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【観劇記録】狂気と喜劇のごった煮|舞台「ポルノ」

2026年8作品目。「他者の国」ぶりの本多劇場。自宅からはアクセスが悪いけど、周辺の環境含めてこの劇場が好き。そして今回の作品は、下北沢の雑多な空気がとてもよく似合っていたように感じました。

「ポルノ」は、長塚圭三さん率いる阿佐ヶ谷スパイダースの旗揚げ公演に新たなエピソードを加え、2002年に上演された作品、とのこと。20年以上の時を経て、今回は演出を松居大悟さんが担当されていました。ちなみにわたしは松居さんの映像作品しか観たことがなくて、特に好きなのは「手」です。そんな感じなので、舞台は一体どんな演出を…!? と、ちょっぴりワクワクしながら劇場に向かいました。

あらすじとしては、坂の多い町・坂上町で行われる議員選挙に立候補した国旗耕ニが、高齢者や歩行に障害のある人のために町にあるすべての坂をエスカレーターにするという公約を掲げるも、支持率が伸びず恐ろしい行動に出る…というものなんだけれども。

これってほんとにさわりの部分で、全然思ってもいないところにお話が展開していきます。何を書いてもネタバレになりそうだし、もしまだ観ていない人がいるならネタバレしないほうが絶対にいいと思うので、詳しくは書きません。

ただ、なんだろうな、わたしはこの物語を見守りながら、ずーっと心の中のアズダク(「コーカサスの白墨の輪」より)が、「お前は信用ならん。でも、俺の人を見る目も信用ならん」とずっと言っていました。つまり、最初に抱いた“きっとこうだろう”が、あっさりと全部崩されました。

バカと天才は紙一重とかってよく言うけれど、それと同じように、正常と狂気もまた紙一重で、1人の人間のなかに平然と同居するものなんだろうなと思います。というよりも、それって場面によって見せる表情を変えるんだろうな。

…というと、非常に陳腐な感想になってしまうんですよ。実際にはもっとこう、物理的にガツンとくるような衝撃があったんだけど。気持ちの悪い世界で、みんなが気持ちの悪いほうの選択をし続けていく感じで、いっそ悪夢であれと思ってしまうような。

そしてほんとに、え…!? という終わりを迎えます。まるで、現実だって所詮こういう世界の地続きなんですよ、とでもいうように。

主人公の国旗を演じた玉置玲央さん。前回拝見した「狩場の悲劇」では、うっかり絆されそうな、いや、むしろ絆されたいと思ってしまうようなクズ男を演じていたのですが、今回は完全にキマった目で、物語をぐんぐん推し進めていく。こういう役を! 玉置さんにやらせたら!! 怖すぎるって…!!! と、わりと後方列に座っていたのに感じました。前のほうに座っていたら、きっともっとやばかったんだろうな。特に彼の本心がぽろんと剥き出しになる、そのあたりがとてつもなく醜悪でした。この男のほんとの顔、ほんとに胸糞悪い。

そしてその妻・美和子を前田敦子さんが演じていました。最近は写真集が話題になっていますけど、この人ってアイドルを卒業してからほんとに真摯にお芝居に打ち込んできたんだと思うんです。映像で拝見したことしかなかったんだけど、改めて、お芝居が好きなんだろうなあと感じました。個性的ゆえにともすればウィークポイントになりかねない前田さんの声色が、ヒステリックで狂気的な叫び声にぴったりすぎて。なんだろう、ちょっと前田さんのための役、みたいに観えました。こういう役をやってくれたこと、それを観られたこと、嬉しいなあ。

「シャイニングな女たち」で、なにあの人すご…! となった小野寺ずるさんのコミカルな器用さは今作でも健在。コミカルであればあるほどやばいからね、この人もほーんと怖かったです。

帰り道。うわあ、これは作品としてどんな感想を抱けばいいんだろうな? と思いながら、劇場から駅への道を歩いていました。そしたら目の前で、ギリギリまで車が接近してきてるのに横断歩道のないところをマイペースに渡ろうとするおじいちゃん(車が止まってくれてことなきを得た)や、季節外れの格好で音楽をガンガンかける「SAKAMOTO DAYS」の坂本みたいな人がいて、ほ〜ら、お前の日常だって一緒だよ、と言われているような気がしました。狂気と喜劇のごった煮。いやー、おもしろい作品を観させていただきました!

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あまのさき いただいたチップは楽しい経験に使わせていただき、またここでお話できたらなと思います!