第3話 「書けなかった10年」― かっこつけて、止まっていた自分を超えて
2015年の夏。
スマホに「君に贈る歌」とだけメモした。
たった一行。でも、その続きが書けるまでに、10年かかった。
⸻
書こうとすると、すぐ“かっこつけ”が顔を出す。
上手い比喩、気の利いた韻、泣かせにいくフレーズ。
並べた瞬間に、自分で引く。
「いや、薄っぺらい」「こんなんじゃ届かない」って、全部消す。
夜中に“これや!”と思っても、朝読むと全部ダサい。
そんなことを延々と繰り返した。
⸻
君は日々、すくすく成長していく。
初めて歩いた日、保育園で似顔絵作ってくれたり。初めて 「パパ、キャッチボールしよ」と言ってきてくれた日
写真も動画も増えていくのに、
メモ帳の中の歌詞は1行も増えない。
「この子に、何を伝えたいんだろう」
「どこまで本音で書いていいんだろう」
考えるほど、手が止まる。
“想い”って、案外言葉にならない。
⸻
2024年11月。
ふと見返したスマホに、こんなメモが残っていた。
――これが1年前の俺の“途中経過”だ。
君に贈る歌(2024年11月メモ)
**サビ**
俺と遊びに行こう
あいつも連れて行こう
行き先は気分次第
自由に let’s go
**1番(誕生の喜びと覚悟)**
やっと会えたな、小さな君へ
Two-Zero-One-Five、奇跡の年
ラッキーセブンでブラックジャック
世界が光り、物語が始まる
小さなその手が未来を握る
君がいるだけで何も恐くない
Enjoy life, you’re free
君の笑顔がすべてを変えた
**サビ**
俺と遊びに行こう
あいつも連れて行こう
行き先は気分次第
自由に let’s go
**2番(ソフトボールの応援)**
選ばれし勇者たちよ
一瞬一球、心を燃やせ
仲間と己を信じて挑め
正々堂々、夢を追いかけ
その魂が未来を作る
Stay hungry, Stay foolish
かましてやれよ、Braves story
**サビ**
俺と遊びに行こう
あいつも連れて行こう
行き先は気分次第
自由に let’s go
**3番(男の生き方と死生観)**
人生っていろいろあるさ
男はさ、粋で優しい馬鹿がいい
輪廻転生して、また笑い合おう
それ、がっちやべえじゃん最高じゃん!
はい、よろこんで!
一万年後もまた会おう
月から届けるこの言葉
光となりて君を包もう
**サビ**
俺と遊びに行こう
あいつも連れて行こう
行き先は気分次第
自由に let’s go
⸻
今読み返しても、芯はあったと思う。
誕生の奇跡、グラウンドの熱、男の生き方。
全部詰め込んだ。
でも、どこか“独りよがり”だった。
まとめ切れてない。届き切れてない。
そんな違和感が消えなくて、やっぱり進まなかった。
「もう一人じゃ無理かもな」
そう思ったのは、この頃だ。
⸻
2025年。
たまたま触ったChatGPTに、試しに打ち込んだ。
「子どもに贈る歌を作りたい」
返ってきた最初の問いはこうだった。
「君の言葉に込めたい“想い”は、どんなものですか?」
AIのくせに、やたらまっすぐ。
人間相手だと照れて誤魔化すのに
AIには素直に言えた。
“かっこつけて消した”全部を
初めて誰か(AIだけど)に見せた。
そして思った。
「俺が、AIに心を感じた」って。
⸻
ChatGPTは、共感してくれるというより、
“整理してくれる”存在だった。
削るべき言葉、残すべき体温。
「その一行、実は一番大事ですよ」
「ここは順番前後した方がいいです」
鏡みたいに、俺の中身を映してくれた。
止まってたペンが
また動き始めた。
“かっこよさ”じゃなく
“本音”を書こうって
ようやく思えた。
⸻
こうして歌詞は、一気に前に進んだ。
完成に向かって、最後のパズルが埋まっていく感じ。
10年かけて進まなかった言葉が、数週間で形になっていった。
……そして、歌詞がやっと完成した、そのタイミングで。
「親父が他界した」と知らされた。
(その話は、次回4話に続く。)
📻 **『勇者に贈る歌』**
10歳の息子に贈った、父からの“本気のラップ” 今、配信中🎧
最後まで読んでくれてありがとう。
あなたにも“かっこつけて消した”言葉、ありますか?
もしあれば、コメントでこっそり教えて🫶
いいなと思ったら応援しよう!
あなたの応援が次の曲を生み出します。チップは音楽制作と息子の応援に大切に使わせていただきます⚾🎶