北京香山フォーラム・ナビゲーター会議(2026年)報告書:グローバル安全保障ガバナンスと日米防衛協力の新局面
1. はじめに:北京香山フォーラムの役割
2026年5月に開催された「北京香山フォーラム・ナビゲーター会議」は、43の国と国際機関から120名以上の専門家が集結し、秋の本会議に向けた論点整理を行った。本会議は設立20周年を迎え、中国が提唱する「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」を軸に、多極化する国際秩序における新たな安全保障のあり方が模索された。
2. 国際共通安全保障を守る責任(セッション3)
本セッションでは、大国間対立を超えた「共通の安全(Common Security)」の確保が主要議題となった。
非伝統的安全保障: インフレ下でのエネルギー・食糧サプライチェーンの防衛、および気候変動への共同対応が「大国の責任」として強調された。
多極化への移行: 欧米主導の「排他的同盟」ではなく、グローバル・サウスを含む包摂的な枠組みによる、実利的な紛争解決メカニズムの必要性が議論された。
3. 米軍の撤退・再編と「ポスト・アメリカ」の論理
会議では、アメリカの「域外介入」に対する批判と並行し、現実的に進行する米軍の再編(Realignment)が地域に与える影響が分析された。
撤退と空白のリスク: 一部の基地(韓国や欧州)からの装備撤収や兵力再編は、地域のパワー・バキューム(力の空白)を招く懸念がある。
分散型配置(EABO等): 集中から分散へシフトする米軍の機動的配置は、攻撃に対する強靭性を高める一方、地域全体を「戦域化」させるリスクとして中国側から指摘された。
4. 横田基地における指揮権の格上げと日米一体化
2026年3月に実施された「在日米軍司令部(USFJ)」と「第5空軍」の指揮官分離・格上げは、日本の防衛態勢に決定的な変革をもたらした。
実戦司令部への変貌: 横田基地の司令部は、従来の行政的な「事務局」から、ハワイのインド太平洋軍から権限を移譲された「戦う司令部(統合軍司令部)」へと進化した。
自衛隊とのペアリング: 日本の「統合作戦司令部(JJOC)」とのリアルタイムな連携が可能となり、日米の意思決定スピードが劇的に向上した。
5. 日本の「制空権」の変容と新たな定義
米軍再編と司令部強化により、日本の制空権(航空優勢)の概念は以下の通りアップデートされている。
全領域での優位: 戦闘機による「空の戦い」だけでなく、宇宙(衛星監視)、サイバー、電磁波の3領域を統合した「多次元の制空権」へと拡大。
航空宇宙自衛隊の役割: 2026年に本格始動した航空宇宙自衛隊が、宇宙領域での米軍との共同運用を通じて、広域的な監視・防衛能力を強化。
統合防空ミサイル防衛(IAMD): 航空機による制空と、地上・艦船からの迎撃・反撃能力が有機的に結合。横田と市ヶ谷が同期することで、一つの巨大な「統合防衛システム」として機能する。
6. 結論
2026年の北京香山フォーラムでの議論は、アメリカ一極集中型の安全保障が終焉し、日本を含む地域大国がより直接的な責任と「指揮権」を担う時代への移行を浮き彫りにした。横田を拠点とする日米の指揮統制の一体化は、日本の制空権を強固にする「防波堤」となる一方、地政学的な対立軸をより鮮明にする二面性を持っている。

7. 図解解説:在日米軍司令部(USFJ)の改編と指揮権の格上げ
本図は、2026年3月に実施された横田基地における指揮系統の抜本的な再編と、日米防衛協力の新たな枠組みを可視化したものである。主な変革点は以下の3点に集約される。
1. 在日米軍司令部(USFJ)の「統合部隊司令部(JFHQ)」化
図の中央上部に位置する在日米軍(USFJ)は、従来の「同盟管理」を主とする行政的な司令部から、実戦指揮能力を持つ統合部隊司令部(JFHQ: Joint Force Headquarters)へと格上げされた。
権限の移譲: ハワイの米国インド太平洋軍(USINDOPACOM)から、日本国内の部隊運用に関する広範な指揮権(Command Authority)が移譲されている。
即応性の向上: 地理的に離れたハワイを経由せず、日本国内で迅速な意思決定と部隊運用を完結させる体制が整えられた。
2. 指揮官の分離・独立(第5空軍の専門化)
図の左側、米国空軍(U.S. AIR FORCE)の列に見られる変化は、今回の再編の象徴である。
独立したLeadership: 従来、在日米軍司令官が兼務していた第5空軍(5 AF)司令官のポストが分離独立した。これにより、在日米軍司令官は「全軍(陸・海・空・海兵隊)の統合運用」に、第5空軍司令官は「航空作戦の専門遂行」に、それぞれ専念することが可能となった。
ホストユニットの明確化: 横田基地の維持管理を担う第374空輸航空団は、実戦指揮系統から切り離された運用調整(Operational Coordination)の枠組みとして整理されている。
3. 自衛隊(JSDF)との完全な同期(水平連携)
図の右側に示された自衛隊(JSDF)協力のラインは、日米の一体化を象徴する極めて重要な経路である。
市ヶ谷と横田の直結: 日本の自衛隊「統合作戦司令部(JJOC)」と、横田の「在日米軍統合部隊司令部」が、情報の共有だけでなく作戦の統合(Operational Coordination)をリアルタイムで実施する。
多次元制空権の確保: この緊密な連携により、宇宙・サイバー領域を含む「多次元の制空権」を、日米が一つのシステムとして確保・維持する体制が構築されている。
