アジフライで喧嘩した話。
まさか自分がアジフライで喧嘩する日が来るなんて。
本当にしょうもない。笑
きっかけは数日前、
地元のスーパーマーケットでいつも通り買い物をしていたら
特売のアジを発見したところから始まる。
5尾も入って€4はかなりお買い得だ。
普段、生の魚を買うことはほとんどないのだが
下処理もきちんとされているので
調理しやすいと思い、購入した。
これが災難の始まりだった。
ちょうど数ヶ月前、
オランダで初めてパン粉を買ったばかりだった。
私は小さい頃から揚げ物が大好きだった。
でも、オランダには
日本のようなサクサク、フワフワの衣の揚げ物はない。
オランダでよく使われている
「つぶつぶ衣」のパン粉は
一般的に “paneermeel(パネールメール)” と呼ばれている。
日本のパン粉とは少し違って
もっと細かくて固め、ザクザクした食感 を出すのが特徴。
でも、私は
日本のサクサクの衣が大好きなのだ。
あのサクサクの衣は、オランダにいる限り
日本食レストランでしか食べられない。
そう思い込んでいた。
しかし、この隠者生活の最中に思いついた。
パン粉を買えばいいのだと。
アジアンスーパーへ向かうと
思ったよりも安く、普通に売っていた。
なんなら、
家の近くの中東系のスーパーにでさえ
パン粉が売っていた。
なんでもっと早く気がつかなかったのだろう。
まぁ、今までは
作る気力も体力もなかったので
良しとしよう。
そしてまず、コロッケを作った。
オランダのジャガイモで作るコロッケは最高だった。
実家を思い出す。
よくお母さんが作ってくれたコロッケ。
一度に大量に作って
食べても食べても無くならないコロッケ。
無くならないので
近所にまで配り歩くコロッケ。
小さい頃の記憶が蘇る。
話が逸れてしまったように思うが、
実は繋がっている。
コロッケで余ったパン粉が残っていたので
今回は、アジフライを作ることにした。
アジフライも私の大好物の一つだ。
アジフライ定食を見つけるとついつい頼んでしまう。
彼が仕事から帰るタイミングに合わせて
味噌汁も作って、ご飯も炊いて
もちろん千切りキャベツも用意して。
彼が家に帰ったタイミングで
アジフライを揚げた。
5尾全部揚げる予定だったのだが
全部だと、あまりにも多そうだったので
3尾だけ揚げることにして
残りの2尾は明日、アジフライバーガーにすることにした。
帰国した友人がくれた
トンカツソースをかけて食べるアジフライは格別だった。
まさか家でアジフライ定食を作る日が来るとは。
最近、なんでも
このようなリアクションをしているが
本当にそう思うのだ。
だって日本にいたらアジフライ定食は
食べに行ったほうが安いし簡単で美味しい。
わざわざ家で作る必要もない。
でも、オランダの外食は高すぎて
ドン引きレベルなので
何でもかんでも、食べたいものは作るようになった。
食べたかったら、自分で作るしかないのだ。
エビチリも、麻婆豆腐も、餃子も。
ほぼ中華…。
なんで中華かというと、中華の食材ならまだ安いから。
日本の食材はオランダで買うと
日本のおおよそ10倍前後の値段になるからだ。
これぞ島国の欠点。輸送コストが跳ね上がるのだ。
そんなの、そもそも、買う気が失せる。
どうせ一年に一回は日本に帰るので
その時に死ぬほど日本食を食べられればいいや。
最近はそう思うようになった。
オランダに来て半年ほど経った時は
日本食が恋しすぎて、恋しすぎて
わずかなお金で、高価な日本の調味料を渋々買い集めた。
日本から遊びに来た叔母にも、たくさん持ってきてもらった。
インスタグラムの広告が
飯テロで埋め尽くされていた日々を思い出す。
そんなことを考えながら
この日は大満足で眠りについた。
問題が起きたのは次の日だ。
お昼ご飯に
アジフライバーガーを提案したが
拒否された。
まぁ、昨晩から連続だし
そりゃそうかと思い
トマトオイルパスタにした。
二人でパスタを食べるときは大抵、
一つの皿に二人でがっつく。
だらしがないと言われるだろうが
別に誰かに見られてる訳ではないので
お互いが良ければそれでよしとしてほしい。
皿を洗う量も減り
一緒の皿で食べると絆も深まり
一石二鳥ではなかろうか?笑
だがこれには欠点がある。
毎回、同じ問題が起こるのだが
毎回やってしまう。
食べる量に大きな差が出てしまうことだ。
彼は大食いなので、ものすごい量のパスタを食べる。
だからいつも特盛だ。
そして食べるのもかなり早い。
その一方、私はどうだろう。
よく食べるが、ゆっくり食べるのが好きなのだ。
味わいながら、時間をかけて食べたいのだ。
そんな二人が同じ皿で
一緒にパスタを食べたらどうなると思う?
私が気がついた頃には
皿の中のパスタはほとんど消えていて
それでも私の腹は
まだ全く満たされていない状態なのだ。
そして毎回、後悔をする。
それでもなんで毎回同じ皿にするかって?
「こんだけの量があったら、流石に大丈夫だろう。」
ってくらい、膨大な量のパスタだから
「今日はいいか。」って思ってしまう。
事前に、相手が食べるのを阻止して
自分の分を確保することもできるが
気を抜くと、そんなのを忘れて
気がつくと空っぽの皿だ。
そして今回もそんな感じだった。
今回は特にひどかった。
おそらく3人前のパスタを作って
私は半人前、彼は2.5人前を食べたような感覚だった。
当然、腹が満たされていない私は
腹が空くのは早い。
そして、今日の夕飯に
アジフライバーガーを再提案した。
どうも彼が乗り気ではない。
彼はハンバーガーが良いと。
でも私にはアジフライバーガーにしたい理由があった。
魚は鮮度が命だし
昨日余った溶き卵も残ってるし
パン粉も残ってるし
今日使わないとダメになってしまうから
早く使いたかった。
私の良くも悪くも
勿体無い精神が発動してしまった。
それを渋々承諾してくれ
アジフライバーガーになった。
しかし、私は2度目のアジフライ定食。
なぜなら昨日のご飯と味噌汁が残っていたからだ。
彼がアジフライにもう飽きているのは
なんとなく気づいていたので
私はそれでもよかった。
だがどうだろう。
彼はアジフライバーガーを一瞬で平らげ
すぐに仕事を始めてしまった。
私はというと、
アジフライ定食をまだ2口ほどしか食べてない。
彼がパソコンに向かう傍ら
一人寂しくアジフライ定食を食べる私。
いつも一緒の釜飯を食べていた時は
ワンピースを観ながら
ダラダラとご飯を食べるのが日常だったのに
お互い違う食べものを食べると
無音・無言で
こんなにも素っ気のない夕飯になるのかと。
お昼ご飯を奪われ
あんなにお腹が空いていたのに
どんどん食欲がなくなっていく。
涙が溢れてきた。
「そんなにアジフライが食べたくなかったなら
ハンバーガーがいい!
って言ってくれたらよかったのに!」
私は食材の寿命を考えた上で
アジフライがいいと意見して、
それでもどうしてもハンバーグがいいなら
ハンバーガーでもいいよと提案したのに、
私のゴリ推しアジフライを気にして
仕方なくアジフライで妥協してくれた彼の気持ちも分かる。
でもそんな不機嫌な態度されるくらいなら
最初からハンバーガーにしたかった。
「それでも今日はハンバーガーが食べたいんだ!」
と自分の意見を伝えて欲しかった。
ただ、もっと本音で話してほしかった。
もちろん私が半強制的に
アジフライバーガーにしてしまった理由もある。
今からハンバーガーを作るとなると
ポテトを揚げる必要が出てくる。
揚げ物油を交換する必要がある。
その前にアジフライを全部揚げてしまいたかった。
主婦ならこの気持ちが分かろう。
主婦はいつもこのように
食材や調理のバランスを考えて献立を作っているのだ。
もちろん、2日連続同じメニューが
嫌なのもわかってる。
だから、アジフライ定食から
アジフライバーガーに変えたのに
それでも同じだと言うのか。
「2日連続で魚はきついっす。」
彼にとっては同じようだ。
彼が中庭へ、タバコを吸いに出た。
(もう一生、アジフライなんか作ってやんない。)
ただ、悲しかった。
どうすればよかったのか分からなかった。
そう思った途端、開けっぱなしの中庭のドアから
ネコのFISH(最近我が家に現れたネコ)が家のなかに入ってきた。
ここ最近、毎日我が家に訪れていたネコのFISHだが
今日はなぜか来なかった。
少し心配していたのだが
私にビジョンを伝えるという大役を果たしたので
一旦休憩しているのかと思っていたけれど
ベストなタイミングで現れてくれた。
こんな険悪な雰囲気の中、
そんなのを一切気にする様子もなく
私のそばに撫でられに来るネコのFISH。
癒される。
私たちは喧嘩をすると
仲直りの仕方が分からず、大抵長引くのだけれど
今日はFISHのおかげでその場が和んだ。
「FISHが来たってことは、
FISHを食べろってことじゃない?」
って、彼に嫌味っぽく言って
その日は寝ることにした。
またFISHに救われた。
FISH、ありがとう。
翌朝、というかお昼過ぎ、
昨晩食べきれず残したアジフライ定食が
行方不明なことに気がついた。
彼がもう捨てちゃったかな?
と思ったけど、ちゃんと
タッパーに詰め替えて冷蔵庫に入れてくれていた。
多分しばらくは、いやもしかしたら一生、
この家でアジフライを作ることはないかもしれないけれど
アジフライを食べるたびに
この出来事が甦ってくるんだろうなって思う。
アジフライで喧嘩した話。

