『ソーキそばを啜りながら、涙を堪える』 第38回日本サイコオンコロジー学会(沖縄)を終えて
noteではお久しぶりです、心療内科医のあもうです。
私のメイン学会のひとつである、日本サイコオンコロジー学会に現地参加してきました。
「サイコオンコロジー」とは耳馴染みがないかもしれませんが、「がん患者さんや、その家族を支えるこころのケア」とほぼ同意だと思っていただければと思います。
(↓ご興味がある方は、2年前の記事をご参照ください)
率直に言います。遠かった。
そもそも私の居住地から沖縄までが遠いんですが、更に空港から会場までがバスで30分。遠い。
しかも学会に両日参加するために予約したお財布に優しいお宿が、「辺り真っ暗だけど、バカデカパチンコ屋の真裏で明るい」という、治安が良いんだか悪いんだからわからん立地。
行く前から前途多難が予測された学会でしたが、結果から申し上げます。行って大正解でした。
その実感がピークに達したのは、帰途につく途中の那覇空港でのことでした。
サイコオンコロジー(がん患者さんのこころのケア)学会、雑感。
— あもう@心療内科医 (@QjadtncbKrPf3Ed) October 12, 2025
今回改めて感じたのは、「必要なケアがまだまだ届いていない」現実。
その結果、患者さんだけでなく、医療職も不全感を抱えている。
でも、灯を掲げる医療職は北に南にいるので、その灯火を保つために出来ることを考えていきたい。
参加した雑感をXにあげ、空港に向かった私は、遅めの朝食にソーキそばを食べるべく沖縄料理屋さんに入りました。
BGMは畳みかけるような沖縄ソング。「涙そうそう」「花」「島唄」……私たち県外の者にも耳馴染みのある曲ばかり。休みの醍醐味と頼んだオリオンビールを飲んでいると、ある講演のことが思い出されました。
企画当初、特別記念講演として別の方が予定されていましたが、102歳というご高齢で逝去され、別の演者お二方による「戦後80年、沖縄にて平和を考える」が開かれました。
ポスターを見たり、旧交を温めたあと、立ち寄った会場は大入満員。立ち見で忍び込んだ私の目に飛び込んできたのは、土に埋もれた「遺骨」の写真でした。
講演は既に後半に入っており、演者は沖縄戦没者の遺骨収集を目的とするボランティアグループの代表の方でした。
次から次に映し出される数々の遺骨。その埋まり方や場所、残された遺品からどんな背景でこの方が亡くなったかを語る演者の声に、皆息を詰めて聴き入っていました。
令和3年から厚生労働省は戦没者遺骨のDNA鑑定を行って、家族のもとに帰す事業を行っていて、その収集にはボランティアをはじめ、ホームレスの方たちも参加しているのだそうです。
「中には本土で馴染めず、死のうと思って沖縄に来た人もいます」
けれど収集活動に加わる中で、「この人たちは生きたかっただろうな」「この人たちを家族のところに帰したい」「そして、自分も家族のところに帰ろうと思う」と気持ちが移り変わる人もいたと、演者は語ります。
「もう二度とこんな悲劇が起こってはならない」
「沖縄が、そして日本が再び戦場にならないために、私たちは考えていかなければならない」
語りきれない思いを口にしながら話を閉じた演者に拍手を送りながら、私は「沖縄のかなしみ」を改めて考えました。
たとえ戦争が終わり80年が経っても、大切な誰かを喪ったかなしみは尽きません。
それは当たり前だった日常を、穏やかな幸せを理不尽に奪われたかなしみでもあります。
戦争だけでなく、30年前の阪神大震災、14年前の東日本大震災をはじめとした災害や大きな事故も、こうしたかなしみを知る人々の「もうあんなつらいことが起きませんように」という祈りとともに記憶は受け継がれています。
そして、「当たり前の日々を奪われる」というのは、大きな病気にかかることも同じです。
がん患者さんやその家族のかなしみは、「沖縄のかなしみ」と地続きであると感じました。
だから、私たち医療職は病気の治療に力を注ぐ一方で、その苦悩に対して「誰も取り残さない、息の長い支援」を考えていかなければいけません。
風味豊かなソーキそばを啜りながら考えをまとめていたところ、森山良子さんの唄が流れてきました。
ざわわ ざわわ ざわわ
広いさとうきび畑は
ざわわ ざわわ ざわわ
風が通り抜けるだけ
(中略)
むかし海の向こうから いくさがやってきた
(中略)
あの日 鉄の雨にうたれ 父は死んでいった
(中略)
そして私の生まれた日に いくさの終わりがきた
(中略)
お父さんて呼んでみたい
お父さんどこにいるの
このまま緑の波におぼれてしまいそう
夏の陽ざしの中で
(中略)
ざわわ ざわわ ざわわ
風に涙はかわいても
ざわわ ざわわ ざわわ
この悲しみは消えない
私も幾度となく聴いた、誰もがよく知るあの唄です。それまで「悲しい戦争の唄」という理解をしていたのだけれど、今回のまったく個人的な体験の延長線で、私の中で「がん患者さんのご遺族の思い」と勝手に重なって、よくわからない涙が込み上げてきました。
でも、日曜の朝っぱらからビール飲んでソーキそば啜ってる派手な服着た奴が、急に泣き出したらそれはかなりアカン感じなのでどうにか堪えました。
ちょっとしょっぱくなったそばを啜り終え、店を出た直後からこのnoteを書き始めた次第。
本当はこの講演の前半(演者は対馬丸記念館館長さん)から拝聴したかったけれど、ポスターや交流会など現地に集まった者しか味わえない勉強を優先しました。(他にも「興味深い講演なのに、自分が出てる講演と並列だから聴きに行けない」もあった……)
でも、大丈夫です。何故なら、今回もオンデマンド配信があるから!
医療職限定にはなりますが、こちらからお申し込みいただけます。
登録費は医師 6000円、他職種 3000円です。
2025年10月22日より配信開始、11月24日まで視聴可能です。
申し込みは視聴最終日まで受け付けますが、「あれ、もう一回観たかった」とかもあるので、お早めに。
今回のテーマは「サイコオンコロジーの光を地方に」です。
学会オンデマンドは申し込みさえしていただければ、何処にいても学べます。是非、ご活用ください。
(この辺りの話は、また別のnoteを書くかも)
皆様のご視聴登録、お待ちしております。
「学会から特に頼まれてもいないし、一銭もももらってないのに、宣伝してる物好き」あもう
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