端ロジックとMemory需要へ成長の軸が移っている。

それでも、売上の約5分の1を占める市場であることに変わりはない。

ASMLはEUVを中国へ販売しておらず、一部の先端DUV immersionについても輸出規制を受けている。今後さらに規制が強化されれば、新規装置販売だけでなく、設置済み装置への部品、保守、アップグレードまで影響が広がる可能性がある。

これはASMLの技術的モートが壊れるリスクではない。

政治によって、モートから生まれる利益を捕捉できる市場が狭められるリスクである。

一方で、2026年の大幅成長は中国比率が低下する中で実現している。中国への販売鈍化を、先端ロジックとMemory需要が上回っていることは、今回確認できたポジティブな変化でもある。

長期では、中国による国産露光装置の開発も監視する必要がある。

現時点で最先端EUVに代わる技術的脅威とは言えないが、成熟ノード領域から徐々にASMLの市場を侵食する可能性は排除できない。


■ 強い物語ほど、検証手段が必要


経営陣は、

* 2027年のLow-NA EUVはほぼ受注でカバー
* 2028年分もすでに相当数の注文がある
* 上期の受注モメンタムは極めて強い
* バックログは増加している
* 顧客構成も広い

と説明した。

一方、2026年から四半期Net bookingsの具体的な金額開示はなくなった。

Q4 2025には受注€13.2B、EUV受注€7.4B、年末バックログ€38.8Bが開示されていた。

現在は「2028年まで見えている」という説明を、受注金額で検証できない。

これはモートの問題ではない。

投資家にとっての検証可能性の問題である。

業績構造は強くなった。

しかし、長期可視性を確認する定量データは弱くなった。

物語が強いほど、反証できる数字も必要になる。


■ それでも今から買う価値はあるのか


ASMLのForward GAAP P/Eは約40倍。

一般的な半導体製造装置企業と比べれば高い。

ただし、EUVを事実上独占し、最先端半導体の微細化に不可欠な企業を、セクター中央値と単純比較する意味は薄い。

ASMLが高い倍率を受けること自体は合理的である。

問題は、現在の倍率を正当化するために、今後どれだけの利益成長が必要かだ。

2027年には、

* Low-NA EUV能力+30%
* immersion能力+30%
* E/F製品ミックス改善
* ASP上昇
* IBM拡大
* 固定費吸収

が期待される。

一方で、2028年にMemory設備投資が減速し、EPS成長が止まれば、40倍の維持は難しくなる。

ASMLの投資判断は、

「良い企業か、悪い企業か」

ではない。

良い企業であることは明らかだ。

論点は、現在の株価が、2027年、2028年の利益成長をどこまで先に織り込んでいるかである。


■ NVIDIAを10%保有するポートフォリオへの接続


私はすでにNVIDIAをポートフォリオの約10%保有している。

NVIDIAとASMLは、異なるモートを持つ。

NVIDIAはAI計算基盤の設計、ソフトウェア、ネットワークを押さえる。

ASMLは、その半導体を製造するための最上流ボトルネックを押さえる。

しかし短中期では、両社とも、

* AI設備投資
* 先端ロジック
* HBM
* データセンター投資
* 半導体製造能力増強

という同じ利益プールから恩恵を受ける。

ASMLを加えることは、単純な分散ではない。

AI・先端半導体設備投資クラスターへのエクスポージャーを積み増すことになる。

ASMLの企業価値はコア銘柄の基準を満たす。

しかしポートフォリオへ加えるかは、

* NVIDIAの保有比率
* MRVLなど他の半導体銘柄
* 現金比率
* ASMLの取得バリュエーション
* AI capex全体の過熱度

を合わせて考える必要がある。

現時点の暫定判断は、コア候補として監視継続。

ただし、不可逆的モートを理由に現在の価格を無条件で受け入れる段階ではない、となる。

アメリカンオオカミ Future 40の順位は企業価値の構造を測るもの。

ポートフォリオ比率は、価格とリスクを測るものだ。

この二つは分けて考えたい。



■ 今回の決算をどう評価するか


今回確認できた最大の変化は、ASMLが2026年後半に、過去とは異なる収益規模へ移ろうとしていることだ。

通期ガイダンス中央値から逆算すると、

* 下期売上高:約€25.9B
* 下期粗利率:約56%
* Q4売上高:約€14.4B

が必要になる。

その成長を支えるのはHigh-NAではない。

Low-NA EUV、immersion、Installed Base、アップグレード、ASP、製品ミックス、固定費吸収である。

High-NAは、その先にある次の10年の独占更新だ。

ASMLは、EUV装置を販売する会社から、顧客の半導体生産能力全体を継続的に収益化する会社へ進化している。

Installed Baseが増えるほど、装置販売後の「第二の料金所」も大きくなる。

アメリカンオオカミ Future 40第2位という評価は、今回の決算で変わらない。

むしろ、モートはさらに深まった。

ただし、モートが不可逆であることと、現在の株価に安全域があることは別である。

次に確認すべきは、2026年下期の異常な収益力が、2027年以降も製品ミックス、価格決定力、Installed Baseによって維持されるのか。

それとも、顧客の能力不足とアップグレード需要が生んだ、一時的な利益ピークなのか、という点になる。

ASMLのモートを疑う局面ではない。

そのモートから生まれる未来の利益を、市場がすでにどこまで価格に入れたのかを考える局面だと思う。


■ 次回チェックポイント


* Q3売上高€11B~€12B、粗利率55~57%を達成するか
* 通期売上高€43B~€45Bを維持・再上方修正するか
* Q4売上€14B前後を認識できる出荷・顧客受入れが進んでいるか
* IBM売上約€2.9Bと高粗利アップグレード需要が持続するか
* Q4も粗利率約56%を維持できるか
* R&D費用が約€1.2Bへ戻るか
* Low-NA EUV約65台、immersion約130台の進捗
* 2027年のEUV、immersion各30%増産の受注カバー率
* Memory関連売上+75%超の持続性
* 3800E/3800FのASPと粗利率
* Intel以外でHigh-NAの実製品採用が進むか
* 売掛金、在庫、前受金と増産計画が整合するか
* 受注・バックログの定量開示が復活するか
* 2027年CMDに向けた長期モデル更新の示唆
* 2027年EPSコンセンサスの改定幅
* 中国売上比率約20%の前提と、輸出規制による装置・サービス売上への影響



(免責事項)
本執筆内容は、執筆者個人の意思決定の整理及び記録等を目的として公開するものであり、迷い・再考・修正・仮説更新を伴います。また、本執筆によって提供される情報は正確性等を保証するものではございません。つきましては、読者の方々にとって必ずしも適切であるとは限らないことから、投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、ご自身の判断と責任の基で投資をされるようお願いします。なお、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。


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