見出し画像

【AMD(AMD) Q1 FY2026】データセンターQoQ鈍化から読む中国リスクとAI CPU再評価。AMDに“勝ち筋”はあるのか?

AMD(AMD)のQ1 FY2026決算を見た。

正直に言うと、AMDは今回そこまで深く見るつもりではなかった。

なぜならAI半導体の本命はやはりNVIDIAだと思っているし、私はAMDをNVIDIAのライバルとして見ていない。CUDA、GPU性能、AIエコシステムの厚みで圧倒的な差があり、AMDは軽く流す程度でいいと思っていた。

ただ、今回の決算を見て少し考えが変わった。

見るべきは、AMDがNVDAに勝てるかどうかではない。
むしろ、AMDに“NVDAではない勝ち筋”があるのかどうかだと思う。だからこそ、そこを掘り下げてアウトプットすることにした。

その切り口は大きく3つある。

1つ目は、Data CenterのQoQ鈍化。
2つ目は、中国リスク。
3つ目は、AI CPU需要の再評価。
AMDは今回、Data Center売上が前年同期比57%増と強く見える数字を出した。会社側も「Data Centerが売上と利益成長の主役になった」と明確にアピールしている。実際、Q1の全社売上は$10.253B、YoY +38%。non-GAAP EPSは$1.37、YoY +43%。数字だけ見ればかなり強い。

しかし、ここで終わらせるわけにはいかない。

Data Center売上をQoQ、つまり前四半期比で見ると、Q3 FY2025 +34.0%、Q4 FY2025 +23.9%、Q1 FY2026 +7.3%と、加速度は明確に落ちている。しかもQ1のData Center営業利益は$1.599Bで、Q4の$1.752BからQoQ -8.7%。売上は伸びたが、利益は落ちた。ここは今回のAMD決算で一番メスを入れるべき点だと思う。

数字を確認する。

Q2’25 → Q3’25 → Q4’25 → Q1’26

・売上高:$7.685B → $9.246B → $10.270B → $10.253B
・YoY成長率:+32% → +36% → +34% → +38%
・QoQ成長率:+3% → +20% → +11% → ほぼ横ばい

Q1’26は売上$10.253Bで、YoY +38%。前年同期比ではかなり強い。ただし、Q3’25、Q4’25で大きく伸びた後、Q1’26では全社売上がほぼ横ばいになっている。ここは「AMD全体の成長が止まった」と見るより、Client & GamingとEmbeddedの季節性低下を、Data Centerの伸びが吸収した決算と見るべきだと思う。実際、Q1’26ではData CenterはQoQ +7.3%だった一方、Client & GamingはQoQ -8.5%、EmbeddedはQoQ -8.1%だった。

・GAAP粗利率:40% → 52% → 54% → 53%
・non-GAAP粗利率:43% → 54% → 57% → 55%

Q2’25の粗利率が極端に低いのは、米国政府の輸出規制により、AMD Instinct MI308の中国向け製品に約$800Mの在庫・関連費用が発生したため。AMDは、この影響を除けばQ2’25のnon-GAAP粗利率は約54%だったと説明している。つまり、Q2’25の43%をそのまま実力値として見るのは危険。調整後で見ると、Q2’25以降のnon-GAAP粗利率は実質54% → 54% → 57% → 55%程度のレンジであり、Q1’26はQ4比では低下したが、まだ高水準にある。

・GAAP営業利益:-$134M → $1.270B → $1.752B → $1.476B
・GAAP営業利益率:-1.7% → 13.7% → 17.1% → 14.4%

Q2’25はMI308関連費用の影響で営業損失になっている。Q3、Q4で営業利益率は急回復し、Q4’25では17.1%まで上昇した。ただしQ1’26は14.4%へ低下。全社売上がほぼ横ばいだった一方で、営業費用が増えたため、P/L上の収益性はQ4がいったんピークになっている。

・non-GAAP営業利益:$897M → $2.238B → $2.854B → $2.540B
・non-GAAP営業利益率:11.7% → 24.2% → 27.8% → 24.8%

non-GAAPで見ると、AMDの営業利益率は明確に改善してきた。ただしQ1’26はQ4’25の27.8%から24.8%へ低下している。これは悪い数字ではないが、Q4を起点に見ると利益率は下がっている。AMDはAI、Data Center、ROCm、Helios、go-to-marketに投資しており、売上成長と同時にOpEx(営業費用)も増えている。Q1のnon-GAAP OpExは$3.145Bで、前年同期比+42%、Q4比でも+5%。成長投資として正当化できるかは、今後のData Center再加速で答え合わせする必要がある。

・GAAP EPS:$0.54 → $0.75 → $0.92 → $0.84
・non-GAAP EPS:$0.48 → $1.20 → $1.53 → $1.37

Q1’26のnon-GAAP EPSは$1.37。前年同期の$0.96から+43%なので強い。ただしQ4’25の$1.53からは-10%。EPSも売上と同じで、YoYでは強いがQoQでは落ちている。市場予想との比較では、Q1の調整後EPS $1.37はアナリスト予想$1.29を上回り、売上$10.25Bも予想$9.9Bを上回ったと報じられている。ここは文句なく上振れ決算。ただし、投資判断としては「市場予想を超えた」よりも、「Q2以降に再加速するか」を見る局面だと思う。

・営業CF:$1.462B → $1.788B → $2.304B → $2.955B
・営業CFマージン:19.0% → 19.3% → 22.4% → 28.8%

ここは非常に強い。P/L上の営業利益率はQ4から下がったが、営業CFはQ1で過去最高水準に拡大している。Q1の営業CFは$2.955B、営業CFマージンは28.8%。AMDの本業がキャッシュを生む力は明確に改善している。営業利益率だけを見るとQ4比で減速感があるが、キャッシュ創出力はむしろ強まっている。

・CapEx:$282M → $258M → $222M → $389M
・CapEx / 売上比率:3.7% → 2.8% → 2.2% → 3.8%

AMDはMicrosoftやGoogleのように自社で巨大Data Centerを建てる企業ではないため、CapEx負担は軽い。ここはAIインフラ投資銘柄の中でも重要な違い。AMDの投資負担は、主にR&D、ソフトウェア、パッケージング、供給確保、顧客共同設計、在庫・運転資本に出る。したがって、AMDを見るときはCapExよりも、粗利率、OpEx、在庫、FCF、供給契約を見た方がよい。

・FCF:$1.180B → $1.530B → $2.082B → $2.566B
・FCFマージン:15.4% → 16.5% → 20.3% → 25.0%

ここは今回の決算でかなり強い。Q1’26のFCFは$2.566B、FCFマージン25%。営業利益率がQ4比で低下している一方、FCFはさらに伸びている。つまり、現時点ではAMDのAI投資はキャッシュを破壊していない。むしろ売上拡大と運転資本改善によって、キャッシュ創出力は強まっている。ここは、Microsoft型の「AI CapExでFCFが圧迫される決算」と大きく違う。AMDはAIインフラの供給側であり、自社でData Centerを建てる側ではない。

・SBC:$369M → $419M → $486M → $487M
・SBC / 売上比率:4.8% → 4.5% → 4.7% → 4.7%

SBCは絶対額では増えているが、売上比率では4%台後半で安定している。SaaS企業のようにSBCが株主リターンを大きく食っている構図ではない。ただし、AMDはOpenAIとの契約で最大1.6億株のワラントを発行している。2025年10-Kでは、OpenAIに最大1.6億株を1株$0.01で取得できるワラントを発行し、AMD Instinct GPUの購入マイルストーンやAMD株価目標などに応じて権利確定すると説明している。これは将来の希薄化リスクとして必ず追うべき。なお、10-Kでは2025年末時点でワラント株式は権利確定・行使条件を満たしておらず、2025年財務諸表への影響はなかったとも説明されている。

・希薄化後株数:1.630B → 1.641B → 1.649B → 1.650B

希薄化後株数はじわじわ増えている。Q1’26では1.650B。現時点で急激な希薄化は起きていないが、OpenAIワラントのような大口契約に伴う潜在株式は無視できない。AMDのAI GPU売上が大きく伸びるなら株主価値に効くが、売上を取るために株主希薄化を差し出している面もある。ここは「売上成長」と「1株価値」の両方で見る必要がある。

・現金+短期投資:$5.867B → $7.243B → $10.552B → $12.347B
・総負債:$3.218B → $3.220B → $3.222B → $3.224B

AMDの財務体力は明確に改善している。Q1’26末の現金・短期投資は$12.347B。Q4’25の$10.552Bからさらに増えた。一方で総負債は$3.224B。少なくとも短期的な財務不安はない。AMDは大型投資を行いながら、十分なキャッシュを積み上げている。

・在庫:$6.677B → $7.313B → $7.920B → $8.045B

在庫は増えている。Q1’26では$8.045B。需要に備えるための在庫増とも見えるが、AI GPU、HBM、パッケージング、顧客別製品などが絡むため、在庫の質は慎重に見る必要がある。特にMI308のように輸出規制で販売が止まると、在庫リスクが一気に表面化する。AMDはすでにQ2’25でMI308関連の$800M費用を計上している。ここは過去の一過性ではなく、今後も米中規制リスクとして残る。

・Data Center売上:$3.240B → $4.341B → $5.380B → $5.775B
・Data Center売上構成比:42.2% → 47.0% → 52.4% → 56.3%
・Data Center YoY:+14% → +22% → +39% → +57%
・Data Center QoQ:-11.8% → +34.0% → +23.9% → +7.3%

ここが今回の決算で最も重要な数字。AMDはQ1’26でData Center売上$5.775B、YoY +57%を出した。確かに強い。さらに売上構成比はQ2’25の42.2%からQ1’26では56.3%まで上昇している。つまり、AMDはすでにClient/Gaming中心の半導体会社ではなく、Data Centerを中心に見る会社へ変わっている。
ただし、QoQを見ると、Q3’25 +34.0%、Q4’25 +23.9%、Q1’26 +7.3%と、加速度は明確に落ちている。YoYでは強いが、QoQでは鈍化している。今回の決算でメスを入れるべき最大の論点はここだと思う。

・Data Center営業利益:-$155M → $1.074B → $1.752B → $1.599B
・Data Center営業利益率:-4.8% → 24.7% → 32.6% → 27.7%

Data Center営業利益も見逃せない。Q1’26は売上がQoQ +7.3%だった一方で、営業利益はQoQ -8.7%。営業利益率もQ4’25の32.6%からQ1’26では27.7%へ低下した。つまり、Data Centerは売上規模では拡大しているが、利益率はQ4から悪化している。これは、GPUミックス、AI関連投資、顧客対応、MI308の中国向け売上減、あるいはServer/GPUミックスの変化など、複数要因が絡んでいる可能性がある。会社側はData Centerの強さを強調しているが、投資家としては「YoY +57%」だけではなく、「QoQ鈍化」と「営業利益率低下」をセットで見るべきだと思う。

・Client売上:$2.499B → $2.750B → $3.097B → $2.885B
・Client売上構成比:32.5% → 29.7% → 30.2% → 28.1%

ClientはRyzenの強さで堅調。Q1’26はYoY +26%だが、Q4比では季節性で減少している。売上構成比はQ2’25の32.5%からQ1’26では28.1%へ低下した。Clientはまだ大きな事業だが、AMD全体の主役ではなくなってきている。今後はAI PCやcommercial PCがどれだけ効くかを見る必要はあるが、投資判断の中心はData Centerに移っている。

・Gaming売上:$1.122B → $1.298B → $843M → $720M
・Gaming売上構成比:14.6% → 14.0% → 8.2% → 7.0%

Gamingは明確に主役ではない。Q1’26はYoY +11%だが、Q4比では減少している。半導体サイクルやコンソールサイクルの影響を受けやすく、Radeon GPU需要はあるものの、Data Centerほどの構造的な成長エンジンには見えない。売上構成比もQ2’25の14.6%からQ1’26では7.0%まで低下している。AMDを見るうえで、Gamingはもう中心論点ではないと思う。

・Client & Gaming合計:$3.621B → $4.048B → $3.940B → $3.605B
・Client & Gaming売上構成比:47.1% → 43.8% → 38.4% → 35.2%

Client & Gamingを合計すると、まだ大きい。ただし、売上構成比はQ2’25の47.1%からQ1’26では35.2%まで低下している。これはAMDの事業構造が明確に変わっていることを示している。以前のAMDはPC、Gaming、Semi-customも大きな柱だったが、今はData Centerが全社売上の過半を占める会社になった。ここはAMDのバリュエーションを考えるうえで重要。市場がAMDを高く評価するなら、その根拠はClient/GamingではなくData Centerにある。

・Embedded売上:$824M → $857M → $950M → $873M
・Embedded売上構成比:10.7% → 9.3% → 9.3% → 8.5%

Embeddedは回復基調にはあるが、全社の主役ではない。Q1’26はYoY +6%だが、Q4比では減少。構成比も8〜10%程度で推移している。Xilinx由来のEmbeddedは高収益事業として重要ではあるが、今回のAMD決算の核心ではない。Data Centerの成長性と比べると、投資家の評価軸としては補助的な位置づけになる。


まず、全体像を数字で確認すると、今回のAMDは「強いが、素直に強いとは言い切れない」決算だと思う。

全社売上はYoY +38%。
non-GAAP EPSはYoY +43%。
FCFは$2.566B、FCFマージン25%。
Data Centerは全社売上の56.3%まで拡大。
ここだけ見ればかなり強い。

ただし、Data CenterのQoQ成長率は+34.0% → +23.9% → +7.3%へ鈍化している。
Data Center営業利益率も32.6% → 27.7%へ低下した。
Client & GamingとEmbeddedは季節性でQ4比減少。
在庫は$8.045Bまで積み上がっている。
中国向けMI308の規制影響も残っている。

つまり、今回の決算は「AMDのData Centerが単純に加速している決算」ではない。
正確には、Data Centerの構成比が過半を超え、AMDの事業構造が明確にData Center中心へ変わった一方で、そのData CenterのQoQ加速度には鈍化が見えた決算だと思う。

だから次に見るべきは、Q2で経営陣が示す通りData Centerが再びQoQ二桁成長へ戻るかどうか。
ここが確認できれば、Q1は一時的な踊り場だったと見られる。
逆に、Q2でもData CenterのQoQ鈍化が続くなら、YoY +57%という見た目の強さより、成長加速度の鈍化を重く見るべきだと思う。

■ Data Center:YoY +57%の強さと、QoQ +7%の違和感


今回一番重要なのはここ。

AMDはQ1’26でData Center売上$5.775B、YoY +57%を出した。会社側も、Data Centerが売上・利益成長の主役になったと説明している。

ただし、QoQで見ると話は変わる。

Q3’25はQoQ +34.0%。
Q4’25はQoQ +23.9%。
Q1’26はQoQ +7.3%。

つまり、Data Centerは伸びているが、加速度は落ちている。
ここを見ないで「Data Centerが強い」とだけ言うのは危険だと思う。


さらに、Data Center営業利益はこうだ。

・Data Center営業利益:-$155M → $1.074B → $1.752B → $1.599B
・Data Center営業利益率:-4.8% → 24.7% → 32.6% → 27.7%

Q1’26は売上がQoQ +7.3%だった一方で、営業利益はQoQ -8.7%。営業利益率も32.6%から27.7%へ低下した。これは軽い話ではない。

もちろん、Q2’25はMI308関連費用でData Center営業利益が一時的にマイナスになっているので、そこからの回復は非常に強い。ただしQ4’25をピークに見ると、Q1’26ではData Centerの利益率が一段下がっている。

ここから見えるのは、AMDのData Centerは「成長している」が、「直線的に加速している」とはまだ言い切れないということ。

次回決算で見るべきは、経営陣が言ったとおりQ2でData Centerが再びQoQ二桁成長に戻るかどうかだと思う。


■ 中国リスクは一時要因ではないかもしれない


AMDのData Center QoQ鈍化を見るうえで、中国要因は避けて通れない。

Q2’25では、米国政府の輸出規制によりAMD Instinct MI308の中国向け出荷に影響が出て、約$800Mの在庫・関連費用が発生した。Q3’25では、AMDはMI308の中国向け出荷による売上はなかったと明記している。Q4’25では、以前計上した費用のうち約$360Mを戻し入れ、さらに中国向けMI308売上が約$390Mあったと開示している。

つまり、Q4’25のData Centerには中国向けMI308の売上と在庫戻入れが入っていた。

Q1’26については、経営陣はコールでData Center AIがQoQで小幅減少した理由として、中国売上の減少を挙げている。ただし、ここで重要なのは、AMDがQ1の中国売上額やData Center AIの中国構成比を開示していないことだ。

したがって、「Q1のQoQ鈍化は中国の一時要因だから問題ない」と断定することはできないと思う。

むしろ、ここはもっと深く見るべきだと思う。

中国のAI投資やData Center投資が止まっているわけではない。中国政府はDigital ChinaやAI Plusを進めており、2025年行動計画では算力を300 EFLOPS超へ高める目標も示している。問題は、そのAI需要がAMDに流れるのかという点だ。

中国ではHuawei Ascend、Baidu Kunlunxin、Cambriconなどの国内AIチップが立ち上がっている。Reutersは、DeepSeek V4のHuawei Ascend最適化後、ByteDance、Tencent、AlibabaなどがHuawei AIチップ確保に動いていると報じている。さらにBaiduもKunlunxinの香港上場準備を公式に発表している。

ここで考えるべきは、AMD製品が中国で「喉から手が出るほど欲しい標準」なのかどうか。

NVIDIAの場合、CUDA、エコシステム、性能、モデル最適化の厚みがあるため、中国企業が本音では欲しがる構造が残りやすい。一方、AMDのInstinctは、ROCmが改善しているとはいえ、CUDA級の不可逆エコシステムにはまだ届いていない。そうなると、中国企業にとってAMDは「どうしても欲しい標準」ではなく、「使えるなら使うが、国産代替が政策的に進むならそちらへ寄せる」対象になる可能性がある。

つまりAMDの中国リスクは、単なる米国輸出規制ではないのではないかと考える。

米国側のライセンス制約。
中国側の輸入管理。
中国政府の国産化政策。
HuaweiやBaiduによる国内代替。
そしてAMDのAI GPUが中国で標準化していない可能性。

この複数の要因が重なる。

だから、Q1のData Center QoQ鈍化を「中国の一時要因」と単純に片づけていい話ではないと思う。
中国市場はAMDにとって大きなTAMではあるが、その取り分の質は悪化している可能性がある。


■ AMDを見る理由はAI CPU再評価にある


では、いまのAMDは見送ればいいのか。

そこは違うと思う。

今回の決算で一番面白いのは、AMDがAI GPUだけではなく、AI CPU需要の再評価を取り込み始めていることだ。

CEOは決算コールで、AI推論とAgentic AIがCPU需要を押し上げていると説明した。Agentic AIとは、AIが単に質問に答えるだけでなく、複数のタスクを分解し、実行し、外部ツールやデータにアクセスしながら仕事を進めるようなAIの使われ方を指す。この世界では、GPUだけではなく、CPUも必要になる。

なぜなら、AIシステムはGPUでモデル計算をするだけでは終わらないからだ。

データを動かす。
複数のAIエージェントを制御する。
推論リクエストをさばく。
GPUやアクセラレータのヘッドノードとして機能する。
企業内データ、クラウド、ストレージ、ネットワークとつなぐ。

こうした処理にはCPUが必要になる。

AMDはここを強調している。
つまりAMDの勝ち筋は、NVIDIAのGPUに正面から勝つことではなく、AIインフラの中でEPYC CPUの取り分が増えることにある。

実際、AMDはServer CPU市場の見方も引き上げている。以前は2030年に約$60B、年率18%成長程度と見ていたServer CPU TAMについて、今回はAgentic AIや推論需要を背景に、2030年に$120B超、年率35%超成長という見方を示した。Reutersも、AMDがServer CPU市場見通しを2030年$120Bへ引き上げたと報じている。

ここは非常に重要だと思う。

AMDを「NVDAのAI GPUライバル」として見ると弱い。
しかし、「AI時代にCPU需要が再加速するなら、その恩恵を大きく受ける会社」として見ると、別の勝ち筋が見えてくる。




■ EPYC CPUはAMDの本当のモート候補かもしれない

今回の決算で、EPYCの存在感はかなり大きい。

AMDはQ1で、Data Center売上の成長はEPYC CPUとInstinct GPUによるものと説明している。さらに、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Tencentが第5世代EPYC搭載クラウドインスタンスを拡大していることも開示している。

ここで大事なのは、EPYCが単なるCPU販売ではないことだ。

Data CenterでCPUを採用するには、性能、消費電力、TCO、ソフトウェア互換、運用実績、クラウド事業者の検証が必要になる。一度採用され、インスタンスが増え、企業ワークロードが乗り始めると、簡単には外れない。

さらに、今回のコールでCEOは、第6世代EPYCであるVeniceがx86競合だけでなく、ARMベースのAIソリューションに対しても強い競争力を持つと説明している。特に、AIインフラ向けにはソケットあたりのスループットが重要になる。GPUだけが速くても、データ移動やオーケストレーションのCPU側が詰まれば、AIインフラ全体の効率は落ちる。ここでAMDがEPYCをAIインフラの中核部品として位置づけられるなら、AMDの勝ち筋はかなり太くなる。

AMDの10-Kでも、Data Center segmentにはCPU、GPU、AI accelerator、DPU、AI NIC、FPGAなどが含まれ、現代のData CenterではCPU、GPU、DPU、AI NIC、FPGAなどの組み合わせで性能と電力を最適化すると説明している。AMDはまた、ROCm、ネットワーキング、システム統合まで含めたfull-stack innovationを重視している。

つまり、AMDのモートはGPU単体ではなく、EPYC CPUを中心に、Instinct GPU、Pensando networking、ROCm、Heliosラックスケール設計を組み合わせるところにある。

NVDAがCUDAを中心にAIコンピューティングの標準を握る会社なら、AMDはCPUからAIインフラに入り込み、GPUとラック設計をつなげる会社を目指しているように見える。

もちろん、これはまだ完成したモートではない。
ただ、EPYCの採用拡大はAMDにとってかなり重要な足場だと思う。


■ MI450とHeliosは、売上規模より粗利率を見るべき


AI GPU側で焦点になるのは、MI450とHeliosだ。

ここは少し整理しておきたい。

InstinctはAMDのData Center向けAI GPUブランドで、NVIDIAで言えばH100、H200、Blackwellに相当する領域を狙う製品群だ。
その次世代の中核になるのがMI450シリーズで、AMDが2026年下期から本格的に立ち上げようとしているAI GPUである。

ただし、AMDがやろうとしているのは、GPU単体を売るだけではない。

重要なのはHeliosだ。
Heliosは、MI450シリーズGPU、EPYC CPU、ネットワーク、ソフトウェアを組み合わせた、AMDのラックスケールAIインフラ構想である。つまり、GPUを単品で売るのではなく、AI Data Centerのラック単位で最適化されたシステムとして提供しようとしている。

ここにAMDの狙いがある。

NVIDIAはCUDAとGPUでAI計算基盤の標準を握っている。一方、AMDはCUDA級のソフトウェアモートではまだ劣る。だからこそ、単体GPUの性能勝負だけではなく、EPYC CPU、Instinct GPU、ROCm、ネットワーク、ラック設計をまとめて提供し、大口顧客のAIインフラ設計に入り込もうとしている。

このラックスケール戦略で重要なのが、ZT Systemsの買収だと思う。

AMDは2025年にZT Systemsを買収し、その後、製造事業はSanminaへ売却した。一方で、AMDは設計事業に関わる知的財産と人材を維持している。10-Kでも、この買収により、AMD-powered AI infrastructureをクラウド向けに大規模展開する設計・導入能力を高める狙いが説明されている。

つまり、AMDはチップだけを売る会社から、ラック全体の設計に入り込む会社へ移ろうとしている。これはNVIDIAのGB200/Blackwell NVL72のようなラックスケール・ソリューションに対抗するうえで重要だと思う。チップ単体ではCUDAに勝てなくても、顧客のAIインフラ設計にCPU、GPU、ネットワーク、ソフトウェア、ラック設計ごと入り込めれば、スイッチングコストは高まる。

その代表例がMetaとOpenAIだ。

AMDはMetaとの間で、最大6GWのAMD Instinct GPU展開を発表している。最初の1GWはcustom MI450ベースGPUで、Metaは第6世代EPYCであるVeniceとVeranoのリード顧客にもなる。OpenAIについても、2025年10-Kで、AMD GPU 6GWを展開し、最初の1GWはMI450シリーズ製品で構成されると記載されている。  

これは非常に大きい。

ただし、ここで見るべきは売上規模だけではない。
大口顧客との契約は、確かに売上を作る。しかも6GW規模となれば、AMDのData Center AI売上を一段引き上げる可能性がある。

しかし、投資家としては「どれだけ売れるか」だけでは足りない。
むしろ重要なのは、どれだけの粗利率で売れるのかだと思う。

なぜなら、MI450/Heliosは単純なGPU販売ではないからだ。

カスタム設計、HBM、先端パッケージング、ラック設計、ネットワーク、供給確保、初期歩留まり、大口顧客との価格交渉が絡む。大口顧客向けに深く入り込める一方で、初期段階では粗利率が低くなる可能性がある。

AMD自身も、Q2’26ガイダンスとして売上$11.2B±$300M、non-GAAP gross margin約56%を示している。Q1の55%からは改善見込みだが、MI450/Heliosの本格立ち上げは下期からになる。つまり、Q2ではまだ本当の答えは出ないかもしれない。

本当の答え合わせは、2026年下期、特にQ4以降だと思う。

MI450とHeliosが、売上だけでなく粗利率とFCFに効いてくるのか。
大口顧客に低採算で売っているだけなのか。
ROCmとラック設計がスイッチングコストを生むのか。
GPU単体ではなく、CPU、GPU、ネットワーク、ソフトウェアを含めたAIインフラとしてAMDが入り込めるのか。

ここが重要になる。

AMDのAI GPU事業を見るうえで、今後の焦点は「MI450がどれだけ売れるか」だけではない。
MI450/Heliosが、AMDを単なるGPUの2番手から、AIインフラ設計に入り込む企業へ変えられるか。
ここを見るべきだと思う。


■ ROCmは改善しているが、CUDA級ではない


AMDを見るうえで、ROCmは避けて通れない。

ROCmはAMDのオープンAIソフトウェアスタック。簡単に言えば、AMD GPU上でAIモデルを動かすためのソフトウェア基盤だ。NVIDIAで言えばCUDAに相当する部分になる。

AMDは今回、MI355XがMLPerfで強い結果を出したこと、主要オープンモデルへのday-0対応を進めていること、ROCm開発を加速していることを強調した。公式プレゼンでも、AMDは「Production-Grade AMD ROCm Software Stack」を戦略柱の一つとして掲げている。  

これは前向きな材料だ。

ただし、ここは冷静に見る必要がある。
ROCmが改善していることと、CUDAのような不可逆エコシステムになったことは別の話だ。

今のAMDは、大口顧客と共同で最適化すれば使える。
しかし、世界中の開発者や企業が自発的にROCmを選ぶほどの標準にはまだ見えない。

だから、AMDのAI GPUモートはまだ完成していない。
現時点では、「大口顧客との共同設計で使われるGPU」であり、「CUDAのように逃げられない標準」ではない。

ここがNVDAとの差だと思う。


■ OpEXの増加は、悪い費用なのか、勝つための投資なのか


今回もう一つ見ておきたいのは、OpEX(営業費用)の中身だ。

Q1’26のnon-GAAP OpExは$3.145Bで、前年同期比+42%、Q4比+5%。これだけ見ると、費用がかなり増えている。実際、Q1’26は売上がQ4比でほぼ横ばいだった一方で、non-GAAP営業利益率は27.8%から24.8%へ低下した。

ただし、ここを単純な費用増として見ない。

AMDはこの数四半期、Data Center AI、ROCm、Helios、enterprise server、commercial PC、mid-market、SMB向けのgo-to-marketに投資してきた。つまり、これまでAMDが弱かった「売る力」や「大口顧客の導入支援」に資金を入れている。

今回のコールでは、経営陣は今後、R&Dの成長率がSG&Aの成長率を上回る方向になるとも説明している。ここは重要だと思う。

なぜなら、AMDが今後勝つために必要なのは、単なる営業費用ではなく、製品ロードマップとソフトウェアの強化だからだ。MI450、MI500、Venice、Verano、ROCm、Helios、2nm世代、先端パッケージング。これらの開発にR&Dを厚く張ることが、AMDのモート拡大に直結する。

つまり、今回のOpEx増は短期利益率を押し下げている。
ただし、それがData Centerの再加速、ROCmの改善、Heliosの本番展開につながるなら、将来CFへの前払いと見ることができる。


逆に、OpExを増やしてもData Centerが再加速しないなら、話は変わる。
その場合は、成長投資ではなく、競争に追いつくための重い費用になってしまう。

ここも次回以降の答え合わせになる。


■ Client & Gaming、Embeddedは主役ではない


Clientは強い。Ryzenのシェア拡大、commercial PC、AI PCは一定の追い風になっている。ただしQ1では季節性でQoQ -7%。GamingもQ4からさらに減少している。AMDは下期のPC・Gaming需要について、メモリや部材コスト上昇の影響を見込んでいる。

Embeddedは回復しているが、全社の主役ではない。

結局、AMDを見るうえで主役はData Center。
ただし、そのData CenterもYoYだけではなくQoQと利益率を見る必要がある。

■ AMDに“勝ち筋”はあるのか?


では、AMDに勝ち筋はあるのか。

答えは、あると思う。
ただし、それは「NVDAをAI GPUで倒す」という勝ち筋ではない。

AMDの勝ち筋は、AIインフラの中でCPU需要が再評価されること。
EPYCがクラウドとエンタープライズでさらに採用されること。
Venice/VeranoがAIインフラ向けCPUとして広がること。
MI450/Heliosが大口顧客の第2供給源として本番展開されること。
ZT Systems由来の設計能力を活かして、ラックスケールAIインフラに入り込むこと。
ROCmが大口顧客専用の最適化スタックから、より広い開発者・企業向けエコシステムへ進むこと。
そして、CPU、GPU、ネットワーク、ソフトウェア、ラック設計を合わせたAIインフラ企業として評価されること。

この道なら、AMDには勝ち筋がある。

逆に、AMDを「NVDAのGPUライバル」としてだけ見るなら、厳しい。
CUDAの壁は高い。
NVDAのBlackwell需要も強い。
ソフトウェアエコシステムの厚みも違う。

だからAMDは、NVDAと同じ土俵で戦う会社として見るより、AIインフラ拡大の中で、CPUと第2供給源としてのGPU需要を取りに行く会社として見るべきだと思う。


■ 投資判断


AMDは、今回の決算で「流しでいい銘柄」ではなかった。

ただし、いまの時点でコア銘柄として強く買うというより、監視銘柄に格上げするイメージだと思う。

モートは拡大している。
ただし、不可逆モートではまだない。

EPYCの採用拡大はかなり強い。
Venice/VeranoによるAI CPU需要の取り込みも面白い。
MI450/Heliosも大口顧客の本番展開に近づいている。
ZT Systems買収により、ラックスケール設計に入り込む体制も整いつつある。
ROCmも改善している。

一方で、Data CenterのQoQ鈍化、中国リスク、MI450の粗利率、ROCmの標準化、OpenAIワラントの希薄化、OpEx増の回収は無視できない。

つまりAMDは、「良い会社」から「AIインフラ標準企業候補」へ上がってきた。
ただし、まだ「圧倒的モート企業」とは言えない。

今後、Q2でData CenterがQoQ二桁成長へ戻り、2026年下期にMI450/Heliosが売上だけでなく利益とFCFに効くなら、AMDの見方はさらに上がると思う。

逆に、Q2でもData CenterのQoQ鈍化が続き、MI450が低粗利の大型案件に見え、ROCmの広がりも限定的なら、今の期待値は高すぎる可能性がある。

今回のAMDを結ぶと、買うか買わないか以前に、しっかりとしばらく追うべき決算だと思った。


■ 次回チェックポイント


・Data Center売上がQ2で本当にQoQ二桁成長に戻るか
・Data Center営業利益率がQ1の27.7%から改善するか
・Server CPU売上が経営陣の言うYoY +70%超に近づくか
・Data Center AIがQ1の小幅減少から再加速するか
・中国向けMI308売上の有無と、追加規制・ライセンス状況
・中国市場でAMD製品が国産AIチップに置き換えられていないか
・MI450/Heliosの本格ramp時期と粗利率への影響
・ZT Systems由来のラック設計能力が、大口顧客の採用拡大につながるか
・ROCmが大口顧客専用から広いエコシステムへ進んでいるか
・R&D投資が製品競争力とソフトウェア改善に結びついているか
・在庫が$8.0B台からさらに積み上がりすぎていないか
・FCFマージン25%前後を維持できるか
・OpenAIワラントによる希薄化条件がどこまで進むか
・Q2ガイダンス$11.2Bをどれだけ上回れるか
・次回ガイダンスでQ3以降のMI450/Helios rampがどれだけ織り込まれるか


最後まで読んでいただきましてありがとうございます。役に立ちましたら、是非、スキ、フォローしていただきましたら幸いです。


(免責事項)
本執筆内容は、執筆者個人の意思決定の整理及び記録等を目的として公開するものであり、迷い・再考・修正・仮説更新を伴います。また、本執筆によって提供される情報は正確性等を保証するものではございません。つきましては、読者の方々にとって必ずしも適切であるとは限らないことから、投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、ご自身の判断と責任の基で投資をされるようお願いします。なお、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー